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私のHERO  作者: なにかのたまご
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3

「おお、見えて来た」


村を目指して歩く事数時間、ようやく村が見えてきた。この世界に来て初めて人に会えそうだ。ああ、その前に服を着替えよう、今着ているのは前の世界の服だしこのままじゃ変に目立ちそうだ。

木陰で手早く服を着替えマントを羽織り村に向かう、村の入口で村人らしき武装した男が立っていた。第一村人発見!門番かな?てか言葉は通じるのかな?


「こっ、こんにちは」


「ん?ああ、こんにちは。あんたは誰だい?見ない顔だが」


よし!通じる!


「俺は旅の者です。今日は此処で宿と物資の調達がしたいんですが入れてもらえませんか?」


「旅の者?そんな軽装で?道中の食糧とか大丈夫なのか?魔物や野盗と出くわす事もあるだろうに」


「こう見えてもそこそこ持ってますから大丈夫です。魔物や野盗に関しては逃げ足には自信があるので」


「ふ〜ん・・・まあいいか。しかし宿泊と物資の調達希望か・・・う〜ん」


「?何か問題でも?」


「いや、あんたに問題があるんじゃなくて今うちの村にちょっとな・・・。悪い事は言わねぇ、夜が明けたらさっさと村を出た方がいいぞ」


「どう言う意味です?」


「こっちの話さ。さっ、通ってくれ」


そう言って俺を通すとまた周囲を警戒し始める、何なんだ?

村に入ると軽く辺りを見渡してみる、そこそこの規模の農村の様だ。しかし何だろう?空気が重い、村人たちが不安そうにしてたりピリピリしてる、どうしたんだ?

そこらにいる村人に道を聞きながら俺は宿へと辿り着いた。すると宿の主人が・・・。


「え?ご宿泊されるんですか?」


「え?そうですけどダメなんですか?」


「ああいえ、ダメってことはありませんが・・・悪い事は言いませんから明日の早朝には村を出た方がいいですよ」


「門番の人にも言われましたけど何か問題でも起こってるんですか?」


「ええまあ・・・。正直巻き込まれないうちに村を去った方がいいですよ」


具体的に何が起こっているのかは教えてくれなかったがやはり問題が起こっているらしい。まいったな、とんでもない時に来ちゃったよ。更に雑貨屋などにも行ってみたが・・・。


「申し訳ない、今売り物がほとんど無くてね」


地図は売ってくれたが食糧などは売ってくれなかった。更に鍛冶屋に行ってみたが・・・。


「悪いな、今売るもんはねぇんだ」


すげなく追い返される、もしかしてかなり状況は悪いのか?そしてもう宿に戻ろうと道を歩いていた時だった。


「奴らだー!奴らが来たぞー!」


奴ら?何だ何だ?声のする方へ向かってみるとちょうど門をぬけて村の中へ入ってきた奴らがいた。その内三人は見るからに盗賊といった風貌の男たちで残りの四体がーーー二足歩行の豚!?もしかしてあれってオークって奴か?俺はお役立ち大百科を向ける。



検索:オーク(魔物)

身長が二メートル以上ある二足歩行の豚型魔物、脅威度はE、力が強く硬い皮膚とぶ厚い脂肪に守られている。ゴブリンほどではないが集団で行動することが多く繁殖力も高め、ゴブリン同様に種族の雌を攫って自分達の仔を産む母体とし繁殖する特徴がある、女の敵。ドロップするオーク肉は美味。



やっぱオークか。てかなんで人間と魔物が一緒に行動してるんだ?


「ひひひ・・・今回もはるばる来てやったぜ」


「くくく・・・さっそく食糧を渡してもらおうか」


「へへへ・・・あと例の期限も近いぜ、準備はできてるんだろうな?」


何だあいつら、あと例の期限ってなんだ?

俺は近くにいた村人に話を聞くことにした。


「あの、あいつらは何者なんです?もしや・・・」


「ああ、見ての通り盗賊だよ。三ヶ月ほど前にこのあたりに流れてきたようでこの村から北西にある森を根城にして最近まではたまに荷馬車を襲うといったことを繰り返していたんだがそれが今か一月ほど前には直接村にやって来るようになったんだ。どういうわけかオークの大群を引き連れてね。それからたびたび村へやって来ては食糧や金品などを要求するようになったんだ、断ればオークの大群が村に襲い掛かるぞって脅しつけてな」


「なるほど、そんなことが・・・因みに例の期限って何のことなんです?」


「・・・あと数日以内に村の妊娠可能な若い女たちを差し出せだとよ。ふざけやがって!」


よほどはらわたが煮えくり返っているのか拳を強く握りしめ体を震わせていた。盗賊とオークどもに差し出された女たちの末路は悲惨なものになるだろう、かなりひどい状況だな。

結局、盗賊とオークどもは村が用意した食糧を奪うとせせら笑いながら去って行った、嫌なものを見た。悔しそうな顔で散って行く村人たち、・・・俺も宿に戻ろう。そのまま俺は嫌な気分を抱いたまま夜を明かすこととなった。


翌朝、俺はさっさと村を去ることにした、さすがにあんなのを一度に数十体も相手に戦う自信は無い。宿を出て村の出口へと歩き出す、すると・・・。


「あなた!バカな真似はやめて!」


「何を言うんだ!このままじゃ俺たちは皆飢え死にだ!それにあんな奴らに君を渡してたまるものか!」


「でもあなたにもしもの事があったら私は・・・。娘にだってあなたが必要で・・・」


「それこそ娘には君の事が必要だ!俺だって君を奪われたくない!家族を守って何が悪いんだ!」


「あなた・・・」


「これから村の男衆たちと最後の作戦会議を行うんだ。装備もそろった、皆も覚悟を決めた、明日決着をつける、家族も村も奪わせやしない!」


道で夫婦らしき若い男女が言い争っている。男の方は強気だけどどちらも勝ち目は薄いって分かっているようだ。勝ち目がなくても譲れぬ想いか・・・。

そんなことを考えていると不意に俺のズボンが引っ張られる。ん?何だ?下を見ると五歳くらいの女の子がこちらを見上げていた。俺はその場にしゃがみ女の子と目線を合わせるとこう言った。


「俺に何か用?」


「おにいちゃんはそとからきたひと?」


「ああ、そうだよ」


「もしかしてぼーけんしゃさん?」


「え?いや、オレは・・・」


「おねがいします、たすけてください。むらにわるいひとたちがきてたべものをもっていっちゃってみんなこまっているんです。こんどはおかあさんもつれていくって・・・おねがいします、おかあさんをたすけてください、おねがいします」


「・・・・・」


涙を浮かべ必死に助けを訴える女の子。俺は・・・。


「たすけてくれたらわたしのたからものをあげる、おとうさんとざいりょーをあつめておかあさんとつくったの。おねがいします」


そう言って差し出してきたのは綺麗な石や木の実を加工したネックレスだった。俺は無言でそれを受け取った。


「あっ!お前何をしてるんだ?」


「こら!ダメよ。すいません、娘が何か・・・」


そう言って近寄ってきたのは先ほど言い争っていた若い夫婦だった。


「ああいえ、この子がこのネックレスをあげるからお母さんを助けてと・・・」


「まあ、この子ったら・・・。ダメよ、無関係な人を巻き込むようなことをしちゃ」


「お前の気持ちは嬉しいが旅の人に無茶言っちゃダメだぞ。すいません、娘が無茶を言ったようで」


「いえ、いいんですよ」


俺はもう一度女の子に目を向ける。


「これは受け取っておくよ、君の想いと報酬は確かに受け取った。なに、心配はいらない。俺には無理だけど代わりにとびっきりすごい人を呼んであげるよ」


「すごいひと?」


「ああ、とびっきり強くてかっこいい、ヒーローをな」


そして俺は村を出た。







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