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雷を司る者  作者: 百紫鬼
2/2

面倒な依頼


朝。


まだ辺りは薄暗く、早朝と言って差し支えない時間。


一人の青年が身支度をしていた。

黒髪黒目、やる気を感じない表情。

一見中肉中背に見える青年は良く見ると、見事に引き締められた体をしている。


皮の軽鎧を身に着け、ブーツの紐をきつく締め、長めのローブを羽織る。

無骨な片手直剣を腰のベルトに吊って何度も感触を確かる。

仕上げに右手には黒い通常のグローブ、左手には指ぬきのグローブをはめる。


準備は終わりだとばかりに仮宿のドアを開け颯爽と飛び出した。

薄暗い階段を降り、朝食の準備をしている宿の主人から弁当を受け取る。


「ありがとう」


銅貨をいくつか渡して宿を出た。


行先はいつもと違う冒険者ギルド


憂鬱だが強制だから仕方ない。

考えるだけ無駄と皮肉気に笑い道を行く。


石畳は歩きやすく舗装されており、道行く人たちはあくびを噛み締めていた。



歩きながらも青年は、この間の依頼の事を思い出していた。



◆◆◆



この間の正体不明の敵との諍いの際、(アレス)は 100人斬りを達成した。

実を言えば99人なのだが酒の場で傭兵ギルドの連中が話に尾ひれをつけまくり、100人を斬った事になった。


俺としてはどちらでもよかったのだが、ギルドの連中が話をあちらこちらで広めまくり、ついには冒険者ギルドにまで伝わってしまった。


これがいけなかったんだ。


それを聞きつけたギルドマスターは、最近の悩みである魔の森の謎の魔獣の件で猫の手も借りたい状況だったこともあり、俺個人に依頼を回してきやがった。


異例の抜擢。


冒険者ギルドと傭兵ギルドはあまり仲がよろしくない、ないのだが今回の指名。

噂が広まると、傭兵ギルドの連中は無責任に俺を褒め称え、冒険者ギルドの連中は露骨に顔をしかめ、俺は面倒くささのあまりに国外逃亡を真剣に考えた。


冒険者に加え、騎士団の連中も出張って来るらしい。

騎士団は貴族が主だ、面倒の匂いしかしない。


「はぁ……」


ため息は空へと消えていった。


いつの間にか太陽がらんらんと輝いていた。



◆◆◆



カラン


ギルドのドアを開けると鈴が鳴る。

ガヤガヤと煩かった受付兼酒場がピタリと静かになる。


フードで顔を隠した俺は顔を引きつらせる。

全員がこちらに目線を向け、一挙手一投足をも見逃さないようにしている。


――だから嫌だったんだ。



恨めしい思いを胸に、決然として受付に歩み寄る。


受付の女性は無表情だった。


「ご用は?」


俺はできるだけ平静を装い、力を込めて言った。


「依頼を受けた」


「依頼書を見せてください」


「これだ」


そういって俺宛の忌々しいそれ(依頼書)を見せる。


受付嬢は座っているため、フードの中の俺の顔が見えたらしく、怪訝そうな表情をした。


「…身分証明できるものをお持ちですか?」


どうやら、若すぎると思ったのだろう。


――かの100人斬りが。


俺は首から下げた身分証明書(ドックタグ)を無言で渡した。


「…確認が取れました。 アレスさん、ようこそ冒険者ギルドへ」


全く感情の籠っていない挨拶(皮肉)をスルーし、行き先を聞く。


「どこに行けばいい? 何も聞いていないんだ」


「アレスさんはユーグさんのパーティと行動します。 彼らと合流してください」


「わかった。 でそいつらは?」



――ドンッ


と扉がけたたましい音と共に開かれた。


「お前がアレスか」


――自信たっぷりに表れたそいつらは。


「足を引っ張らなきゃいいけどな」


――たくさんの嫌味を言いつつ。


「どうでもいい、合わせる(・・・・)訓練をしよう」


――ゴミを見るような目で見やがる


「……」


――嫌な奴らだった。


















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