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婚約者はこの世界のヒロインで、どうやら僕は悪役で追放される運命らしい  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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第22話 薄れゆく記憶に焦る悪役令息

「それにしても今日は凄い人混みだね。何かお祭りでもあるのかな?」


エディットと手を繋いで辻馬車乗り場を目指しながら街の様子を見渡した。


「え…?アドルフ様はご存知ないのですか?今日はランタンフェスティバルですよ?それでこんなに大勢の人達が町に出て買い物をしているんです」


手を繋いでいたエディットが目を見開いて僕を見る。


「え?ランタンフェスティバル?」


何だそれ?初めて聞く祭典だ。


「あの…それって有名なお祭りなのかな?」


「ええ、勿論ですよ。年に一度のお祭で、元々この日は国の祝日にされているくらいですから。最も今年は日曜日と重なってしまいましたけど」


「ふ〜ん…そうなのか」


でも明日は学校で試験がある日だよな……。

振替休日にはならないのだろうか?などくだらないことを考えながら、内心すごく焦っていた。


年に一度のお祭で祝日になるほどのおめでたい日なのに、何故僕にはその記憶が一切無いのだろう?

18年間この世界でアドルフとして生きていたはずなのに、前世の記憶が蘇ってからは、徐々にこれまでのアドルフとして生きてきた記憶が薄れていってる気がする。


まずい!

これは非常にまずいかもしれない!


エディットの手を引いて歩きながら頭の中は軽いパニック状態になっていた。

だから……ちっとも気付かなかったのだ。


「……様。アドルフ様」


エディットに繋いでいた手を何度か引かれ、ようやく僕は我に返った。


「え?あ…。ご、ごめん。何かな?エディット」


立ち止まりエディットを見た。


「はい、あの…アドルフ様。どちらへ行かれるおつもりでしょうか?」


「え?どこって…辻馬車乗り場に行くつもりだよ?」


するとエディットの口から意外な台詞が出てきた。


「もう…通り過ぎてしまいましたけど?」


「え…?あっ!」


振り返ると、辻馬車乗り場はとうに通り過ぎ、いつの間にか僕とエディとは町を流れる運河に掛けられたアーチ型の大きな石造りの橋の上に立っていた。


「ご、ごめん…エディット。ちょっと考え事していたものだから…」


立ち止まると謝った。


「いえ、私ももっと早くお声掛けすればよかったのですが…。あ!ここは……」


不意にエディットが目を見開いて運河を見つめた。


「何?どうかした?」


「はい、ここは…」


エディットが言いかけて僕を見た…次の瞬間、何故か彼女は顔を真っ赤に染めて僕から視線をそらせた。


え?何だ?今の反応…気になる…すごく気になる!


けれど頬を赤く染めて恥ずかしそうにうつむいているエディットに「何故顔が真っ赤なんだい?」とは流石に聞けなかった。

デリカシーの無い男だとは思われたくなかったからだ。


代わりに僕は違う話をした。


「この橋の上から見る町の景色は素敵だね」


「はい、そうなんです。特に夕方から開かれるランタンフェスティバルでは運河に流されるランタンがこの橋の上から良く見えるんですよ。それがとても綺麗で幻想的な光景なんです」


エディットはうっとりした目つきで運河と町の風景を見つめている。


「ふ〜ん…そうなのか…」


エディット…楽しそうだな。ひょっとしてランタンフェスティバルに来るのだろうか?


「エディットはこのお祭りに参加するのかい?」


「はい…一応参加しようと思って運河に流すランタンを買ったのですが…」


エディットはそこで言葉を切ってしまった。


「どうかしたの?」


「いえ、実は以前から一緒に行く約束をしていた友達が…こ、恋人が出来て…その人と一緒にお祭りに行くことになってしまったのです。夜のお祭りに1人で参加なんて両親は許してくれそうにありませんし…。だから内緒で1人で来ようと思ったのですけど、先程…怖い目に遭ったので、どうしようかと迷っています」


エディットは寂しそうだった。


そうか…だからそんなに落ち込んだ顔を…うん?待てよ。


エディットはこのフェスティバルに参加したい。

そして僕もこのフェスティバルに非常に関心を持っている…。


「何だ、それなら僕と一緒にランタンフェスティバルに参加すればいいじゃないか」


「え?ほ、本当ですか?!」


「うん。尤もエディットがいやじゃなければね」


今日の様子だと、エディットは大分僕を恐れなくなっているからな。

もっと今の自分をエディットに知ってもらおう。僕が無害な男であることを理解してもらえれば、最終的に彼女がヒーローと結ばれても追放を免れるかもしれない。


「どうかな?エディット?」


僕は再度彼女に尋ねた。


すると…。


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


エディットは満面の笑みを浮かべて僕を見た――。

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