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蒼の疾風  作者: 吉田独歩
第二章 第三次銀河大戦編
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第二章 第五話 百足が来る! その4

この物語は残酷な表現が含まれることがあります。ご注意ください

老人サダマサは節足動物の足音を立てながら迫る。

「サダマサァァ、貴様なぜ自分の孫を裏切ったぁぁ!?」

レオハルトが怒り狂った状態で叫ぶ。

「いい屋敷に住み、いい田畑の米で酒を作り、美女を侍らせ、安全なところで平穏に暮らす。人類が望んだ最高の夢だろうが、原生生物の退治などできるか。そんな危ない仕事は捨て駒にやらせておけばいい。それに若者なんていつの世もそういうものだろうが。なあに、子供などまた作ればいいだろう。わしのような選ばれた人間を守るために……死ねばいい」

サダマサは獣畜にも劣る醜悪な弁解を述べた。それを述べながら、レオハルトに何度も斬りかかる。それを聞いたレオハルトは怒りはついに極限の領域に到達した。

「…………貴様」

その時のレオハルトの目はシンと同じ眼光を発していた。

「なにがいい。お前は何が欲しい。なんでもやるぞ」

怒り狂ったレオハルトはこう叫ぶ。

「お前の孫の自由と……貴様の命だ!」

そう言ってレオハルトはサダマサの腕を両断する。

「無粋よのお」

だがサダマサは腕を再生させる。

「わしにはなぁ。メタビーングの細胞がある。我がミカミ家が『血の一週間』のどさくさで手に入れた一品じゃよ!」

そう言ってサダマサはそのアンプルを首に突き立てる。

「わしは長生きし、村と家を存続させるぅぅぅぅッわしこそミカミ家ぇそして村ぁ。孫や子供が死のうとわしが存続すればぁぁぁぁああああ、万事良しぃぃ!!」

そう叫んでサダマサは巨大なムカデと人のハイブリットとなる。

「チェェエエエエエエァァァァ!!」

般若の形相でレオハルトは死の青い風となった。なんどもサダマサの胴体部を切断し、血飛沫が飛び、肉片が飛び散るが殺すには至らない。

「無駄無駄無駄ぁぁッ!」

サダマサは口から毒液を飛ばしたり胴体で周囲を薙ぐ。その余波でイェーガーが吹き飛ばされるが、イェーガーは待った。

「……装填、照準……チャンスを待つ」

イェーガーは冷徹なまでに時を待つ。頭から血を流そうが信じた主人のために好機を待った。

レオハルトとシンは敵の攻撃から逃れながら言葉を交わす。

「あの巨体ではグリーフが足りん」

「僕にいい考えがある!」

「なんだ!?」

「合わせろ。何がなんでも!」

それを聞いたシンが呆れながらも従った。

「ふー……何がなんでもやってやる!」

シンの言葉を合図にレオハルトとシンが飛び出す。

「馬鹿めえ!」

そう言ってサダマサが胴体でまた薙ぐ。

そこにレオハルトが飛び上がって胴体を駆け抜ける。

「おぉぉぉぉおおおおおおおお!」

怒りの咆哮と共にレオハルトは胴体を切断し続けた。

再生するものとしないものを見極めついにレオハルトは弱点を見出す。

「アラカワぁぁ首を狙えぇぇ!!」

ギョッとしたサダマサに向かって影が飛ぶ。

「な、待て……!」

「ギェェェアアアア!!」

シンは猿叫と共にサダマサの首をナイフで薙いだ。

サダマサの首は切断されて宙を舞う。だがそこで恐るべきことが起こる。

「馬鹿め!」

なんと血に落ちたサダマサの首から節足が生えその場から逃走を始めた。

サダマサは勝ち誇ったように叫ぶ。

「ふははははははははっ、わしはまだまだ現役じゃよぉぉ!!」

サダマサは節足を動かしながら勝ち誇ったように叫び続けた。

「惜しかったのぉぉ、わしの肉体はぁぁ脳が潰れん限り無敵ぃぃ、わしさえ生きていればぁぁわしの頭脳さえあればああ、わしはこの村の神同然んん、村も村のガキも若造もわしのために死ねばいいのだぁぁ、わしこそがミカミなのだぁぁぁぁ!!」

「……言ったろう、お命頂戴と」

レオハルトはイェーガーに向かって叫んだ。

「照準……狙えぇい!」

「え」

何かを察したサダマサの頭部が微笑みを止める。

「撃てぇぇ!」

命令と共に弾丸が飛ぶ。その一言と共にイェーガーの電磁弾は寸分の狂いなくミカミの頭蓋の中心を貫通した。サダマサの頭部はイェーガーの精密狙撃によって潰れたトマトのように弾け飛んだ。

「命中」

イェーガーは喜ぶこともなく淡々とそう呟いた。

「人は神でも機械でもない……これで終わりだ」

シンも潰れた赤い痕跡にそう呟き、二人と合流する。三人は共和国軍基地に連絡を入れたのちその場から風のように立ち去ってゆく。かくして、かつてミカミ村と呼ばれ呪われた宿業にあったその村落はただの荒れた廃墟の群れとしてその場に残された。






レオハルトがアズマ国内の在留共和国軍基地に百足女郎の姿をした人物を連れてきたニュースは共和国軍を前線・後方問わず軍内部を困惑させた。しかもそれだけでは飽き足らずレオハルト大尉が才能があるが問題児でもある軍関係者ばかりを引き抜く珍ニュースは共和国軍の話題の種となった。

良くも悪くもSIAは注目の的となっていたのだった。

「……なんだこれ」

基地の第一会議室にいるスペンサーが新聞記事を見て冷や汗をかいていた。

「あら、私も有名人ね」

軽口を叩いたのはユリコ・ミカミであった。ただし、その姿は人間と相違ない姿に変貌していた。これはアオイ・ヤマノにも言えることだが、科学士官ギュンター・ノイマン博士の医学的成果である。

「お前かよ。どうしてこうなった」

「アラカワが不届な祖父をお仕置きしたからね」

「そいつはどうなった」

「見送ってきたそうよ」

「どこにだ」

「閻魔様の御前」

「なんでだよ」

異様な圧を有するこの人物の他、SIAには様々な人員が集められる。レオハルト以外にもシンやサイトウなどが大暴れした成果が集っていた。

「男と男と美女の楽園と聞いて!!!!」

開口一番、不届な発言を行う褐色肌の女軍人はアンジェラ・ヘラ曹長。平時には男同士がラブする漫画やスケベなコミックを創作が趣味の『重力』のメタアクターである。

「あうう……私、男は苦手なんですよぉぉ」

キャリー・カリスト特務中尉は男性恐怖症だが熊に一時的に熊に変化できるメタアクトを有してる。戦時には怪力無双だが、連携に難がある人物である。

「よろーって、レイチェルとキャリーじゃん。あんたらもここなんだマジ縁あるねー」

レイチェル・リード曹長はチャラい人物である。社交的で明るい性格のためムードメーカーであるが軍隊社会では派手好きで問題があったと記録されていた。だが、ヒューミントに強い上に、触れた相手を十分間操る能力を有しているためスパイとしてはこれ以上にない人材として情報部で活動していたとされる。

この三人は『メタアクト三人娘』や『軍服三人娘』と称されることが多かった。

「うひゃ、賑やかになったね!」

ライム・ブロウブ。

企業の連合体が治める通商連合領出身のゼリー状の知的種族たるウーズ人の女性士官で、不定形の肉体を有するが普段は一六〇センチ、紺の髪、赤の虹彩が特徴で快活な若い女性の姿でいることが多かった。

「あらあら……元気のいい子は好きよ。うふふ」

ペトラ・ルーナ。

フランク連合王国領の惑星『フランドル』出身で樹人とも称されるアルルン人の聖地『聖なる森』の奥地から銀河各地傭兵として旅した経験を有する。

「そうね。竜山連合の格言で、地の利は人の和に如かずっていうし……」

ソニア・ストーン。

普段ずっとメイド服を着用しているこの人物はさっぱりと洗練された振る舞いが印象的であった。彼女とペトラは蠱惑的な一面があり男も女も惑わす一面を有していた。

この三人は姿を変えることが多いため軍では『変貌三人娘』とも称される。この三人は自我を持つロボット軍人ドロシー・アーリー大尉の部下であり、武術や戦い方、共和国軍人としての振る舞いを仕込まれていた。

「……どういう人選よこれ」

グレイス・デイヴィス少尉はスペンサー大尉と同様にこの混沌とした人選に困惑する数少ない人物であった。几帳面で真面目、電撃のメタアクトを有する褐色肌の鍛えられた女軍人であるグレイスはレオハルトとアラカワが集めた人材の中でひどく困惑した様子を見せていた。

「ジェニーのために……おいら、正義勇気で頑張るだ!」

通称『機関銃を持ったブルドッグ』と敵に称されるほどの巨漢のアポロ・ローレンスはどうにか奮起する。彼は一六二キロもの体重とブルドックに例えらえるふくよかな顔に劣等感を抱えていた。そんな彼は非常に優秀な攻撃手で単騎で敵陣を破壊するほどの活躍も珍しくない百戦錬磨の強者である。美人の奥さんのいる一面があった。

「はっははは、それでこそ我が兄弟よ!」

見事な髭面のロバート・アーサー・チェンは豪快に笑う。ローレンスは義兄弟の間柄でその連携は本当に見事である。ビアードロビー、鋼鉄ロビーと称えられる彼もローレンスに匹敵する豪傑で単騎で敵の大部隊を破壊したり、ネームドの敵を仕留めることも珍しくない一騎当千の戦闘の申し子である。そんな彼だが正直で豪快すぎる性格のため腹芸が苦手という一面もあった。

「ハーハハハハ! 鋼鉄ロビーに機関銃のローレンスまで、我が戦闘センスに勝るとも劣らない優秀な人員が集まっていると見た!」

昆虫の頭をした知的種族インセク人の男がナルシシズム全開で大笑いする。エドウィン・フィッツジェラルド・ラヒミは自己肯定と耽美と戦闘センスに満ちた男で、インセク人基準でも美貌には優れナルシシズム全開であるが、幼少から青春期まで大いに苦労したと噂になっていた。

「おお……知り合い以上に美女と美少女が!」

「ほほう……女好きとして見落とせねえな」

「うむ、撮影のしがいがありそうですね!」

「……貴様ら、興奮するならタマ刈り取ってやろうか」

サイトウとジョルジョ、そしてジョージ・ランドルフ・ブラウンの三馬鹿トリオと毒舌ツッコミ男のスチェイが現れた。筋骨隆々の変態傭兵に、女好きのアタリア系軟派男、茶髪翠目の優男兼妖怪カメラ男で構成された奇人トリオの到着である。

「うう……スチェイさんがこわいのです」

そしてなぜか歩く水槽スーツと喋る改造イルカが現れる。シーシャ・オーシャンズであった。

会議の中心にはユリコ、イェーガー、スペンサー、シンそして、レオハルト本人。

集められるだけの人員を集めたレオハルトは全員の目を見渡してから口を開いた。

「君たちに任務内容を説明する前に二人紹介したい。まずはアズマ国からきた才媛であるユリコ・ミカミである。新しい仲間として迎えてやってほしい。それと……もう一人、重要な人物を紹介したい」

そしてレオハルトはある女を会議室へ招き入れる。

「紹介しよう。ミリア・メイスン。スチェイの妹だ」

スチェイは驚きで目を見開いていた。思わぬ人物の登場にスチェイが驚く。

古き悪しき外道を葬り、レオハルトは新たな仲間と次の事件へ……。


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