少年 テニスという存在を知る
子供の頃は誰しもが体を動かすことを気持ちがいいと感じるのではないだろうか?
少なくとも4歳の子供である自分には、長い時間椅子に座っていなさいと言われても退屈で足をぶらぶらさせたりして体を動かしたくなるものだ。そして程度の差こそあれ10分も動かないのは苦痛である。
そんな中、今日は母親である静と出かけるからと三日も前から楽しみにしていたが、母静は車で20分ほど家から離れた場所にある大きな建物の入り口付近の広場(実際にはロビー)でよく知らない人と体感30分ほど(実際には15分)も話し込んでおり途中で別のお姉さんから飴玉を貰ったりして暇をつぶしてはいたが話がなかなか終わる気配もないのでロビーを散歩することにした。
「ひまだからサンポしてきていい?」
「あと少しで終わるからもうちょっといい子で待てない?」
「だってひまだよー。はなしながいし、なにいってるのかさっぱりわからないもん」
「あっそれなら私が案内するので、大丈夫ですよ。一緒に散歩いこっか?」
そこでさっき飴玉をくれたお姉さんが案内してくれるという有り難い申し出があった。
「うん。いくー。ありがとうお姉さん」
と即決してロビーを探検することになった。
ロビーを探検していると色とりどりの沢山の大きい靴が並べてあることに気付きさっそく質問してみる。
「なんでここには、たくさんのくつがあるの?ここはくつやさん?」
靴屋は先月行ったばかりなのにおかしいと思いながら訊いてみる。
「これは、テニスっていうスポーツをやる時の靴だから普通の靴屋さんにはないからここで売ってるんだよ~。ここはテニスを教える場所だから」とどこか気が抜けて優しげな声で教えてくれる。
「テニス?」
「そう、テニス。テニスはねー、そろそろ奥のコートで教室が始まるからそしたら見てみよっか。その時にルールとかも教えてあげる」
「わかった」
「じゃあこのかべにあるヘンなかたちのボウは?」
「それはラケット。この壁にあるやつはガットっていう網を張ってないけど、本当はその網でボールを打つスポーツなんだ」
「ボールはオレンジときみどりがあるけどどっちをつかうの?」
「オレンジは子供用で、黄緑のが大人用だね。オレンジの方が柔らかいからぶつかっても痛くないし軽いから持ちやすいんだよ。」
「そっかイタクないのはウレシイね」
「こっちのテープとかちいさいアメやひもみたいなのはなににつかうの?」
「うーん?飴? あ~この小っちゃいやつね。これは、振動止め。上手くなるとボールの力が強くなるから手が痺れないようにする為の道具で、テープはラケットが滑らないようにする為のものだね」
「あっ そろそろレッスン始まる時間だからテニス見に行こうか。そういえばボク名前なんて言うの?私は藤井このみ。 このみお姉ちゃんて呼んでね」
「わかった。このみおねえちゃん。ボクはすめらぎ みかど。みかどかみっくんってよばれてる」
「じゃあみっくんでいっか。それでコートの後ろにある椅子から見るのと一階上の高いところから全体が見える場所のどっちでみっくんは見たい?」
「たかいほう!」
「じゃあ行こっか。階段上るから手つないでいくよ」
「うん」
「おかーさん、うえでテニスみれるからおねーさんとテニスみてくる」
「分かったわ。おねーさんの言うことをよく聞いてね」
「わかってるよ いこ おねーちゃん」
「慌てなくてもまだ始まらないよ。それじゃあ私が見てますので何かあったら一つ上のバルコニーでテニスを見てますので」
「ありがとうございます」