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恋とゲームと殺人と  作者: 内海 京
9/20

9

2日目


「おはよう」

「……おはよう」

 眼がシパシパする。目をこすりながら上体を起こすと、智恵美はもう起きていて準備もばっちりだったが、佐藤さんも久住さんもまだ眠っていた。

「早いね」

 あくびを噛み殺しながら言うと智恵美は綺麗に微笑んだ。

「近原くん達は寝ずの番をしてくれていたんでしょ? だったら早く変わってあげないと」

 確かに。

「えっと今何時?」

 スマホで時間を確認しようとする前に智恵美が「7時」と教えてくれた。そう早い時間でもなかった。

「桂川さんは?」

「顔を洗いにいったわ。あおいも洗ってくるといいわ。私は二人を起こすから」

「うん……じゃあ、よろしく」

 言って、鞄の中からタオルと洗顔料を取り出してわたしはトイレに向かうことにした。

 廊下に出ると、昨晩あったテントはなくまた机と椅子も脇に寄せられて三人の姿は無かった。

 そういえば、利波くんはどこにいったんだろ?

 振り返ってラウンジの中を探る、ソファにはいてなかった。

 もう起きてどこかに探索に行ったのかも?

「あら、おはようございます」

「あ、おはよ。桂川さん、えっと……大丈夫?」

「えぇ、ありがとうございます。昨日よりかは大分ましになりましたわ」

 確かに桂川さんの顔色は昨日より全然良くなっている。

「夢であれば、と思い眠りにつきましたけれど……夢ではありませんでしたわね……」

 ふうと頬に手を宛てて残念そうに呟く。

「そうだね……」

 暗くなりそうな雰囲気を振り払うように桂川さんは殊更に明るい声を出して続ける。

「近原さん達が外に出て朝食の準備をして下さっているいようですので、行きませんこと?」

「ふわぁ、至れり尽くせりだなあ、行く行く! 顔を洗ってしまうからちょっと待って」

 スパダリか何かなの、近原くん達は?

 お肌に優しいか優しくないかで言えば、優しくないくらい乱暴に適当に荒っぽく顔を洗い顔を拭いて、桂川さんと一緒に外に向かう。


「あ、扉開いてる」

 廊下を歩いて、途中でラウンジを覗き込むと、智恵美が一生懸命、佐藤さんと久住さんを起こしていた、に外で朝食の手伝いをしてくると告げてロビーまで来ると昨晩固く閉ざしていたはずの扉が大きく開け放たれていてそこから新鮮な空気が風と共に室内に入って来ていた。

「本当ですわね」

「あと、なんかいい匂いがする」

「……本当ですわね、美味しそう」

 わたし達は顔を見合わせて、フフと笑い合い扉の外に出た。

「あ、おはよ」

「おはようございます」

「おはよ、友呂岐くん」

 火の調節をする為か棒状の何かでくべられた薪をつついている友呂岐くんはわたし達に気付くと徹夜とは思えないほどの爽やかな笑顔を向けて来た。

「わたし達、手伝いに来たんだけど」

「あぁ、大丈夫だよ。こっちはオレに任せて! 今日の朝食はホットサンドだよ! あ、お湯湧いてるからモーニングティーはセルフサービスね」

 ウインク一つと、あっちとお湯の方向を指さして友呂岐くんは再び火の調節に目を向け始める。

 スパダリは友呂岐くんだけだったか。

 わたしがそう思うには仕方がなく、残りの男三人は、友呂岐くんが居るところから少し離れたところで椅子に座ってホットサンドに頬張っていたからだ。

「良いのでしょうか?」

「良いんじゃないかな。友呂岐くんの好意に甘えようよ」

 キャンプ飯に詳しくないし余計手を煩わせてしまうかもしれないし。

 まだ友呂岐くんを気にしている桂川さんに「お昼は友呂岐くんの分も頑張ろうよ」と告げると納得したように微笑んだ。

 とまあ、こんなことを言っているけれど、わたし達二人はそんなに料理は上手くない。

 それは昨日のカレー作りで証明されているので、昼食作りにどれだけわたし達が貢献できるかは謎である。


「おはよ」

「おようございます」

 モーニングティーを淹れて、友呂岐くんお手製のホットサンドをご馳走になる為に席に着く。

「おう」

 近原くんが珈琲を淹れた紙コップを軽く持ち上げて挨拶を返してくれる。

「おはよう」

「……おはよう」

 鈴白くんと利波くんも続く。

「近原くんも友呂岐くんも元気だね? 徹夜だったんでしょ?」

 全く疲れを感じさせない二人に思わず感嘆してしまう。

「慣れてるからな」

 ふふんと近原くんは笑う。

「慣れてる?」

「中学の時からテスト前は一夜漬けしてんだ、年季が違うだろ?」

 ハハと笑って珈琲を飲む。

 うーん、これは……徹夜ハイだね。

 いつもの近原くんより明らかにテンションが高い。

「鈴白さんも寝ずの番を?」

 桂川さんが鈴白くんに尋ねる。

「あぁ」

「そうですか。ありがとうございますわ。何か変わった事とか……」

「いや、無かった」

「そうですか」

 桂川さんは視線を落とす。

「ほら、食えよ」

 近原くんがホットサンドを桂川さんの前に押しやる。

「え、これは近原さんの朝食では?」

「俺達はもう結構食ってる」

「そうですか……ありがとうございます」

 桂川さんは笑って、ホットサンドに噛り付く。

「美味しいですわ」

「だろ?」

 ハハと近原くんが笑う。

 うーん、わたしは? わたしのホットサンドは無いの? 

 と言うより、ここに居ていいの? 

 わたしは視線を彷徨わせる。

「夏目さん、」

「夏目さん」

 鈴白くんと利波くんに呼ばれて飛ばしていた意識を元に戻す。

「あ、うん、なに?」

「これ、食べて。おれ、もうお腹いっぱいだし」

 利波くんがホットサンドをわたしの前に置いてくれた。

「いいの? ありがとう」

「……別にいいよ」

 利波くんは視線を逸らす。

 わたしはさっそくホットサンドにかぶりつく。

「美味しい! 友呂岐くんは天才だね」

 パクパクと食べすすめていくとあっという間にホットサンドはわたしの胃の中に消え去っていった。

 うーん、物足りない。

 思いながらも満足げな顔をしつつ、紅茶を飲む。

 だけど視線は友呂岐くんが作ってくれているホットサンドの行方に釘付けだ。

「夏目さん、これ」

 鈴白くんが感情の読めない目つきでわたしの前に自分のホットサンドを置いた。

「え、いいよ、悪いし」

 いいよ、いいよと手を振って固辞する。

 そんな人の物まで手を出すほど食い意地張ってないし……。利波くんのはもらったけど!

 でも彼はお腹いっぱいって言ってたし!

「あと、これ、夏目さんのでしょ? 落ちてた」

 ホットサンドの隣に見覚えのあるスマホが。

「あ、れ?」

 わたしはポケットと言うポケットを触るが、あるべきところにそれはなかった。

「わたしのだ」

「そう、夏目さんの。トイレの前に落ちてた」

 トイレの前と言うと、昨晩のあれか! 

 酔っぱらった自分を思い出して頬が赤くなる。

「あ、ありがとう」

「もう落とさないように気を付けた方がいい」

「うん、そうだね。ここに入れておく」

 そう言って胸ポケットにスマホを滑り込ませる。ここなら無くさない。多分。

 わたしがこれで大丈夫と言わんばかりに大きく頷くと、鈴白くんも納得したかのように頷いた。

 うん、これは先生と出来の悪い生徒の構図だな。

 まあ酔っぱらってスマホを落とすような人間だものね、そんな目で見られても仕方がないか。とは言え……。

「はいはい、どうぞ出来たよ」

 ちょうどいいタイミングで友呂岐くんが出来立てのホットサンドを持ってきてくれた。

「あ、ありがとー、これ、めちゃくちゃ美味しいね!?」

 これ幸いと鈴白くんから友呂岐くんへと視線を移す。

「ほんと? ありがと」

 友呂岐くんは心底嬉しそうに笑う。

「うんうん、お店出せるよ」

「マジで? へへ、オレ店だすの夢なんだよね」

「そうなんだ! うん、通う、通うよ! わたし、毎朝食べにいく」

 握りこぶしを作って力説すると、友呂岐くんは「毎度あり」と言いながらまたホットサンドを作るために火のところに戻っていった。

 もぐもぐと二つ目のホットサンドに噛り付き、紅茶を飲んだところでお腹が少し落ち着いたので会話をすることにした。

「みんな何時ごろからここにいるの?」

「6時だな。利波が起きてきて、腹が減ったから飯でも食うかってなって」

「室内では火を起こせないから、外に出ようか……って」

「食料関係とか調理道具とかはロビーに置いてただろ? カズがそっから必要なものを取り出して、俺達は火を起こして湯を沸かしたり、あと椅子とか机の設置して……した後は、普通に料理出てくるのを珈琲飲みながら待ってたな」

「なるほど、なるほど、ほぼ友呂岐くんが頑張ったってこと?」

「そうとも言うな」

 近原くんは深々と頷く。

「わたしも人のことは言えないけど」

「適材適所ってやつだろ?」

「友呂岐さんはお料理が上手なんですのね、わたくしも勉強しなくては」

 桂川さんが握りこぶしを小さく作っている。

 彼女はお嬢様だから自分で料理することが少ないだけで、一人暮らしで自炊しているのに料理下手なわたしとはそもそも違う。

「わ、わたしも、勉強しようかな?」

 した方がいいかな? と言外に含める。

「適材適所だろ?」

 近原くんは再び言って、目を逸らす。彼は昨日わたしが切ったニンジンを思い出しているに違いない。芸術的に繋がったニンジンを!

「夏目さんは……味付けは下手じゃない、と思うよ。おれ、あの味嫌いじゃないし」

 利波くんがぼそりと言う。

「利波くん!」

 あなたは神か!? 思わず彼を拝もうとすると、鈴白くんと目が合う。

「胃の中に入れば味は関係ない」

 彼は珈琲に視線を落として言った。

 

 

「さてと、これからどうする?」

 智恵美と佐藤さん、久住さんも朝食を終えてわたし達は友呂岐くんにお腹いっぱいにしてもらい、椅子に深々に座ったり、地面に座ったりしていた。

 現在、時刻は8時。

 まだ1日は始まったばかりである。

「俺らは仮眠をとらせてもらう、ま、明るいうちは危険もそうねぇだろと思うけど、男手は利波に任せてる」

 近原くんはググッと大きく伸びをしながら言う。

「そうね、三人は寝たが方がいいわ。利波くん、悪いけれどよろしくね」

 智恵美は利波くんに向かって微笑む。

「……別に、当たり前のことだし」

 ふんふん、なるほど。男4人の中では役割が決まっていたんだ。

 近原くん友呂岐くん鈴白くんが、危険度が高い夜に寝ずの番をして、利波くんは就寝。その代わりお昼間は利波くんが一人で女子を守ってくれる、と。

 うーん紳士。

 さすがに限度が来たのか、近原くんがあくびを噛み殺しながら。

「けど、寝る前に周囲の探索を全員でやっとこう」

「えっと、グループ分けは昨日のでいいよね?」

 異論がでることはなかった。

 昨晩は暗くてできなかった廃ホテル周辺の探索を行うことにした。


「はぁ、これが落ちたつり橋か」

「完全に落ちてるね」

 恐る恐る遠くから覗き込む、つり橋を固定されていたワイヤーが切れている。

「こんなことってあり得るのかしら?」

 桂川さんが小首を傾げる。

「ある程度老朽化していただろうけど……あ、ここだ」

 つり橋のケーブルを固定するコンクリートブロックの近くでしゃがみ込む友呂岐くんの後ろからわたし達も覗き込む。

「綺麗な切り口だね」

「うん、切られてるね」

 三人の間に沈黙が降りる。これでつり橋が老朽化による事故ではなく誰かが、こちらがわ居る誰かが故意に落としたことがわかってしまったのだから。

「こんな太いワイヤーをそう簡単に切れるものですの?」

「道具を使えば……できるだろうね」

「ということは、その、犯人は道具も持ち込んでいたと、言うことになりますわね?」

「用意周到過ぎない?」

 再び沈黙。

 そんな用意周到な犯人がいる、と言うことを考えたくなくて、でも考えてしまって、いたたまれないのだ。

 自分以外の誰かを疑ってしまいそうになるのが、たまらなく嫌な気分に陥る。

「さ、次行こうか!」

 取り直すように友呂岐くんが立ち上がる。

「そうだね」

「えぇ、まいりましょう」

 わたし達は次の場所へ向かうことにした。


 吊り橋から廃ホテルまでは両端は木々に囲まれている。

「森って感じじゃないけど、手入れされてないから何かを探すのは難しそうだね」

 下を見ながら歩いていると伸び放題の枝が顔を狙ってすごく危険だ。

「うーん、見た感じ人が通った感じでもないよね」

「そうですわね。草が倒れてたり枝が折れていたりと言うこともありませんし」

「まあ普通につり橋に行くならこの道を通るか」

「ですわね」

 桂川さんが言い、わたしも頷く。

「次、行こうか」

「うん」

 わたし達はそのまま歩き、廃ホテル前に着く前に右へと曲がる。

 崖の際に沿ってフェンスが立ち並んでいる。

「このフェンスもボロボロだな。二人とも危険だからあまり近づかない方がいいよ。落ちても大変だし」

「そ、そうだね」

「えぇ」

 少し離れた場所をフェンス沿いに歩いていく。

「つり橋まで行かなくてもホテルから出れば崖下に証拠隠滅することが可能だね」

「そうですわね。でもホテルから出ることが困難でしたから」

「確かに」

 昨日1階の扉は全てあけ放たれていた。そこを通ってホテルの外に出るのはかなり勇気が居る行動だ。

 しばらく歩くと茶色になっているけれど竹で出来た仕切りみたいなものが現れる。

「あ、この向うが露天風呂だよ」

「言われてみたら、こういうの露天風呂でよく見る、覗き防止だよね。これって本当に覗けないの?」

 隙間がないかと色々な場所から覗き込んでみる。

「覗けない」

 なんとなく残念な気持ちだ。いや覗き願望があるわけじゃないけど。

「そこは覗けたら問題だし」

 友呂岐くんが苦笑しながら言う。

「こちら側からはこれ以上進むことは無理そうですわね」

「うん、戻ろうか」


 ホテル前まで戻ると、近原くんと智恵美が居た。

「おう」

「チカ」

 近原くんが手を上げる。

「そのうち、鈴白たちが来ると思うからそしたら左側の探索な」

「りょうかい」

 探索すると言ってもみんながホテルから居なくなった隙を見計らって不審者がホテル内に侵入する可能性もあるので、1グループはホテル前で待機しておくことにしたのだ。

「はあ」

 わたしはため息を吐きながらホテル前に設置したあった椅子に座り込む。

「大きいため息だね」

「まあ、そうなるよね。なんか調べれば調べるほど……」

「厄介だよね」

 友呂岐くんの言葉に大きく頷く。

 厄介、そう厄介だ。

「やはりわたくし達の中に犯人が居ると言うことですわね」

 桂川さんは顔を険しくさせた。彼女にとって蝶ヶ崎さんは親友だったのだ。当然と言えば当然か。

「でも、昨日の話ではあんなことを出来る人はいなさそうだったよね」

「そっち方面で犯人を捜すのは無理なのかもね」

「そっち方面?」

「アリバイってやつ」

「となると別方向からのアプローチが必要ですわね?」

 桂川さんが続ける。

「別方向って言うと?」

「動機、かな?」

「動機……って蝶ヶ崎さんを殺したいって思ってる人を探すってこと?」

 友呂岐くんは肩を竦めた。

 なんかそれってかなり殺伐としそうじゃない?

「美貴子さんは敵が多かったので……それでも絞り込めるかどうか……」

「いやいや、そんな殺したいほど憎んでる人なんていない……よね?」

 窺う様に尋ねると二人は黙り込んでしまう。

 えぇ、いるの? 蝶ヶ崎さんを殺したいほど憎んでいる人。

「何を恨みに思うかは人それぞれだからね」

 友呂岐くんには珍しくシニカルな表情だ。

「ま、どちらにしろ今日の話し合いはそっち方面に行くんじゃないかな」

「えっと、やっぱり今日も話し合いする、んだよね?」

「しないではいられないだろうからね」

 確かにしないでおこうとしても、そちらの方にどうしても話題は行くだろうことは簡単に想像できる。

「ですわね」

 桂川さんまでが厳しい顔をしている。

 わたしは昨日のようになるのは嫌だけど、警察が来るのを待ってとかでもいいと思うんだけど。

 でもじゃあ蝶ヶ崎さんの事を忘れて楽しめるかと言えばそうでもない。

 欝々して過ごすのならば、みんなでディスカッションした方がまだ健全かもしれない。

 うん、そうだ、うん。

 なんだか自分に言い聞かせてるみたいになってしまった。

「今日の進行は夏目ちゃんが最適かな」

「え、なんで?」

 進行とか無理、無理、無理なんだけど。

「だって夏目ちゃんが一番、姫と接点がなくて恨み辛みがなさそうなかんじだもん」

「確かにそれはそうですわね」

 桂川さんも大きく頷く。

「変な意味じゃなくてさ。なんで夏目ちゃんは今回の小旅行に来たの?」

「えっ?」

「姫と関係がないでしょ? だから不思議だなって」

「うーん、それは、智恵美繋がりかな? って」

 わたしは思ってたんだけど、確かにこの面子だと浮いて見える。

「ふぅん?」

「え、わたし怪しい?」

「いいえ、わたくし達の中で一番怪しくないと思いますわ。ただだからこそ違和感があると言いますか……」

 桂川さんが言葉を濁す。

「確かに今ここに居るメンバーは何かしら姫と関係があるからねぇ……」

 恐らくそれは良い関係ではないのだろうな、と言うことが友呂岐くんの言い方でわかってしまった。

「あぁ、今夜は地獄だ」

 友呂岐くんが天を仰ぐ。

「わたし、そんな地獄を仕切れる気がしないんだけど?」

 じっとりした目つきで言うと友呂岐くんはハハッと快活に笑った。いやいや笑って済む問題じゃないよ、これは。

「やほーみんな」

 友呂岐くんに抗議しようかと口を開きかけると、久住さんと鈴白くんがやって来た。わたしは慌てて口を閉じる。

「次はここで待ってればいいんだよね?」

「そう、オレ達は左側の散策に行ってくる」

 ばいばいと手を振って、わたし達は探索を再開する。


「こっち側はなんかバックヤードって感じだね」

「厨房とかあったのかな?」

 ゴミ箱がいくつかがある。中をあけてみたけれど何も入っていない。

 ホテル内に入れるだろう扉がいくつかあったが、板が打ち付けられていたりノブが壊されていたりでどれも中に入れないようになっていた。

 しばらく歩くと、まさに森と言わんばかりの深い緑が現れる。

「ここから下山できない……よね?」

「自殺行為だろうね」

 友呂岐くんが言う、先が見通せないほどの木々や草が生い茂っている。確かに用意なしでここから下りるのは困難だろう。

「……」

「見た感じ怪しげなところも無し」

 友呂岐くんが言う。

 わたしと桂川さんは無言で、頷くしかなかった。

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