第113話 お見舞いにやって来た2人
翌日、背中の傷がまだ酷かった僕は主治医の先生に言われた通り学校を休んだ。
この日は、ほぼ1日中ベッドの上で過ごした。
本を読んだり、時々勉強したり……久しぶりに昼寝迄してしまった。
そして午後3時半――。
ベッドの上で本を読んでいると、扉が開けられて母が声を掛けて来た。
「アドルフ、エディットさんとブラッドリーがお見舞いに来ているわよ」
「えっ?!」
エディットとブラッドリーが?!
あまりにも意外な組み合わせにも驚いたけれども、まさか石を投げた犯人かもしれないブラッドリーまでもが一緒に来るなんて……!
驚きすぎて、僕は言葉を失ってしまった。
「どうしたの?アドルフ。ぼんやりして……。もう2人は扉の前まで来ているのよ?」
「あ……。ご、ごめんなさい。少し驚いちゃって」
するとその時――。
「な~んだ、思ったよりも元気そうじゃないか?心配して損したよ」
ブラッドリーが笑顔で部屋の中に入って来た。
彼の背後にはエディットの姿もあった。
そして一番驚いたのは、ブラッドリ―の左腕に包帯が巻かれていたことだった――。
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「昨日は大変だったな?いきなり誰かが石を投げてサンルームのガラス窓が割られて、背中を怪我してしまったんだって?今朝学校でエディットに話を聞かされて驚いたよ」
僕のベッドの傍に椅子を寄せて腰かけたブラッドリーが早速尋ねて来た。
「う、うん……。そうなんだよ……」
《俺はブラッドリーを疑っている》
兄さんの言葉が頭の中に蘇り……僕は視線を逸らせるように頷いた。
「私のせいです……。私を庇ったせいでアドルフ様が怪我を……」
エディットが涙ぐんで僕を見る。
「そんな、エディットのせいじゃないよ!」
「そうだよ、エディットに責任は無い。悪いのは石を投げた奴なんだから」
慌てて首を振ると、ブラッドリーが後に続いた。
ブラッドリー……。
そういう言い方をするっていうことは、やっぱり彼が窓ガラスを割った犯人のはずがないだろう。
第一……。
僕はブラッドリーの左腕をチラリと見た。
「ねぇ、ブラッドリー。その左腕の包帯…‥どうしたの?」
「あ、この腕のことか?実は昨日アドルフの家に行く前に探し物があったから、棚の中を探していたんだ。そうしたら上に鋏が乗っていたのかな?突然落っこちてきて腕に刺さったんだよ」
「え?!そうだったの!」
まさかブラッドリーまで怪我をしていたなんて!
「とっても痛かったでしょうね」
エディットが眉をしかめた。
「それは痛かったさ。血も沢山出たし……だから、昨日はアドルフの家に遊びに行けなかったんだよ。だけど驚いたな~まさかお前まで怪我をしていたなんてさ。だからエディットを誘って一緒にお見舞いに来たんだよ」
「うん、そうだね。でも2人で同じ日に怪我するなんて……すごい偶然だね」
「本当だよな。それだけ俺とお前は仲が良いってことだろ?」
そしてブラッドリーは「ハハハハ」と声に出して笑った。
そんな彼を見て僕は思った。
うん、きっと兄さんの話はただの想像だ。
こんな風に明るく笑うブラッドリーが僕達目掛けて石を投げてくるはずない。
第一、僕とブラッドリーは一番の親友なのだから――。




