第二章 腹黒ショタ王子は先生に遊ばれる〜無自覚に煽ってしまってごめんあそばせ〜
放課後。教室の扉を開けると、小柄な少年がいた。整った金髪、鮮やかな碧眼。
私は内心、首をかしげる。
(……えーと、誰だっけ?見た目的にリディアの親族の方なのは確かよね。あとたぶん、私の元婚約者の親族よね?)
「先生。妹がお世話になっています」
にこりと微笑む少年。大人びた口調なのに、背丈はまだ幼さが残っている。
「どういたしまして。
リディアさんはとても素直でまっすぐですわ。ご家族も誇らしいでしょう」
「――っ」
一瞬、彼の笑顔が止まった。
◇
先にるんるんと歩いて行くリディアを見ながら共に廊下を歩く。少年は何故か忙しなくちらちらこちらを見ている。
「……先生は、私をどう思いますか」
「どうって?…ごめんなさい、申し訳ないんだけど、お名前を存じ上げなくって…」
「…この国の第二王子のリドルです」
「あら、そうでしたか!ごめんなさい、では、リディアのお兄様ですわね!お迎えにいらっしゃるなんて。とても大切にされているのね」
「……っ」
(元婚約者との顔合わせした時にいたような、いなかったような)
「…この国の王子に興味ないってどうなのですかね?」
「ま、まあそうよね!でも、リディアさんを大事にしているお兄さま、って印象の方がずっと素敵だからこれでよかったと思うわ!」
「……~~っ」
彼の耳が何故か赤くなった。
◇
「……先生」
「はい?」
「人をからかって楽しいですか」
「えっからかってなんていないわ?」
「……っ」
リドルは唇をかみ、鋭い目でこちらを睨んできた。けれど、その視線はどこか子どもっぽい。
「私を、甘く見ると、痛い目を見ますよ?」
「まぁ、頼もしいわ。リディアさんは安心ね」
「っ……!」
ぷいっと顔をそむける。
(……可愛いわね)
◇
「お兄さま、早くー!」
「……ああ」
リディアの声に応じてリドルは彼女の手を取った。去り際の横顔は大人びた顔だった。
◇
そして帰り道。私は階段を降りながら、ふと思い出した。
「……あっ!」
思わず声が漏れる。
「すっごく腹黒なショタ王子!攻略対象のひとりだったわ!」
思い出した瞬間、彼の赤くなった耳と、噛みつくような声色が頭をよぎる。
(あれ……あんなキャラだっけ……?)
リディアとリドルは妾腹で王太子に長年虐められており、婚約破棄&国外追放されてある意味エリスに救われたという事実は全くもって知らなかったのであった。




