第二章 六
雲一つない空。まさしく快晴ってやつだ。波が押し寄せては引いていく、ただそれだけなのに妙に新鮮な感じがした。都会からちょっと離れた海。ビルなどの高い建物もなく、普段の疲れを癒やしてくれる気がした。
四人一グループでバーベキューをやることになっている。オレのグループのメンバーは…
「おいっ須賀!ちゃんと肉持ってきたかぁ。肉があるかないかが一番重要なとこだからな。」
さっきバスの中ではしゃいでいた菊池がオレの顔を覗き込んできた。
「大丈夫!ちゃんと持ってきたよ。最高級の奴をな。お前らこそ大丈夫なんだろうな。」
オレは辺りを見回す。そこにはいるのはやっぱり菊池、安達、それから三國。
皆が材料を持ってきたと荷物を見せ合った。
材料が一杯入っていて、今にも破裂しそうなビニール袋を持っている三國。荷物が重いのか二の腕が少しプルプル震え、しかも顔が赤くなっている。
安達は持ってきた荷物を肩に担いでる。ここらへんに彼女の性格が滲み出ている気がする。
後は菊池。材料を見せびらかしてニヤニヤしてる。最初感じた印象をもはやこいつからは感じられない気がする。それが嫌ってわけじゃないんだ。明るくて人懐っこい性格だし、何気に頼りになる。
浜辺にある休憩所らしき場所でやるバーベキュー。他のグループもそれぞれの場所で準備を始める。皆の笑い声、騒ぎ声なんかが聞こえてくる。それぞれの顔は笑顔に満ちていて、テストだったら百点を貰えそうだ。
「あたし達もそろそろ準備しなきゃね!」
三國が何時になく張り切っている。腕まくりまでしてやる気満々だ。彼女の華奢な腕が露わになる。男のオレや菊池なんかと比べたら、まぁ比べるのもどうかとは思うけど、細い。握ったら潰れちゃうんじゃないかってなぐらい。
「ほらほら!他のグループより出遅れちゃうよ。」
「はぁ〜い。」
オレと菊池、安達は偶然にも返事が一致し顔を見合わせる。オレらは自然と笑みがこぼれた。
「三國さ、競争じゃないんだからあんまり慌てなくていいんじゃないか。」
「そ、そうだね。須賀君の言うとおりだ。でも、お腹すいたし早く準備しよう!」
ちょっと照れた感じで三國が返事する。オレはそのはにかんだ顔がランキング一位の秘訣なんだなって思った。
いよいよ準備が整い材料を炒める。
「ひとまず肉食おうぜ〜肉。肉、肉!」
箸をパチパチさせながら菊池がまだかまだかと言わんばかりに身を乗り出してる。
「ほら、野菜もちゃんと食べなよ。肉だけじゃバランス悪いだろ。」
安達が菊池の取り皿に野菜を入れる。きっと家でもこうやって弟達に料理を取り分けたりしてるんだろうな。
オレらのグループの中にはさっきバスの中でやったランキングの一位と二位がいる。もちろん二人には内緒だけど、改めて二人の良さを実感した。ランキングがどうのこうのいうんじゃなく、この二人はオレにはとっても眩しく見えた。菊池もそうだけど、オレには無い、ん〜その個性っていうか何て言うかそんなんがある気がする。
オレの個性か…ふとそんなことを考え始めた。自分が何者でオレは何のために存在してるのか?オレの良いところって何なんだ……
オレはそんなことを頭の片隅で考えながらバーベキューを楽しんでいた。