混沌たる世界で踊る鉄仮面6
カリルの街の門前――
鉄仮面に左手を切り飛ばさて満身創痍のアンドレ。
Aクラスの冒険者である自分の腕を気づかないまま切り飛ばす等到底信じられなかった。
「ま…待ってくれ、話をさせてくれ…混乱して理解していない…」
ここへきてはアンドレも必死だった、訳も分からず殺されるのはゴメンだ。
自分よりも圧倒的に強いこの鉄仮面が何故こんな事をしてるのか…死んでも死にきれない気分になっていた。
「よかろう!お前は左腕だけで勘弁してやろう、これも我が陛下の偉大なる慈悲によるものだ。いいか?陛下の慈悲がお前の命を繋ぎ止めてらっしゃるのだ」
「あぁわかった…どういう事なんだ…?確かに俺たちは森へ行ったが…アンタは誰なんだ…」
鉄仮面のイザベラは鉄仮面を外し胸を張り左手で仮面を胸の前に、右手を天に突き上げて宣言する。
「私はテロッサ大帝国のアレクサンドラ親衛隊にして帝国軍の元帥であるイザベラだ。そしてあの大森林はテロッサ大帝国の領土だ」
それはまるで物語に出てくる大英雄の如き覇気を放っている、周りにいた50人余りの冒険者も呆然と見ているだけだ。
「そうなの…ですか…し、しかし聞いた事も無いですが…?元帥様?」
「なんだと?森の中に我が大帝国があるのだ。ここのギルドにも貼り紙があっただろう?冒険者ギルドも職務怠慢で制裁対象か?」
「た、確かに立ち入り禁止とはなっていましたが…大帝国なる国の領土とは知らなかった…のです」
アンドレはAクラスの冒険者になって10数年、初めて言葉を選びながら慣れない敬語を使っていた。
仮面を外したイザベラは見た事もない絶世の美女と言っていい風貌で白いマントが神々しく閃き、巫山戯た事を言わせない覇気を漂わせている。
鉄仮面の言っている事は全て本当なのだろう…そして言葉を間違えば殺されるであろう、こんな化物と出会ったのは初めてだった。
「私はマルク商会の場所が聞きたいだけだ、そこにシモン・マルクとかいうゴミもいるか?」
「マルク商会はそこの宿屋を右に曲って突き辺りの店です…しかし支店長のヴァンは居ますがシモンは本店があるシャロン王国という国だと思いますが…」
イザベラはなるほどやはり遠征になるか、と呟いて他の冒険者達を見渡す。
そこで一人の冒険者に目が止まり、近づいていく。
「な?なんすか?」
「お前たちは偉大なる陛下の慈悲により許してやろう、しかしお前はダメだ」
そう言って最初にアンドレとアーロンと一緒に軽口を叩いていた一人の冒険者を掴み問いただす。
軽口を言って居た冒険者は焦っていた、まさか自分だけをピンポイントで指名してきたのだから当然だ。
「お前の目は冒険者ではないな、何処の間者だ?5秒以内に答えないと殺す」
「何を言ってるっすか?ま、待つっす…冒険者っすよ?」
「そういうのはいい、後3秒だ」
「し、知らないっ…」
グシャ。
アッサリ殺された、ろくに話も聞かずに本当に5秒でアッサリと。
それを見ていた他の冒険者たちは顔面蒼白だ。
「いいか?貴様ら、もう一度言うが偉大なる陛下の慈悲により生かされている事を忘れるな」
力説したイザベラは仮面を付け直しもう用は無いという様子でその場から去っていった。
残されたアンドレと冒険者達。
アンドレは止血をしながら冒険者達に介護されその場で一息ついてると、ドーンと街中に響き渡る爆音がした。
街中の者、全員が聞いたであろう爆音。
何が起こったのか?アンドレ達は冷や汗を掻きながら爆音の発生源の場所まで走っていくと人だかりができている。
この世界の多くの街の建物は魔法を使っても衝撃が吸収されるよう開発されている、対魔障壁というヤツだ。
それは魔法による誤爆や犯罪者による攻撃等で一々街が破壊されない処置である、何千年の月日を掛けて開発されたものだ。
「な…なんだ…これは…」
「化物だ…」
「俺たちは助かったのか?」
そこはマルク商会の支店があった場所。
隣の両サイドにある無関係な店は普通に建っているが、マルク商会の支店だけが綺麗に吹き飛んで更地になっていた。