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ただ、平和な毎日を過ごせるだけで  作者: リア狂
第二章 非日常
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傷心

少し短い&遅れました。

すみませぬ。

 半ば放心状態のまま、ゴールデンウィークが過ぎていった。

 部屋にこもったまま、何に対してもやる気を見せない僕に、同部屋の源はもちろん、ケンさんや桜良も心配し、世話を焼いてくれた。

 しかし、僕は何も語れない。

 共感してもらうことも、慰めてもらうことも許されない。

 休みも終わり、部室に来たとき、僕はそんな状態にあった。


「部長、お話があります」

「ん? 何かな? ちょっと顔色もよくないみたいだけど」

「前に言っていた兼部の件、正式に認めていただきたくて」


 間違った方向に、空回りしているかもしれない。

 でも、なにもしないで守られているというのは、とても嫌な気分だった。


「月1のビブリオには参加できるんだよね?」

「はい。先方にも許可をもらってきました」

「じゃあいいよ。それで、どこと兼部するのかな?」

「えっと、剣道部にしようかと」

「そりゃまたずいぶん急だね」


 急に見えるのは当然だし、普通の言い訳も考えられていない。だから、なぜ兼部を決めたかなどははぐらかし、僕は文芸部室を後にした。


 体験として素振りをやらせてもらい、その日の部活は終わった。

 僕としてはいろいろな焦りがあり、もっとはやく強くなりたかったのだが、部活としてなので仕方がないと割りきり、帰路につく。

 これまでのように皆と帰るわけでもなく、1人で駅への道を歩いていると、声をかけてくる人がいた。


「あの・・っ! 甲本くん、帰りですか・・?」

「理子さん?」

「よかったら・・途中まで、一緒に帰りませんか・・? 嫌だったら・・大丈夫なので・・!」

「そんなことないです。帰りましょうか」


 今読んでいる本や、ゴールデンウィークのことなど、雑談をしながら電車に乗る。

 時折気遣わしげな視線を送ってきたり、心配するような『匂い』をさせる彼女から目をそらし、僕は表面だけの笑顔を作り続けた。

 僕の降りる駅まであと少しとなって、理子さんが意を決したように切り出してくるまでは。


「甲本くん・・! 無理、しないでください・・!」

「無理、ですか?」

「今・・甲本くんはすごく弱っている・・気がします。上手く言えないんですけど・・抱え込んじゃダメです・・!」


 きっと、いつもの僕なら、ここで改めて笑顔を見せて、心配しないようにとなにか言葉をかけるのだろう。

 でも、今の僕にはそれができなかった。


 無理矢理笑顔を浮かべようとして失敗したような、酷い顔をしていたと思う。

 浮かんでくる言葉は、意図せず攻撃的で、気がついたときにはすでに、理子さんは涙を浮かべていた。


「僕の心に、近寄らないでください」


 電車から降り際に、自分の口から出たその言葉が、一層僕の心を抉っていった。


 ーーーーー


「おい、勇太」

「・・なんですか?」

「本当に大丈夫か? マジで顔色悪ぃぞ?」

「・・大丈夫ですから、本当に」


 心配してくれる親友にもなにも告げず、僕は帰ってすぐに床についた。

 しかし、すぐに眠ることができるはずもなく、様々なことが脳裏に浮かんでは消えていった。


 碧は、今頃なにをしているのだろうか。


 次第に、僕の思考は鈍っていき、すがるように碧との思い出に心を寄せた。

 最愛の妹がいない間に、僕はどうしてこんなにも弱くなってしまったのだろう。

 彼女のことを考えているうちに、僕は薄いまどろみのなかに沈んでいった。

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