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とりあえず喧嘩と入学

日本流古武道の道場に入門してから二年、ひたすらボコボコにされた。胡散臭い関西弁の男は師範代だった。といっても門弟はラギンの他には五人だけ。どうやって運営できているのか謎だったが、実践向きの言葉は嘘ではなく本当に傷だらけになって鍛えられた。何度も三途の川を渡りかけて生還した。

転生者と思しきオーナーには未だに会えていない。


「ラギンはんもそろそろ帯付けてええ頃ですな。初級卒業ですわ」

「やっとか…。初級から上がるのに二年かかるって、どんだけハードモードだよ」

「いやいや、普通は半年くらいやで?」

「え?そうなの?」

「まぁラギンはん若いしお金もってそうやから、引っ張ったら金ずるなるかな思うてな」

あっけらかんと言う師範代。その名はポーキン。呆れる他ないが、ラギンも薄々感じていてので大して気にはしない。

「5歳だったしなぁ。腕立て伏せすらまともにできなかったんだし、しょうがないよな。そもそもこの道場、年齢とか関係なく強くないと昇級しないし」


二級は薄いクリーム色の帯だった。ただし帯と呼ばれてはいるが、実際はただの布である。我が道場に道着はない。普通に皆いつもの私服で練習する。よって柔道や空手のような帯もなく、帯と呼ばれる布をもらって体のどこかに巻いておくだけ。しかもそれも別に巻いても巻かなくても良いとされている。だから余計に昇級とか言われても感慨がないのだ。


帰り道、ショートカットのわき道で若いチンピラ3人に囲まれた。

「おいガキ、良い服着てるな。下着以外全部置いてけ」

カツアゲどころか追い剥ぎであった。年の頃は15、16才だろうか。三人とも頭の横を刈り上げて前髪を顔の前に長く垂らしている。ダボダボのズボンのポケットに両手を突っ込んだままで、やや巻き舌。これがこの世界の不良ならちょっとセンスは理解できない。

「おい何黙ってジロジロ見てやがんだ。とりあえず財布出せコラ」

中で一番背の高い男がラガンに一歩近付いてすごんできた。

「君、女にもてなさそうだねぇ」

「はぁ?何だとコラ…」

眉をしかめて寄ってきた顔に頭突きした。ラガンの方が30センチは低かったので、ジャンプするとちょうど鼻の下あたりを下から突き上げるように額が強打した。鼻骨が砕ける感触があった。十分狙って当てたのでラガンの方にあまり痛みはない。

男は吹き出した鼻血と口からの出血を押さえながらよろめいて、白目をむいて横の壁へ倒れ込んだ。

「なっ!?」

驚いて固まっているもう1人の男の腹に、跳び蹴りを食らわした。ポケットに手を入れたままだった男は蹴られても手を抜けず、間抜けに吹っ飛んで後ろのゴミ入れにしこたま頭を打ち付けて気絶した。あと1人。

「お前、何しやがる」

一応は身構えていたが、道場の先輩達に比べると案山子のようなものだった。

「そこ!」

気合いと共に繰り出した正拳が最後のチンピラのアゴを砕いた。なぜアゴを狙ったかというと、ただ単にしゃくれていて気になったからである。深い意味はない。正面から打ち抜かれてアゴは割れて外れた。

「あばばば、えぶぁ、えおう」

よだれを垂らす顔のコメカミをハイキックで捉えた。スパンっと小気味良い音がして、3人目も倒れた。一瞬で意識を失ったので危険な感じに顔から前のめりに倒れていったが、ラギンは特に気にしなかった。死んでも自業自得。この世界にも警察ににた組織はあるが、前世とは比べものにならないほど雑である。町のチンピラが何人死んだところで捜査などしない。有力者から訴えがあれば動くが、それも状況証拠だけで逮捕する。

「あっけないな。とりあえずもらえるものもらっとくか。からまれた慰謝料ね」

全員の財布から現金と身分証を抜き取った。現金はポケットに入れ、身分証は一通り目を通してから道ばたに放り捨てた。


母親はアルコールが抜けて家に帰ってきた。それが本来の性質だったのか、以前と比べて驚くくらいにおとなしくなって。遺産の蓄えにはまだ余裕があったが、母親は働きに出た。

そしてラギンは学校へ入学することになった。成人が早い世界なので、前世での小学校にあたる学校が3年間、中学校が3年間、義務教育はそれで終わりである。その先の教育機関もあるにはあるが、進学率は低い。大抵は義務教育を終えた13才で世に出るとりあえず喧嘩と入学

日本流古武道の道場に入門してから二年、ひたすらボコボコにされた。胡散臭い関西弁の男は師範代だった。といっても門弟はラギンの他には五人だけ。どうやって運営できているのか謎だったが、実践向きの言葉は嘘ではなく本当に傷だらけになって鍛えられた。何度も三途の川を渡りかけて生還した。

転生者と思しきオーナーには未だに会えていない。


「ラギンはんもそろそろ帯付けてええ頃ですな。初級卒業ですわ」

「やっとか…。初級から上がるのに二年かかるって、どんだけハードモードだよ」

「いやいや、普通は半年くらいやで?」

「え?そうなの?」

「まぁラギンはん若いしお金もってそうやから、引っ張ったら金ずるなるかな思うてな」

あっけらかんと言う師範代。その名はポーキン。呆れる他ないが、ラギンも薄々感じていたので大して気にはしない。

「5歳だったしなぁ。腕立て伏せすらまともにできなかったんだし、しょうがないよな。そもそもこの道場、年齢とか関係なく強くないと昇級しないし」


二級は薄いクリーム色の帯だった。ただし帯と呼ばれてはいるが、実際はただの布である。この道場に道着はない。普通に皆いつもの私服で練習する。よって柔道や空手のような帯もなく、帯と呼ばれる布をもらって体のどこかに巻いておくだけ。しかもそれも別に巻いても巻かなくても良いとされている。だから余計に昇級とか言われても感慨がないのだ。


二級の安物臭い布と昇級祝いという謎のキーホルダー(たこ焼き型)を適当に鞄に放り込んで、家路につく。途中、ショートカットしよう通ったわき道で若いチンピラ3人に囲まれた。

「おいガキ、良い服着てるな。下着以外全部置いてけ」

カツアゲどころか追い剥ぎであった。年の頃は15、16才だろうか。三人とも頭の横を刈り上げて前髪を顔の前に長く垂らしている。ダボダボのズボンのポケットに両手を突っ込んだままで、やや巻き舌。これがこの世界の不良ならちょっとセンスは理解できない。

「おい何黙ってジロジロ見てやがんだ。とりあえず財布出せコラ」

中で一番背の高い男がラガンに一歩近付いてすごんできた。

「君、女にもてなさそうだねぇ」

「はぁ?何だとコラ…」

眉をしかめて寄ってきた顔に頭突きした。ラガンの方が30センチは低かったので、ジャンプするとちょうど鼻の下あたりを下から突き上げるように額が強打した。鼻骨が砕ける感触があった。十分狙って当てたのでラガンの方にあまり痛みはない。

男は吹き出した鼻血と口からの出血を押さえながらよろめいて、白目をむいて横の壁へ倒れ込んだ。

「なっ!?」

驚いて固まっているもう1人の男の腹に、跳び蹴りを食らわした。ポケットに手を入れたままだった男は蹴られても手を抜けず、間抜けに吹っ飛んで後ろのゴミ入れにしこたま頭を打ち付けて気絶した。あと1人。

「お前、何しやがる」

一応は身構えていたが、道場の先輩達に比べると案山子のようなものだった。

「そこ!」

気合いと共に繰り出した正拳が最後のチンピラのアゴを砕いた。なぜアゴを狙ったかというと、ただ単にしゃくれていて気になったからである。深い意味はない。正面から打ち抜かれてアゴは割れて外れた。

「あばばば、えぶぁ、えおう」

よだれを垂らす顔のコメカミをハイキックで捉えた。スパンっと小気味良い音がして、3人目も倒れた。一瞬で意識を失ったので危険な感じに顔から前のめりに倒れていったが、ラギンは特に気にしなかった。死んでも自業自得。この世界にも警察組織はあるが、前世とは比べものにならないほど雑である。町のチンピラが何人死んだところで捜査などしない。有力者から訴えがあれば動くが、それも状況証拠だけで逮捕する。

「あっけないな。とりあえずもらえるものもらっとくか。からまれた慰謝料ね」

全員の財布から現金と身分証を抜き取った。現金はポケットに入れ、身分証は一通り目を通してから道ばたに放り捨てた。全て道場の先輩から教えられたことだ。悪に容赦は無用。金がない時は良い服着て裏通りを歩けば、財布が声をかけてきてくれる。

「ちょうど良いや。母さんにお土産でも買うか」


母親はアルコールが抜けて家に帰ってきていた。それが本来の性質だったのか、以前と比べて驚くくらいにおとなしくなって。遺産の蓄えにはまだ余裕があったが、母親は働きに出た。


それから7年が経ち、ラギンは小学校を卒業した。この世界では、前世での小学校にあたる学校が7年間、中学校が3年間、義務教育はそれで終わりである。その先の教育機関もあるにはあるが、進学率は低い。大抵は義務教育を終えた17才で世に出る。


「ラボワール学院か。あまり良い噂は聞かないな。良家の子供は都心にある私立の学校へ行くらしいしな。つまり、僕の不良デビューには最適か」

17歳のラギンは独りごちて学院の門をくぐった。

「ラボワール学院か。あまり良い噂は聞かないな。良家の子供は都心にある私立の学校へ行くらしいしな。つまり、僕の不良デビューには最適か」

ラギンは独りごちて学院の門をくぐった。

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