第一章 二
クラスの奴らの視線が一斉に自分に集中する。ったく、オレは見せ物じゃねぇっての。そして何事も無かったかのようにまた皆会話を始める。
あれっ、既にオレ出遅れた?ヤバイ誰かに話しかけてまずは友達作らねぇと。自分の席についた健太の中では焦りだけが募っていく。自分の周りだけ世界が動いてる…一人ぼっちってこんな感じなのか。今までは適当な奴らとつるんで適当な付き合いをしてた健太にとって、自分から話しかけていくのはけして簡単なことではなかった。
喉の辺りで声になりかけた言葉が行き場を失っている。オレって人に話しかける勇気もないわけ?健太はただ自分の不甲斐なさに、うつむき加減にその場に居座ることしかできなかった。
「ねぇ、君は名前なんていうの?」
一人でふさぎ込んでいるオレに声かけるなんてよっぽどの物好きか?健太は嬉しいという感情が顔に出ないように、難しそうな表情で顔を上げる。
「ねぇ、名前は名前。」
一人の女の子がオレに話しかけてる。今まで恋愛に不自由したことがなかったオレ。別に付き合ってもその子を好きだったって感情は一度もなかった。でもオレの中で何か何かはわかんねーんだけど、この子は違うって言ってる。
「えっ、あぁ名前ね、オレは健太、須加健太。え〜っと君は?」
何か妙にテンパっちまう。こんな感覚初めてかも。よくマンガやドラマなんかで一目惚れってあんのかよって思ってたけど、思ってたけど…そのまさかってやつ?
「私?私の名前はねぇ三國佳奈。よろしくね、え〜と健太君。」
ガラガラ、教室に担任らしき人が入ってきた。見た目は…明らかにゴリラ。
「よ〜し、お前ら席につけぇ。」
ゴリラの声で皆が一斉に席につく。オレ達ゴリラに飼われるのかよ。
「じゃっ、健太君またね。」
三國可奈、か。こりゃ楽しい高校生活おくれちゃうんじゃないのかなぁ。