バスのなかで
短め
バスが出発するやいなや、御影くんは難しそうな本を読みだした。
会話が止まることに焦ったのか、百田さんが私たちに聞いたことと同じことを御影くんにも聞いたのだが、
「あの・・御影くんはご兄弟とかって・・いらっしゃるんですか?」
「いない」
「・・そ、そうなんですか。私と一緒・・ですね」
「そうか」
この通り、御影くんは最低限の返事しかしない。
だから結局すぐに会話が止まってしまい、百田さんがあわあわしだす。
二席分挟んで、わざわざ御影くんに話しかけている彼女には失礼だが、健気な姿がかわいい。
助けてあげようか。
「百田さん、御影くんは本に集中しているみたしだし、静かにしておいてあげよう?」
「あぅ・・ごめんなさい、御影くん」
「気にしていない」
「それと、理子でいいですよ。風間さん。敬語やめてくれて、ありがとうございます」
こういう細かいところに気がつくのは、この娘の美点なんだろう。でも、敬語癖が嘘だとバレるのはあまりいいことじゃないし、これからはもっと気を付けていこう。
「そう?じゃあ私も詩織でいいよ。改めてよろしくね、理子ちゃん」
「はい!よろしくお願いします、詩織ちゃん」
理子ちゃんはいい娘そうだし、これからも仲良くしていけそうだ。
そんなことを思っていると、前から声がかかった。
「じゃ、あたしのことも桜良と呼んでちょうだい。いえ、むしろ呼びなさい。理子」
「えっ・・あわわわ」
「もう、突然声をかけてこないでよ、桜良。理子ちゃんがビックリしているじゃないの」
「む・・ごめんなさい」
「い、いいんですよ桜良さん」
「じゃ、そういうことでよろしくね」
彼女との付き合いはとても長いが、未だにこの嵐のような勢いには振り回されることが多い。
それも含めて、私は彼女が好きだが。
新しい友人ができ、桜良の調子がいつも通りなことを確認できたこのときにはすでに、甲本くんは夢の中だった。
繋ぎ的な話。ヒロインは揃ったかもな(本当に揃ったかどうかは闇のなか)
活動報告更新しました。
いつになったら異能バトルするんだろ