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悪魔の息子である俺が神様と契約した件  作者: 猫熊メイクライ
第1章:悪魔使い激闘編
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1-6 鋼匠のヘパイストス

龍夜を守るように炎の柱の中から現れた赤髪の男性神。

袴姿に黄金に輝く腕甲と垂を身に着けたその神は、残り火を振り払うと龍夜の方を振り向く。

「人間で在りながら友のために果敢に立ち向かうその姿、気に入った。お前、名は何という?」

赤髪の神が龍夜に問いかける。しかし当の龍夜はと言うと。

「すげぇ!!なんだ今の超かっけぇ!!」

突然現れた赤髪の神の登場に感激している様子だった。

「フッ、ハッハッハッハッハ!!面白い、久方ぶりに面白い人間を見た。ますます気に入ったぞ」

そんな純粋な龍夜の姿を見た赤髪の神が高らかに笑う。

「俺は龍夜っていうんだ。あんたこそ一体誰なんだ?」

「俺は聖天六神序列2位、鋼匠(こうしょう)のヘパイストスだ」

俺たちの前に突然現れたヘパイストスと名乗った神は龍夜に向けてピアスの形をした契約の魔具を差し向けた。

「龍夜、友の助けになりたければこの俺と契約を結ぼうぞ。お前には神使いの素質がある」

「かみつかい?え、俺は今神様が見えてるってこと?」

「人間のお前たちから見たら俺やそこで捕まっているマイハニーも神様になるな」

「マイハニー?リエルちゃんのこと?」

「あぁ、俺の彼女な」

この状況を理解しているのか?…いきなり爆弾発言をぶっこんできたへパイストス。

「ヘパイストス!?貴方って人は!!勇飛様にも言った事ないことを」

赤面したガブリエルがヘパイストスに向かって珍しく声をあげる。

「そんな怒るなよマイハニー。ってか何で捕まってんの?そういうプレイが好みだった?」

話を脱線し始めるヘパイストス。

何だか初対面なのに龍夜と似た性格を感じる。

てか神様の中でも恋愛ってあるんだなと知った一面だった。

「え~っと、リエルちゃんが神様でお前の彼女でお前も神様で…なるほど、俺には今神様が見えてるってことか!!」

手をポンと叩き納得した素振りをする龍夜。

単純こと馬鹿とはこういうことなのか。

無理やり今起きている状況を理解した龍夜だった。

「そしてお前の友と俺の彼女を捕えている奴が悪魔だ」

ヘパイストスがエキドナを指差しながら言う。

「な~るほどね、その悪魔を倒すためにはお前と協力したらいいわけか」

そう言うと龍夜はヘパイストスが差し向けた契約の魔具を手に取ると両耳に装着した。

ピアスに埋め込まれた緋色の宝石が発光する。

龍夜とヘパイストスの周りから闘気が溢れ出す。

「龍夜が神使いとして認められたのか!?」

「どうやらそのようですね」

「それは心強いが…その前に俺らも早くこれから抜け出して龍夜に加勢しないと」

「でも足掻けば足掻くほど抜け出すのが困難に…」

ガブリエルの言う通り、自分の力では抜け出すのは困難だ。

ここは龍夜たちに何とかしてもらうしかないようだ。

「龍夜、ヘパイストス!この植物をどうにかできないか?」

龍夜とヘパイストスに向かって声を掛ける。

「おぉ勇飛、今助けてやるから待ってろよ」

龍夜が俺たちを助け出そうと動き出そうとした時だった。

「安心しろ龍夜、あいつらの事はもう手は打ってある」

ヘパイストスがそれを阻止する。

その瞬間、俺とガブリエルを捕える植物が何者かの斬撃によって切り裂かれた。

「ば、馬鹿な私の食人植物の狂奏が!?」

突然現れた何者かに自分の食人植物を斬られ驚くエキドナ。

植物の捕縛から解放された俺とガブリエルは地に足をつき体制を立て直す。

エキドナの食人植物を斬った者はよく知る男だった。

「おいおい、俺がいなきゃダメダメだな勇飛」

いつもの大剣を片手に煽る様な言葉を放つヘラクレス。

「いや、遅れて来ながら何言ってんだよヘラクレス」

一丁前にかっこつけるヘラクレスにすかさずツッコミを入れる。

「そうですよ、あなたがもっと早く来ていれば」

ガブリエルも遅れてきたヘラクレスを怒りつけるように言う。

「へへっヒーローは遅れてやってくるもんだ」

ヒーローにしては大遅刻な気もするが…まぁマイペースな奴に今更何を言っても意味はなさそうだ。

「さてヘラクレスも来たことだし、俺たちもこっから反撃だぜ」

ヘラクレスが参戦し、ガブリエルと共に反撃の態勢に入る。

「ちょっと待ってくれ勇飛」

エキドナに反撃しようとする俺たちを龍夜が止めにかかる。

「どうした龍夜?色々あって気になることばかりかもしれないが、積もる話は後にしてくれないか」

「いや、話は何となく分かったんだ。とりあえずこの場は俺にやらせてくれ」

「何言ってんだよ、神と契約したばかりのお前がいきなり悪魔と戦うことなんて出来るのかよ」

「任せとけって。ケガしてる勇飛はそこで見てんしゃい」

「ふ、勇飛とやら。どうやら俺の主は戦いたくて仕方ないようだな」

「でも戦うのはヘパイストスあんただろ?あんた一人で大丈夫なのかよ」

「その心配は無用だぜ勇飛」

そう言うと龍夜は、地面に落ちていた長めの棒を拾い上げると槍を構えるように握りしめる。

「龍夜!?お前まさか」

「フフ、我が主はそう言う事らしいな。龍夜、俺の力をお前に貸してやろうぞ」

ヘパイストスがそう言うと龍夜の魔具がさらに発光する。

「よっしゃいくぜ!神器召喚(リーサルサモン)!!」

龍夜が叫んだ瞬間、先程まで構えていた木の棒が炎を纏った槍に姿を変えた。

神器召喚。龍夜がヘパイストスと契約したことで得ることが出来た能力であり、その力は地上のあらゆる有形物質を能力者がイメージした武器へと変換することが出来る。

「木の棒が武器に変化しただと?」

「あれが龍夜様の神使いとしての力なのですね」

神使いとなった人間は契約の恩恵として契約した神の能力を一部受け継ぐことが出来るようだ。

「てか、あの馬鹿。まさか自分から悪魔と戦うつもりかよ」

「まさに龍夜様とヘパイストスだからこそって感じですね」

「どうやら今回は俺たちの出番はなさそうだな。しかしあの龍夜ってやつ、俺は気に入ったぜ」

確かに龍夜はヘラクレスが言うようにヘラクレスが好きなタイプの人間かもしれない。

「今更あの馬鹿を止めてるのは無駄だな。仕方ねぇ龍夜のこと頼んだぞヘパイストス」

ヘパイストスに向けて叫ぶと、ヘパイストスはこちらに背を向けながらグッと親指を立てる。

「さて龍夜、思う存分共に暴れようぞ」

ヘパイストスも目の前に手をかざすと、龍夜の持つ炎の槍と同じ形をした武器を召喚し構えた。

「おうよヘパイストス!お前こそ俺に遅れをとるなよ」

「ハハハ、お前らしいな。だが人間であることを忘れて無理だけはするなよ」

龍夜とヘパイストスがエキドナに向かって駆け出す。

「愚かな人間め、人間ごときが私に勝てると思うな」

エキドナが残りの食人植物を一斉に龍夜に向けて解き放つ。

だが龍夜は襲い来る植物を槍から振り放つ炎を壁にして受け流していく。

「へっへ~ん当たらないよ~だ。」

持ち前の運動神経を活かしつつ、素早い動きでエキドナを翻弄する。

「エキドナ、何をしているの、あんなやつさっさとやっちゃいなさいよ」

成瀬がエキドナに向かって声を荒げる。

その声に反応するかのように契約の印が紫色に発光する。

「ちょこまかと小賢しい人間め、これで終わりにしてやるわ」

痺れを切らしたエキドナが力を解放し植物の数をさらに増やす。

先程までのモウセンゴケのような植物とは違い、今度は先端がハエトリ草のような形をした植物が姿を現した。

人喰死草(リーフデスバイト)!!」

無数の人喰死草が龍夜とヘパイストスに襲い掛かる。

「龍夜、ここは俺に任せろ」

ヘパイストスが龍夜の前に立ち塞がり、炎の槍を目の前で弧を描くように回転させる。

龍槍炎舞(りゅうそうえんぶ)!!」

そして回転させた勢いのまま薙ぎ払うように槍を振るう。

薙ぎ払った勢いで解き放たれた炎が龍のような形となり襲い来る人喰死草に向かっていく。

炎の龍が人喰死草をすべて焼き払った。

「そんな、たった一撃で私の人喰死草が!?」

「よし、今だ。ヘパイストス!!」

全ての人喰死草が焼き払われ隙だらけとなったエキドナに向かって走り出した龍夜がヘパイストスに合図する。

「あぁ、これでフィナーレだ」

龍夜の合図に合わせてヘパイストスも走り出した。

龍夜とへパイストスがエキドナの目の前で飛び上がる。

「「炎槍双連斬(えんそうそうれんざん)!!」」

そしてその勢いのまま炎の槍を互いに交差するようにしてエキドナの本体を斬り裂いた。

「ギャアァァァァ私の体が燃えて…」

斬られたエキドナの本体が発火し、そのまま悲鳴を上げながら消滅していった。

「っ、あぁぁぁぁぁぁ!!」

エキドナが消滅した瞬間、成瀬の腕に巻かれていた契約の印が粉々に砕け散った。

そして成瀬はその場で気を失った。

「成瀬!?おい、ヘパイストスあいつ倒れちまったけど大丈夫なのか?」

気を失った成瀬を気遣う龍夜。

「案ずるな、悪魔の洗脳から解放されて気を失っているだけだ」

「そうか、なら良かった」

そう言うと龍夜は気を失っている成瀬を背負う。

「勇飛、とりあえず成瀬は大丈夫みたいだ。早いとこ集合場所に戻ろうぜ」

「あぁ、そうだな」

エキドナを倒し、龍夜と水希と共に集合場所へと戻るため山を下りる。

「それにしてもお前、あんなことがあったのによく平然としてられるな」

普通の人間だったら神や悪魔と言った非現実的な存在を目の当りにしたらここまで平然といられるはずはないと思う。

「いや~色々聞きたいことはあるっちゃあるんだけど、要は俺が選ばれた人間で特別な存在ってことなんだろ?つまり俺すげぇぇぇってやつだな」

「やっぱお前は単純だな。まぁそういう理解で間違いないけどよ」

「勇飛も流華ちゃんも俺と同じ選ばれた人間なんだろ?どうして黙ってたんだよ~?」

「いくら単純なお前でも非現実的すぎて信じ難いことだと思ったからだよ」

「でも思い返してみたら龍夜君にもその片鱗があったと思いますよ」

「どういうことだよ水希?」

「私たちが成瀬さんを探しに行く時に龍夜君は3人ともどこに行くんだと言っていましたよね。その時ガブリエルさんは天使の姿に戻っていました。つまりガブリエルさんの姿が見えていなければ3人って表現はしないはずなので」

「「なるほど」」

水希の説明に対して龍夜と反応が被る。

「いや、お前は分かってたんじゃねぇのかよ」

思わず龍夜にツッコミを入れる。

「いや~思い返せばガブリエルちゃんの服装が変わっていたなぁと。でもそんな細かいところまで気づけねぇよ」

「おい龍夜、俺のハニーはどんな格好をしていたんだ?」

その場に居合わせなかったヘパイストスが龍夜に問いかける。

「えっと俺たちと同じ制h…ふごぉ!?」

龍夜の口を後ろからガブリエルが塞ぐ。

「龍夜様、言いましたよね?私、軽率な方は苦手ですと」

龍夜に向けて放たれたその言葉には明らかに殺意染みたものが込められていた。

「なんだよ、教えてくれたっていいじゃねぇか」

「絶対に嫌です。そもそも皆さんと初対面の癖して私たちの関係をいきなり暴露する貴方にも怒っているんですからね」

「ふごっ…ふごご」

何やら3人で内輪もめを始めている。

「龍夜君たち良い関係性を持てそうですね」

「全くだ。ところで、ヘラクレスは一体どこで何してたんだよ」

「ヘパイストスに相棒を鍛えてもらってたんだよ」

相棒と言いながらヘラクレスは背負っていた大剣を擦る。

「武器のメンテナンスをしていたわけか」

「あぁ、ヘパイストスは俺たち神々の武器を作ってくれる鍛冶職人だからな」

そう言えば鉄也がテストで出した問題の中にもそんなことが書いてあった。

火と鍛冶を生業とする神だからこそ、龍夜にもその力が受け継がれたわけか。

神様と契約した人間はその神が扱える能力について何かしらの恩恵を得られると言っていたが、果たして俺にはその恩恵があるのだろうか。

今のところそのような感じはしないが。

「なぁ、水希はヒュペリオンと契約した時に何か能力的なものが開花したことがあったか」

とりあえず気になったので水希にも聞いてみる。

「そうですね。実は私も自身の能力に気づく前にヒュペリオンと別れてしまったので、自分がどんな力を持っているのかまだ分からないのですよ」

「そっか、俺もまだ自分の能力的なものが何なのか分からないからさ。似た者同士だな」

「ふふ、確かに。でも勇飛君はヘラクレスさんとガブリエルさんの2神と契約してるじゃないですか。もしかしたらそれが特別な能力に関係しているかもしれないですよ」

「だとしたらちょっと物寂しいな」

確かにガブリエルやヘラクレスも言っていたが、同時に2人の神と契約できる人間はめったにいるものではないらしい。

だが、それ以外は特に変わりのない感じだ。

龍夜の姿を見て少しだけ羨ましいと感じてしまった自分がいるのだろう。

しかし、俺が自身の能力の開花に気づくのはもう暫く先のことだった。


林間学校も無事に終わり、帰りのバス内にて

「勇飛、お前と流華ちゃんは何時から神使いでどういう関係か説明しろい」

「龍夜、お前もう少し声押さえろ。周りの奴らに聞こえんだろ。てか違うクラスだろお前は!!」

「へへん、厚生委員の力なめんなよ。適当な奴と入れ替わってきたぜ」

「ついでにマイハニー、ガブリエルとの関係についても聞かせてもらおうぞ」

帰りのバス内でめんどくさい二人組に絡まれてしまった。

「ガブリエル、ヘパイストスはお前が何とかしてくれよ」

ガブリエルに助け舟を求めようと彼女の方を振り向く。

「申し訳ありません…私は今日はもう無理です…」

しかしガブリエルはぐったりした様子で頭を伏せている。

龍夜とヘパイストスの尋問に力尽きてしまったのだろう。

向かいに座る水希も半ばあきらめた表情でこちらを見ている。

やれやれとため息をつきながら、今年の林間学校は幕を閉じるのであった。


こんな私の物語にも評価を付けて下さる方がいて驚きました。

初評価がこんなにも嬉しいものとは…

評価をして頂けたことでやる気が出ました。

これからも期待に応えられるよう頑張ります。

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