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いまだかつてないNYT

 ワイらは『ケロハメ』の町に着いた。


 この町は温泉の町っちゅうことで、国中から観光客が集まる場所なんやて。

 大きい町やから仲間もすぐ見つかるンゴねぇ。


「腹へったンゴねぇ」


 もう何度言うたかわからへん。腹が減ってしかたがないわ。

 サトシの奴は昨日の戦闘以来ずっと黙っとる。本当に陰キャやな。



 さすが観光地。立派なホテルがそこかしこに建っとる。

 道端には「ケロハメ名物温泉まんじゅう」やら、「ケロハメ卵」とかの露店がひしめき合っとった。

 道行く人たちは風呂上がりなのか、薄い布を巻き付けただけの格好をしとる。



「さて、今日はここに泊まるか」

 勇者が中でもひときわ豪勢なホテルを指差した。



「ファー、金持ちやなぁ......」

 ワイが感心しとると勇者が言うた。


「まぁ、俺は国王に認められた唯一の勇者だからな。

 この国のあらゆる施設を自由に、かつ優先的に使えるんだ」


 マジか。大物やんけ。



 ホテルでは全員同じ部屋やった。

 寝込みを襲われても対応できるようにって事らしいな。

 馬車内でもそうやったけど、まんの者と一緒に寝れるんは楽しいなぁ。


「私たちはお風呂に行ってまいりますね」

「勇者は酒場に行くんだよね?後で酒場で合流でいいかな?」



 まんの者達が風呂に行くと!

 となると、ここは覗きに行くのが男気やな!


「ワイも風呂に行くで!」


「では一緒に参りましょうか(ニッコリ)」


 ほぇー、僧侶ちゃんぐうかわやで。




「分かった、俺達は酒場に仲間を探しにいくよ。サトシ、お前も一緒に来てくれ」

 サトシは黙ったまま目で返事した。本当に陰キャやで。


 男たちと都合よく別れたワイらは温泉に向かったのであった。




------------


 勇者に連れられて俺は酒場にやって来た。


 この男が俺をついてこさせたのは自分の監視下に置くためだと言うことは明白だった。



「なぁサトシ、お前はあいつをどう思う?」

 勇者の視線の先には金属の塊に座った小柄な少女がいた。


「あれは、ロボット?」

 少女が腰かけている金属の塊は、この魔法の世界には似つかわしくない造形をしていた。

 ロボットアニメに出てくるような未来の戦車のようにも見える。

 側面にはおそらく手足であろう突起もついている。


「よし、決めた。あいつに話しかけてみよう」

 勇者と俺は少女に近づく。少女もこちらに気づいた。


「勇者じゃな。探したぞ」

 少女はイタズラな笑みを浮かべた。

 勇者は少し面食らった様子だ。


 少女は続ける。

「『運命の五人』はどれだけ揃ったかの?」


「これは驚いた。俺のことも旅の目的も知ってるとはな。

 お前、何者だ?」



 少女は金属の塊からふわりと降りた。

「儂はアルデ、メカ師じゃ。そしてこれが......」


 アルデが指をならす。その音に応えるように金属の塊が起き上がった。


「バラン。

 儂の相棒なのじゃ。」


 バランは体高3メートル程の人型を成した。

 全身が鈍く光る銀色をしている。



「メカ師...お前もレアジョブか」

 勇者は探し物を見つけたという表情をしていた。

「アルデ、俺たちと一緒に来てくれるか?」



 勇者の問いに対しアルデは答えた。

「勿論じゃ。儂もお前を探しとったからな。時に......」


 アルデが俺の方を見る。

「その『びじねすすーつ』。お主、この世界の者ではないな?」


「あぁ、一昨日この世界に迷い混んだんだ。」


「儂の父もお主と同じ『びじねすすーつ』を持っとったのじゃ。

 前の世界では『ろぼっとえんじにあ』のジョブをやっておったと聞いておる」


「本当か!親父さんはその後どうなった!?」

 興奮禁じ得ない。俺の前にこの世界に来た人間がいたとは。

 俺はその人物がもとの世界に戻れたか知りたかった。



 だが、アルデの答は俺の期待したものではなかった。


「死んだよ。

 最後までもとの世界に戻る方法を探しながらな」



 絶望。

 それ以外に今の心境を表す言葉は見つからなかった。




------------


 温泉街を美女二人と歩くワイはリア充気分や。


「わー!可愛い(ノ≧▽≦)ノ」

 魔法使いは露店のアクセサリー屋に釘付けや。


 さっきからスマホが【振動バイブ】(※特技)しまくっとる。

 バイト先からのメールやで。


 が、もう知らん。ワイはクソな人生から解放された。

 この世界でチヤホヤされて生きるんや。


 何が悲しくて美大出て清掃バイトなんぞせにゃならんのか。

 もうもとの世界に戻る気はさらさらないわ。


 魔法使いは青く光る(発光しとる)石のあしらわれたピアスを買うた。


 顎髭の露店商が仕様を説明する。

「このピアスは他者の生命力を吸収して、

 自分の魔力に置き換える魔法が設置されてる代物だ。

 これがあれば体力のある敵と戦うときに便利だぜ」


 魔法使いは早速ピアスを装備した。ギャル感が増してええ感じや。

 ポーズを決める魔法使いを僧侶が微笑みながら見とる。

 その間ワイは僧侶の胸を見た。



 ワイらは目当ての温泉に着いた。

 温泉施設の建屋は大きな神社みたいな見た目をしとる。


「ファッ!?」

 ワイは気づいた。

 大きく開かれた建家の入り口から見える構造。

 着替え処は男女に別れとるものの、湯屋の入り口は一つしかない。


 と言うことは。




 つまり混浴。(真顔)




「さぁ参りましょう♪」

「久しぶりのお風呂だょー(*´Д`*)」


 奇蹟のカーニバル 開 幕 だ




------------


「勇者よ、『運命の五人』はどれだけ揃ったかの?」

 アルデが勇者に尋ねる。


「『運命の五人』?」

 アルデがさっきも話していたフレーズだ。


「あれ?まだ話してなかったっけか」


~~


 この星には赤い月、青い月、白い月の3つの月が存在する。

 3つの月にはそれぞれに国が一つずつ存在していた。


 昨年、3つの月は軍事同盟を結んだ。


 と言うのは建前で、

 実際には赤い月が2国に対し圧倒的な軍事力で不平等な同盟を押し付けたのだ。


 赤い月は軍事政権に支配された国家であるとともに最も優れた魔法国家でもある。

 失われた古代魔法である星間転送魔法は現時点で赤い月しか復元に成功していない。


 すべての国民は老人から幼子にいたるまで戦闘員としての階級を持ち、成人は年に一度、年齢当たりの戦闘能力が下位1%の者は「間引き」として処刑される。


 一方で近年資源が枯渇しており、資源が豊富なヌージィガへの侵略は秒読み段階であると考えられている。



 事態を重く見たヌージィガ国王は、国内の預言者を集めこれから起こりうる未来の預言パターンを纏めさせた。

 その結果、ヌージィガが生き残る唯一のパターンは「唯一無二の特性」を持った五人の将軍を立て事態に対応する。という事が分かった。


 早速国王は国の保護下にあった勇者を呼び出し、勇者以外の四人の捜索に派遣した。


~~


「唯一無二の特性...だから俺たちを確保したんだな?」

 俺の問いに勇者は笑みで返した。


「勇者、儂、サトシ、酒井。あとは一人か」


「最後の一人は俺に心当たりがある」


「して、その者はいづこに?」


「ちょっと、な。行き辛い場所にいるんだよ」

 勇者は苦笑いしながら答えた。




------------



「酒井さんが前いらっしゃった世界はどのような所だったのですか?」


「んー...そうやなぁ、あんまおもろい所じゃなかったで。

 こんなに美人に囲まれることも無かったしな」


 今ワイは一糸纏わぬ美女たちと入浴しとる。

 人生のなかでこんなにも輝くニューヨークタイムズがあっただろうか(いやない)。


 僧侶は長い髪を頭の上にまとめて湯船の縁に座っとる。

 色素が生まれつき薄いのか、真っ白な肌や。

 小玉スイカほどもある乳房の先には薄いピンクをした大き目の乳輪。

 肉付きのよい下半身、

 縮れは少なくたっぷりした茂み。

 


 ええなぁ。セクロスしたいなぁ。




「酒井ぃー見すぎぃー(ー_ー;)」


「しゃーないやろ、目が勝手に見よるんやで」


 魔法使いは肩まである髪を後ろに束ねてこれまた湯船の縁に座っとる。

 湯の上からでも普段露出している部分と隠れている部分の境目がはっきりとわかるくらいの日焼け。

 小振りではあるが形の良い膨らみの先っちょは濃い肌色をした小さめのお乳首がちょこんと。

 きゅっと引き締まった腰回り、茂みというには貧相な産毛のような渓谷。


 これはこれでたまらんなぁ。



「もうワイはこのまま死んでも構わんな」

 冗談を言うたその時、目の前の風景が急にぼやけた。


 湯が熱いからか?

 目の前の光景に興奮したせいか?



 のぼせたんやろか…意識が朦朧としてきたわ…。



 アカンで…



「酒井さんッ!!!」

 僧侶の声が聞こえた…


 そこでワイの意識は途絶えた。




------------


「行きづらい場所?遠いのか?」


「遠いのはそんなに問題じゃないんだが、準備が必要なんだよ。

 あいつら相当俺のこと恨んでるだろうからなぁ」


「あんたほど人望を集める特技があっても恨まれるんだな」


「......ダムー...じゃな?」

 アルデが真顔で尋ねた。


「あぁ、『魔王』ダムーだ。

 俺の知ってるすべての存在の中でも最も能力の高い奴だ。

 魔力は魔法使いの一個師団に相当し、腕力は巨神族にも勝る。

 多民族である魔族の国を治める知力、胆力。

 何より奴の命令一つで魔族の全てが動かせる。

 この先の戦争では必要になる戦力だ。

 前の戦いで封印したが、この星のためなら奴も協力するだろうよ」


「じゃが、問題は『封印の地』までの道のりじゃなぁ...。

 魔王が封印されておる祠は魔界の底と聞くが」


「俺、恨まれてるからなぁ。魔族全員で襲ってくるだろうなぁ。

 普通に行けば皆殺しにされかねんな」


「すなわち準備とは戦力の増強じゃな」


「あぁ、俺が封印を解いてダムーを説得するための時間を稼ぐ必要があるからな。

 これから国王に増援要求をしようと思う。

 早ければ明後日には増援が着くだろう。」


 そう言うと勇者は懐から紋章の付いた紙を取りだし、そこに国王への便りを書き、筒上に固く丸め指にはめた。

 そして酒場の前の通りに出て紙を持った空を指差した。


「【通信魔法インフォメイル】」


 便りは空の彼方へ猛スピードで飛んでいった。



「あとは待つだけだ」




 そこへ魔法使いが走ってきた。

「勇者!大変だよ!酒井が倒れた!」




------------


 起きた。ここは......ホテルか......どれくらい寝とったんやろか......。

 頭痛と吐き気が酷い、寒気もする......。



「僧侶、酒井の具合はどうだ?」


「回復魔法も解毒魔法も効果が現れません......」


「そうか......念のため酒井から装備は外しておいてくれ」




 あー......ワイダメかもしれんね......

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