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私のHERO  作者: なにかのたまご
9/10

9

《“火ダルマになる”の条件を満たしました。爆炎ヒーロー、フレイリートが開放されました》




突如頭に響いたその声に俺は困惑した。条件を満たした?爆炎ヒーロー?

これはあれか?特定の条件を満たすことで新しい変身ヒーローに変身できるようになるということか?だとしたら条件がきつくないか?火ダルマになるってなんだよ!

爆炎って事は炎系か?詳しい事は分からないがこの状況を覆せるなら何でもいい。俺は黒豚から距離をとり構える、何かする気である事を察した黒豚は動きを止める。


『今度は何をするんだ?待っててやるから見せてみろ』


「そいつはどうも、だがその余裕が命取りになるぜ」


そうして俺はポーズを取りつつあの言葉を叫ぶ。


「変〜身〜ヒーロー!」


そして俺の身体は光に包まれる、光が弾けると炎が吹き出しその中から炎を想わせるファンタジックな全身鎧に身を包んだ俺が現れた。


「爆炎ヒーロー!フレイリート!!」


変身すると同時にこの姿の情報が頭に流れ込んでくる。なるほど、これはそういうヒーローか。


『ほう、姿が変わったか。それで俺に対抗できるのか?まあいい、試させてもらおう、震炎昇!』


また地震が起こり俺の足元の地面から巨大な火柱が立ち上る、俺はまたその炎にのまれた・・・・・が。


『むっ!?』


超高温の火柱の中で俺は平然としていた。ゴウタインですらあれだけ熱かったのに今は全然平気である。ゴウタインがいろんなものに耐性を持つ万能型ならフレイリートは炎や熱に対する特化型、炎や熱にはゴウタインよりもはるかに強いようだ、そのかわり他の耐性では大きく劣るが。


「お返しだ!」


そう言って拳を構えると拳に炎が集まってくる。


「はっ!」


拳を突き出すと炎の塊が弾丸のように飛び出し黒豚へ迫る。


『ちっ!』


黒豚が初めて回避行動をとった。炎は先ほどまで黒豚がいた場所に着弾し爆発、その場を超高温の炎で包み込む。


『・・・ほう、これはなかなかの威力だな』


「まあな、この姿の能力は炎を生み出し炎を操れるというものだ。俺の炎とお前のマグマ、どちらがより熱いか勝負と行こうか?」


『・・・ぶっ、ぶははははは!面白い!受けて立とう!』


こうして俺たちのファイナルラウンドが始まった。


「うりゃあああああ!!」


『はあああああああ!!』


俺たちはお互いにせめぎ合う。拳で武器でと相手に攻め込み防ぎ合う、フレイリートはゴウタインほど身体能力が強化されないようだがその分炎を操って奴の動きを絡め取り強固な防御を焼き崩す。奴も炎に対する耐性はあるようだが無敵なわけではないようだ。


『むん!』


黒豚がハルバートを振り上げて俺を上空へと吹き飛ばす、そしてその場にどっしりとした構えを取ると俺に向かって大きく口を開く。またあれか!そうはいくかよ!

俺は炎を吹き出し空中で態勢を整えると跳び蹴りの姿勢を取って黒豚に突撃する。全身に超高温の炎を纏い後方に炎を噴出して加速する、加速加速どんどん加速、その姿はさながら隕石の如く。


『噴撃咆哮!』


「りゃあああああ!」


その火山の噴火と高速で飛来する隕石は空中で激突した。辺りに炎や溶岩が飛び散って衝撃や轟音が響き渡る。お互いに引かない、だが負けん!残りの魔力を全てこの一撃に込める!


『があああああ!』


「うあああああ!」



互いの全力がぶつかり合い、そして・・・・・黒豚の噴火を切り裂いて飛来した俺のとび蹴りが奴のどて腹をぶち抜いた。


『!!!』


勢い余って地面を削りながら滑っていく俺、何とか止まり顔を上げると胴体に大穴を開けた黒豚が直立不動していた。


『ぐ・・・は・・・何・・と・・』


「はあ、はあ、はあ」


『ぶ・・ぶははは・・は・・やるな・・・まさかこの俺が・・・負ける・・とは・・・』


「はあはあ、正直ギリギリだったよ。これで決まらなかったら負けたのは俺の方だ」


『互いに・・死力を・・・尽くしたか・・・ぶはは・・・負けたのは残念だが・・楽しかった・・・ぞ』


その言葉を最後に仰向けに倒れ動かなくなった。


「はあ、はあ、勝った・・・か」


俺がその場に膝をつくと同時に変身が解ける。もう無理、動けない。

俺はその場に倒れ伏した。




##################


~その翌朝の村にて~



村の広場に武装した男たちが集まり更に多くの村人たちが集まっていた。その中にあの若い夫婦の姿もある。


「本当に行くの?」


「行くとも。行って奴らをどうにかしないと俺たちは終わりだ」


「でも・・・盗賊だけじゃなくオークの群れもいるのよ?特に一度だけ村に来たあの黒いオークにはとても勝てるとは思えないわ。昨日だって大きな地震が起こったり北西の森の方で火柱が見えたりおかしなことが起こってるし」


「だが助けを呼ぼうにも呼びに行った奴は帰ってこないし助けも来ない。俺たちはおそらく見張られている、どうにかしないと俺たちはみな殺されるだろう」


「でも・・・でも・・・」


「すまない、わかってくれ」


「おとうさん、いっちゃうの?」


女の子が不安そうな表情を浮かべて父親を見上げる。


「ああごめんな、でも行かなきゃならないんだ。すぐ帰る、必ず帰ってくるから、お母さんといい子にして待っててくれ」


「・・・・・うん」


「おーい!そろそろ出発するぞ」


「おっとそろそろ行かないと、じゃあ行ってくる」


「・・・あなた、どうか無事で帰って来てね」


「かえってきてね!」


「ああ、行ってくるよ」


おそらくその願いは叶わない、そう分かっていても父親は歩を進め母子は引きとめたい気持ちを押し殺して見送った。


「・・・お前たち、覚悟はいいか?」


集まった男たちに自警団の団長が最後の確認を取る、男たちは黙って頷いた。


「よし!では行くぞ」


守りたいものを守るため、男たちは戦場へと歩き出す。・・・・・・そして十歩ほど進んだところで止まった。


「うん?」


村の外から誰かがこちらに歩いてくる。奇妙な形の鋼色の全身鎧に身を包んだ男だった。


「おはようございます」


「え?あ、ああおはよう」


「皆さん、これからお出かけですか?」


「ああ、北西の森に住みついた盗賊と魔物どもを退治しにな」


「そいつらならもう俺が始末しましたよ」


「へっ?」


「そいつらなら昨日俺が始末しました。ただまあ、その時の戦いで北西の森が滅茶苦茶になっちゃったけど」


「えっ?」


「あなた達から奪ったであろう食糧や金品を回収しようとしたんだけだけど見つからなかったよ、ごめんね」


「はっ?」


「代わりにと言ってはなんだけどこれあげます。魔核とドロップアイテムです、売るなりなんなりして生活の足しにして下さい」


そう言ってアイテムボックスの魔導具から大量のオークの魔核とオーク肉、さらに黒豚からドロップしたハルバートを取り出す。


「ふあっ!?」


「あっ、この村を見張ってたオークも始末したんでもう大丈夫ですよ、それじゃあ」


男は片手を上げて村人たちの方へと歩いていく、男たちは呆然として見送った。


「すいませーん!このネックレスに見覚えのある人は?」


そう言って例の首飾りを掲げる。


「あっ!それわたしの!」


男を指さす女の子がいる、あの子だ。


「おお、君が依頼人だね。とある男から君の依頼を受け取ったよ、依頼通り悪い奴らは退治した、もう大丈夫だ」


「わるいひともういない?」


「ああいないよ、もう大丈夫。依頼は確かに完遂した、これは報酬としていただくよ・・・でも」


男はその首飾りを女の子に掛けてあげた。


「やはりこれは君が掛けてこそ価値があるようだ。これは君にあげよう」


「いいの?」


「ああ、いいとも」


「ありがとう!」


そう言って女の子は満面の笑みを浮かべる。うん、やはり子供は笑顔である方がいい。


「それじゃあ俺はこれで失礼するよ、さらばだ!」


そして男は一跳びで何十mも飛び跳ねあっという間に姿を消した。


「ありがとう~!」


呆然とする村人たちの中でその女の子だけは笑顔で手を振り続けた。




###################






「ふぅ・・・」


村からだいぶ離れた場所で俺は変身を解除する。


「これで大丈夫かな?大丈夫だよな?正体ばれてないよな?」


俺は自分の身体を見回す。うん、大丈夫そうだ。

あの後しばらくして少し回復した俺は再びフレイリートに変身し燃える森の炎を消火して回った。炎を生み出せるように炎を消す事も簡単だった、まあ魔法や魔物の炎のように大量の魔力を含んだ炎は消し難いようだが。

そして村の奪われた物やドロップアイテムを回収して回った。あいにく先程村で言ったように奪われた物は見つからなかったが、盗賊どもが使い尽くしたのか戦いの余波に巻き込まれたのか分らないが無い物は仕方がない。食糧や金品をほとんど奪われてこれからの生活が大変だろうし代わりに魔核とドロップアイテムを渡すことにした、森を滅茶苦茶にした罪悪感も少しはあるしな。

黒豚からドロップしたハルバードも渡すことにした。あいつが使っていた物より小さくて人間サイズである、それでも十分デカいのだが。炎を模ったかのようなデザインはなかなかかっこよくて強そうだ、だが凄く目立ちそうでもある、正体がばれてはいけない俺が使うには都合が悪そうだ。まあその場にある物を使うのが俺の戦闘スタイルなので渡しても別にいいか。

俺が唯一手に入れたのは黒豚からドロップした黒オーク肉である。これは超高級食材らしい、しかも量が牛数頭分はある。これはうまそうだ、これ位の役得はあっていいよな?


「さて、次の町を目指しますか」


俺は町を目指して歩き出した。











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