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蒼の疾風  作者: 吉田独歩
第二章 第三次銀河大戦編
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第二章 第六十六話 コルマルの戦い、その6

先手を切ったのはライム・ブロウブであった。

彼女はまず銃剣突撃を行ってきた敵兵の一人に手を伸ばす。すれ違いざまに片手で首をへし折った。その後二人敵兵が突っ込んでくるが、銃剣の切先を回避した後に猛烈なカウンターを加える。顔面に強烈な一撃を叩きつけた後一人に強烈な突進を加える。

敵兵の肉体を軽自動車のような威力で突き飛ばしながら、ライムは右手を槍か刀剣のような形状に変異させる。そして彼女はもう一人の腹部に鋭利な片手を突き刺した。

突き飛ばされた敵兵も突き刺された敵兵も内臓をやられて即死していた。

ウーズ人の身体能力に加えて、武家ブロウブ一族の戦闘技術による戦闘は瞬く間に三人の敵兵を返り討ちにしていた。敵の死体から飛び出しながら再び服を纏うようにして彼女は人の姿に戻る。

「一気に三つ!!」

無線でそう叫びながらライムは敵の死体を盾にして前進する。敵は銃撃を加えるがライムに手傷を追わせることはなかった。死体は敵の兵士でプロテクターを装備した状態で息絶えていた。

ライムは敵の弾雨に怯むことなく前進して戦闘を継続する。

「オラァ!!」

ライムは敵の首を回し蹴りで蹴り砕く。

そして、彼女は敵の小銃を奪い取り、早業で奥の敵に撃ち込む。

一人、二人目、また一人。

ライムは銃の腕でも冴えを見せる。

彼女は歴戦の兵士相手でも勇猛に戦い続けた。そして引き際も見事であった。

「おっと、回避!」

ライムは滑り込むようにして敵の銃撃から物陰に隠れるようにして回避する。軽快な戦闘と移動を交えた戦法によって位置を変えているため、手榴弾の爆発も回避していた。そして敵部隊の懐に飛び込むと得意の近接戦と非常に柔軟な身体能力によって戦果を大きく増やしていた。

ライムの活躍は目を見張るものであった。そしてソニアとペトラの戦闘技術も彼女に劣らない冴えを見せつけていた。

ソニアはライムが敵を翻弄するのに合わせて銃撃を加える。彼女の役目はライムのフォローに加えて得意の中距離戦闘で敵を消耗させることにあった。

ソニアはライムに銃撃を加える敵に対してSMGの銃撃を加える。頭部や胴体の急所を狙った銃撃によって敵兵のライムに対する攻撃を緩めてゆく。そこにペトラが準備を進める。それは一見地味な下準備であったが、凶悪な罠と反撃の伏線でもあった。ペトラがやったのは簡単なブービートラップに過ぎなかったがどれもが計算された位置取りであった。

この意味を敵が知るのはかなり後のことであった。

ライムに翻弄されつつも敵はソニアにも意識を向ける。むしろ、接近戦で猛威を振るうライム以上にソニアの苛烈な銃撃に意識が傾きつつあった。

「まずあのメイド服だ! あいつを潰せば楽になる!」

指揮官がそう叫んでソニアに向かって前進する。ライムにも戦力を割くが、大半はソニアへの攻撃に割合が傾いていた。その人員が接近するのをペトラは妖艶な笑みで眺めていた。

「……ふふ、完璧な筋書きね」

そう言ってペトラがスッと本来の姿に戻る。彼女は本気で敵を潰す態勢に移行していた。人間の擬態を解き、緑の肌と赤い髪、ツタが全身に巻き付いたアルルン人本来の姿へと変わる。

「あぁん……敵、きちゃう……」

ペトラは妖艶に笑う。敵が射程距離に踏み込んだ瞬間に彼女は全ての罠を作動させた。

まず作動したのはツタの罠である。それは敵兵の足に絡みつき移動力と行動力を奪うことに特化したものであった。敵数名の体が足を吊られるようにして宙へと引き上げられる。そこに第二の罠とソニアの銃撃が加えられる。

ペトラ第二の罠は人喰い植物であった。より正確に言えばテリトリーに踏み込んだ動物に攻撃を仕掛ける植物である。ツタでテリトリーの高度に投げ込まれた敵兵にハエトリソウを思わせる凶悪なビジュアルをした植物が敵に攻撃を加える。

身動きを取れなくなった敵兵はなすすべもなく植物に噛みつかれる。そこにソニアの銃撃が加われば死は確実であった。敵はツァーリン語の悲鳴と共に頭部を噛み砕かれたりソニアの銃撃で射抜かれてなすすべなく仕留められることとなった。

その様子を見て生き残りの後詰めの兵士たちと指揮官は顔から血の気が引いた様子でソニアペトラコンビの凶悪な戦法に慄いていた。

「……も、もうだめだ……やってられん……民間人と弱卒だけを撃つ仕事のはずでは……」

指揮官はそう言ってその場から逃げ出そうとした。しかし、それは最大限に悪手であった。

「……あぁぁそぉぉぼぉぉ……?」

ライムが既に彼の背後に迫っていた。これが理由その一である。

「ひぃぃ……ウーズ人の、ライム・ブロウブ……!?」

敵の指揮官は振り向きながら距離を取ろうとするがライムが笑いながら距離を詰めてくる。

「捕っまえた!」

ライムが殺意のこもった笑みと共に片手を薙ぐ。すると指揮官の首が跳ねるように地面に転がった。

彼女一人の暴れるような戦い方も見事で敵の士気を大いに削ぎ落とすものであった。だが、それ以上に後詰めの豪傑たちの戦い方もそれに劣らないものであった。

「敵の連携が崩れたぞ! 一気に攻めろ!」

スチェイがそう叫ぶとサイトウが真っ先に機関銃を撃ちながら突撃していた。

「しゃあ! 覚悟しろやぁぁ!!」

サイトウがそう叫んで敵に向かって精密な銃撃を加え続ける。

彼は戦場をいくつも経験し多くの敵を相手している経験が誰よりも優れているだけにその立ち回りはライム以上に見事であった。

一発一発の銃弾が計算され、その銃撃で彼は二十三人もの敵兵を葬ることを既に成功していた。精密な銃撃と勇猛さが合わさった複雑で堅牢な彼の戦い方はライムに匹敵するほどの恐怖を敵陣に与えていた。

「さ、サイトウだ……砂塵の阿修羅がいるぞ!?」

「なんだ……こいつも手練れか!?」

「下がれ!下がれ!」

「一階下まで逃げろ!」

ツァーリン軍部隊は複数人で制圧射撃を行う。だがサイトウの銃撃があまりに的確なため打ち返すほどに射手が討ち取られる人数が多くなっていた。

「なぜだ! なぜこっちの損耗率が上がる!?」

敵の指揮官の一人がそう叫ぶと頭部を射抜かれて倒れた。イェーガーの見事な狙撃であった。

サイトウやライムの暴れっぷりも見事だが、イェーガーの狙撃技術によって人員の安全性が大幅に担保されていたことも大きかった。狭い室内、それも地下での戦闘ではあるが、卓越した銃撃による援護は敵にとって多大な脅威であることに変わり無かった。

そのタイミングでレオハルトが無線で指示を飛ばす。

「各位、散開して慎重に制圧せよ。敵は籠城するつもりだ。サイトウ、ライム、ユリコを中心に侵攻を行え」

「了解。だが心配は無用だ」

「その根拠は?」

「我々にはタカオがついている」

「その通りだ。君らも優秀だが、それ以上に素晴らしい友軍がいる」

レオハルトがそう言ったタイミングでタカオが作戦行動を開始した。彼の装備は皆無に等しかった。背広を着た男がまるで何事も起きてないかのように戦場を闊歩し始めていた。無論、彼の背広は特別性で、難燃性で防弾仕様の特殊な繊維でできた紳士服を着ていた。これは共和国やシークレットサービスや、AGUの要人警護官、アズマ国の警視庁警務部警務課の警備要員、フランク連合王国王立親衛隊など要人護衛・警護を目的とした護衛部隊・軍事組織で採用されている特殊仕様であった。

無論、そのスーツですらズタボロになる攻撃を受けたが、スーツが傷つかないように戦うことがタカオの関心であった。幸いにも戦闘は屋内、地下が主戦場となったこともあり、大規模な爆撃にさらされるリスクが大幅に減ったことも大きかった。敵の猛攻は熾烈だったが、タカオの超越した身体能力と強靭な肉体の防御能力によってスーツの損傷は軽微であった。無論、タカオ本人は完全に無傷で熾烈な戦闘を目にしても涼しい顔で多国籍軍を支援していた。

「……裸で戦うのはうんざりでな。このスーツは……合格だ」

そう言ってタカオが敵兵の一人を片手で突き飛ばす。大型トラックに跳ね飛ばされたように吹き飛ばされた後、血飛沫を辺りに散らして彼は絶命した。それを見て敵兵の何人かが半狂乱で機関銃を乱射する。

だが、それは逆効果であった。タカオにとって銃弾は無意味で位置を知らせているたけの意味しか存在しなかったからだ。

彼は悠然と歩きながら敵を壁や床へと叩きつける。その度に敵の肉体から骨の砕ける音が大きく響く。それを聞いて敵兵が我先にと逃げ出そうとする。が、そのタイミングで逃亡兵が銃殺されていった。

督戦隊を思わせる部隊の先頭にいたのはアンドレイ・クリコフであった。ガリーナ・アリョーシャの部下の一人で鋼鉄アンドレイの異名を取る恐るべき男であった。

「……なんだと。お前はガリーナといるはずだ」

タカオは目の前の人物にそう語りかける。

「……問答は無用だ。ガリーナ隊長の命でここに残っている。それ以上の事実はひつようあるまい。さあ……来るがいい」

彼はそう言って銃剣付きの機関銃を構えてタカオを睨む。

一方のタカオは完全に素手のままであった。タカオが両手で構えを取る。アズマ国の武術の構えであった。両者はしばし睨み合ったまま膠着していたが、最初にアンドレイが仕掛けた。

「ウラァァァァアアアア!!!!!!」

周囲の空気を揺るがすほどの殺気と怒号を発しながらアンドレイは銃剣突撃を行う。狙いはタカオの首元である。

だが、タカオは避けない。ナイフがタカオの首に迫る。切先が皮膚に触れ、力が強烈に加わる。

だが、ナイフが折れた。

金属が軋み、折れ曲がるようにして刃が完全に破損する。まるで装甲にナイフを無理やり突き立てたかのように刃は刺さらず、ナイフの方が耐えられずに折れてしまった。そこにアンドレイが銃撃を加える。

だが、銃弾は致命傷ではなく、打撲程度の威力しかなかった。それが人の頭を容易に粉砕する大口径であるにも関わらず。タカオは敵の大口径機関銃を奪い取りそれをゴムでも弄ぶかのように容易に捻じ曲げてしまった。

そしてアンドレイに向けてタカオがゆっくりと突いた。

通常なら軽自動車が六十キロで衝突してきたような威力がその突きに存在した。だが、それは彼を軽く突き飛ばす程度の効果しか与えなかった。少しだけ吹き飛ばされたアンドレイは踏ん張って態勢を立て直す。その時点で彼も異常だったが真に恐ろしいのは軽く突いただけで軍用サイボーグ処置を受けた成人男性を突き飛ばしたタカオ・アラカワであった。

両者は戦場の中心で睨み合っていた。

サイボーグと超人、恐るべき戦いの予感……!


次回、死闘開幕

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