表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

あなたのメイドは存在しませんわ

掲載日:2026/06/18

ある日、弁護士が訪ねてきた。


「突然ですが、お祖父様がお亡くなりになりました」


「おじいちゃん?」


玲奈に覚えはなかった。


正確には、祖父の従兄弟の弟の―なんたらかんたら―と説明されたが、途中で理解するのを諦めた。


とにかく遠ーい親戚らしい。


その老人には身寄りがおらず、遺産の相続先を調べた結果、玲奈が最後の親族だったという。




「こちらが相続されるご自宅です」


玲奈は思わず声を上げた。


「でっか!」


まるで映画に出てくるような洋館だった。


「なお、維持費も相応です」


「返します」


「既に手続きは終わっております」


「なんでですか!?」


玲奈は一人暮らし。


誰もいないはずなのに、


朝起きると朝食がある。


服は畳まれている。


お茶が出てくる。


声だけ聞こえる。


「これは。メイドに違いない!


こんなバカでかい、見栄が生きがいのおじいちゃんのお屋敷なら、

メイドの一人や二人や三人…はあたりまえ!」


「そうよ!そうに違いないわ!」


「私をご主人に値するか、テストをしているのだわ!」


玲奈はメイドを探す。


夜更かししてみる。


隠れてみた。


見張ってみた。


しかーし、探しメイドは見つからない。


それでも翌朝になると、


完璧に仕事が終わっていた。


「これほど探しても見つからないとは……さすがメイド。もうくのいちレベルだわ」


「いや……」


「これは上級メイドね」


「きっと英国式だわ」


「主人に姿を見せないのが流儀なのよ!」



メイド捜索に疲れた玲奈はソファに倒れ込んだ。


気付けば朝だった。


冷え込んだ夜風が開けっぱなしの窓から吹き込んでいる。


「さむいよー」


グズズーーー

チーン

ヘクチンッ


翌日、案の定、玲奈が熱を出した。


あ”-、38度かぁ~。


高熱で倒れた。


いつの間にか布団に入っていた。


数日間意識が曖昧になって、記憶がない。


その間ずっと、誰かが看病されていた気配がある。


額のタオルが交換される。


お粥が置かれる。


優しい声が聞こえる。


「お嬢様、大丈夫ですか。」



むくっ


「良く寝たー!!!」


お陰で回復した玲奈がいた。


ふと思う。


「私、一度もありがとうって言ってない」


その夜、初めて声に向かって言う。


「いつもありがとう」



し~ん


返事はない。


しかし翌朝。


テーブルの上に手紙がある。


そこには一行だけ。


『もったいないお言葉ですわ』


玲奈は微笑む。


そして手紙を裏返す。


裏には小さく。


メイドは存在しませんわ


玲奈は天井を見上げた。


「じゃあ今まで誰だったのよ!」



最後の最後に弁護士から電話がかかってきた。


「そういえば申し忘れておりました」


「何をですか?」


「あのお屋敷には使用人は一人もおりません」


「え?じゃぁ、他の誰かがいるの?」


「いえ、屋敷が勝手に動きます」


「は?」


「先代様の趣味でして」


「趣味で済ませないでください!」


「あと、そろそろ食材を補充してください」


「え?」


「補充しませんと皿だけ出てまいります」


「そこは自動じゃないの!?」


「さすがにそこまでは無理かと…。」


電話が切れた。


ツゥーツゥー…


「ちょっと!マニュアルはないの!!」



台所の方から声がした。


「お嬢様、本日の夕食はいかがいたしましょう」


玲奈は頭を抱えた。


「だから誰なのよ!」


おしまい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ