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雷を司る者  作者: 百紫鬼
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事の発端


――剣閃が煌めく。


首の皮まであと数ミリというところで頭を思い切り後ろに反らし、回避する。


額に流れる冷や汗を拭おうともせずに俺は剣を振るう。


――ザシュッ


お返しだとばかりに振るわれた片手直剣(ワンハンドソード)が相手の首を浅く切りつけた。


戦場の真っただ中でありながらシン、と辺りが静まり返った気がした。


ドサッ


相手が倒れる。ありったけの憎悪をこちらに向けたまま。

俺は気を抜かずに周囲を警戒する。


風が吹き、木の葉を揺らす。


――後ろから殺気!


「チッ!」


舌打ちと共に剣を後ろに振りぬく。


キンと甲高い音がなり鈍い衝撃が奔る。


今のは危なかった

一瞬遅れていたらこちらが死んでいた。


相手は奇襲が失敗した瞬間に距離をとっている。

刹那の静寂の後、森がざわめく。


――気配(・・)


目の前のヤツ以外にも魔法師がいる――ッ!


瞬時に魔法を練り上げる。

体内に燻っている何か(・・)煽る(・・)


喚起した魔力が体から漏れ出し、周囲に漂い始める。

透き通った紫色の粒子が迸り、方向性(・・・)を持ち始める。


俺は魔法名を口にした。


雷よ(サンダー)


コンマ数秒で行われた魔法構築に目を丸くして驚く二人。


掲げた手から紫電が迸り、二人に伝う。


――ガンッ

と音がして絶命する。


地べたに倒れながら男が言った。


「お前が”紫電”か……」


「……そう呼ばれることもある」


「魔法…だけじゃないんだな……」

剣も使えたのか、と言いたいらしい。


「まあな、どちらかといえばこっちの方が得意だ」

俺は剣を指さし、律義に男に答える。


「く…そ……」

悔しそうに顔を歪める男


「今は、だけどな」


ポツリと呟いた独り言は、どうやら聞こえなかったらしい。



「ふぅ……」


ここまで来て俺はようやく一息つく。


「99人か…」


一人つぶやいた言葉は、どんよりとした空に消えていった。




後に100人切りと恐れられた、伝説の傭兵が誕生した瞬間だった――。









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