少年、テニスプレイヤー(ジュニア)と遭遇
水分補給などの小休止の間に下のコート傍の椅子で直に観戦してみようとの話になったので下にジャンプしたりして階段を下りるとまだお母さんは、椅子に座って話を続けていた。それを横目にコート脇へと移動する。
「ねえ、おねえちゃんは、おかあさんがなにをあんなにナガ~クおしゃべりしてるかわかる?」
「まあ、多分だけどね。確認だけど、みっくんのお母さんは皇静さんでお父さんは皇慧さんでお祖父さんが皇武さんと池田定時さんでお祖母さんは皇華さんに池田智代さんよね?」
「あれおかあさんのナマエはいったかもだけどおじいちゃんたちのナマエはおしえてないのによくわかったね!」
「まあ有名人だからね、武さんはこの一帯の地主兼、皇古武術研究会と皇式体捌きスポーツ生活向上塾は、一部の人だけどこの周辺の人はお世話になってるからね。」
「華さんも音楽の授業や華道の授業でお世話になってるから知ってるわよ。それに池田さん夫妻は武さんが懇願して自分の敷地を無償で提供して離れを作ったうえで済んでもらってる代わりに古文書などの解読や研究をやってもらってるっていうのは有名だし、なにより静さんは私の学校の先輩でね伝説が残ってるわよ!」と興奮して凄い早口になってる。
「そっそうなんだ。おじいちゃんたちユウメイなんだね。おかあさんのデンセツっておしえてくれるの?」
「お母さんには、私が言ったことは内緒にしてくれるなら教えてあげると言いたいけどこの状況だと絶対私ってばれるから内緒」とウィンクする。
「え~ぜったいないしょにするよ!ボクはくちがかたいから」とお願いするが躱されてしまう。
「まあ、そんなに言うならちょっとだけ教えてあげるけど私が小学校1年生の時に静さんは小学校6年生だったんだけど攫われそうになった私の同級生を静さんが助けたって話よ。細かいことは研究会の会員のおじさんに聞きなさい。その時も私の名前は言っちゃだめだからね?」
「うん。わかった」と勢いよく返事したがこの約束が守られることはなく、1週間後にこのみお姉ちゃんはお母さんに謝っているのを見た後に僕はこのみおねえちゃんにほっぺを むにーん と伸ばされることになるとはまだ誰も知らない。
実際にネット越しにコートを見てみると相手コートのラインは正直よく見えないどころかネットとコート内のネットでベースラインがほぼ見えない感じだった。そしてシングルスの試合が始まっていたが上で見たときよりもボールのスピードやプレーしてる人の動きが速いのが分かる。
そしてボールを打つ際に出る音がポンって感じがパァンと持ってきたペットボトルが震えるような音が鳴り響く。
「ウエでみてるときはよくみえたけどここでみるとハヤイしむこうのコートがアウトなのかよくわからないね」
「まあそれは背が伸びれば見えるようになるわ」とこのみお姉ちゃんが言ったところでコートと通路のネットに青兄ちゃんが放ったサーブがエースとなって突き刺さった。
「うぉっ スゴイゆれた。いまネットがビビビってゆれたよ!」
「そんなにネットの傍で見てるとボール飛んできたらぶつかっちゃうよ?ほら椅子に座ってみようよ」
「もうすこしはなれたらタッテいてもいい?」
「それだったら大丈夫だけどネットから1歩下がって見るのよ」と言われるので大人しく1歩下がって感染する。
「上で見てた時よりみんなの動きが速いでしょ?上から見た方が試合は分かりやすいんだけど、コートを縦から見るとボールの曲がり具合やスピードを感じられて良いでしょ?」
「おねえちゃんのいうとおりだね!こっちのほうがハクリョクがスゴイや。でもシアイはどっちがカッタかわかりづらいけど」
「まあ慣れればこっちでも入ったかどうかとかは見えるようにはなるわよ。だから焦らないでもいいわ」
ボールの速さや上からではそんなに曲がってないと思えるような球でもかなり曲がっており打ち辛いことが分かりテニス選手は恰好良いと思い始めたところでシングルスが終わった。シングルスは実力差から青にいちゃんこと青山くんと天使さんに澤田くんの順で強かったが背が一番小さかったこまりちゃんが5位と大健闘していたしレッドこと赤井くんも8位と予想を覆されたのも面白かった。
「きょうはシングルスもおわったからこれでおしまい?」
「最後にケアっていって今日よく使った場所を怪我しないようにマッサージとか軽い体操をやったら終わりかな」
「ケガにきをつけるのは、サイゴもなんだ」
「そうね。試合後に足をつるとか肉離れしたって話もたまに聞くからね」
「あしをつるのはイタイからやだね。にくばなれはきいただけでもイタそう」
「足つったことあるの?」
「おじいちゃんたちとアサからヨルまであそんだときに1かいだけ」
「あの人たちならやりかねないわね。まあそういうわけで終わった時こそキチンと体を整えないと怪我するから最後のケアの時間は重要なのよ。一度怪我すると怪我しやすくなっちゃう癖ができちゃうから」
「それはおじいちゃんにきいたよ。ケガをかばってへんなタイセイでいるとカラダのバランスがおかしくなるって」
「そうね。まあケアも5分ぐらいだからもう終わるわよ。そしたら挨拶しましょ」
「うん」
コーチと呼ばれた大人に挨拶したお兄ちゃんお姉ちゃんであるみんなが出てくる。
「お姉ちゃん!シングルスの途中からいたのは気づいたけどなんで見てるの!止めてよ!恥ずかしいじゃん!」
「そういわれても私は、仕事でこの子を案内してテニスを教えていただけだし。あっそれとここでは藤井コーチって呼ぶように!」というとこのみお姉ちゃんは僕の両肩に手を置いてみんなの方へと前に突き出した。
「みんな紹介するわね。あの皇さん所の子でね、今日初めてテニスを知ったんだけど上で一緒にテニスを見てたんだけどダブルスの予想を当ててたわよ。見どころがあるから仲良くしてあげてね。それじゃあ自己紹介ね♪」といって注目を集める。
最初はどうしてちびっこがここに?という感じだったが皇という音で見る目が鋭くなりダブルス予想を当てたという辺りで感心した目を向けられた。
「おにいちゃん・おねえちゃん、こんにちは。スメラギ ミカドです。きょうはじめてテニスをしって、みんながプレーしてるとこがカッコイイっておもったのでテニスをはじめたいとおかあさんにキクつもりです」
「お前みたいなチビには無理だな!」と挑発的な態度でレッドが噛みついてくる。こいつのあだ名はバカレッドで決まり。今そう決めた。
「そういうレッドはダブルスでアオにいちゃんとくんでてマケてるし、こまりちゃんにもシングルスで2かいもマケたくせに!」
「なんだと!」と言い返そうとしたところにこまりちゃんが乗ってくる。
「いいこと言った。こんなバカレッドの言うことなんか気にしなくていいぞ!こんな背が少し高いだけで威張ってるやつのことなんか無視でいいぞ無視で」と言われたレッドが反射的に何か言おうとしたら後ろから口をふさがれた。
「そこまでにしろ。みっともない。赤井も子供に噛みつくな。バカにみられるぞ。まあ実際バカだが」
「そうそう青山君の言う通り。さっきみっくんとどのペアが勝つかを予想してね二人ともあたったからお菓子を買って一緒に食べようって誘ったらみっくんがみんなで食べない?って言うからお姉さんがご馳走してあげようかなーって思って下に来たわけよ。みんなはどうする?」とこのみお姉ちゃんが問いかける。
「お言葉に甘えます」とは天使さんで「えっいいの?!お姉ちゃんが珍しく優しい」と謎の感激をしてるのはこまりちゃん。「おっしゃー!ごちになります!」と雄叫びを上げる男子たちで「あっあっありがとうございます」とテンパってる吉田ちゃん。そんな中レッドだけが不機嫌そうな顔をしようとしているが嬉しさを隠せていないので表情がキモチワルイ。
「バカレッド表情がキモッ」っとはこまりちゃんどうやら同じ感想を抱いたようだけど流石にキツく当たりすぎでは?と思ったら叱られてる。
「こまり!いくら何でも言いすぎだよ!それと赤井君ももっと素直にならないとだめだよ」
「はいはい」と言いながらも照れてるから藤井姉妹にはばれているようだ。
「やーい赤くなってやんの。まあバカレッドにはお姉ちゃんは釣り合わないからいいけど」
「うっせ!マセガキ」
「ませてるのはそっちじゃん」と喧嘩ばかりしてるので周りも呆れて二人を置いて歩き出す。
「ふたりともあんまりケンカしてると置いてくよ」とこのみお姉ちゃんが声をかける
「おっとこんなバカと喧嘩してお菓子をもらえないのは時間の無駄だ!帝君一緒に行こう!」と手を握って歩き出したので僕もついていく。
「じゃあ、みんなはロッカールームで着替えてからロビーで集合ね。シャワーも浴びちゃいなよ。汗かいたままだと風邪ひくから。特に男子だけどシャワーを浴びるのはエチケットのようなものだからね!」と言われてみんなは着替えに階段を上って行った。
「みっくんは私とお母さんに近くのスーパーまで買い物に行くことをお母さんに伝えないとね」
「おかあさんもイッショにこないの?」
「それは聞いてみないと分からないわね」
「じゃあはやく、おかあさんにきいてみよう!」
「おかあさん、はなしおわった?」ロビーで話が終わったのか物販コーナーでラケットを眺めている母を見つけて念のため訊いてみる。
「ええ、終わったけど何か良いことあったの? とってもいい笑顔だけど」
「そうなの!えっとねおねえちゃんとテニスみてしょうりよそうしてアタッタからおねえちゃんとかっこよくプレーしてたみんなでスーパーにいってオカシいっしょにたべようって」
「おかあさんもいっしょにいかない?」
「静先輩、さっき私の妹がレッスンやってたんですけどそれを一緒に観戦しててその後妹のクラスの人たちと挨拶してみんなでおやつ食べないかって話になったんですけど大丈夫ですか?」
「このみちゃん 久しぶりというには授業で会うけど、そうね一緒に行くのも楽しそうね」
「じゃあ待ってる間はどのラケットが良さげとかを選んでもらおうかな」
「私で良ければで良いですけど、私のラケットスポンサー契約で自分専用に近いのであんまり市販のには詳しくないですよ?」
「別に良いわよ。すぐ買うってわけじゃないし実際使ってから決めるんだから」
「それならいいですけど、それにしても静さんがテニス始めるのは嬉しいですけどなんで始めようと思ったんですか?ダイエットとか縁遠い存在じゃないですか」
「今までは、子育てとかも有ったけど、この間お義父さんがね帝相手にはしゃいじゃってやりすぎないように何か良いのないかなーって思ったらテニスがよさそうって思ったから来てみたのよ」
「なるほど。納得しました。静さんはラケットの重さを利用するタイプだと思うのでユーネックスのVシリーズの100とか良さげと思いますよ。まあ後はそのシリーズを使ってみてですかね。他は確かウィルコットのプログレス97とかですかね。トップヘビーで重めでフレームサイズは薄めの方が向いてそうですけどそこは試してみるしかなさそうですね。後で私の調整の時間に色々揃ってるラケット使って試していきません?」
「あら、いいの?それなら楽しみにしておくわ。それで今階段下りてきた子たちが一緒に行く子たち?」
「そうですね。まだ男子しか降りてきてないですけど。女子はあと5~10分くらいですかね」
「じゃあ挨拶は全員揃ってからで良いわね。ガットは何が良いの?」
「まあ値段はしますけどコスパは良いのでナチュラルが良いと思いますよ」とそんな感じでメーカーとかの話をしていたら女性陣も降りてきた。ちなみに僕は、ガットの張替えを行っているのを横で見学していた。