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運命をたどる
同じ視点にたつとは、
同じ運命をたどることである。
誰かの吐いた、白い息は、
私の吐いた、白い息は。
空気は巡る。命も巡る。
いつから脱線したのであろうか。
吸い込めなかった白い息を
包むように 掴むように
確実にいっぽいっぽ。
私はあやふやになる視界の光を閉ざすように、
宙に舞う。
「お嬢さん1」
彼とは学生からの付き合いでありました。
平常から人の変わっている彼は、
当時の私を惹くには十分だったのであります。
大人ぶることがファッションのひとつでしたから、
ミステリアスな彼を想ったのは当然の道理だったのかもしれません。
直接的な好意は交わさずに、式はとんとん進みました。
彼は私を見ているようで、瞳に反映しているのは遠く深く
真っ黒でありました。
一方的に想っていることは分かっていましたが、
別に、他に女がいる様子でもなかったのですから
その事実に必死にしがみついていました。
入籍という形式で対えてくれたのは反って、彼らしくもありました。
第3者から見れば幸せな夫婦でした。
未亡人となるまでに、それから長くはありませんでした。