【13話】 接近する黒い嵐
お待たせしました(←木曜日になってもうてるやん)
今回の話を投稿するまでの間に僕はいつの間にか学生から社会人になっていたようです。
(訳:高校を卒業した)
凄 く 考 え ら れ な い
そして、なんかあり得ない←※語彙力消失バグ
「悪いけど、一部始終見させてもらったよ」
まさかの事態に呆気にとられた俺達。
そんな現場に、勇者クロムが呆れた表情をして近づく。
「ぎ、ギルマス……」
「ははっ。ギルマス呼び、直ってないね」
「んぐっ!!」
ホムラは慌てて手で口を塞いだ。
「まだ直ってなかったんだね。きみの過保護っぷりは」
「か、返す言葉もございません」
やれやれと肩をすくめたクロムに対し、ホムラは青ざめたまま呟いた。
「娘の為を思うのはとても良いことだよ?だけど、思い通りにならないからって感情のままに捲し立てるのは良くないよね」
「はい、反省してます」
ホムラは先程の威勢の良さとは打って変わってしおしおの萎れ声だ。
「その通りじゃの。ホムラよ、お主の過保護は数年経っても全く変わらないのぅ」
「る、ルミナス………」
クロムの後ろからひょっこり顔を出したルミナス。
呆れ顔のルミナスを見たホムラは顔を更に青ざめさせた。
「はぁ。ホムラよ、周囲を見てみぃ」
「し、周囲の視線が冷たい………」
「現在この村にはクロムやディミオス、ついでにわしもおる。この周囲の人々はわしらを一目見ようと各村々から村人が集まっておる。わかるじゃろ?」
「はい・・・」
「だのに、大衆の面前で親子喧嘩をおっ始めるなんて。お主は何を馬鹿げたことをやっておるのじゃ」
ルミナスはおふざけ感ゼロの大真面目な表情でホムラを諭す。
対して、ホムラは右手で頭を抱えた。
そして続けざまに、ため息を吐いてぼやいた。
「はぁ。まさか、パーティで一番面倒事を嫌っていたあんたに諭される日が来ようとはな……俺も駄目になったもんだ」
「な、なんじゃと!!?折角お主為を思って手助けしてやろうと思っておったのに!!」
ルミナスは顔を真っ赤にして怒った。
まるで怒った子どもみたいにずんずん足音を立てながら遠くへ向かって歩きだした。
「もぅ知らんからな!!(チラっ)お主の娘がどうなっても!(チラっ)わ、わしは!(チラっ)知らんからな!!?」
ツンデレの人みたいな言動のルミナス。
何度もチラリと振り替えっては前へ進み、振り替えっては進みを数回繰り返し、最後は光の玉に変化してシャボン玉のように消えた。
正直、怒ってそのまま精霊樹に帰ったようには思えない。
だが、先程まで感じていたルミナスの独特な気配が完全に消えたのもまた事実。
え、コレ、帰っちゃった!?
「あーあ怒らせちゃった。相変わらず、きみ達はしょうもない事ですぐ口論になるよね」
クロムは呆れ顔である。
すると、クロムの後ろから今度はホノカそっくりの女性が現れた。
「本当、恥ずかしいんだから。で、ホノカ何処か行っちゃったんだけど。どうするつもりよ?」
「ッチ。・・・悪ぃアカネ!ホノカ探してくる!!」
「え、ちょ、ちょっと!?」
ホムラは女性の言葉を振り払ってホノカを探しに行ってしまった。
女性は此方を向くと、恥ずかしそうに頬を赤らめながら俺達に謝罪した。
「・・・・・(え、えらいこっちゃ…!)」
「はぁ、ごめんなさいね。さっきから恥ずかしい所ばっか見せちゃって」
「い、いえ・・・」
特徴的なクリーム色の髪の毛に紅い瞳、薄桃のワンピースと腰元の薄紫のリボン。
身長こそ違えど、この人は見れば見るほどホノカにそっくりである。
もしかしてホノカのお母さん?
「???」
「(あー、そっか。リクトは初めて見るのか)リクト。この人はホノカのお母さんだよ」
ライデンはこっそり耳元で教えてくれた。
「道理でホノカソックリな訳だ」
「ええと、貴方がリクト君だよね?」
Wow、アカネさんの笑顔はホノカそっくりだ。
(※当たり前っちゃ当たり前な話だけども)
「はい。初めまして、木ノ下陸斗です」
「ふふっ、初めてまして。ホノカの母のアカネです。みんな、娘がいつもお世話になってるわね」
アカネはペコリとお辞儀をすると、はにかんだ笑顔でライデン達に話しかけた。
「いえいえ此方こそお世話になってます」
「うちらこそホノカの世話になってるよ」
丁寧にお辞儀をするユキナと照れ臭そうに頬をポリポリかいたルナ。
二人を見てアカネは更に微笑んだ。
「(あら、流石はユキナちゃんね。それに、最近学舎を卒業して成人になったばかりなのにルナちゃんももぅ大人ね)ふふっ」
「(?・・・あ。そうだ)アカネさん。つかぬことを伺いますが、さっきのホムラさん。師匠みたくルミナスさんとタメで話してたんですよね。
あの二人がどんな関係かご存知ですか?単なる知り合いって感じではなかったんですが」
ふと、ヒビキは抱いた疑問をアカネにぶつけた。
「あ~、そっかみんなはまだ知らないのか」
視線の定まらない様子のアカネに俺達は皆首を傾げた。
「(どうしよっかな……あ、でも、ホノカとエンはこの場にいないし明かしちゃっても問題ないかな?うん、大丈夫よね!)みんなは村長とルミナスちゃんが"サンライズ"ってパーティで冒険者をしてたという話は知ってる?」
「うん。知ってるけど、実はさっき知ったんだよね」
ルナは肩をすくめてそう言った。
「ね~、みんなで驚いたよな」
「前々から村長はやけにモンスターに詳しいなぁって思っていたけど、冒険者だったからって答えを聞いて目が飛び出そうだったよ」
ルナの発言に乗り、笑う俺とあははと頬をかくユキナ。
「あら、そうだったの。じゃあ、ヒビキ君の質問の答えは簡単よ。実はね、あの人も同じく"サンライズ"で冒険者をやっていたの」
「えぇ!?そうだったのか……てか改めて、ルミナスさん森の管理者なのに色々凄いな!フッ軽かよ!」
ヒビキはルミナスに(ある意味)畏敬の念を抱いた。
「そうね、ルミナスちゃんは凄かったわ…!んー、だからかな?過保護で心配性なあの人はどうしてもホノカに冒険者になってほしくなかったの」
「え、危険な目に遭わせたくないから?」
ルナはダイレクトに聞いた。
「そう、かもね。結局の所、ルミナスちゃんみたいな凄い子がパーティにいたとして、例えそれが何人もいたとしてもリスクは必ず纏わりついてくる。
それに、ホノカの場合はついこの間まで魔法を使いこなせなかったじゃない?」
「う、はい」
「そう、ですね……」
ライデンとユキナは苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。
「それをリクト君が色々頑張ってくれた結果、ホノカはなんとか魔法が使えるようになって、同時に技としても安定して発動できるようになった。
でも、その勢いのままこの広い世界に飛び出したら、間違いなくどこかで詰んで、最悪の場合は・・・。あの人はそれを危惧してるの」
胸元で手を握り、目を瞑るアカネ。
とても『ホムラさんもアカネさんも冒険者だったのか!?』なんて突っ込めるムードではない。
「でもね、私としてはそれを加味してもホノカには冒険者になって欲しいなぁ」
「え、意外。ホムラさんと考えが対立してるんだ……」
ライデンは目を丸くした。
「うん。あ、ほら、よく『可愛い子には旅をさせよ』なんて言うじゃない?
その言葉通り、ホノカにも冒険の過程でここでは味わえないような辛くて苦しい経験をして欲しい。そして、それを成長の糧にして身も心も強くなってくれたらなぁってね。あ、この事はホノカ達には他言無用でお願いね?」
とりあえず、ホムラが『そんな甘い考えで成せる職種じゃーー』なんて言っていた理由はハッキリした。
どうやらただの過保護パパという訳では無いらしい。
(※そうです!!ソーナンスよ!?)
すると突然、俺達五人とは違う幼い声が下から聞こえてきた。
「え!?お母とお父ってぼうけんしゃだったの!?」
「「「「「!!?」」」」」
俺達5人は一斉に声の主の方を振り向く。
そこには、10歳にも満たないような小さな子を連れていたバルとルミナスがいた。
胸部にポケットが付いた青いサスペンダー服を着ているその子は、ホムラさんのようなお澄まし顔で金髪。そしてホノカやアカネさんと同じ紅い瞳だ。
ん?え。この子、もしかしてホノカの弟だったりする?
「ねぇお母!今のはなし本当?」
「あっ(え、嘘っ!?バレた!?)」
「あっ(Noーっ!!)」
「あっ(やってもうたー!!)」
アカネとバル、ルミナスの三者は見事に声をハモらせた。
だが、表情は青ざめるアカネと思わず白目を向いたバル、そして目を><にしたルミナスとリアクションは三者三様だった。
「わ、悪いなアカネ。散々子ども達には秘密にして!と頼まれてたのにな」
「すまんのぅ。こやつ、お主らとはぐれたみたいでのぅ。泣いておったのでな連れてきたのじゃが・・・
ちと、タイミングが悪かったみたいじゃのぅ」
バルとルミナスは慌ててアカネに謝罪をいれた。
だが、アカネは最早笑うしかできなかった。
「つ、遂にこの時が来ちゃったかぁ」
「リクト君。この子はね、ホノカの弟のエン君よ」
やはりホノカの弟だったか。
可愛さは俺の妹と良い勝負かも?
アカネはエンの背中をポンと叩き、俺達の前へ向かわせる。
「ほら、エン。挨拶っ」
「・・・ども。・・・エン。8しゃい(←※噛んだ)」
うん、なんだろう。凄く、すご~く癒された。
チラリと周りを見ると、全員がエンを見て微笑んでいた。
「ルミナス、やっぱり気になって戻ってきたんだね」
「し、仕方なかろう……!」
ニヤけ顔のクロムにからかわれ、ルミナスは頬を赤く染めた。
「・・・ん?」
ふと俺は、服を引っ張られる感覚を覚えた。
下を向くと、涙目のエンが俺のパーカーの袖を引っ張っていた。
「ねぇ、お姉は?どこ?」
え、これはどう答えればいいの?
『どっか飛び出してったよ』なんて馬鹿正直に言って心配させていいのか?
「(あやつめ、目が渦巻いておる。やれやれ)心配するでないぞ?お主の姉と父親はかくれんぼをしておるのじゃ。エンよ、お主もわしらと一緒に探すのを手伝ってくれるかの?」
回答に困っていた俺を見かねたのか、ルミナスはエンの頭をそっと撫でた。
「かくれんぼ?探す!協力する!」
「ほっ、はぁぁ」
ルミナスのファインプレーに俺は安堵のため息が漏れ出てしまった。
「ルミナスさん、ありがとうございます」
「なぁに、これくらいどうって事はない」
「かくれんぼか。うん、ぼくも探すのに協力しよう!」
「お、俺も参加させて貰うぞ?」
クロムとバルも乗ってくれたようだ。
「た、助かります!」
「なぁに。村の住民が困ってたら、それを助けるのが村長の役目ってもんだ。(ま、アカネとホムラに関しては元パーティメンバーのよしみってのもあるが、それは言わなくていいか)」
「ガロウズ」
「勿論です。皆さん、我々も協力させてください」
なんてこった!
ディミオスとガロウズも手伝ってくれるらしい。
二人を目の当たりにしたエンは目を輝かせた。
「ホント!?」
「おぅとも!一緒にお前さんの姉ちゃんを探そうな~」
「うん!!」
ディミオスに撫でられてとっても嬉しそうなエン。
一方で、ガロウズは俺達の方を向いてこう言った。
「せめてもの罪滅ぼしになるかは解りませんが、皆さん。よろしくお願いします」
俺はチラリと皆の方を見た。
全員コクりと頷いている。
「勿論です、こちらこそ!」
「っ!感謝します!」
俺とガロウズは固い握手を交わした。
「よぅし、俺達もホノカを探そう!!」
「うん!」
「ええ、急ぎましょ!」
「おう!」
「待っててね、ホノカ!」
斯くして、俺達は絶賛『かくれんぼ』中、もとい家出少女を探すことになった。
捜索メンバーは先にホノカを探しに行ったホムラとホノカ不在の"クリエイト"。アカネ、エン、バル、ルミナス、そしてクロムとディミオス、ガロウズを加えた総勢13人だ。
なんとも大がかりなかくれんぼだ。
「いいのかい?ディミオス、今日は・・・」
「ん?あぁ大丈夫さ。これくらいの事で文句をいう俺様の配下達じゃないさ」
「ははは、愚問だったかな?」
「だな。さて。俺様は先に行くぜ。ガロウズ!」
「了解っす!クロム殿。お先に失礼します」
「はーいよ。いってらっしゃーい」
先に森の中へ入って行ったディミオスとガロウズ。
クロムは手を振って二人を見送った。
「それにしても、だいぶ曇ってきたよね・・・・・暗雲と共にやってくる胸騒ぎ、か。何も起きなきゃいいけどねぇ」
俺はクロムが一人ボソッと呟いたのを聞き逃さなかった。
にしても、勇者の胸騒ぎねぇ。
本当に、何もなければいいけど。
◇
想像以上にだだっ広いソウルフォレストを休憩も無しに駆け回ってホノカを探すこと一時間半。
お昼を"創造の手"で出したinゼリー一本で簡単に済ませた俺は徐々にへばり始めてきた。
「ハァハァ、、、"守護者Ω"のオートヒーラーもあるから体力的には問題ない。問題ないんだけど、流石に空腹はしんどいな、、、」
本当に、空腹だけはどうしようもない。
「ホッホッホ、お困りのようじゃな」
「うわお!?」
突然俺の真横に光の玉が現れた。
正体は多分、いや、確実にルミナスだろう。
光の玉から少女姿に変化すると、虹色に輝く四枚羽を羽ばたかせた。
そして、ルミナスは俺を見るや否やホホホと笑った。
「ふむ、お主は良いリアクションをくれるのぅ♪」
「なんですか?脅かしに来たんですか?」
「わしはそこまで戯けではない」
「では何用で?」
「お主に警告を告げに来たのじゃ」
警告とな?
ふと、俺は探索を開始する前にクロムが呟いた事を思い出す。
この曇り空を見て勇者が抱いた『胸騒ぎ』。
そして、森の管理者からの『警告』。
ルミナスの真剣な顔を見て、俺の表情は強張った。
「警告、ですか?」
「うむ。現在、この森に嵐が接近しておる故、屋内への避難の準備をするのじゃ」
「嵐、ですか?なんでまた急に・・・」
ルミナスは肩をすくめた。
「本当、急じゃのう。じゃがの、今現在接近中の嵐はそれはそれはとてつもなく大きな嵐じゃ。故にこの森をかするように通過したとしてもかなりの被害を出すじゃろう」
「かすっただけでかなりの被害って。ま、まさか直撃しませんよね!?」
青ざめた俺はすがり気味にルミナスに問う。
だが、ルミナスは静かに首を振った。
「わしはこれより森の防衛機構で嵐を和らげる。お主らはホノカの探索を一時中断して各自の家に戻って避難するのじゃ」
「ちょ、それじゃあ一人でこの森の何処かにいるホノカはどうなるんです!?和らげるって言っても、嵐に巻き込まれちゃうじゃないですか!!」
俺は慌てて声を荒らげた。
「っ!(こやつは真っ先に友を優先にするか)ふふっ」
一瞬ルミナスは目を見開いた。
だが、何事も無かったかのように続けた。
「安心せい。わしはこのソウルフォレストの管理者じゃぞ?ホノカは既に見つけておる。じゃが・・・」
「じゃが?」
ルミナスは声を詰まらせた。
目をぎゅーっと閉じて、何かを考えているようだ。
「・・・っっっ~~~~!!」
だが、次第にルミナスの頭から煙が出てきた。そして、首をブンブン振ると、強引に俺の手を掴んだ。
「ぬわぁ!!クソ、考えるだけ無駄かの。リクトよ!ちぃと付いて来い!」
ルミナスは俺の腕を強引に掴んだ。
すると、周囲が真っ白になった。
「うわっ何!?」
「行くぞ!テレポーテーションっ!!」
「うわあぁぁ!!・・・・・ん、あれ?村に戻った?」
いつ村に戻ったんだろう。
"時空間支配"の空間転移を発動した覚えはないし・・・
「リクトよ、わしのテレポーテーションの乗り心地は如何だったかのぅ。ここは南の村のちょっとした丘じゃよ」
「凄。え、凄!え!?すごっ!!」
一仕事終えたかのようにぐいーっと体を伸ばすルミナス。
やはり転移能力って便利なんだ。そう確信した瞬間だった。
「さぁて、お主ら~待たせたのぅ!」
目の前にいたのは魔王ディミオスとガロウズの二人だった。
「あれ、ディミオスさんとガロウズさんだ(もしかして、二人が見つけてくれたのか?)」
「お!やっと到着か」
「待ってましたよ」
腕を組み困り顔を浮かべたディミオスと誰かに語りかけているガロウズ。
「ほら、ホノカちゃん。貴女の仲間が来てくれましたよ」
「・・・?っ!!?」
向こうからチラっと見えるのはゆらゆら動く影。
ん?今一瞬見えたあのクリーム色の髪の毛。
もしかして・・・・・?
「あ。(もしかしたわ)」
ホノカと目が合った。
その瞬間、ホノカの弱々しい声が微かに聞こえてきた。
「リクト、どうしてここに?あっ、ルミナスさん・・・」
ルミナスを一目見たホノカは諦めたようにため息を吐いた。
「はは。やっと見つけたよ」
「っっ、リクトーっ!」
その瞬間ホノカは、その瞳に沢山溜めてた涙を一気に放出するかのように泣き、俺に抱きついてきた。
「!!?!!!????」
「わああぁぁぁぁぁぁん!!!リ"ク"ト"ぉー!!」
そして、この叫び声である。
「わっ!!?ちょ、ホノカ!?」
「わああぁぁぁぁん!!」
どうしようコレ。やばい!
何がヤバいって、見られてるんよ!ルミナスさんとディミオスそん、ガロウズさんの三名にしっかり見られてるのよ!
うわ、なんて顔してんだ。そんなニヤケ顔でこっちを見ないで!!
そしてガッツリ抱きつかれてるのも色々アカン。
そのせいで、俺は身動き一つ取れません。
ウブな方の俺にとってはなんか色々柔らかいとか、ほんのり良い匂いがするとか、時間が経過するに連れて邪念が脳内を支配し始める。
「グズっ、、うぅぅ、、」
「(・・・やばい動けない。はぁ。とりあえず、ホノカが泣き止むまで待ってあげよう)」
俺が相当戸惑っているとは知らずに涙が一向に止まらぬホノカ。
「(すげぇ、ホノカの心臓の音が聞こえる……ってことは俺が心臓バクバクってのも、バレてるだろなぁ………)」
この際、恥じらいだの誰かに見られる懸念等々の全てを諦めよう。
俺は泣き止まないホノカの頭をそっと撫でた。
そして、3分後。
「よーしよしよし。だいぶ落ち着いてきたんじゃない?」
「う、うん///その、っっ…………ごめん///」
沢山泣いて落ち着いたのか、冷静になったホノカは激しく燃える火の如く赤面した。
「おう。(っ、向こうから凄い視線を感じる)」
「うっ///(わ、私はなんて事をしたの!!?ハズカシイよぉ………)」
強く視線を感じる方向を向くと、案の定ルミナスがいた。
おいコラ!!何凄くいい笑顔で親指立ててんねん!
「さて、迷子娘問題は解決した訳だね」
「クロムか。お前さん、いつ来たんだ?」
「ついさっきだよ。直感的にここに来てみたらラブラブな人達が見えたからね~」
「()」←声が出ない
「……ホントごめん///」
今度はホノカだけでなく俺も真っ赤っ赤になった。
「お前さんなぁ、これ以上からかうのはやめてあげなさい」
「ちぇ~つまらんのぅ♪」
そんな俺とホノカを見て、ルミナスは頭の後ろで腕を組んで口笛を吹き、ディミオスは親みたいな諭し方をした。
「とはいえ、これで解決じゃないんですよね?」
「うむ、こやつとあやつ。無事に仲直りまでこぎつけるかどうか………」
唸り声を出すガロウズにルミナスは頷いた。
「一刻も早く皆を集めて、その問題を解決したい所じゃが・・・」
突然ルミナスは声色を変えた。
「そうは問屋が卸さないようじゃの。皆の者、嵐の元凶がお出ましじゃ!気を引き締めよ!!」
それと同時にディミオスとガロウズ、クロムは場の空気をひりつかせ、とある一点を見つめた。
「・・・ぼくの胸騒ぎは的中か」
「らしいな」
「ぐっ、またっすか」
俺とホノカはルミナス達の雰囲気の変わりようにビビりながらも警戒を強める。
「ひゃっ!?え、な、何?」
「わからない。けど、凄くやばそうって事だけは判る。(よーし、今のうちにワイドプロテクション展開させとこ?)」
ワイドプロテクションが俺達六人を包み込む。
すると、どこからかあはっ♪という声が聞こえてきた。
まるで、ワイドプロテクションを展開した俺を嗤うかのように。
「あらあら、ご丁寧に結界を張っちゃって。そんなに警戒するなんて、嫌だなぁ❤️」
ソウルフォレスト特有の、不思議な形状をした木々。
その中にある一際大きく太い樹木のてっぺんに、そいつはいた。
「アハッ♪」
「チッ、出やがったか」
「レクとかいったかの。よくもわしの管理する森で悪事を企んでくれたのぅ。
わしらを敵に回すことがどんなに大変なことか、お主は解っておるのか?」
ルミナスの声はいつになく低い。
聞いてる此方まで震え上がりそうな重圧を感じた。
「怖ぁ~い!もぅ!みんなしてそんなに睨まなくてもいいじゃん」
ぶりっ子なポーズで人をおちょくるような声色でそう言った仮面の道化師、レク。
こいつが、ガロウズを操りソウルフォレストを破壊しようとした事件の真犯人なのか?
「ディミオス。やるぞ」
瞬間、クロムは二本の剣を抜いた。
ディミオスは背中の翼を更に大きく伸ばし羽ばたいた。
「おうとも。ガロウズ、お前さんはリクトとホノカを守れ。俺様達の手で、奴を消し炭にしてくれる」
紺碧色の竜の翼をバサッと広げたガロウズは静かに頷いた。
「・・・了解っす」
だが、苦虫を噛み潰したような表情だ。
きっと、奴と戦った時の事を思い出したのだろう。
臨戦態勢のディミオスとクロム、ルミナスを見たレクはひらひらと手を振りながら拍子抜けする事を言いはなった。
「やる気になってる所悪いけど。アタシ、あんたらと戦う気は無いわ」
「なんだと?」
「だって勇魔六英雄が二人がかりでなんて、どうやっても勝てたもんじゃないもの。だ・か・ら、時間稼ぎの駒として、アタシの役に立ちなさいよね!出てこいっ!!テンペストカイザー!!!」
レクが叫んだ瞬間、空間が裂けるように開いた。
それと同時に左肩に水色の結晶を生やした緑色のティラノサウルスが出現した。
そいつは4メートル程あるのでは?と思うぐらい、兎に角デカイ。
ガロウズもそのデカさにヒューと言う程である。
「ダンジョンボス、テンペストカイザーっすか。久々に見ましたねぇ・・・!この超近距離だとなかなかおっかないっすねぇ」
「お前さん何言ってんだよ。こんなのそこら辺のトカゲと変わらねぇだろうがよ」
え、この人何言ってるの!?
あのクソでかティラノがトカゲ同等!?
俺は戦慄して体が震えました。
「グゥルルル、グオオオオオオオオ!!!」
ディミオスにトカゲと言われたからか、テンペストカイザーは咆哮をあげた。
「ディミオス様、流石に冗談っすよ。見てくれは大きくとも所詮はD+!ただの木偶の坊ですよねッ!!」
「グッ、ガアァァァァァ!!!!!!!」
ガロウズは背中の翼を更に大きく伸ばす。
今度はガロウズに木偶の坊と罵られ、テンペストカイザーは更に大きな咆哮をあげた。
「(そうだった!優しくて愛嬌あるから忘れてたけど、魔王とその筆頭、かつ勇者とかいうバケモンなの、忘れてた)」
「じゃが、油断は禁物じゃそガロウズ!いくらD+級でもダンジョンボス補正で文句無しの化け物じゃぞ」
今、ダンジョンボス補正だの何だのと聞こえたけど、え?D+!?
この前戦ったヤツ、サンダーレオーネ?だったかはC+級じゃなかったっけ?
え、流石に過剰戦力過ぎないか?
「え、D+級!?この前戦ったサンダーレオーネはC+級だった気がするけど、それより弱い!?」
「ほぅ、随分楽観的じゃの。クロムよ、こやつにダンジョンボスが何たるか、教えてやれ」
え?楽観的ですと!?
どうやら俺は何か誤解しているらしい。
「リクトくんはモンスターの危険度については知ってるよね?」
「はい。E級からS級まであるんですよね?」
「そう!正解!……でもね?D+級とC+級でも、それが通常モンスターとダンジョンボスとでは危険度もとい強さが大きく変化するんだ」
成程、それがダンジョンボス補正ってやつか。
「通常モンスターとダンジョンボスではどれくらい違うんですか?」
「確か、ダンジョンボスの強さは通常モンスターの10倍だった気がするわ」
俺の質問にはホノカが答えた。
「大正解!偉い、ちゃんと勉強したんだね」
「そ、それほどでも//」
「じゅ、10倍!?」
10倍!?思わず上擦った声が出た。
「そう。だから一概にもD+級だからサンダーレオーネなんかより弱いだなんて思わない事だよ」
「な、成程・・・(何それ、ボスじゃん!面白!)」
またもや非現実な設定に気持ちが昂った。
「ごめんリクト。わ、私、ヤバいかも………」
ホノカは、グルルと低音の唸り声を上げるテンペストカイザーに気圧されてしまったようだ。
「グルアァァァォォォォォ!!!!」
そいつは三度咆哮を上げると、曇り空がどんどんドス黒く染まっていく。そしてふと、ぽつ、ぽつと雨が降り始める。
それは、どんどん、どんどん勢いを強めていく。
「・・・・・(何よもぅ。最悪……)」
「うーわ最悪。この酷い雨、テンペストカイザーとやらの仕業ですか?」
俺はグショグショに濡れた服に苛つきながらもポツリと呟くと、クロムはそれを聞き逃さなかったようで、回答をくれた。
「今度は正解だよリクトくん。改めて、奴の名はテンペストカイザー。"歩く大嵐"の二つ名を持つ竜族のD+級モンスターだよ」
「生憎、俺様とガロウズと同じ種族のモンスターだな」
ディミオスは心底嫌そうな表情でテンペストカイザーを睨む。
だが、向こうもディミオスの睨みに臆せず唸り声をあげる。
「元々はメイジビートの森の-スリープ山脈-に住まうダンジョンボスなんだけどね」
クロムに続けてルミナスも回答の補足をくれた。
「うむ。わしの力でモンスターの発生しないソウルフォレストではまず見ない敵じゃ。じゃが、・・・さしずめ、仮面のあやつが自身の能力でここへ呼び寄せたのじゃろうな」
「(成程。ディミオスさんとガロウズさんはアイツと同じ種族だから煽るような事を言ったのか)」
ルミナスの推理を聞き、レクは木のてっぺんに立ったまま拍手した。
「あははっ♪正解!流石は管理者ね」←勿論馬鹿にしてる
「(イラッ)」←煽られて苛ついた
「あはははっ♪むむっ!おやぁ?おややややーん?この雨の中なのに観客が集まってくるなんて、幸運ね」
「観客、だと!?」
ディミオスと同時に俺はチラリと後ろを見る。
なんと、バルやホムラを始めとした皆が勢揃いしていた。
この豪雨の中なのに、だ。
「うげぇびしょびしょだよ・・・ホノカっ!うち、参上!だよ」
「ルナ……!」
「来たぞリクト!」
「はぁはぁ、二人ともお待たせっ!」
「よ、よぅ」
「ライデン!ユキナ!ヒビキ!」
ヒビキは本来この森にいるハズの無いテンペストカイザーを見て身構えた。
「おいおい!!何故ここにダンジョンボスがいるんだ」
「お前さん達!悪いが説明は後だ!」
「グルルアァァァァァ!!!」
俺達なんてお構い無しだといわんばかりの強烈な咆哮。
レクは再びあはっ♪と嗤った。
「あははははっ♪そんな幸運なキミ達にはプレゼントをあげなくちゃねぇ。
いけっ、テンペストカイザー!キミに決めた❤️」
「グアァァァァァァァァ!!!!!」
大雨の中、戦いが始まった。
次回、14話 問題は、嵐と共に飛び去って
12/21追記
魔改造という名の修正、完了です☆
(遅れて申し訳ないです)
【不定期開催ざっくりモンスター図鑑】
Name:テンペストカイザー
種族:竜族 属性:風
生息場所:メイジビートの森の鉱山跡地-スリープ山脈-
危険度:<ダンジョンボス>D+級
【所有スキル】
"大嵐星"
・天候操作 ・身体装甲
【概要】
・大きさ:約400cm、重さ:約800kg
・見た目は殆ど私達が想像するようなティラノサウルス。好戦的な見た目に反してだいぶ繊細。
・右肩の水色の結晶はエネルギーコアであり、丸出し……じゃなくて、剥き出しの弱点。
・400cmもの巨体を誇るが、その割には肉よりも野菜が好き。そのせいか、体色が茶色から緑色になった。
・見た目で怖がらない友達を募集中。
【ダンジョンボスについての説明】
・その名の通りダンジョンを支配するボス。
・ダンジョンボスの危険度も通常モンスター同様、E 級~S 級まであるが、通常モンスターの強さは10倍増し。
・基本的には固定エンカウントで世界に一体のみの存在。(おんりーわん)
・倒せたら、通常モンスターより経験値やCが多く貰える。
※でも、作中で経験値がどうだとかやるのは面倒なので、カットします。申し訳。
・アイテムをドロップする奴もいるが、それらは基本的に物語に干渉しない。(←だって大変なんだもん)
※物語に干渉する系のアイテムはポケモンで例えるなら、xyの『メガリング』、usumの『Zパワーリング』や剣盾の『ダイマックスバンド』、最新作svの『テラスタルオーブ』等のカバンの『たいせつなもの』欄のヤツだと思っていただければ。
(↑図鑑や自転車とか、昔の作品ならタウンマップとかランニングシューズなんかも該当するねー)




