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夜戦 (性的な意味で)

 夜になった。


 夜陰に乗じて敵が奇襲をかけてくる可能性は高い。高台に布陣した場合、昼間の戦闘では視界が開けて優位に立てるが、夜は接近する敵に気付きにくい。この夜間に敵も高台の制圧を試みるだろう。とは言え無駄に疲労しては明日の戦いに影響が出る。

 俺は人間部隊を3シフトに分割し、警戒に当たらせた。また、べリアル配下の夜行性の魔物たちは終夜警戒に当たっている。


 夜営地の設置は魔導士たちが行い、組成魔法で居心地のよいテントを作ってくれた。対魔法コーティングを着ている方が安全ではあるが、疲れきった体にこのテントは魅力的だ。俺たちはメカを物陰に安置し、個々に用意された将軍用のテントに入った。


 疲れた。当たり前だが人を殺したのは初めてだ。肉体的には疲労していたが、それ以上に精神的に興奮している。眠らねばと思うが寝付けない。


「サトシ、おるか?」

 アルデの声だ。俺は返事をするとアルデを迎え入れた。彼女は薄い布を身に纏っている。


「どうした?アルデ」

「寝付けんのじゃろう?儂も寝付けなくてのう。添い寝でもしてもらおうかと思ってな」

 相変わらずいたずらっぽい表情で話す。が、少し照れているようにも見えた。


「いいよ。俺もなんかソワソワしてたんだ。こっち来な」

 アルデをベッドに誘う。彼女は素直に従いベッドに潜り込んだ。


「サトシは父上と同じ雰囲気を持っておるな」

「そうか?同じ世界から来たからかな?」

「かも知れぬな」

 他愛ない事を話す。


 突然アルデの口調が変わる。


「儂は今日、沢山の人を殺した。その者達も儂と同じく意思を持った人間じゃったんじゃろうな」


「後悔しているのか?」


「いや、国を守るためじゃ。仕方のないこと。じゃが」


 アルデは沈黙した。肩が震えている。泣いているのか。俺はアルデを後ろから抱き締めた。


「儂は怖い。死ぬのが怖い」


 アルデは俺の腕の中で体を捻り、こちらを向いた。その目には涙がこぼれている。


 俺は彼女の瞼に口をつけた。口のなかにしょっぱい味が広がる。俺は腕をアルデの腰に回し下半身を引き寄せた。華奢な腰に手をかけると、ふっくらとした臀部の存在が小指から伝わってくる。アルデの顎は上向きになり自然と唇同士が触れた気がした。


 アルデは目を閉じて体を俺に押し付ける。彼女の温もりと凹凸を俺は胸、脚、下腹部で感じた。アルデは俺の太ももを自分の脚で挟む。彼女の脚の付け根から熱を感じる。


 俺はアルデの首もとに顔を埋め、首筋に唇を這わせる。油と埃の匂いの中に甘ったるい香りが混じる。アルデの息遣いが少し荒くなる。唇は耳元、頬、彼女の小さな唇に重なる。アルデが俺の唇を甘噛みする。いつの間にか二人は舌を絡ませる。


 暗闇のなかで俺の手は彼女の肌を撫で回す。同様にアルデも脚を絡め、俺の肌を撫でる。二人の息づかいだけが聞こえる。やがて唇を離しアルデが囁く。


「固くなっておるな、苦しいのじゃろう?」

 表情は見えないがきっといつものイタズラな笑顔だろう。自分でも強く脈打っているのが判る。アルデは小さく笑うと手のひらでそれを優しく撫でた。


 アルデの小さな胸に触れる。

「ん」

 小さな吐息が聞こえる。その手を腹部、そして下腹部へと滑らせる。吐息は激しくなる。やがてその手はささやかな草原に至る。アルデにもはや余裕はない。俺の指は熱い隙間に滑り込んだ。


「好きじゃ」

 アルデが消えそうな声で言った。


 俺たちはひとつになった。




 甘い時間は突然の轟音で断ち切られる。

「将軍!敵襲です!」

 伝令が叫ぶ。俺とアルデは素早く身支度をしマシンへ向かった。俺たちめがけて放たれる火炎魔法を周囲の部下が食い止める。


 視界の端にこちらに向かって弓を引く敵が見えた。そこへ光の塊が敵兵に襲いかかり、その体は地煙になって消滅する。


「サーシャ!助かった!」


「戯れもよろしいですが、時を選ぶべきです」

 サーシャはそういい放つと敵軍にまた突進した。


 俺とアルデがマシンに乗り込もうとしたその時、耳元で声がした。


「貴様が大将だな」


 振り向くとそこに黒い布を纏った男がいた。男が手を振り上げる。アルデの右手足が引きちぎれ宙を舞う。敵だ、それも人間離れした。


「くそっアルデがやられた!」

 その声に気付いたサーシャがこちらに飛んでくる。が、それよりも早く男は俺の首を掻き切った。





 一瞬の暗転。俺の体は動かない。目を開くとサーシャが懸命に回復魔法をかけてくれていた。


「アルデは?」


 アルデは俺のとなりに寝かされていた。息はあるようだが救護兵が回復魔法で懸命に看護している。


「敵は?」

 俺は声を振り絞りサーシャに聞いた。


「べリアルが戦っています」


 闇に目を凝らすと、そこには二人の黒い男が死闘を繰り広げていた。


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