粉々になる聖剣なんか作ってんじゃねぇ!!
ざわざわと木の葉が揺れる。7月下旬、夏真っ盛りだが今日は風が強くてわりと過ごしやすい。しかも今日は一学期の終了日だ。いつもなら鼻歌でも歌いながら家に帰る所だが……
私は森の中でがっくりと膝をついていた。
「はぁ……」
ため息をつく私にはお構いなしに、小鳥がさえずる。
『もしもし、ポリスメン?たった今聖剣を見つけた者ですが……なんかね、勢いで抜いたら砕けたんですよねー、ははは……』
「……なーんてポリ公に言える訳ねぇだろうがふざけんのも大概にしやがれこのクソボロ剣があああ!!」
特に関係のない小鳥を捕まえて、池に落とした。小さな水柱が生まれて消えた後、ぶくぶくと泡が浮かんだ。
今、私の足許には金属片が派手に散らかっている。しかし、鉄塊を壊したのでなければ銀塊を爆破したのでもないし、金塊を金箔にしようとした訳でもない。
聖剣を抜いた途端、こうなってしまった。ただ、それだけなのだ。
果たして私は選ばれし勇者だったのか。はたまた王様候補にされてしまったのか。
どちらにせよ、それを選ぶ聖剣が壊れたら私はどうなるんだろう……
「……あっ、もしかしたら選ばれた人が抜いたら壊れるとか……」
『いや、それはない』
ショックのあまり四つん這いになっていた私が顔を上げると、王冠を被って赤いマントを付けた……いかにも王様っぽい人が悲しげな顔で立っていた。コワイ!
『もう一度言うが、それはない』
そして砂の様にさらさらと消えた。
「ええ……」
取り残された私は、不満と不安がこもった呟きを漏らす。
これって、バチアタリに入るのかな?「神社お賽銭奉納保険」は適用されるの?
……そうだ、確か担任の先生が自由研究の宿題を出してた様な。
私は無意識に、手を切る事さえ恐れず聖剣の欠片を集めていた。
「……いっちょ作りますか……新しい聖剣」
ポーチが欠片でいっぱいになった所で、私はゆっくりと立ち上がった。
そう……私の夏休みはこれからなのだ。ででん。