傷心
少し短い&遅れました。
すみませぬ。
半ば放心状態のまま、ゴールデンウィークが過ぎていった。
部屋にこもったまま、何に対してもやる気を見せない僕に、同部屋の源はもちろん、ケンさんや桜良も心配し、世話を焼いてくれた。
しかし、僕は何も語れない。
共感してもらうことも、慰めてもらうことも許されない。
休みも終わり、部室に来たとき、僕はそんな状態にあった。
「部長、お話があります」
「ん? 何かな? ちょっと顔色もよくないみたいだけど」
「前に言っていた兼部の件、正式に認めていただきたくて」
間違った方向に、空回りしているかもしれない。
でも、なにもしないで守られているというのは、とても嫌な気分だった。
「月1のビブリオには参加できるんだよね?」
「はい。先方にも許可をもらってきました」
「じゃあいいよ。それで、どこと兼部するのかな?」
「えっと、剣道部にしようかと」
「そりゃまたずいぶん急だね」
急に見えるのは当然だし、普通の言い訳も考えられていない。だから、なぜ兼部を決めたかなどははぐらかし、僕は文芸部室を後にした。
体験として素振りをやらせてもらい、その日の部活は終わった。
僕としてはいろいろな焦りがあり、もっとはやく強くなりたかったのだが、部活としてなので仕方がないと割りきり、帰路につく。
これまでのように皆と帰るわけでもなく、1人で駅への道を歩いていると、声をかけてくる人がいた。
「あの・・っ! 甲本くん、帰りですか・・?」
「理子さん?」
「よかったら・・途中まで、一緒に帰りませんか・・? 嫌だったら・・大丈夫なので・・!」
「そんなことないです。帰りましょうか」
今読んでいる本や、ゴールデンウィークのことなど、雑談をしながら電車に乗る。
時折気遣わしげな視線を送ってきたり、心配するような『匂い』をさせる彼女から目をそらし、僕は表面だけの笑顔を作り続けた。
僕の降りる駅まであと少しとなって、理子さんが意を決したように切り出してくるまでは。
「甲本くん・・! 無理、しないでください・・!」
「無理、ですか?」
「今・・甲本くんはすごく弱っている・・気がします。上手く言えないんですけど・・抱え込んじゃダメです・・!」
きっと、いつもの僕なら、ここで改めて笑顔を見せて、心配しないようにとなにか言葉をかけるのだろう。
でも、今の僕にはそれができなかった。
無理矢理笑顔を浮かべようとして失敗したような、酷い顔をしていたと思う。
浮かんでくる言葉は、意図せず攻撃的で、気がついたときにはすでに、理子さんは涙を浮かべていた。
「僕の心に、近寄らないでください」
電車から降り際に、自分の口から出たその言葉が、一層僕の心を抉っていった。
ーーーーー
「おい、勇太」
「・・なんですか?」
「本当に大丈夫か? マジで顔色悪ぃぞ?」
「・・大丈夫ですから、本当に」
心配してくれる親友にもなにも告げず、僕は帰ってすぐに床についた。
しかし、すぐに眠ることができるはずもなく、様々なことが脳裏に浮かんでは消えていった。
碧は、今頃なにをしているのだろうか。
次第に、僕の思考は鈍っていき、すがるように碧との思い出に心を寄せた。
最愛の妹がいない間に、僕はどうしてこんなにも弱くなってしまったのだろう。
彼女のことを考えているうちに、僕は薄いまどろみのなかに沈んでいった。




