守護する者たち
今日から交互更新かも
どろり、と霞む意識のなか、ふいに唇の辺りに暖かさを感じた。
「うっ・・」
「気がついた!? 良かった・・」
夢を見ているのかもしれない。
僕は風間さんに膝枕をしてもらって・・
「っ!? 風間さん!? 何故?」
「問答している余裕はない。逃げるぞ、甲本」
どうやら、御影くんもいるらしい。
全く状況は分からないが、さっきのアレは・・
「風間さん・・さっき・・」
「っ! な、なんでもないよ?」
やっぱり、キで始まるアレだろうか。風間さんの顔は赤い。
全く実感がない上に、何故彼女にキスされるのか理解できず、僕は気恥ずかしさよりも混乱で、何も言えなかった。
夜闇のように見えたのは、黒装束の人間だったみたいだ。
彼らはなんの目的か、僕に攻撃を仕掛けてきているようだったが、悉く御影くんが捌いていた。
「それ、なんなんです!?」
「他言無用で頼む」
彼はいくつにも分裂し、時折姿を一瞬消しながら戦っている。
とても人間業には思えず、さらに現実感が薄くなっていく。
いっそのこと全部夢で、覚めたらなにもかも忘れていた、などという展開ならいいのに、と思いながら、僕は風間さんに手を引かれるまま、夜の街を疾走した。
「風間、ここらへんでやるぞ」
「わかった。甲本くん、止まるよ!」
市街地から少し離れた工業地帯まで連れていかれた僕は、いきなり急制動をかけられ、躓きかけた。
「やるって、なにを!?」
「お前は見ているだけで良い。やるぞ!」
立ち止まった僕らに向かって飛びかかってきた黒い影は、見えない壁に衝突して倒れる。
止まらなかった敵が大回りして近づいてこようとした瞬間、膨大な光が僕の瞼を灼いた。
風間さんが咄嗟に手で覆ってくれたから、酷くはなっていないが、それでも強すぎる光が脳にこびりついている。
当然いきなりの攻撃に倒れたものは多かったが、何人かは動いている。
真っ黒なゴーグルのお陰のようだが、あれでは視界が制限されてしまうだろう。
事実、残った人たちは、死角からナイフを突き出した御影くんに、無力化された。
「殺したんですか・・?」
「いや、まだ生きている」
「よかった・・」
襲ってきたのは向こうだったが、クラスメイトが人殺しになるのは怖すぎる。
少し安心したが、すぐに目を背けるはめになった。
確かに死んではいないようだが、倒れている人たちの出血は一様に酷いものだったからだ。
「・・これ、放っておいていいんですか?」
「大丈夫だ。敵の回収班がすぐに来る。さっさとここを離れるぞ」
御影くんはそう言ったが、浮かない顔をしていると、風間さんが彼らのところへ近づいていった。
彼女が手をかざすと、たちまち散っていた血液がきれいになくなり、傷が治ったように見えた。
「それ・・」
言いかけて、やめた。
ここを離れなければならないのは当然だろうし、なにより彼女が、悲しさの『匂い』を微かにさせていたから。
ーーーーー
「巻き込んだからには話す」
事情を聞くと、しばらく思案した後、御影くんはそう答えた。
「ここで話すことは全て他言無用だ。それはいいか?」
「わかりました」
「まず、俺たちは異能力者だ」
「異能力・・」
それは、漫画やアニメに出てくる、超能力や魔法といった物のことだろうか。
「さっきの分身だったり、見えない壁がそうなんですか?」
「その通りだ。そして、俺たちはその力を狙われている」
「でも、僕にはなにも、特別な能力はありませんよ?」
「お前にもあるだろう? 嗅覚に関する力が」
それは、彼にはしていないはずの話だ。
ならば、風間さんが彼に言ったのだろう。別に、積極的に隠しているわけではないから良いが。
「ごめんね、御影くんが、甲本くんも異能者かもしれないって言うから、話しちゃったんだ・・」
「いえ、いいですよ。それよりも敬語は?」
「あっ・・」
少しだけ、悲しい気分になった。
『匂い』が分かることを話されたことよりも、敬語癖が嘘だったことが。
「でも、2人のものと比べると貧弱ですね、僕のは」
「恐らく、それは残滓のようなものだろう。本命は覚醒していないのではないか?」
「・・襲われた僕を、2人が助けてくれたのは?」
「張り込み、してたの。甲本くんが襲われるかもって思って」
僕は、守られていたということか。
一目惚れをした女の子と、その彼氏に。
なんと情けないことなのだろうか。
風間さんにキスをされたかもしれない、などという幻想は、すでに僕の頭から消え去っていた。
「ありがとうございました。守っていただいて・・それじゃあ、僕はもう帰りますね」
「あっ、ちょっと待って・・」
彼女の制止も聞かず、僕は足早に源と桜良の元へ戻った。
2人のかけがえのない幼馴染みが、唯一の救いとなってくれるような、そんな気がして。
古本屋デートの回を、少し修正しました。




