これは魔法の世界の話〜帝国の太陽と光3〜
不思議な光に包まれたかと思うと、体から力が抜けていくのがわかった。
ふわりと自身の風の魔法が、体を包んで言っている感覚に似ている。
今までの自分の魔力ではない。感じたことのない魔力と光が自分を包んでいる。
「…ライラ…ッ!!!!!!」
グラン坊ちゃんの叫び声が聞こえる。
でもどこにいるのかわからない。
上も下もわからない。
「グラ…ぼっちゃ…」
腰まで伸ばしていた髪の毛が宙に舞う。でもそれは知らない色をしていた。
わたしの髪色は、真っ黒だったはず。眩くてなかなか開けられない目にも間違いなく黒色には見えなかった。光を反射している。
これは純白。
「ライラ…なんなこれは、どうしたんだっていうんだ…?!」
グランがわたしの体を迎えに、風の魔力で高く飛んだ。
強く抱きしめられて地上に降りたようだ。
全くと言っていいほど体には力が入らなくて、瞼さえ開くでもことができない。体が泥のように重たい。こんなふうになったことは今までない。
まるで細胞の全てが鉛みたい。体の作りが変わってしまったかのような気さえする。
遠くで、大きな歓声のような驚きの声が聞こえる。
「うるさい!お前ら黙れ!」グランがその歓声に大きく叫んで、再びわたしに声をかける。
「ライラッ、ライラッ!目を開けろ、お願いだ…ッ」
わたしはその声に応えようとするものの、喉の感覚も無くなって、腕を上げることさえできない。
耳だけが辛うじて、グランの声を捉えていた。
「やめてくれ、どういうことだ。なんでこんなことに…っ」
すると再びわたしの体は光に溢れた。見知った暖かい魔力。これは、グランの魔力だ。
「起きてくれ、ライラ、ライラ、お願いだ…っ」
わたしの体に少しずつ生気が取り戻されていった。
これは皇族に伝わる特殊魔法・超回復だ。
昔、グランのせいで怪我をした時に、皇帝にしていただいたことがある。
グランの特殊魔法は、超回復だったのか。
今まで特殊魔法だけがグランには開花してなかった。
超回復は細胞を刺激する、歴代の皇族が持っている尊い魔法だったからから。
この魔法を使える人間が、皇帝になることが多かった。
「グ…ラン…ぼっ…」
「ライラ…ッ!よかった、目を覚ましたか」
「わ、たし…」
「話さなくてもいい」
グランがわたしの体を守るように包んだ。
わたしは浅い息を繰り返して、彼の与えてくれる温度に身を任せることしかできなかった。
そこから何が起きたのかは、目を覚ました一週間後に聞くことになる。
まず一つ目。
先代リセットの魔法使いの他界後、
わたし、ライラ・ストックフィールドは次期リセットの魔法使いとして、新しい魔力が開花した。
二つ目。
それと同時に、グランディ・ソーゴット・グレイシアは
歴代皇帝が持っている特殊魔法の超回復含む細胞分裂魔法が開花され、その魔力は爆発的に飛躍。
歴代最大級レベルであり、皇帝継承権第一位に躍り出た。
目を覚ましたら、わたしたちの穏やかな二人きりの毎日は終わりを告げていた。