【11話】 魔王と勇者の介入
あぁぁあぁ、圧倒的に間に合わなかった><
第2章一発目なのに(´Д` )ぐやじぃ!
ここは、何処だ?ううっ、暗い・・・
俺の目の前には、深い深い暗闇が広がっている。
何も存在せず、俺の身体以外に何も見えることはない。
それはまるで虚無の世界だ。
「(俺は何故、ここにいるのだろう。それに、記憶が少し曖昧だ。
確か、誰かと戦っていて?それで、その時に何かスキルを作ったような・・・?
タイム、何だっけ。タイム、パラドックス(?)的なやつだったか)あっ、そうだそうそう。"時空間支配"だ」
俺は暗闇で目を瞑り、唸りながら記憶を辿ろうとする。
「で、何で俺は"時空間支配"を作成したんだろ?動機が全く思い出せない………」
だが、記憶に鍵が掛けられたように、思い出したくても全く思い出せない。
仕方なく、思い出すのを諦めて虚無の世界に腰を下ろす。俺は頭をわしゃわしゃとかきながらため息を吐いた。
「はぁ、どうしたもんかね・・・」
だが、その時、この虚無の世界に朝の日差しが降り注ぐかの如く、眩くもあたたかい光がやさしく包み込むように俺を照らした。
「っっ~~~~~、眩しい!!けど、何処かやわらかくて、あたたかい・・・?」
光に包まれた俺は目を疑った。
目の前に、小3当時の俺と勇気、健斗が現れたからだ。
これには当然俺(now)はパニックに。
「は?え、は?なにこれ!え、はぁ?」
「ごめん!!本当、ごめん!!!」
!?
見えて、ない、らしいな。俺(now)のことは。
鼻水でろんでろんで泣きじゃくる俺(小3)が心配そうな顔の勇気と呆れ顔の健斗に謝罪している。
あぁそうか。そうだったな。
俺はあの後、ちゃんと謝れたんだよな。
「ったく、おせぇよ。馬鹿・・・!」
「本当だよ。僕たちはずっと、心配してたんだからね!?」
呆れ口調だが心底嬉しそうな健斗と目を潤ませて怒る勇気。
そう、彼らは俺の事をずっと待ってくれていたらしい。
今までずっと、俺の知らない所でずっと、二人は居場所を残してくれていたのだという。
「その状況で抱きついたら!あーあ、言わんこっちゃない。健斗からげんこつ食らってやんの。ハハっ」
本当、懐かしいな・・・
騒ぎを聞き付けてやってきた当時のクラスメイトがいたけど、あいつらもみんな、俺を温かく向かえてくれていたなぁ。
本当、みんな優しくて、最高だったな・・・
◇
俺はガバッと身体を起こした。
「?!」
どうやら俺は体を横たわらせていたみたいだ。
でも、何故俺は横になってたんだ?
「っ!!?ゲホゲホっ、ッッッゲッホゲッホゴホゴホっっ。ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ、、、」
むちゃくちゃむせた……
それに、動悸が激しく呼吸が荒い。
「っ、んん、ゲホゲホゲホっ、ハァ、ハァ、ハァ………」
俺は慌てて喉に食べ物が詰まった時のように胸元を叩く。
ほんの少しだけ、楽になった気がする。
「はぁはぁ、ちょっと楽になった・・・ん、あれ。ここ・・・」
ふと、周囲を見渡すと、病室のような場所にいた。
「病室?なんで……っ!」
そして、俺がいるベッドの周りには、魘されてるような苦しそうな表情で眠るライデンとヒビキと、うっすらと涙後が残るホノカとユキナ、ルナの五人がいた。
「みんな・・・痛っ!?」
急に頭に激痛が走る。頭というより、脳と言った方、が、正しいかも。
俺は堪らず身体を仰向けに倒した。
「っっっ、があ"あ"ぁ"ぁ"!、、、っ!??」
その瞬間、虚無の世界で思い出せずにいた記憶が全部帰ってきた。
まるで、今まで体験してきた出来事が映像として直接脳内に入り込むように。
何故か突然"この世界"に来て、ライデンとホノカと出会い、友達になったこと。
その後いきなり出てきたモンスター達と戦ったこと。
爆発音が聞こえ、急いでライデンとホノカの村へ向かうと、あちこちが破壊されていて、憤りを感じ、戦慄したこと。
ロウズと戦うユキナを見て、間一髪助けれた事。
ヒビキとルナの二人をギリギリ救えたこと。
怒りに任せて立ち向かった結果、ロウズに完膚なきまでに返り討ちにされたこと。
死ぬ間際に見た走馬灯で小さい頃を思い出し、兄ちゃんとの思い出を鍵に"時空間支配"のスキルを作成した事。
その強大な力で村を完全修復。文字通り、元通りにしたこと。
※元の村を知らなくても、村の時間そのものを巻き戻したから完全に直せたのです。(←は?えぐ。)
その後、意識を失った事も、勇気と健斗とどうなったかも全部。思い出した。
ロウズは、・・・・・あれ、アイツどうなった!?
「っっっ、そっか。ここ、異世界なんだ。なーんか、一日のうちに色々あったな。ホント、凄くてヘンテコな体験したなぁ・・・」
そういえば、さっきの頭痛は頭打った衝撃が今になって来たのか?
「いや、なわけ。あってたまるか……」
俺はあり得ないだろと苦笑いした。
「っ!?リ、クト!?」
突然ヒビキが呼び掛けてきた。
どうやら起こしてしまったらしい。
「(やっべ。一人言デカ過ぎた……)おっとごめん。起こしちゃったかな?」
「いや、それはいい。リクトお前、目を覚ましたんだな」
ヒビキは俺をまじまじと見る。
すると、ヒビキの目からつぅーっと涙が溢れた。
「ちょ、ヒビキ!大丈夫!?」
「あれ?わ、悪りぃ。安心したら、出てきたわ、、」
「ヒビキ……(こんなに心配させちゃったのか。俺、悪いことしたな・・・)」
ヒビキがそっぽを向いたと同時に、ライデン達も目を覚ました。
「っっ!!!リクトが起きてる……!!はあぁ~(←安堵の余り気が抜けた)」
「よ、よかったぁ、やっと起きたぁ・・・!」
「無茶し過ぎよリクト君!どれだけ、私達が、心配したか・・・」
「マジで、ずっと起きないかと、思ったんだからぁ!」
わお。
ホノカとユキナ、ルナは俺を見るや否や大号泣である。
俺は慌てて、頭を下げて謝った。
「いや、本当に。心配かけてごめん!」
「「「本当よ!!!」」」
ホノカとユキナ、ルナが口を揃えて怒鳴った。
号泣しながらなので、迫力はあまりなかった。(※失礼)
だが、三人がどれだけ俺を心配していたのかは痛い程伝わった。
「病室では静かにして下さい!」
「「「す、すみません・・・」」」
徐に病室のドアが開いたかと思いきや、村の看護士に思い切り叱られた。
いやね、すごく怖かったです。
看護士が扉を閉めた後、俺は気になった事を質問した。
「あ。そういえばだけど、さっきルナは俺がずっと起きないかとって言ってたけど。実際俺はどれだけ寝てたんだ?」
「五日かな?」
俺の問いに涙目から元に戻ったライデンが答えた。
「い、五日!?」
「皆さん?お静かにって言ったでしょう!?」
看護士さん、リターン。
予想以上の日数だったので、ついオーバーなリアクションを取ってしまった。
「す、すみません・・・」
俺は看護士さんに謝った後、声を凄く萎めて言った。
「嘘!?本当に五日寝てたの?俺のスキル、"守護者Ω"には自動回復があるのに」(←ヒソヒソ声)
「(気持ちはわかるけどさ、ビビり過ぎだろ……)あぁ、本当だ」
ヒビキは右手で目を抑えながら続けた。
「村の医師達の話だが、お前の持つスキルの自動回復は機能を完全停止していたという」
完全停止て。オートヒーラーさん、仕事してくださいよ!
(自動回復さん『無茶言うなって』)
「それに加えて、あの痛々しい程の傷だらけの身体。それの影響で出血は多量で免疫も弱まって病気にかかるリスクまで合ったんだ。リクト!お前の考えるよりも相当危険で最悪な状態だったんだぞ!」
ヒビキはハッキリ断言した。
俺は何か言おうとしたが、喉につっかえて声を出せなかった。
「・・・・・」
「とても回復魔法だけじゃあどうにもならない。医師達だけでなく、俺達もやれる事は全部やったが、後はどうにもならない。お前が自然に目を覚ますのを待つしかなかったんだ。五日で目覚めたのはホント奇跡だぜ?」
「奇跡………」
まさか人生で二回も死にかけるとは。
(一回目:電車事故。二回目:今回)
俺はため息を吐くと、天を仰いだ。
「兎に角、目覚めてくれてありがとう」
ヒビキさん。
まじまじとそんな事を言われると照れるんですけど。
尚、照れてる場合ではないんだがね。
「リクト君。君が眠っていた間に色々大変な事があったんだ。リクト君にも関わる話だから聞いてくれると助かるんだけど……」
「色々、大変な事?」
俺は首を傾げた。
俺が倒れてからの出来事その①:
勇魔六英雄の魔王ディミオスが現れた。
この村に来るや否や危険な状態の俺を見つけ、大急ぎで今いる病院に連れていった。
その後。ライデン、ホノカ、ユキナ、ヒビキ、ルナは交代しながらずっと、俺を看病してもらっていたらしい。
その②:ディミオスはガロウズから事の顛末を聞く為村人達が守る牢獄へ向かう。
すると、同時期に冒険者の都から応援に駆けつけやって来た勇者クロムと冒険者"マジカウインガー"の三人は綺麗過ぎるこの村を見てビックリ仰天。
ディミオスとクロム、そして村長のバルが揃い、事の顛末を纏める為に会議を開こうとした。
だが、夜遅くだったので断念。明日に持ち越した。
その③:翌日(四日前)、会議が村長の自宅で行われる。
ディミオスやクロムだけでなく、この森の東、北、西の村の村長達も参加したデカイ会議だった模様。
※管理者は別の用事で不在
絶賛武者修行中だったガロウズがこの森で暴れるに至るまでの過程が明らかになった。
ここで"マジカウインガー"達との馴れ初めも判明したが、黒幕として出てきたのが赤髪の仮面の道化師のレク。
その④:会議は長時間続いたが、一向に決着せず日が暮れる。
会議にて一番の被害者となった俺がいないのではその先の話を決めれない。 ←は!?
そう判断した一同は俺が目覚めるのを待つことにした。
(森も村も最終的に被害は無しだった。だから、直接操り状態のガロウズと戦って、唯一ボロボロだった俺に最終的な判決を求めたいとの事)
↑これ聞いて渋々納得
その⑤:それから四日経ち、俺、ようやくお目覚め。
俺が目覚めたら、ライデン達は"守護者Ω"の自動回復が無事作動しているのを確認してくれ。同時に、俺が問題なく動けるか、病院から出ても大丈夫かを医師と共に確認して欲しい。
それが終わり次第、皆揃って村長宅に来い。
上記の事をユキナから説明される。←now
「これが全部、リクト君が眠っていた間に起きた出来事なの」
ユキナはかなり詳しく説明してくれた。
「・・・・・」
「パンクしたか?」
ヒビキは苦笑しながら言った。
「いや、理解はした。理解はしたよ?でもさ、ちょっと待ってくれ!」
おい待てみんな?微笑むな?
絶対皆、こう思ったろ。駄目じゃん、って!
「なんか凄いことになってないか?"勇魔六英雄って、"この世界"の凄い人が二人もいるんでしょ?」
情報を整理しようとすればする程訳が解らなくなる。
「そうよ。って、リクト大丈夫?」
ホノカは頭から湯気を出す俺を見て驚いた。
「頭がオーバーヒートしてるな。ほれ、水飲め」
「か、感謝!」
ヒビキから水を貰った。
とりあえず、落ち着きましたわ。
「まぁ、寝起きにこの情報量は駄目よね」
「何せリクトは今起きたばかりだから」
ルナとホノカは俺にフォローを入れた。
それと同時にぐうぅぅぅと情けない音が聞こえた。
「「「「「!」」」」」
「///(っ、ハズカシイ・・・。隠れる所があるのなら、そこに隠れたい・・・)」
そう、俺のお腹だ。
流石に五日も何も食べてないとなると、限界も限界である(←寧ろさっきまでよく気づかなかったな)。
「ご、ごめん///」
「「「「「ぷっ」」」」」
顔を真っ赤にした俺を見たライデン、ホノカ、ユキナ、ヒビキ、ルナは同時に吹き出し、爆笑した。
(ヒント:病室で五月蝿くしたら・・・?)
「貴方達、何回言ったら解るのかな?(←怒り120%)」
ほら、案の定来ました。
「お願いだから静かにしてくださいねぇ?」
五人は仲良く看護士に怒られたのだが、叱られた後の静寂に再び気の抜けた音が鳴った。
<ぐ~~~>
「!??Oh no///」
腹の虫とはどうしてここまで空気を読んでくれないのだろう。おかげで俺の顔は真っ赤である。
「た、タイミング・・・・・!」
「くっwまたか」
「ちょ、タイミング最悪w」
「こんなの、堪えれる訳w」
「ぷはっw」
「げ、限界w」
その後。見事に腹筋を破壊された六人は仲良く大爆笑して、しっかり看護士さんに怒られましたとさ。
ちゃんちゃん(白目)。
◇
あの後、俺達は各々朝食を取った。
俺のメニューは並盛の白米とサラダチキン、そして胃に優しいタマゴスープでした。
美味しいかったけど、圧倒的に量が足りないのが悲しかった。
(※五日も寝てたんだし、仕方ない)
朝食をとった後俺は看護士さんに連れられて病院のシャワールームへ行った。
一応、俺が眠ってた間も看護士さんやホノカ達がタオルで汗を拭いてくれていたらしいが、五日も風呂入ってないのは流石にキツイ。
というわけで、しっかりと汗や汚れを洗い流してきます♨️
10分後。"創造の手"で出した服に着替えた俺は、看護師に連れられて医院長の元へ行った。
「おぉ、リクト君じゃないか!」
「ど、どうも。この度は色々とお世話になりました」
「良いんだよ良いんだよ。君はうちの村を救っただけでなく、この森全体を守った英雄なんだ。これぐらいさせてくれ」
英雄って。流石に大袈裟過ぎるよぉ。←照れとる
「では、これから聴診器を当てるから、服を上げてくれるかい?」
「はい」
「おっ、やはり復活した自動回復は凄まじい。まさに医者要らずだね」
医院長さんは眼鏡越しに苦笑いを浮かべた。
「は、はぁ……」
「うん。この様子なら退院しても問題はないだろうね」
「良かったですね」
「ありがとうございました…!」
俺は診察室から出ると、皆が待つ部屋に行った。
そこで俺は、診察室での結果を皆に伝えた。
「うん。良かった良かった」
「やったねリクト!」
「おぅ!ありがとう」
俺はまるで自分の事のように喜ぶライデンとホノカとハイタッチした。
「リクト君、出発前に忘れ物とかはない?」
「大丈夫。というか元々手ぶらだったし」
「!!?」
「は!?」
「え、手ぶら!?」
ユキナとヒビキ、ルナはめちゃめちゃ驚愕している。
「そっか。ユキナ達はリクトがどこから来たかとか色々知らないのか」
「え、二人は知ってるの!?」
「う、うん」
そういえば、まだ伝えてない事が沢山あった。
どこから来て、何者なのかとか、"創造の手"の事とかも諸々伝えないと。
「よし、村長の家に向かうついでに色々話すよ。俺のことをさ」
「う、うん。お願い」
「じゃあ、出発・・・」
「お、おぉー」
斯くして、俺達はこの村の村長の自宅へ向かった。
ちなみに、俺が何者かなんて隠す必要なんて無い。そう思った俺は皆に包み隠さずに『俺』について伝えたのだった。
時刻はam9:30。
村長宅前に到着した俺達は村の兵士二人に案内されて会議室に入った。
「・・・(まさか、リクト君が別の世界の人だったなんて。それに、ホノカが魔法を使えるようになったのはそんな事があったのね……)」
「・・・(手ぶらの理由、まさかだったな。というか、リクトはこの先どうするつもりなんだ?異世界から来たってなると、帰る場所が無いよな)」
「・・・("創造の手"、だっけ?無茶苦茶じゃん!あ!後でどんなことが出来るか聞いてみよ)」
ユキナとヒビキ、ルナの三人はそこはかとなく表情が固くなっている気がする。
俺のせいだな。なんかごめん。
「会議室は此方です」
「魔王様と勇者様もおられますので、どうか失礼の無いように」
『『はい』』
「では!お入りください」
兵士の一人が扉を開けた。
「ほぅ、主役が来たみたいだな」
「みたいだね」
「(な、何だ?)・・・失礼します」
扉を開けた先には、The会議室と感じさせるような無機質な長机と沢山の椅子が配置されていた。
「(じ、重圧ヤバ…!)」
「(冷や汗が出るね……)」
「(ひえぇ……)」
「(お、おっかない…)」
「(師匠、まるでいつもと雰囲気が違う……!)」
「(こ、怖いんですけど!!)」
「そんなに怯えなくていいって。ほら、空いてる席に座ってくれ」
俺達六人は部屋の空気感に気圧されながら、この村の村長バルの指示通りに空いている席に着席した。
緊張120%の俺はチラリチラリと周囲を見る。
座る人達のなかでも一際圧倒的な存在感を放つのが、俺の真正面に座る二人だ。
その内の一人は、漆黒の角を二本生やし黄金の翼を広げる金髪の男がいた。あれが、あの人(?)が魔王ディミオスか?
で、もう一人は頭に白いハチマキを巻き、赤と黒のマントを靡かせるスーツ姿の青年。こっちが勇者クロムで違いないかな?
存在感、そして威圧感こそ凄まじいものの、二人の表情はどこかやわらかかった。
どことなく、心の底から信頼出来そうなオーラを放つ二人はとても不思議だ。
そして、魔王ディミオスの隣にいる二本の青い角を生やす金髪少年が、ロウズ・・・じゃなくてガロウズ・・・か?
なんか、あの時とは全然違う!
禍々しさというか邪悪さが全く感じられなくて、なんかこう、凄く違和感がある!(←失礼)
でもって、勇者クロムの隣にいる姉妹に見える三人が、冒険者の"マジカウインガー"らしい。
三人とも、髪の色は黒、銀、灰と若干違えど顔の雰囲気はそっくりだ。え、本当に姉妹なんだろうか?
まぁ、それは置いておいて。
会議の司会進行はこの、イケオジオーラ漂う南の村の村長であるバルが務めた。
「さて、役者が揃った所だし。会議を始めよう!といっても、リクト!四日前に参加できなかった君はぶっちゃけ誰が誰だか分からないだろう?という訳で、さくっと簡単に自己紹介を始めよう。その後、本題に入ろう」
「Ok。俺様は異議なしだ」
「ぼくも賛成。それじゃあ、最初にぼくから名乗ろうかな~」
Wow!軽い!この人達、軽い!
何ともフランクな感じでお互いの自己紹介が始まった。
とりあえず俺が誰が誰なのか顔と名前が一致した所で、バルは再び進行を開始した。
「さて、まずはリクト。既にユキナ達から聞いたとは思うが、お前にも今回の件の事の顛末を伝えないといけない。さ、頼むぜ」
早速バルはガロウズと"マジカウインガー"のリーダー、黒髪サイドポニーテールの羽有人族のクロウに振った。
話の内容は魔王の配下筆頭のガロウズが武者修行の旅に出た所から始まり、冒険者"マジカウインガー"との出会いや、その後の1ヶ月に渡る冒険者の都での仕事内容に加え、この森で暴れるに至るまでの過程だった。
「雑踏こんな出来事がありまして、今に至る感じですね」
「(え?この人、その仮面の道化師から"マジカウインガー"?を助ける形であの姿に豹変したの!?
今の話を聞くに、そう捉えるしか無いけど。クロウさんだっけ?もめちゃめちゃフォロー入れたり頷いてたりしてたから、嘘偽りは無いんだろうけど)」
俺の中でガロウズの印象が180°変わった。
ロウズ・ハーカを名乗ってた時と全くの別人じゃん!
あのサイコパスと違って、自分を犠牲に冒険者を助けたって。
なんてこった。これは魔王配下筆頭ですわ。
やられた分の怒りを全部ぶつけてやろうかななんてクソみたいな事を一瞬でも思った俺が恥ずかしいんですけど!!(←は?)
「(・・・この子、凄く真面目な顔で考え込んでますね。自業自得とはいえ、ボクの言葉、信用してないのかなぁ……)」
「(リクト君だっけ?この子は本当に暴走したガロウズさんを止めたの?装備もアイテムもほぼ無いに等しいし。にわかには信じられないけど、ウルとパーラはどう思うかな・・・?)」
恥ずかしさの余り、手で顔を俺を見て落ち込むガロウズと首を傾げるクロウ。
俺は顔を覆いながら更に考える。
「(ガロウズ、さん?はその仮面の道化師に『ダークマター』なるモノを付けられて豹変したって話だったけど、そんな暗黒物質、ロウズの時にあったっけ?)」
あ、胸元に変な赤いのあったわ。
確か、"時空間支配"で時間を巻き戻した時に砕けてたな。
アレじゃん!ダークマター、アレじゃんか!!
「(てか待て!この人魔王の配下なんでしょ?しかも筆頭。そんなめちゃめちゃに強い化け物(失礼)を操った仮面の道化師って何?あり得んバケモン!いやこれ、ゲームとかでよくあるラスボスのやることじゃんか!)」
ユキナから聞いた話を今聞いた話に照らし合わせて色々考えてみた。
だが、これって今すぐ解決できる問題じゃなくね?
ふと、正面の席の魔王ディミオスが手をパチンと叩いて周囲の注目を集めた。
「お前さん。一人で色々思考を巡らせるのは良いことだが、今回に限っては一人で解決出来る内容じゃない。その為の会議でもあるんだぜ?」
「ディミオスさn」
「おぉ~流石ディミオス!良いこと言うねぇ」
ディミオスへ感謝を述べようとしたら、クロムが横から茶々を入れた。
「全く、茶化すなよ」
「まぁまぁ。だけど、考えすぎでオーバーヒートしたリクトくんの頭を今のでクールダウンさせれたんじゃない?」
「Wow」
「お前さんなぁ・・・」
今のやり取りを見て、"この世界"の魔王と勇者って本当に仲が良いんだなぁ。そう思う俺であった。
「さて、話がずれたから一度戻そうか。とりあえず、ドラグナー幹部筆頭のガロウズの動向と、この村で暴走するまでの経緯は確認できたかい?」
「あ、ハイ。大丈夫です(凄いなこの人。脱線した場の空気を戻したぞ)」
俺は人知れずバルが凄い人だと気づいた。
「それでだ、リクト。あんたのお陰でソウルフォレストもこの村も住人達も被害がゼロで終えれた。本当に感謝している、ありがとう!」
「い、いえ(そんな、いきなり誉められたら照れるんですけど)」
「でもって次の話題『ガロウズの処遇』の件に移るんだが、あんたがどう思うかを教えてほしい」
「はぁ。・・・は!!??(ちょい!?今なんて!?)」
ガロウズの処遇・・・
つまり、有罪か無罪かを俺が決めろってことでしょ?
そんな大役俺がやっていいのかよ!
「いや、え!?俺が決めていいんですか?ソレ!」
とんでもない大役を回されて戸惑いを隠せない俺。
すると、それを見透かしたようにディミオスは言った。
「あぁ、すまないなぁ。四日前の会議で最終的にはお前さんに決定権を与えるってことで全会一致になってなぁ。
まぁ、それもこれも全部うちの部下がやった事だし、そのせいでお前さんは五日も眠る羽目になったのだからな」
「本当に、申し訳ございません」
頭を下げたディミオスとガロウズ。
「・・・」
俺は戦慄した。
た、確かにそうはなったけども・・・
「はぁ。え、これ、本音を言っても大丈夫ですかね?」
「おう」
会議室内の目が一斉に此方を向く。
「(うおっ!?怖っ)」
怖い↑怖い怖い怖い!!
そんな一斉に睨まないでよ!
(※怯えすぎて皆が睨んでるように見えてる)
「ダークマターを付けられた時の話が嘘か真かなんてその場に居合わせてないのでぶっちゃけ分かりません。だから聞いた話での判断になるんですが、俺は無罪でいいのではと思います」
「っ!?」
「!」
「嘘………」
「本当ですか!?」
「ほぅ」
「成程~」
ガロウズとマジカウインガーの三人、そしてディミオスとクロムの二人は一瞬驚いた顔を見せた。
だが、ディミオスとクロムは途端にニヤリとしたものになった。
「と、というのも。ガロウズさんて、仮面の道化師から"マジカウインガー"さんを助けたんですよね?それに、操られてる時はどうしようもなかったって」
「ぐ、そうっすね。ボクが未熟なばっかりに・・・・・」
ガロウズは今回の件の加害者側になってしまっただけあって、相当メンタルがやられているようだ。
心ここにあらずの放心状態から更に沈んでしまった。
ヤバイ、追い詰める意図はなかったのに・・・
「いやいや、違います違います!責めてるんじゃなくて!ガロウズさんは意識が朦朧とした状態でも仮面の道化師の攻撃的から"マジカウインガー"の三人を命からがら守ったんですよ?自分を犠牲にして他人を守るって凄くないですか!?」
「「「!!!」」」
「それは・・・」
「それに、ガロウズさんがあのクソサイコパスと別人だってよく分かりましたから」
「クソ、サイコパス・・・」
「あれはホント最低でしたよ。でも、結果的に村は元通りで犠牲者は無し。俺は罪だ何だって言う気はありません」
言い終わった瞬間、会議室はドワッと盛り上がった。
「い、言いやがった」
「凄いね。驚いたよ」
「あり得ない…!そんなまさか………!!」
同時に心身の疲労感がドッと流れてきた。
俺はすーっと静かに着席した。
「よかったねガロウズさん!ありがとうリクト君!!!」
「僕からも感謝を!」
「本当にありがとうございます!」
クロウはぐったり座る俺の手を取った。
ウルはガッツポーズをし、パーラは頭を下げた。
その横で、クロウは嬉しさからか力の限り俺のブンブン腕を振る。
誰か!!助けて!!!!
「うわあああああ!!誰か止めてくれぇぇぇ!!!!!!」
「クロウちゃんストップ!!!」
「クーちゃん!リクトくんがぐったりしてるから」
ウルとパーラの二人は礼を言った後クロウを止めてくれた。
「つ、疲れた・・・」
「ご、ごめんね?つい、やりすぎちゃった」
「やりすぎたって……(それにしても。ガロウズさんの事を自分の事のように喜ぶなんて、クロウさんは優しいのか、はたまたアホの子的なアレなのか………)はぁ……」
ため息が漏れた。
「リクトっ、お疲れ様!」
「流石、優しい心の持ち主だな」
ホノカとヒビキが肩に手を乗せた。
「キツかったぁ………と、特に、みんなから視線を貰った時は死ぬんじゃって、思ったよ……!」
「ははは、お疲れさん」
ディミオスは感謝を述べながら俺の頭をわしゃわしゃ掻き分けた。
「本当、復活して早々ありがとうーーおっと!?」
クロムも俺に感謝を伝えようとした時だった。
突如として、光の玉が部屋の中央の机の上に出現した。
会議室が騒然とするなか、クロムは光に話しかけた。
「わぉ、まさか本当に来てくれるとはね」
「それね。数十、いや、数百年ぶりか?ルミナス」
ディミオスが光をルミナスと呼んだ。
するとあら不思議、光の玉は黄色のティアラを被った山吹色のセミロングヘア少女の姿に変化した。
その少女は机に降り立つと、背中から虹のようにきらびやかなひし形状の四枚の羽を生やした。
「(え?何起き!?)」
※リクト君、着いていけない(大丈夫、皆同じよ)
不思議な雰囲気を纏った少女はディミオスを呼んだ。
「ディミオスよ。お主と合うのは151年ぶりかのぅ。息災だったか?」
「勿論だ、俺様は特に変わってないぜ。クロムも同じくな」
「うん、健康そのものさ☆」
「そかそか。て、オイこらクロムよ。お主はこないだの中央王都での会議以来じゃろうが!!」
綺麗に(?)乗り突っ込みをした少女だが、え?これは一体?
「・・・おい、ディミオス、クロム。皆が困っておるぞ?説明してやったらどうかの」
「ちょ、え!?おいおい嘘だろ?」
少女を見てバルは今にも目が飛び出しそうな形相で慌てふためく。
「師匠、この人を知ってるのか?」
「ヒビキお前、知ってるも何も、こいつはこの森でモンスターが発生しない理由ッ(←興奮して噛んだ)ソウルフォレストの管理者ルミナス・ナチュレご本人だぞ!!!」
「こいつ?バルよ。今、こいつと言ったな?」
プンプン怒った素振りを見せたルミナス。
は?ソウルフォレストの管理者!?
「え?」
一同:「えええええええええええええ!??????」
ディミオスとクロム、そしてバル以外の全員が突然現れたルミナスの正体に驚いたのだった。
次回、12話 パーティができて、問題もできた
12/9追記
魔改造2章編始まりました。
これで前々から感じてた違和感が消えました。
多分結構良くなったと思いますよ。
5/9追記
10話と11話、纏めてちょっぴり直しました。
特に10話。勇気&健斗との仲直りまで回想に入れたらだれるな。リクト達の友情の絆を描写したものだから削るわけにはいかない。
どっかに丁度良くおさまる所あるかな……
ありました(11話、今回ですね)
という訳で、冒頭にエピソードを一つぶち込みました。
以上!
以下、"マジカウインガー"三人の紹介を。やーるぞー!!
【れっつごー】
Name:クロウ
種族:羽有人族 属性:光/闇
17歳、157cm、5/4生まれ
好物:クリームシチュー
【所有スキル】
"天翔烏"
・脚力補正 ・視認性向上
・鋼の翼 ・身体強化
【概要】
・冒険者"マジカウインガー"のリーダーで職はファイター。後もう少しで上級職のストライカーになれる。
・羽有人族三姉妹の長女。天真爛漫だがいざって時はとても頼りになる。姉妹の力を合わせてヘルワームというA-級のダンジョンボスを討伐した経歴を持つ。
・トロウというダンジョンボスを討伐する為にメイジビートの森に聳えるメイジタワー跡地-コールドタワー-へ向かうが、その途中に武者修行の旅の途中のガロウズと出会う。
Name:ウル
種族:羽有人族 属性:光/風
15歳、153cm、5/4生まれ
好物:ビーフシチュー
【所有スキル】
"夜翔梟"
・脚力補正 ・視認性向上
・鋼の翼 ・闇耐性
【概要】
・冒険者マジカウインガーのサブリーダーで職は上位職のウィザード。
・羽有人族三姉妹の次女。大人しい性格で僕っ娘。腐体族や死妖族が大の苦手。グロいのも嫌いだが、姉妹の力を合わせてヘルワームを討伐した経歴を持つ。
・トロウというダンジョンボスを討伐する為にメイジビートの森に聳えるメイジタワー跡地-コールドタワー-へ向かうが、その途中に武者修行の旅の途中のガロウズと出会う。
Name:パーラ
種族:羽有人族 属性:光/水
13歳、148cm、5/4生まれ
好物:クリームシチュー(人参多め)
【所有スキル】
"響翔哥"
・脚力補正 ・視認性向上
・鋼の翼 ・常時回復
【概要】
・冒険者"マジカウインガー"のメンバーの一人で、職はタンクとヒーラーを兼任している。
・羽有人族三姉妹の三女。おしとやかでしっかり者だが、稀に年相応の言動をとる。強大過ぎる相手に心が折れそうだったが、姉妹の力を合わせてヘルワームを討伐した経歴を持つ。
・トロウというダンジョンボスを討伐する為にメイジビートの森に聳えるメイジタワー跡地-コールドタワー-へ向かうが、その途中に武者修行の旅の途中のガロウズと出会う。
 




