表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

これは魔法の世界の話〜帝国の太陽と光5〜



「帝国の…陽…幸福と…福を…」


 少しでも声を出そうとすると、全身が痛んだ。息を大きく吸いたくても肺が動かない。唾液の飲み込むこともやっとだった。

 わたしはこの20年、このリセットの魔法を抱えて生きてきて、命をつないでもらっていたと思う。

 それがもう終わるというだけ。


 瞼が重たい。なんだか、グランの声が近い気がする。

 ライラ、そう呼ばれた気がした。懐かしい響き。わたしのことをこう呼ぶのは一人しかいない。


「ぅ…ラン…坊…ん…」


 もうほとんど意識を持っている方が難しくて、手繰り寄せて絞り出したのは、愛しい貴方の名前だった。


 グラン坊ちゃん。

 貴方のことをこの世界でこう言えるのは、わたしだけだった。


 貴方のことを少しだけ子供扱いできるのは、わたしだけだった。

 14歳で出会った、12歳の小さな男の子だったあなた。


 わたしを追いかけて、そして追い越して、どこまでも心を掴んだ存在だった。


 ライラ、と再び名前を呼ばれるとともに抱きしめられた。

 でも愛しい声にもう瞼を開くこともできない。


 わたし、よく弱くなっちゃったな。

 だからあなたのお嫁さんになれなかったのかもしれないね。


「ライラ、いくな…っ…お前は、俺に背くのか…」


 いつもの強い口調はどこにいったの。

 どうしたの、泣いているの。

 最後に泣いている貴方を見たのは、13歳の時だったっけ。

 あの時は、なんで泣いたんだっけ。

 ああ、わたしの骨が折れたんだった。結構盛大な怪我だったわね。

 公爵家の犬に楯突かれた貴方の変わり、わたしが喧嘩をしてしまったんだったわね。

 昔は少し血気盛んだったから。折れた足が動かないからずっと風の魔法で移動していたっけ。

 わたしの魔力が未曾有でよかったわね、なんておちょくったわ。

 でもそれも、ずっと前のことよ。

 つい最近のように、色褪せず思い出せるけれど。


「…ぅ、ぐ…っライ…ラ…」


 泣かないで。貴方は皇帝。この国の太陽。


 最後の力を絞って、わたしは首を横に振る。彼の胸に頬が当たる。暖かくて心地よい。

 わたしを抱きしめる力がさらに強くなった。


 あなたに抱きしめられるなんて、ライラだった時以来だわ。

 最初が20歳で、二度目か今なんて。



 そうか、もう終わるから、良いのか。


「わたし…の…グラ………」


 わたしはもう、この国の魔法使いじゃ無くなってもいいのかな。

 だって、”ライラ”じゃなければ、貴方の腕の中にいることなんてできるわけないもの。


 神様。最後だけわがままを言っていいですか。

 帝国の魔法使いではなく、グラン坊ちゃんのライラに戻してください。

 

 一生涯、大切な人と共に過ごせたことは感謝しています。

 わたし、結構頑張ったと思うの。めちゃくちゃ魔法使ったもの。

 歴代最大級の魔力とか言われていたのよ。わたしのおかげで帝国の繁栄は加速したでしょう。



 だから、もう終わりなんだから。

 貴方の隣で笑っていた、ただの女に戻らせて。

 ずっと胸に秘めていたの。


 愛していたわ、わたしだけのグラン。








 その日、帝国の唯一無二の光・リセットの魔法使いは死去した。

 通常であれば、この1ヶ月以内には次のリセットが現れると言われていた。

 死去したリセットは、先代他界と共に同時に現れたほどだ。


 皇帝は一斉に捜索に出る。

 特徴はただ一つ、真っ白な姿。

 リセットは能力の開花とともに色が抜ける。

 全ての色が抜け落ちていくのだ。

 純白な存在。それがリセットの印だった。

 リセットとは、全てを無にする能力であることの象徴のような変化だった。



 だがこれから一年、帝国にリセットの魔法使いは見つかることがなかった。

 捜索の手が半月ほど遅れたからだ、なんて噂が立っていたが立ったが

それもリセットが見つからないという前例がない事態への不安によってかき消された。



 この類を見ない事件によって、帝国の力は脅かされることになる。 

リセットは唯一、帝国にしかない絶大な魔法だった。

 帝国を脅かす戦争のきっかけになる、大事件である。




 国を献身的に支えてくれていたリセットの魔法使いのたむけは毎回盛大に行われる。

 次世代のリセットの魔法使いへ慶祝の意味もあった。


 だが、この代のリセットの葬儀は行われなかった。

 もちろん次世代が見つからなかったからとも言われている。


 その本当の理由は、帝国の誰も知らない。








 これは魔法の世界の話ではない。

 代償の世界の話である。




 何かの臨むなら、何かを捧げればいい。




 魔法が全てを叶えてくれる。

 その覚悟があるのなら。








これは魔法の世界の話〜fin〜







初めまして。ヨアケと申します。

初めて魔法の世界の話を書きたくなりました。



この世界を作るきっかけは大好きだった悪役令嬢モノだったのですが、

悪役令嬢はまだ出てきておりません。すみません。

でも出てきます。予定では。




これは、魔法は当たり前に使えるのですが、

全ての魔法に代償が必要になる世界の話になります。



今回の代償は、

一見は命と想いという形でしたが、

今回はそれしか書けなかったって感じです。


皇帝にも実はしっかり代償はありました。

結構いい感じにひどい代償でした。(笑)



それぞれの魔法の代償が

しっかりと運命として決まっておりますので、

楽しんでもらえたらと思っています。



ライラと皇帝の気配も

今後感じていただければと思っています。



幸せな悪役令嬢者となる予定です。

(こ、今回は…って言わないで…)

どうぞよろしくお願いします。




※誤字などはゆっくり直していきますので

ご指摘ただければと思います。

今後ともよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ