球技大会 後編
1組対決で始まった、ドッジボール大会の決勝戦は、Aチーム有利で進んでいた。
「源!」
「任せろ!」
また一発。
甲本くんからパスを回された槇村くんが、Bチームの選手にボールをぶつける。
始めは御影くんを狙っていたようだが、カウンターを食らうとわかってやめたらしい。
応援している人たちは、誰かが外に出たり、中に入ったりするたびに一喜一憂している。
私も形式上御影くんの応援をしているが、半ば作業のように、機械的である。
これまでと同じように、Aチームはチーム全体で戦い、Bチームは御影くんがカバーをしている。
しかし、違う点がひとつあった。
「やるじゃない! 勇太!」
「こ、甲本くん・・がんばって・・!」
明らかに、甲本くんの動きがいい。
まるで心の声が聞こえているかのように、相手の回避先を予想し、時に槇村くんに指示をだし、時に自分で投げることによって、Bチームを追い込んでいた。
ついに内野は御影くんと甲本くん、槇村くんのみになった。
中心人物が内野にいるので、外野はパスを回すだけと化している。決着は近いらしい。
パスの応酬が激しくなる。
2対1の戦いであるが、御影くんは押し負けもせず素早い玉を返していた。
「うーん、でもやっぱり、劣勢だね・・」
「はっ!当然よ!勇太と源は親友なんだから!」
熱い試合に、桜良はかなり興奮しているようだ。
正直、御影くんが負けても特に問題はないのだが、応援しない訳にはいかない。
「負けないで!御影くん!」
すると、甲本くんの体が少し、崩れた。
やっぱり疲れが出ているのだろうか。
その好機を逃す御影くんではない。彼は、すぐに攻勢をかけた。
「シッ!」
「はぁ!?」
御影くんの体が、ブレた。
ただのクラス対抗戦で、一瞬とはいえ異能を使うなんて、不用心というか、大人げないというか。クールでも御影くんも男の子だった、ということなんだろう。
次の瞬間には、ボールが槇村くんにヒットしていた。バウンドしてコートに戻ってきたボールをキャッチし、御影くんは再度投げる。
いきなり相棒が倒されたのである。甲本くんは呆気にとられていたようで、
「くっ」
「俺の勝ちだ!」
飛んできたボールにあっさり当たってしまう。
応援席がどっと沸く。
「「「わぁあああああ!!!」」」
「へっ、いい勝負だったな、御影!」
「・・ありがとうございました」
「ああ」
槇村くんと御影くんは、固く握手を交わしている。甲本くんは悔しげに下を向いていた。
「何負けてんのよ、源!」
「るせー! 俺らだってがんばったんだよ!」
またもや桜良と槇村くんはケンカしているらしい。仲がいいことだ。
「オリエンテーション合宿、クラス対抗ドッジボール大会男子の部の優勝は、1組Bチームです!」
「「「わぁあああああ!!!」」」
「女子の部1回戦は20分後から、1組Aチーム対3組Aチームです!」
休憩後は私たちの試合だ。準備を始める前に、私は甲本くんの元へ向かった。
「お疲れ様です。様子がおかしかったようですが、大丈夫ですか?」
「はぁ、はぁ、ええ、大丈夫ですよ。そんなことより、勝った御影くんところへ行ってあげたらどうですか?」
「ええ、そうですね」
私としては、甲本くんの方が心配なのだが、全く労わないのも悪いし、なにより不審がられるのもよろしくない。
私は、人に囲まれている御影くんのところへ向かった。
「お疲れ様です、御影くん」
私が歩いていくと、人垣がさっと避けた。なんというか、偉い人になったみたいで居心地が悪い。
彼は一瞬、誰に呼び掛けられたのかわからないような素振りをした後、
「・・ああ、風間か」
敬語を使われたからだろう、若干不機嫌さを滲ませて御影くんは振り返った。
周りは、辟易している当事者の私たちを置いて、熱くなっていく。
迷惑きわまりないわけだが、私たちにとっては誤解してくれていた方がありがたい。なので一芝居打っておくことにする。
「その・・かっこよかった、ですよ?」
「・・そうか」
「ヒュゥ!」
「キャー!」
周りは私たちを囃し立てる
「次、私の試合なので、応援していてくださいね?」
精一杯の笑顔を浮かべて最後まで言い切る。
かなり恥ずかしかったのですぐに離脱したが、離れた後御影くんがみんなに囲まれて、揉みくちゃにされているのが見えた。
「ごめん・・」
「まあまあ、仕方ないんじゃない? それより、もう試合よ」
「うん、がんばろうね」
その後の女子の部では、私たち1組Aチームが、桜良の運動能力とリーダーシップによって、優勝をもぎ取った。
オリエンテーション合宿、クラス対抗ドッジボール大会は、男女ともに1年1組の優勝で、幕を閉じたのだった。




