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ただ、平和な毎日を過ごせるだけで  作者: リア狂
第一章 日常
14/23

球技大会 後編

 1組対決で始まった、ドッジボール大会の決勝戦は、Aチーム有利で進んでいた。


「源!」

「任せろ!」


 また一発。

 甲本くんからパスを回された槇村くんが、Bチームの選手にボールをぶつける。

 始めは御影くんを狙っていたようだが、カウンターを食らうとわかってやめたらしい。


 応援している人たちは、誰かが外に出たり、中に入ったりするたびに一喜一憂している。

 私も形式上御影くんの応援をしているが、半ば作業のように、機械的である。


 これまでと同じように、Aチームはチーム全体で戦い、Bチームは御影くんがカバーをしている。

 しかし、違う点がひとつあった。


「やるじゃない! 勇太!」

「こ、甲本くん・・がんばって・・!」


 明らかに、甲本くんの動きがいい。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()、相手の回避先を予想し、時に槇村くんに指示をだし、時に自分で投げることによって、Bチームを追い込んでいた。


 ついに内野は御影くんと甲本くん、槇村くんのみになった。


 中心人物が内野にいるので、外野はパスを回すだけと化している。決着は近いらしい。

 パスの応酬が激しくなる。

 2対1の戦いであるが、御影くんは押し負けもせず素早い玉を返していた。


「うーん、でもやっぱり、劣勢だね・・」

「はっ!当然よ!勇太と源は親友なんだから!」


 熱い試合に、桜良はかなり興奮しているようだ。

 正直、御影くんが負けても特に問題はないのだが、応援しない訳にはいかない。


「負けないで!御影くん!」


 すると、甲本くんの体が少し、崩れた。

 やっぱり疲れが出ているのだろうか。

 その好機を逃す御影くんではない。彼は、すぐに攻勢をかけた。


「シッ!」

「はぁ!?」


 御影くんの体が、()()()

 ただのクラス対抗戦で、一瞬とはいえ異能を使うなんて、不用心というか、大人げないというか。クールでも御影くんも男の子だった、ということなんだろう。

 次の瞬間には、ボールが槇村くんにヒットしていた。バウンドしてコートに戻ってきたボールをキャッチし、御影くんは再度投げる。

 いきなり相棒が倒されたのである。甲本くんは呆気にとられていたようで、


「くっ」

「俺の勝ちだ!」


 飛んできたボールにあっさり当たってしまう。

 応援席がどっと沸く。


「「「わぁあああああ!!!」」」

「へっ、いい勝負だったな、御影!」

「・・ありがとうございました」

「ああ」


 槇村くんと御影くんは、固く握手を交わしている。甲本くんは悔しげに下を向いていた。


「何負けてんのよ、源!」

「るせー! 俺らだってがんばったんだよ!」


 またもや桜良と槇村くんはケンカしているらしい。仲がいいことだ。


「オリエンテーション合宿、クラス対抗ドッジボール大会男子の部の優勝は、1組Bチームです!」

「「「わぁあああああ!!!」」」

「女子の部1回戦は20分後から、1組Aチーム対3組Aチームです!」


 休憩後は私たちの試合だ。準備を始める前に、私は甲本くんの元へ向かった。


「お疲れ様です。様子がおかしかったようですが、大丈夫ですか?」

「はぁ、はぁ、ええ、大丈夫ですよ。そんなことより、勝った御影くんところへ行ってあげたらどうですか?」

「ええ、そうですね」


 私としては、甲本くんの方が心配なのだが、全く労わないのも悪いし、なにより不審がられるのもよろしくない。

 私は、人に囲まれている御影くんのところへ向かった。


「お疲れ様です、御影くん」


 私が歩いていくと、人垣がさっと避けた。なんというか、偉い人になったみたいで居心地が悪い。

 彼は一瞬、誰に呼び掛けられたのかわからないような素振りをした後、


「・・ああ、風間か」


 敬語を使われたからだろう、若干不機嫌さを滲ませて御影くんは振り返った。

 周りは、辟易している当事者の私たちを置いて、熱くなっていく。

 迷惑きわまりないわけだが、私たちにとっては誤解してくれていた方がありがたい。なので一芝居打っておくことにする。


「その・・かっこよかった、ですよ?」

「・・そうか」


「ヒュゥ!」

「キャー!」


 周りは私たちを囃し立てる


「次、私の試合なので、応援していてくださいね?」


 精一杯の笑顔を浮かべて最後まで言い切る。

 かなり恥ずかしかったのですぐに離脱したが、離れた後御影くんがみんなに囲まれて、揉みくちゃにされているのが見えた。


「ごめん・・」

「まあまあ、仕方ないんじゃない? それより、もう試合よ」

「うん、がんばろうね」


 その後の女子の部では、私たち1組Aチームが、桜良の運動能力とリーダーシップによって、優勝をもぎ取った。


 オリエンテーション合宿、クラス対抗ドッジボール大会は、男女ともに1年1組の優勝で、幕を閉じたのだった。

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