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The・Create  作者: シュウト!!
第2章 爆誕!新たなる冒険者たち
20/98

【EX02】 アタシはモンスター(みんな)の為に、モンスター(みんな)はアタシの為に

なにぃ、中継カメラさんが壊れた!?


【という訳で】(※唐突)

今回は不定期のEX(番外編)シリーズとなります。

※番外編枠のEXも本編の一環である。


おやぁ?サブカメラさんがメイジビートの森の-コールドタワー-を映してますね。(茶番乙)


てな訳で、今回のEXは『仮面の道化師』ことレクさんにスポットを当てたお話です!


なんとなく早すぎる気もしますが、多分大丈夫です。

大丈夫だ、問題ナイ。


 どれ程世界がアタシを憎もうと、アタシは動き続けなければいけないんだ!モンスター(みんな)の為に頑張らなくてはいけないんだーー!


大昔、ゼロ大戦で家族を失い独りぼっちになったアタシの側にいてくれた、あの子の為に・・・

あの子と交わした夢の為に・・・


「っっ・・・。ッ!!?」


 ふと、目が覚めた。

ここはメイジビートの森のメイジタワー跡地、通称-コールドタワー-。


冒険者の都(ジャンヌヴァルク)の冒険者などからは、トロウという名の蝋燭のようなダンジョンボスの根城として知られるこの塔だが、そこの16階層に密かに作成したアタシ達の隠れ家がある。


そんな隠れ家にアタシはいつの間にか帰り、広間のソファに雑に座ったっきり寝落ちてしまっていたようだ。


「あれ?ッッ……、今の、夢?」


冷や汗が凄い。

胸に手を当てると、心臓の鼓動が普段の倍近く脈打っている。


今の今までアタシは深淵の闇から伸びる無数の手に追いかけ回され、まるでマリオネットみたくがんじがらめの操り人形にされていたのだが、どうやら全て夢だったらしい。


「(アホくさ。"精神支配(マリオネット)"のスキルを持つアタシが逆に操られるなんてね。夢であっても失礼しちゃうわ、全く……)はぁ……」


どんな悪夢であろうとも、所詮は夢。

そう思い込む事にしたアタシはドッと疲れた気がした。


大きなため息を吐いたその瞬間だった。


「あれ?」


生暖かいモノが目頭からこぼれ、頬を伝った。

アタシは慌てて仮面を外した。


「涙・・・?何、百年ぶりかしら・・・」


先程まで寝ぼけて忘れていたが、寝る前のアタシは壮絶な大仕事をしていたのだった。


そう、様子見とはいえ魔王(・・)ディミオスと勇者(・・)クロムと生身で戦ったのだ。


あぁ。きっと今頃、魔王と勇者の取り巻きからはバケモノだのインチキ生物だの思われているだろうなぁ。


アタシだって好きでバケモノ染みた力を得た訳じゃないんだからね!

身も心も普通の妖魔族(ヨウマ)なんだからね!?


・・・はぁ、アホくさ。

涙は依然として止まらない。


「・・・・・」


先の出来事に加えて、最近漸くトモダチになれた"歩く大嵐(ウォーカータイフーン)"の消滅。

あの時は平気なフリをしていたが、これも相当心に堪えたようで・・・


アタシはただ、いつものように-スリープ山脈-にサボrんんっ、視察に行ったらテンペストカイザーが居なくなってて。


慌てて追いかけたら追いかけたで魔王と勇者と鉢合わせちゃってさ。

それでも冷静なアタシはあの子と向こうの実力差は解ってた。

だから少し脅かせばOKだと思って"クリエイト"相手に放ってみたんだ?


だが、意外にもホノカ(あの子)は強かった。

テンペストカイザーちゃん、健闘したけど倒されちゃった。


やっぱ、普段と比べて、様子がおかしかったから、無理、、、させなきゃ、、、良かったなぁ………


「グズッ、、ッッ!!」


あの時は彼らと敵対しなきゃいけなくて強がり言ったけど、もぅ誤魔化しは出来ないないらしい。


「グズッ、ヒグッ、うぅ、うぅぅ………」


止まらない涙を誤魔化す為、誰もいない部屋でアタシは笑った。


「(あ、アハハっ、、、や、嫌ねぇアタシったら・・・)うぅ、ごめん、ごめんねぇ、、、!!」


本当に、部屋に誰も居なくてよかった。

一人なら、恥ずかしい姿を見られないからね。


こうしてアタシは、暫くの間涙でぐしゃぐしゃになった顔のまま虚空に向かって謝り続けた。



「午前8時?………あれ、もうこんな時間」


 なんて事。どうやらアタシは2時間も泣いたままだったらしい。

不味い。もうそろそろ友達がやってくる時間だ。

 アタシは大慌てで朝の支度をしに部屋から飛び出た。


「な、何とか間に合った……」


流石のアタシもあそこまで大急ぎで朝の支度をするとなると疲れる。

アタシは再び勢いよくソファに座り、天井を見上げた。


「はぁ。何やってんだか」


 気まぐれに足をじたばたしてみる。

すると、足元に雑に置かれたボロボロの立て掛け式のカレンダーに直撃してしまった。


「あ」


そのカレンダーはくるりと宙を一回転すると、アタシの隣に落っこちた。

アタシは、何となく隣に落ちたカレンダーを手に取る。

そして、今日の日付の所を見やる。


「(西暦500年6月20日、月曜日。もうそろそろ『始まりの日』から一週間経つのね。

今頃、アタシのせいで"この世界"はどこもかしこも大騒ぎ。このままプランSDを推し進めたら・・・

夢の実現?いやいや、絶対無理でしょ。無理無理無理無理!)」


カレンダーをぼんやり眺めていたら、はぁ、とこれまた大きなため息が溢れた。


「あーあ。あの時アタシが安請け合いしなければ・・・」

「……おはよう、マスター」

「ひゃあ!?」


静寂だった部屋に突然自分以外の声が響いた。

普段ならなんて事ないのだが、柄にもなく甲高い声が出てしまった。


「?マスターが素顔でいるなんて珍しいな。それに、どうしたんだ、そんなに思いつめた顔して。何かあったのか?」

「ッッ!!?・・・なぁんだ、カッちゃんか。ん?素顔!?」


 15階層の階段からやって来たのは、カオスウィッチ。

アタシの友達の一人で、大きな赤いリボンの付いた魔術師帽子と右目の星模様の入った眼帯が特徴的な死妖族(ゴースト)の女の子。


女の子と言ったものの、この子ね、本来は北西原野(ノーストサバンナ)毒沼(どくぬま)(はやし)を根城とするA+(ランク)のダンジョンボスなの!

そんちょそこらの子達(モンスター)とは比べ物にならないくらい凄いの!


 そんなカオスウィッチは困惑した表情を浮かべているが、アタシはなんて事ないように慌てて仮面をつけ、なるべくいつもの雰囲気で挨拶を返した。

(※誤魔化したなんて言わない事)


「・・・お、おはよカッちゃん♪」

「む、マスター。いい加減カッちゃん呼びは辞めてくれないか」


ラッキー!誤魔化せた♪


「えぇ~?呼びやすいからいいじゃない♪」

「(っ!いいようにあしらわれたな)・・・まぁ、マスターが気に入っているのなら、その、悪くはないかもな」


後半はごもって全然聞こえなかったが、満更でもない表情を見るに、多分カッちゃんと呼び続けて良さそう。多分。


「全く、カッちゃんは素直じゃないんだからぁ」

「むっ、サーニャか。恥ずかしいから止めろ!」

「うふふ~そ、れ、に、おはよ~レクちゃん❤️」

「・・・オハヨウ」


 含みのある言い方で15階層から上がって来たのは、ミステリーゴルゴン。


この子もアタシの友達の一人で、ボサボサの金髪で隠れている首元に七色七匹の蛇を従えており、タイツのようなハッキリとボディラインの解る服を着ているのが特徴的。

アタシだって結構ある方だと自負してるけど、流石にあのダイナマイトボディには負けるわね。


そんな彼女もカオスウィッチ同様の死妖族(ゴースト)で、A+(ランク)のダンジョンボス。

主な拠点は灼熱の(ダイナマイト・)砂漠(デザート)のミステリーピラミッドだったかしらね。


「いぇ~い❤️」


ミステリーゴルゴンは15階層に繋がる階段から上がってくるや否や、カオスウィッチにべたべたすりすりである。


「こらこら。朝っぱらからなんだよ。歯は磨いたのか?朝食は食べたのか?洗顔は済ませたか?」


満更でもない表情でオカンの様な事を言うカオスウィッチ。

それに対してミステリーゴルゴンはあっはっはと笑いながらこう言った。


「過保護だなぁもう。全部やってきたからここに来たんじゃない」

「(なんこれ)」


アタシはひきつった顔を仮面で隠しながらミステリーゴルゴンとも朝の挨拶を交わす。


「お、おはよサーちゃん(※1)」

「おっは~」

「(いつも通り元気だなぁ……)あれ、マッちゃんとリッチんの二人はまだ来てないんだ」


アタシの問いかけに、カオスウィッチはミステリーゴルゴンに抱きつかれながらも周囲を見渡した。


「あぁ。確か、マッドオーガの奴は王都地下で拠点の改造しておおはじゃぎ。

シャイニングリッチは・・・あれ、アイツは?」

「さぁ。サーニャは知らないよ~ん」


ミステリーゴルゴンは左手をヒラヒラと振った。


「それはそうと。マスター、遂に成功したんだろ?」


 カオスウィッチは興奮気味に話し出した。


「"魔龍魂帝(アジ・ダハーカ)"の実験とそれを倒すような人材の発掘!」


っっ!!!!!


純粋無垢な期待の眼差しを向ける二人には悪いけど、実態を知るアタシからしたら触れて欲しくなかったんだけどな。


でも、丁度いい機会だし、この二人にはアタシの腹の内を明かしてもいいかも。


「うん。"魔龍魂帝(アジ・ダハーカ)"の実験は完璧だったよ。だけどアタシね、新たなアイディア思い付いちゃったからプランSDは白紙にしたいんだ」

「えっ、プランSDを白紙に!?」

「本気か!?」


Wow。まさかここまで食い付かれるとは。

兎に角話を続けよう。


「そうなの。この件は後者の方に関係があるんだけど(チラッ)、聞きたい?」


謎に焦らしてみる。

ただ、いつもの自分を演じているだけ。


「ハハハ、当然さ」

「当たり前じゃん!焦らすな~~!!」


カオスウィッチは微笑みつつそれをスルーし、ミステリーゴルゴンは突っ込みを入れた。


「まず、新アイディアの方ね。それを話す上で、"魔龍魂帝(アジ・ダハーカ)"を倒すような人材は発見したよ」

「えっ!?」

「マジ!?凄ーい!!」


カオスウィッチとミステリーゴルゴンは声を揃えて驚いた。

ハモり具合にアタシはふふっと笑った。


「発見したはしたんだけど。実はまだ実力不足なんだよねぇ」

「なぁんだ。じゃあ意味ないじゃない」


カオスウィッチから離れ、アタシの隣に座ったミステリーゴルゴンは駄々をこねるようにじたばたすると、体を伸ばした。


「(やっぱ大きい……羨ま)落ち着いてサーちゃん、意味はあるよ?」

「ん~?ホントか~?」


アタシは先が二股に別れた帽子を頭から取ると、左手の人差し指でボールを回転させるかのように帽子を回す。

ミステリーゴルゴンがおぉ~と声をあげたのを見て、話を続けた。


「実力不足ってのは言い換えれば才能の原石よ!才能の原石!あれはね、磨けば磨く程光沢が出てきらびやかになるの!!

あんなに将来性MAXな子は滅多にいないよ?」

「そんなになのか?」


アタシの誇張表現に首を傾げるカオスウィッチ。

誇張は過ぎたけど将来性に期待できるのは確か。


アタシは続ける。


「そ!本当、探すの大変だったんだから。ここ五年くらいかな?"多次元干渉(パラレルアクセス)"で莫大な量から探しだして、こないだ遂にヒット!!"この世界"に『召喚』した甲斐があったってもんよ!」

「その、召喚したヤツが"魔龍魂帝(アジ・ダハーカ)"を倒したヤツ?」

「そう!キノシタリクト、って言うんだけどね」

「あぁ、アイツか!」


カオスウィッチは何かに納得したようで、両手をパンッと叩き力強く頷いた。


「そうかアイツか。この間ワタシも水晶球で様子を見ていたなぁ。確かに、アイツならワタシも期待出来そうだ。

サーニャだってきっとワクワクドキドキするぞ?」

「サーもワクワクドキドキ、ねぇ・・・」


ミステリーゴルゴンはいまいちピンと来ていないらしい。

それなら、絶対に興味を引くアレ(・・)の出番ね!


「聞いてサーちゃん。その子ったらね、なんと!自身のスキルで何でも作れちゃうの!

食べ物や道具に装備、防具。それだけじゃ飽き足らず、スキルまで新規で生み出しちゃったの!!」

「「は?」」


ミステリーゴルゴンだけでなく、カオスウィッチまでもが一瞬固まった。


「新規でスキルを作る!?マスター、なんなんだそれは!」

「え!?スキルって普通、生まれた時に一つだけ貰えるモノじゃないの!?」

「普通はそうよね?普通は。でもね、彼は面白くてね、時間と空間を弄り操る能力まで作成しちゃったのよね~」


そこまで言うと、カオスウィッチとミステリーゴルゴンは再び声を揃えて「はぁ?」と言った。


「成程。その力を使って"魔龍魂帝(アジ・ダハーカ)"を倒したのか……漸く謎が解けた。

いや、逆に謎が増えたな!なんなんだそれは!!」

「時間と空間を弄る!?人間がぁ!?しかもその子、子どもなんだよね!!?」


かつてない程に二人はエキサイトしている。

これなら二人はアタシの新計画に賛同してくれそうかも♪


「ね?ワクワクドキドキしたでしょ?」

「したした!!」

「ここで二人に朗報~!その子はさ、今度友達と一緒に"クリエイト"って冒険者パーティで世界を回る所だってさ。運が良ければキミ達二人の根城に足を運ぶ機会があるかもね~

その時は遊び相手になってあげてよ」

「当然っしょ!!ッッくぅ~楽しみだなぁ!!!」


話を聞いて興奮したミステリーゴルゴンはウズウズが限界に来て立ち上がった。


「まぁ、今はアタシのせいでモンスターはみんな漏れなく敵だと思われてるけども、いつの日かアタシ達の掲げる夢に賛同してくれると思うんだ」

「『人魔とモンスターが手を取り合う理想の世界の実現』、だっけ?」

「そうそれ!サーちゃん、よく覚えてたねぇ」


ミステリーゴルゴンは鼻の下を自慢気に擦った。

およ?心なしか七色の蛇達も得意気な顔をしているような。


「そりゃね、事あるごとに言ってたからね。レクちゃん❤️」


アタシってば、そんなに口に出してたかしら。

ま、それはそれとして、アタシは話を続ける。


「それに、プランSDに変わる別の方法を探さなきゃだけど、その子の協力があれば、漸くあの子を解放させれそうだしっ!」

「マスター。話が膨れたが、元はと言えばプランSDの白紙についてだったよな?」


 ふと、カオスウィッチは真面目な顔でそう言った。


「う、うん」

「よし。ワタシはマスターの意見に賛成しよう。人魔とモンスターの架け橋、彼に期待するのもまた一興だ」

「いいね!サーニャも乗ったよ!あわよくば元の姿に・・・なんて期待し過ぎかな?」


ミステリーゴルゴンはおどけた表情でそう言った。


「うーん、それは無理があるかな?そもそもアタシ達、何百年生きてると思ってるのよ~」

「確かに~」


 完全なるガールズトークの場が出来上がっているこの16階層。

人魔とモンスター。完全に敵対関係であるこの構図を変えてくれるであろう者への成長と期待を胸に話はますます盛り上がりを見せようとしていた。


 すると突然、部屋の真ん中にドデカイ魔方陣とその中心部に白と翠のアーガイルな布地を被ったドス黒いガイコツが現れた。


「ぬぅん!!!」

「!!?」

「うおっ!?」

「うひゃっ!?」


 余りにも派手で気味の悪い出現の仕方にレクはソファから転げ落ち、カオスウィッチとミステリーゴルゴンは上ずった声を発した。


「フォッフォッフォ。これはこれは皆さんお揃いで。ワタクシ抜きで何やら楽しそうに盛り上がっていましたネェ・・・!」


ヤツの名はシャイニングリッチ。カッちゃん(カオスウィッチ)サーちゃん(ミステリーゴルゴン)と同じ死妖族(ゴースト)のモンスターでA(ランク)のダンジョンボス。

(ランク)的にはカッちゃん達より一つ下だし、アタシの大切な友達ではあるが、油断のならない(ガイコツ)だ。


 そんな彼はふよふよと漂いながらアタシに近づいた。


「フォッフォッフォ、時にレク殿。以前より頼んでいたデータの採取は出来ましたのかの?」

「・・・出来たは出来たけど。まだ竜王(ドラゴン・キング)双黒の再生者(ツイン・リバイバー)の二人分だけ」


アタシはため息を吐きながらポケットから水晶球を取り出し、シャイニングリッチ・・・リッチんに手渡した。


「(ため息!?)」

「二人!?何ですって!?貴女様のような実力があってしても、あの勇魔六英雄(ゆうまろくえいゆう)相手にたったの二人ですかぁ?w」

「(イラッ)」


リッチんの喋り方は毎回毎回、何処か鼻に付く言い方をする。人を煽るというか、見下したような、そんな感じ。


勇魔六英雄(ゆうまろくえいゆう)という"この世界"において最強で無敵の化け物六人の内の二人を同時に相手して、正直死を覚悟したってのに。


あんな言い方許せない……!


流石にいらっと来たのでアタシは怒鳴り散らすように言い返した。


「あのねぇ、アタシがどれだけ無茶やってきたかアンタ解ってる?勇魔六英雄(ゆうまろくえいゆう)の二人も相手したんだよ!?

それも二人同時に!!

向こうも実力を見せない為に手を抜いてた(ジャブ)とはいえ、アタシめちゃめちゃ死にそうだったんだから!!(←これが引き分けの理由)」


怒りの籠った物言いだが、リッチんは涼しい顔をしている。それが無性に腹が立つ。

煮え繰り返るような怒りをグッと押し込めながら、アタシは続ける。


「それなのに『たったの二人』とか言っちゃってさ。あーあ、やる気無くしちゃったなぁー。何処かの誰かさんのせいで折角上がってきたモチベーションが一気に地底までさがっちゃったなぁ!!

アタシ、いやアタシ達、これ以降プランSDに加担しないから!金輪際無茶振りを要求するのは止めてよね!!(ここまで言えば大抵は折れてくれるけど・・・)」


リッチんはカラン、カランと骨と骨とがぶつかる音を鳴らしながら、肩をすくめて見せた。


「フォッフォッフォ。笑止!そこまで言うのならば此方にも考えがありますよ」

「!?」


なんだ?リッチんの魔力が急激に膨れ上がっているような……?


「これから先、プランSD(この研究)はワタクシめ一人でやらせて貰います。

フォッフォッフォ。いやはや、レク殿に依頼をした、ワタクシが間違っていました、ヨッ!!!」

「っ!?」


 リッチんはアタシの水晶球をカオスウィッチとミステリーゴルゴンの間を通るようにぶん投げた。

それは勢いよく壁に激突し、ガシャンと大きな大きな音を立てた。


「ちょ、あんた何してるの!!?」


あぁ。リッチんはミステリーゴルゴン(サーちゃん)の逆鱗に触れたようです。

リッチんの友達として、何とかしたいけど。こればっかりは自業自得だ。

反省してもらおう。


しかし、リッチんはぶちギレるサーちゃんをものともせず、嗤った。


「全てのモンスターの為だとか、人魔と共存したいだとか。

綺麗事を並べてほざいてるだけのレク殿達にはほとほと愛想が尽きました」

「なんだと?」

「綺麗事だって?」


カッちゃんとサーちゃんは見事にリッチんの挑発に乗ってしまった。

アタシは冷静に二人を宥める。


「やめて二人共。落ち着いて落ち着いて」


だが、シャイニングリッチは落ち着かせる時間を与えんといわんばかりに不敵に嗤った。


「あぁあ。それはそうと、皆さん。ワタクシめはやりたい事が見つかったのです」

「やりたい事?」


レクが首を傾げると、シャイニングリッチは口を大きく開いた。


「クハハ。あぁそぅだ。お前を我の計画に利用してやるって言ってんだよォ!!!」


いきなり口調の変わったシャイニングリッチは、剥き出しのコアを急激に回転、加速させる。


そして、溢れんばかりの輝きを放つ異形の龍の姿へと変身した。


「久しいな、この姿になるのは。悪くない、いゃ、最高だ。最高に、気分が良いぞォ!!!!!!!!」


嗤い叫ぶリッチんはモンスターたるみんなをも苦しませる邪悪で禍々しく、最低最悪のオーラを放った。


「なっ!?あんた・・・!!(シャイニング、デアデビル!!?)」

「その姿は!!?」

「なによ?何なのこの圧倒的な威圧感。このッ、サーニャがッ、怯えているッ!?」

「クハハァ、そうか、そうだ!我は最初からこうすればよかったのだ!」


リッチん改めシャイニング・デアデビルは、4つに増えた手で魔方陣を作り出す。

そこから超高密度の催眠ガスを放った。


「食らえ!強制(ディープ)睡眠(スリーピング)ッ!!!」


アタシ達三人は一瞬の不意を突かれた。

アタシはまだギリギリ意識を保てているが、カッちゃんとサーちゃんは深い深い眠りへと入ってしまった。


「うぅ、っっ。すぅ、すぅ」

「ぐぅぅ、、、ん、ムニャ・・・」


二人はアタシの目の前に倒れた。


「そん、な。二人、共、、、!!」

「レクよ、ありがたく思うのだな。貴様の"精神支配(マリオネット)"、我が正しく使ってやる」


シャイニング・デアデビルは徐にカッちゃんとサーちゃんを掴んだ。


「デアデビル、な、何を、、!」

「ヌゥ?偉大なるカース・ゼロ様の呪いを浴びてモンスターへと堕ちた者か。

ハァ。使えぬゴミめ・・・。捨て駒くらいには利用してやる」

「!!!(クズめ……!)」


シャイニング・デアデビルは二人を床に放り投げると、4つの手の平を合わせ、力を込める。


そうして出来上がったのは、支配の宝呪『ダークマター』だ。

そう。あの時アタシが竜王国の筆頭クンに付けたものと同じシロモノだ。


「あ、れは、、、!だ、、め、!」

「モンスターとしての誇りを捨てた愚か者め。二度と抵抗出来ぬよう、コレを首元に巻いてやろう。

チョーカーみたいで洒落てるだろう?・・・強制魔獣(ハッピーバースデー)転換(トゥーユー)………!」

「ぐっ!?ぐわああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


カオスウィッチの悲痛な叫びとミステリーゴルゴンの頭が割れるように響く絶叫が-コールドタワー-内を木霊する。


ヤツの強制(ディープ)睡眠(スリーピング)を受けても尚微かに意識のあったアタシは、親友の叫びを耳にしても動けない自分を呪った。


「(よく、も、よくもよくもよくも。・・け、・・け!動けこの野郎!二人を深淵(ならく)に堕としやがって………


ん?あれ?


え、………ちょっと待って。



昨日の"歩く大嵐(ウォーカータイフーン)"と、今日のカオスウィッチ、ミステリーゴルゴン。



………二回とも、助けに行けなかったアタシって何?


なに、なんなの?何なんだ?何のために生きて、何のために、



・・・何のため?あぁ駄目だ。もぅ、想い、出せ、na、、、






あの時、の、、筆頭ク、ン、はコンな気持チだったノ、かなァ?これ、、は、因果、応、、報、、、、、?)」


 死ぬ気で気張り抜いたものの、ここでアタシの意識は途切れた。


「(フンッ。無駄に、糞長い抵抗だったこと。憐れで滑稽だこった)」


シャイニング・デアデビルは倒れたレクの頭をその大きな足で踏みつけた。

力み過ぎては潰してしまう。

なのでデアデビルはうまいこと力を調整しながら、レクの頭を踏みつけ、足裏で転がし、そして蹴飛ばした。


蹴飛ばされたレクはとんでもない速度で壁に激突し、同時に、仮面を落とした。


「さて、このゴミどもが目覚めた頃に我がこの格好では少々分が悪いか。我は内部から駒を操るのだ・・・クフフ、幸いにもここは室内。聖天(ウイング・)覇王(ジャスティス)の監視も及ばぬ極楽の地よ」


シャイニング・デアデビルは大きく息を吸い込むと、吸った空気を思い切り吐き出した。

その体はみるみるうちに小さくなっていき、気が付けばシャイニングリッチに戻っていた。


「起きろクズども。"プランSD"、世界掌握の夢はこのまま継続です。レク殿、カッちゃん殿、サーちゃん殿。よろしいですね?」

「アハッ♪アハハッ♪アンタハコノあたし、れくチャンヲコキ使ウンダカラ、当然報酬ハクレルンダヨネ」


口調は今までのレクとは対して変わらない。

だが、今までの倍以上の気迫と殺意、悪意を持った化け物が爆誕した。

爆誕してしまった。


「当然ですとも。お駄賃はきちんと(・・・・)差し上げますとも」

「うふふ❤️。ア、ソウダ。りっちンハマッドオーガ(オロカモノ)ノ処罰ニデモ行ッテキタラドゥ?」


マッドオーガか。確かに、終始この場に姿が見えませんでしたね。

!あぁ、そうか。


あの馬鹿もワタクシ自らの手で然るべき処罰(プレゼント)をくれてやらなくてはいけないみたいですネェ。


「フォッフォッフォ。では、ワタクシは中央王都の地下へ、参りますかのぅ」

「オゥ、気ヲツケテナ」

「セッカク王都ニ行クダカラ、オ土産クライ買ッテキテクレルヨネ?」

「勿論ですとも。では」


シャイニングリッチは現れた時と同じ邪悪に染められた魔方陣を生成し、王都地下へと向かった。


「あの馬鹿(レク)の話。"クリエイト"だったか?ワタクシの計画を邪魔する存在。

若い芽は早めに刈り取って・・・


いや待て。所詮は只の人間の餓鬼。始末ならいつでもできるでしょう。

それにぃ、"グローリー"、"レッドブロッサム"、"ジェットソーダ"、"メイプルソルジャー"、"フローズン"。

馬鹿たれ(レク)が連れてきた異世界からの転生者どもが、面倒くせぇ。・・・その抹殺も!・・・いいえ、また後日で宜しいでしょう。


フフフ、しかし、上出来でしたね。

折角仲良くなったテンペストカイザーを、支配のスペシャリストの貴女に気付かれずに操るのは骨が折れましたよ。

お陰で計画は滞りなく進行出来そう、DA☆


(さぁてと、着きましたね、王都地下。ここにいるもう一人の馬鹿者(マッドオーガ)の再教育をォ、しましょうねぇ~?フォッフォッフォ)」



 時を同じくして、ここはソウルフォレスト南の村。

俺達"クリエイト"は村一番の公園から村を一望できる丘までの間でちょっとした競争をしていた。


だが、その裏で、件の黒幕候補に大異変が起きていただなんて。ましてや、黒幕の裏に何が潜んでるかなんて、知る由もなかった。




次回、18話 お互いに何が出来るのか知ろう その1「まずは情報交換」

【2024 4/29追記】

僕の中の違和感、消し去る事に成功しました。

結果的に魔改造に近いものになってもうたです。


レクに焦点を当てた話。ということで今回は丁度一年前に投稿したものを再編集した形になるのですが、読み返してみてかなりねぇ~、違和感が凄かったんですよね。


それに加えてキャラの深掘りが出来てねぇ!馬鹿じゃねぇの!?あほー!


と、思いまして(?)今回修正箇所多めになっております。

まぁ、良い感じになったと思います。(小並感)



【ここからは追記前からあったオマケのコーナー】

今回の新キャラ()内のは本名もといモンスターになる前の名前

☆カオスウィッチ(ジャック・オ・カトレーゼ)

☆ミステリーゴルゴン(メデューサ・S(サーニャ)・ミスティ)

☆マッドオーガ(イチ)

・シャイニングリッチ

(シャイニング・デアデビル)


☆の3人ですが、実はEX01(後編)にチラッと出てます。


プランSD(訳:シャイニングでデビルな計画)

※だっせぇ

デアデビ「酷いッ!最低だわッ!」

※実際のデアデビルさんはこんなオカマ口調では御座いませんのであしからず(?)


【最後に】

一番最後に出てきた"クリエイト"みたいに『"(コレ)』が着いたやつ。

どこかで回収するまでの秘密とさせてください。

(秘密ったら秘密です!)


---To be continued---

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