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ただ、平和な毎日を過ごせるだけで  作者: リア狂
第一章 日常
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閑話 合宿の夜に

 オリエンテーション合宿二日目の夜。

 初日以上に濃かった一日の終わり、遊びたい盛りの高校生たちが、大人しく消灯時間を守るわけもなく。

 男子の部屋でも、女子の部屋でも、教師たちに隠れて騒がしい「祭り」が行われていた。


 ーーーーー


「ねぇねぇねー、風間さん、詩織ちゃんって呼んでもいーい?」


 やたらとハイテンションなクラスメイトが話しかけてくる。私としても、いろいろな人と仲良くなりたいと思っていたし、願ったり叶ったりではある。


「はい、いいですよ」

「やったぁ! じゃあ、私のことも香苗って呼んでね!」


 香苗ちゃんを皮切りに、多くの女子に「詩織ちゃん」呼びが浸透した頃、他愛もないお喋りが、徐々に方向性を得ていった。


「詩織ちゃんはさー、御影のどこが好きになったのー?」

「っていうか意外だよね! 新入生総代と、根暗の御影が付き合うなんてさ」

「超速いよね。まだ一ヶ月くらいなのに」


 根暗の御影、らしい。確かに根暗だが。

 次々と、御影くん関連の質問が投げ掛けられる。予想はしていたので、少し恥ずかしいが、普通に答える。


「ええと、ああ見えて意外と優しいところとか・・ですかね?」

「告白みたいなことは向こうからです。まあ、成り行きの面が強かったんですが・・」


 全部が全部嘘というわけではない。孤独に戦い続けてきた彼のことを格好いいと思わないわけではないし、素っ気ないが、質問すればちゃんと答えてくれるところなどは、好感が持てると思う。


 しかし、しかしだ。

 それを補って余りあるほどの口下手、説明下手、人の都合を考えられないところ、鬼畜と、アレなところがたくさんだ。

 芝居でそういう関係になるのはいいが、本気にはならないかな、といったところである。


 私の話を聞いた皆は、きゃあきゃあ言って囃し立てた。先生に聞こえると思うのだが、そこらへんは良いのだろうか。


「ちょっと、起きてるのはいいけど、あんまりうるさくしない方がいいわよ」

「えー、せっかくの合宿なんだし、委員長も騒ごうよー」

「・・あんまり騒ぐと先生が来るわよって話」


 桜良とて、真面目な方ではあるが、堅物というほどではない。だから会話にもちょくちょく加わっているわけなのだが、彼女には学級委員という立場がある。

 ゆえに、騒ぎすぎを抑制するくらいのことは言うべきと判断したのだろう。


 桜良には合宿の間いろいろしてもらったし、私もそれに協力することにする。


「桜良の言うとおりだと思いますよ。せっかくの楽しい時間を先生に邪魔されるのも嫌じゃないですか?」


 少しいたずらっぽく微笑む。

 そこそこ、演技には自信がある方だ。


「うーん、それもそうかもねー」

「確かに。もう少しボリューム落とそっか」


 有言実行、音量を落とした皆は、何人かで車座になって、お喋りを再開した。


「ありがとね、詩織」

「気にしないで。誤魔化しに協力してもらってるんだから」


 私と桜良が話していると、理子ちゃんがやってきた。


「・・あの、私も・・入れてもらえますか・・?」

「ええ、いいわよ」

「もちろん」


 友人たちと楽しいお喋りに興じながら、合宿の夜は更けていく。


 ーーーーー


 僕は今、勝負に出ようとしていた。

 戦いが膠着状態になってから、どのくらいたっただろうか。

 制限時間の関係で、このままだと僕は負けてしまう。そろそろ仕掛けなければ。


 覚悟を決めて、畳を蹴り、布団の影から飛び出す。するとすぐに、前方から敵弾が雨霰と飛んでくる。

 体を縮め、捻り、ジャンプも交えながらその弾幕を抜け、僕は敵陣に突貫する。


「ハッ!」


 両手に持っていた弾を、思い切り布団の向こう側に隠れていた敵に叩きつける。


「ピッ! 勝者、甲本!」


 音量を抑えた指笛がなり、僕の勝利が決まる。

 僕たちは、熱い()()()()()を行っていたのだ。


「さすがだなぁ、甲本!」

「このまま槇村と御影もやっちまえ!」


 僕と源、そして御影くんは、ドッジボール大会での活躍から、3人ユニットのこの枕投げにおいて、ソロを強制されていた。

 元々運動神経がさほどいいわけではないので、大いに心配だったのだが、謎の才能を発揮して、勝ち抜いてしまっている。


「おう、お疲れ! 勇太!」

「ありがとうございます」


 源の差し出してきたタオルを受け取り、汗ばんだ体を拭く。

 枕投げは、なかなかにハードだ。


 1組男子に与えられた大部屋は、現在、布団の陣地が二つ作られた戦場と、応援席に分けられていた。

 部屋にあった枕は、予備を含めて全て戦場の中にあり、疲れて寝ている者は誰もいない、という徹底ぶりだ。


「正直舐めてたね、枕投げ」

「ああ、思ってたのの5倍はおもしれー」


 応援席からそんな声が聞こえてくるように、かなり好評だ。


「企画してよかったんじゃないですか、源?」

「だな。喜んでくれてるみてーだし、なによりだぜ」


 何を隠そう、この枕投げ大会の企画者は僕と源だ。

 一度やってみたかったので、ルールまでしっかり決めて、みんなに提案したのだ。源はその協力者だった。


「あ、そういえばな、勇太」

「なんですか?」

「聞きてーことがあるんだが」

「なんでもどうぞ?」


 歯切れの悪い源というのも珍しい。少し、質問の内容が気になった。


「おめーよ、風間に惚れてんじゃねーか?」

「なっ」

「あー、やっぱりか。そんな気ぃしてたんだよなぁ・・」


 うまく隠していたつもりだったが、付き合いが長いからだろうか。僕の隠し事が下手というのもあるだろうが。


「んー、そうかぁ・・風間ねぇ・・」

「・・確かに好きですよ、一目惚れです。でも、彼女には御影くんがいるみたいなので、早いところ諦めようとは思っているんですけどね」


 悲しいことだが、仕方ないことでもある。いや、悲しいが。


「んー、なんか引っ掛かるんだよなぁ・・」

「どうかしましたか?」

「いや、なんでもねぇよ、っとそろそろ試合だな」


 なにかを誤魔化した源は、次の試合に向かっていった。


 結果的に、大会優勝者は決まらなかった。

 なぜなら、見回りに来た先生に僕たちはこっぴどく怒られ、監視のもと強制消灯となってしまったからだ。

合宿の夜、夜更かしするのは常識ですが、それを文章として書くとなると難しいですね・・

自分の能力の低さを実感してます

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