あのこの裏切りを僕は知らない
付き合って二か月にもなる。
高尾はそう思い、優樹菜に口づけをした。
「もう、急に……」頬を染める優樹菜を高尾は抱きしめた。
好きだ。好きなんだ。
そればかりが頭をループする。
夕焼けは2人のムードを高めた。高尾は思う。ホ、ホテルに行かないか?
しかし、優樹菜には全くその気はない。
最後までいけるのか?その判断はいつでも微妙だ。
「2人っきりになりたい」
「嫌」一蹴。
次の日、高尾は憂鬱だった。
キスをした。その次のステップをしくじってしまった。TVゲームだったら即リセットだ。
現実はそうはいかない。
仮に人生のリセットを想定する。首吊り、練炭、リスカ……。
「おはよー」
いつの間にか、優樹菜は高尾のすぐ隣に来ていた。
「おはよ」
「んー、元気ないぞ」
「……昨日ごめんね」
「はは、気にしなくていいよぉ」
それはどういう意味。ストレートに聞きたい。
「ごめんね」
「だからいいって」ちゅっと頬にキスを受ける。「仲直り」
高尾はニヤケル、軽く勃起してしまった。
※
「でね、その不細工が言うのよ。愛している、本当に心の底から愛してるって」
優樹菜は、美香、葵に笑いかける。
「はは、ウケル」
「ホント」
「でも、優樹菜えらいじゃん、そんなキモイ事言われて我慢したんでしょ」
「うん、キープ君って大事だからね。クリスマスとかぁ、誕生日ぃ、1人ってやだからね」
※
「俺、ホント好き、結婚するかもしれない」
高尾は、高橋、酒井に神妙な趣で語りだした。
「そうか、応援する」
「ガンバレ」
「でも高尾偉いな、この年で将来の伴侶を決めるなんて」
「運命を感じる。俺頑張るんだ。今は勉強、いい大学入って、いい会社入る。公務員もいいかな」
※
優樹菜の30歳の誕生日に結婚した。教会式であった、純白のウェディングドレス、神のみもと永遠の愛を誓った。そして参列者のアメージンググレースが2人を祝福した。
投げかけられる「おめでとう」は皮肉にも感じられた。
優樹菜は微笑む。それは優越感なのかもしれない。