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ティラミス  作者: ミノル
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緑髪眼鏡のヒロインは是か非か?

 俺は兼ねてより、緑髪と眼鏡のヒロインに対して偏見を持っている。


 何しろ緑だ、緑の髪、およそ霊長類として生えてくる予定の無い色、緑。

それを頭髪として有しているというのはどういう事なのか?

あ り え な い

それに眼鏡という外見の特徴アイテムを組み合わせるのは愚の骨頂といえよう。

俺には理解出来ない。


 俺の友達がとにかく、猛烈な緑髪眼鏡ヒロイン押しで、俺はその影響で、それが嫌いになったといっても過言じゃない。どんなにそいつが緑髪眼鏡のヒロインが好きでも、やりすぎれば逆に悪印象がつくってもんだ。


 高校の夏休みに入って、楽なバイトでもやって金を稼ごうと、その『緑髪眼鏡ヒロイン好きの友達』である結城と、ある会社のバイトに行くことになった。数日前に眼鏡をした七三の男を相手に面接をして、二人とも採用が決まった。「いいねえ学生は」なんて言われて、今日からバイト開始だ。


 約束した時間に間に合うように夜の11時に家を出て、途中郵便ポストで待ち合わせた結城と一緒にその会社に向かった。入り口で教えられた暗証番号と、渡されたカードで会社の中に入る。随分厳重だ。

面接してくれた七三眼鏡が案内してくれて、ロッカーのある更衣室で白いツナギの服と帽子と白いガーゼマスクを渡され、それを着て作業するようにと説明してくれた。

 夏だけど、とても会社の中は涼しくて、地下に降りると、白い廊下を連れられ、白い四角い、大きさで言うと棺おけを少しばかり大きくしたような箱が6つ置いてある部屋に入った。

 箱の中には青緑の不透明な液体が入っていて、それぞれ人くらいの大きさの”何か”が入ってる。水より粘着がありそうな液体で、何の匂いもしない無臭だ、淀んでいて中はよく見えない。人体に悪くはないけど、液体を間違っても飲まないようにと釘を刺された。

 夜中の12時から明け方の5時まで、中に入ってる”何か”が時々浮上してくるんで、それを傷つけないように棒で液体の中に漬け込む仕事だ。こんな簡単な仕事なら機械にやらせればいいって思うだろうが、人の手でないと、繊細らしくて機械じゃだめだそうだ。そこで夏の間は暇な学生を雇ってやらせようって事らしい。

 この間TVでジャガイモの芽を取る機械とか紹介されてたし、その内こういうのも機械化するんだろうなぁ…

 それじゃあ後はよろしくと、七三眼鏡は出て行った。


「あ~暇だなぁウランちゃんのVチューブでも流してくれればいいのにさぁ」


 結城が俺と同じ白いツナギに身を包んで愚痴を零している、ウランちゃんというのは最近流行りの緑髪眼鏡のVチューバーのヒロインだ。


「確かに暇だけど、浮き上がる時に音が鳴るらしいからな、それが聞こえないと困るだろ」


 時々箱の中からぼこりと音がして、気泡がごぽごぽと浮き、ふわりと下から”何か”が浮いてくる。

座っていたパイプ椅子から立ち上がり、何か判らない、それを慎重に棒でついて液体の中に押し込む。ちらと見ると音も無く浮いてる奴があったから、慌てて棒で押し込んだ。


すべすべとした、白い”何か”だった。


 暇すぎて結城がウランちゃんの良さをずっと語っている。

ふんふんと返事をして、眠くて、あくびをしつつそれを聞いてた。俺には、中身がおっさんの美少女にぞっこんになる感性は理解出来ない。理解は出来ない、が、しかし、結城自体はいい友達だ。こいつの緑髪眼鏡押しのVチューバーの趣味以外は気が合う。それが理解出来ないからといって、やめろというほど俺は無茶苦茶な奴じゃない。いやな事には目をつぶればいいだけの話だ。

 結城も俺がそれに興味が無い事に、さほど興味が無い。しかしそれで良い。お互い干渉のやりすぎは破綻を齎す。


 結城は何気にイケメンで、ちょくちょく女子に告白されているが、付き合っても長く続かず、すぐ別れている。告白してきた女子が「結城君がこんな人だったなんて思わなかった」と、大体同じような事を言って、さよならだ。顔がイケメンなばっかりに、中身が普通の男子高校生なので、がっかりされるんだと、以前に愚痴を零していた。後先考えずに付き合うコイツもコイツだ。イケメンのクセに節操が無い…。毎回すぐに振られて、そういった事が原因なのか判らないが、ウランちゃん連呼しているせいで、最近は女子から「顔は良いのに」と、残念な物を見るような目で見られている。

 ウランちゃんのおかげで外見だけで告白してくる女子は最近居ないようだ。


「へっくし!んぁあ!なんだよもう~」


 ウランちゃんの良さを語るのに白いガーゼマスクが邪魔だったんで顎の下にしていいたため、盛大に鼻水をたらしている。こいつは鼻水が垂れているのにイケメンなのは一体全体どういうことだ…。イケメンには鼻水さえもアクセサリーに変える能力があるとでもいうのか…。


「鼻水ふけよ、きったねえな」

「うぅズビ…しかし、この中の、なんだろうなこれ…」

「さあな」

「死体だったりして!」

「んな訳無いだろ」


ハハハと二人で笑って、しーんとする。


「変な事言うなよ…」

「ごめんって…」


 暫く無言でいると寝そうになるから、きのこたけのこ論争をしてみたりして目を覚ました。

ちなみに俺はたけのこ派で、結城はきのこ派だ。


 終了時間が来た。地下なんで判らないが、きっと朝日がでてるんだろう。出社してきた社員が俺たちを呼びにきた。昨日の七三眼鏡とは別の奴が呼びに来た。スケベ分けの神経質そうな奴だ。


「バイトか、もう帰っていいぞ」

「うーっす」


 着替えてロッカールームで、アイスクリームの差し入れを貰い、二人で黙々とバニラを食べた。口は乱暴そうだが良い奴だ、いや、さっきの奴が買ったアイスかは判んないけど。


「俺、ミントチョコレートが良かったなぁ」

「あんな歯磨き粉、食いたがるお前の気持ちがわからん」

「スーッとしてうまいだろぉ~それに緑だし」

「そんな所まで緑に拘るなよ…」


 外に出ると、クーラーの効いた室内と違って、むわっとした外気に当てられて朝だというのに汗が垂れる。冷房効き過ぎだよな。なんて、二人してくだらない事を話しながら家路に着いた。


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