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今夜は失恋ソングを歌う日  作者: まるみ
4/5

Tさん 過去編

俺は、一目見た瞬間、彼女から目が離せなくなった。

彼女もまた、同じく俺の方を見つめたまま、目線を離さない。

それが、恋の始まりだと気付いた瞬間、そうか、これが運命かと、自分の運命を呪いたくなった。


俺は貧しい家に生まれた。

母は俺の事には、あまり口出しせず、暖かく見守ってくれていた。

いつも微笑んでいた。

もちろん、悪い事をしたら微笑みは消え、鬼婆の顔で叱ってきたが、基本母は優しかった。

けど、そんなははでさせ、悲しませてしまう人生に俺は落ちてしまう。


俺は画家になりたかった。

しかし俺の家には画材なんて買うお金は無かった。

だから諦め半分で家業を手伝っていた。

けど、それでも絵は練習していた。

とある日、俺は男性に出会った。

その男性は肖像画を描く男性で、俺はその人に弟子にして欲しいと頼んだ。

男性は、俺の身なりなど気にせず、どんな腕前なのか見てくれ、俺を弟子にしてくれた。


男性は俺にとても優しくしてくれた。

男性は結婚していて、娘が一人いた。

俺はその男性の娘に紹介された時、自分の身なりがとても恥ずかしく思えた。

彼女はとても綺麗な髪をしていた、服装も綺麗で、何よりお人形のような人だった。

汚い手で触れる事は出来なかったけど、いつか触れてみたい、ずっとそう思っていた。




俺たちは、いつの間にか愛し合うようになっていった。

こそこそと隠れるしか出来なかったけど、身分の問題があって、そんな堂々とは出来なかった。

結果…言うまでもなく、俺らは恋愛する事を反対されてしまった。


彼女とは常にずっと一緒だった。

いつか触れてみたいと思った彼女に、初めて触れてしまうと、俺の欲求は爆発してしまうんじゃないかと思った。

淡いピンクの唇、柔らかな髪…俺の中で人形のような彼女の顔は、いつしか頬を赤く染め、照れながらも俺にゆだねてきた。



俺と彼女は、彼女の両親には内緒の場所で二人っきりになった。

誰にも邪魔されないと思った。


しばらくすると、彼女と俺は、生活レベルの違いから溝が出来てしまった。

彼女は、何も知らなかったんだ、常にお金がかかるという事に…。

ある意味、お嬢様として育ったのだから、しょうがないと割り切っていたのに…。

俺らは一緒に居られなくなってしまった。

あんなに愛し合っていたのに、抱きしめ合い、唇を重ねたのに…。


なんであの時、彼女を幸せにすると誓ったはずなのに、叶わなかったんだろう。

神様なんていう存在が本当にあるなら、どうかお願いです、次こそ、次こそはお金を稼げる力を俺に下さい、そしてもう一度、彼女に合わせて下さい。

そしたら今度こそ、彼女を幸せにします。

お金に困らない生活をさせて、ずっと笑顔でいられるように…。

お願いします、神様。



彼女にも、家族になりたいと言える未来を下さい。

二人で誰にも邪魔されず、生きれる世界を俺に下さい。

今度こそ、彼女と俺を、身分の違いなんてない世界で、出会わせて下さい。



続く

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