停止
「エッチ博士!ついにやりましたね!」
ここは悪の科学者エイチ博士の研究所である。
エイチ博士の名前は叡智から来ているのだが、助手ふくめ周りからはエッチ博士と呼ばれている。エッチだからだ。
「ついに時間を停止する発明が完成した!これで女性にいたずらし放題じゃ!」
「博士!ぜひわたしが第一号となりたいです」
助手もまたエッチであった。
「うむ。きみは頑張ってくれたからな。それに、きみの方がこれをうまく使いこなせるだろう」
「やはり、エッチ博士にはきびしい可能性がありますからね」
「そうじゃな。時間とは地層のように常につみかさなるもので、わしらは通常、表面の更新されつづける時間しか認識できない。しかし、この発明した薬を飲むことにより、層となっている時間を認識できるようになるのじゃ。認知することによって、世界の法則はいとも簡単に変わるものじゃ」
「はい。じつに興味深い発見でした」
「そして、時間の層を認識するためには高い集中力を要するわけじゃな。ゆくゆくは容易に認識できるようになればよいが、今は若いきみに頑張ってもらおう。理論上は認知している間だけ、とまった時間の中を動けるはずじゃ!」
「それでは、飲みます」
「うむ。まずは手始めにちかくの店のレジのお金でもとってくるとよい。それで祝杯といこう...」
助手は薬をのみ、深く集中した。世界がおおきくうねり、そして世界はついにとまったのだ。
数分後、助手が入口から帰ってきた。
「おや、帰ってくる途中で集中が途切れてしまったのか?」
「いえ、エッチ博士、いざレジの金をとるぞと思ったときに、緊張で時間停止を解除してしまったのです」
「きみは小心者じゃからな。しょうがない。では、もう一回飲んで女性にいたずらしてくるのじゃ...」
「はい、それでは、飲みます」
助手は薬をのみ、深く集中した。世界がおおきくうねり、そして世界はふたたびとまったのだ。
数分後、助手が入口から帰ってきた。
「おや、やはり帰ってくる途中で集中が途切れたのか?」
「いえ、エッチ博士。いざ女性を目の前にすると緊張してしまい、やはり時間停止が解除されてしまったのです」
「これはイカン!緊張しないよう欲を捨てる修行をする必要があるようじゃな」
「しかしエッチ博士、修行して欲を捨ててしまうとそもそも女性にイタズラする動機がなくなってしまいます」
「なんてことじゃ。どうしてわしの発明はどれも悪事にむかないものばかりなのかのう」