1-5 悪魔の植物
5月13日 午前9:30
水希と出会ってから3日が経過した。
その間に何人かの悪魔使いとも遭遇したが、どれも下級悪魔ばかりだった。
やはり聖天六神の称号を持つガブリエルとヘラクレスの前に下級悪魔では太刀打ちできないのだろうか。
これまでに倒した悪魔使いから水希を襲った悪魔使いの情報を聞き出そうとするも、そういった情報の収穫もゼロだった。
そんな日々を送る中、ある学園行事が間近に迫っていた。
「勇飛君、来週から林間学校があるんですね」
1限目の授業が終わった休み時間に隣の席の水希が話しかけてきた。
今朝のHRで古川先生が話していた林間学校について興味を示しているようだ。
「この学園では毎年2学年目の5月頃に林間学校が実施されるみたいだな」
「そうなんですね。私、林間学校に行くのは初めてなんですよ」
「まぁ、確かに珍しい学校イベントかもしれないが…何処ぞと知らぬ山に行って河原でカレー作るような行事だろ。そんなに楽しみなのか?」
「それが良いんじゃないですか。私は皆と楽しくこのような行事はたくさんしたいです」
水希は見かけによらず無邪気なところがあるようだ。
「水希様の言う通り、それは面白そうなことじゃないですか」
隣で話を聞いていたガブリエルが水希に賛同する。
「ガブリエルさんもそう思いますよね」
水希もガブリエルが賛同してくれたことに喜んでいる。
さすが共通の認識を持った女子の結束力は強いなと思った。
女子勢に抗議しようとヘラクレスの意見を求めようと後ろを振り向いたが。
「あれ?ヘラクレスのやつは?」
いつも居るはずのポジションにヘラクレスの姿が見当たらなかった。
「ヘラクレスなら今日はトレーニングの日だと言って先程から外で素振りを行っていますよ」
ガブリエルがグラウンドの方を指差すと、そこにはいつもの大剣を持ちながら素振りを行なっているヘラクレスの姿があった。
相変わらず脳筋野郎だな…てか、神様ってこんなにもマイペースなのか?
と神様にも少し抜け目があることが見えてきた。
「まぁ、たまにはアウトドアも悪くはないけど…ガブリエルは残念ながら俺の後ろで見ているだけになりそうだな」
「ふふふ、確かに今のままでは勇飛様たちに干渉は出来ないでしょうけど…」
ガブリエルは微笑みながら何やら意味深な言葉を発する。
その顔は何か企んでいるようで他ならなかったが、それを問い質す前に休み時間終了の予鈴がなってしまった。
5月17日 午前11:00
週明けの月曜日、林間学校の行事が開催された。
朝8時に学園に集合し、約3時間ほどバスに揺られて山道を登って行った先にあるアウトドア施設に辿り着いた。
施設に着くと管理者と先生の話を受けた後、班ごとに分かれて河原でバーベキューが始まった。
「カレー作りも良いですけど、河原と言ったらやはりバーベキューが鉄板でしたね」
野菜を切っている水希は何時にも増してご機嫌な様子だ。
余程この林間学校を楽しみにしていたのだろう。
「確かにアウトドアの鉄板と言えばバーベキューかもしれないな…まぁそれはさて置き、何でお前がここにいるのか説明してもらおうか龍夜?」
薪に火をおこしながら目の前にいる龍夜に問う。
「いや~俺って学年の厚生委員だから、こういうイベントの取り決めとか出来ちゃうんだよね」
なるほど、委員会の特権を使ったわけか。
因みに俺たちの班は俺と水希と龍夜の3人である。
龍夜の仕込み通りという訳だ。
「この機会に水希と仲良くなろうというお前の根端が見え見えだけどな」
「へへっ、勇飛だけに良い思いさせるのはな~んか癪に障るからな。それにこの方がお前も気楽でいいだろ」
「そうだな。知ってる仲間内の方がこういうのは楽しめるものだ」
龍夜なりの気づかいなのだろうか、ここは素直に受け止めておくとする。
「勇飛君に龍夜君、こっちの準備は終わりました。そちらの様子はどうですか?」
龍夜と火おこしに苦戦する中、水希の方は野菜を切り終え準備が出来たようだ。
「いや~勇飛のやつがサボってるから中々火がつかなくてね~」
「おい、誰がサボってるって?というよりも薪が湿気てて火の着きが悪いだけだろ」
「じゃあ新しい薪を持ってきたらいいだけじゃん。と言うことで勇飛、よろしく」
「ここは公平にジャンケンとかで決めるんじゃないのか?」
そう言うと龍夜は俺の横に近づき肩を組むようにして腕を回して来ると
「いいじゃねぇか、ここは俺が流華ちゃんと仲良くなれる場を取り繕ってくれてもよ」
少々照れながら俺にだけ聞こえる声で言ってきた。
「ったく、仕方ねぇな。お前との仲に免じてだぞ」
「さっすが勇飛。分かってんじゃん」
この林間学校の班決めをうまく取り繕ってくれたことへの礼だと思えばいいだろう。
喜ぶ龍夜にこの場は任せて、新しい薪を取りに向かうことにした。
河原から少し離れた場所にある薪置き場に辿り着くと同じ学年の女子たちが何人か集まって雑談をしているのが目に入った。
その中の1人と目が合う。
「あ、桐城じゃん。あんたもグループの中でパシられたのかしら」
「まぁそんなところだ。ってかお前らこそこんなところでサボりかよ」
「アウトドアなんて男子に任せとけばいいのよ」
「ふ~ん。あ~そう言えば、こっちの方に鉄也が歩いて行くの見かけたから、サボってるところ見られたらやばいかもな」
「えっ、そういうことは早く言ってよ。ほら皆行くよ」
鉄也に怒られる危険を察したのか、女子たちが俺の横をすれ違いながら河原へと戻る。
だが、その時だった。
すれ違い様にあの禍々しい気配を感じた。
すぐさま女子たちの方を振り向いた。
「あの中に悪魔使いがいるのか。いや、だとしたら向こうも俺の気配にも気づくはず…」
この学園にも悪魔に憑りつかれた奴がいるのだろうか。
とりあえず今はこのことを水希に伝えなければと思い、急いで河原の方へと戻ることにした。
因みにこんな時に限ってガブリエルとヘラクレスは諸事情があるとか言って少しばかり俺の傍を離れている。奴らのマイペースさにも呆れたものだ。
薪を抱えながら水希たちの下へ戻ってきた。
「あ、勇飛君お帰りなさい」
「おー勇飛、やっと戻って来たかぁ」
こっちを向きながら手を振る水希と龍夜、そしてもう一人。
「あ、お帰りなさい勇飛様」
いつも目にする金髪美少女が何故か俺たちの学園の女子生徒の制服を着ている。
衝撃のあまり抱えていた薪を地面に落とし唖然としてしまった。
そんなことも気にせず、金髪の美少女が駆け寄って来た。
「驚きましたか勇飛様、自分で言うのもあれですが、案外似合っていると思いませんか?」
明らかに動揺している俺を見ながら、水希がクスクスと笑っているのが目に入った。
なるほど…二人してグルだったわけか。
何となく状況を理解し、ふとため息をつく。
「あぁ、そこらの女子生徒よりもその姿はお似合いかもしれないな。で、これはどういうことか説明してもらおうかガブリエル」
「実は水希様にお願いして勇飛様にちょっとドッキリを仕掛けようと思いまして。因みにこれは私たち神々が使える能力の一つ人化というものでして、この姿でいる間は人間と何ら遜色の無い姿で認識されるのです」
「なるほど、それでこんな姿をしているわけか。ってちょっと待て、俺や水希は良いとして龍夜にはこの状況をどう説明するんだよ」
「その辺りは水希様に抜かりはありません」
そう言うとガブリエルは水希の方を振り向く。
水希もしてやったり感の笑顔で微笑んでいる。
「ほら、二人とも早くこっちに来てください。バーベキューを始めますよ」
「勇飛、こんな美人な外国人友達がいるなんて聞いてないぞ。お前も隅に置けない奴だな」
どうやら水希が上手く話を取り繕ってくれたようだが、普通だったらうちの学園にいるはずの無い人物がいる時点で疑うべきなのだ…龍夜が馬鹿で助かった。
やれやれと呆れながら持ってきた薪を数本、龍夜に投げ渡した。
持ってきた薪に火をつけるとバーベキューが始まった。
「勇飛って見掛けによらずモテるよな」
焼けた肉を噛り付きながら龍夜が言う。
「どういう意味だよそれ」
「だって流華ちゃんと言い、リエルちゃんといいこんな美人たちに囲まれてるんだぞ」
「まぁ確かに周りの男子から見たら羨ましい光景かもな」
とりあえずいつも通り返しておく。
と言うよりもガブリエルが龍夜にリエルと言う仮名を名乗っていたことにセンスの無さを感じてしまった。どこの外国人だよ…って感じだ。
「龍夜君も面白い人ですから勇飛君と同じくらいモテそうですけどね」
「本当に?じゃあさ流華ちゃん、今度の週末俺とデートしない?」
「えっと…それはごめんなさい」
「え~、じゃあリエルちゃん、今度俺とデートに…」
「私、軽率な方はあまり好まなくて」
「ぬぁあああ!!」
ノリと勢いで二人にアタックするもあっけなく玉砕する龍夜。
「大丈夫だ龍夜、お前のそういうノリの良いところは悪くないと思うぞ」
若干いじけている龍夜の肩をポンと叩いて慰めの言葉をかけてやる。
そんなこんなであっという間に時間が過ぎ、片付けを行う時間となった。
龍夜が河原の方へ鉄板を洗いに行ったタイミングを見計らい、ガブリエルと水希に先程の薪置き場ですれ違った女子たちの話をした。
「そんな、私たち同級生の誰かが悪魔使いだなんて」
水希がショックのあまり声を震わせる。
「私としたことがその場に居合わせなかったこと申し訳ござません。私情を優先して現を抜かすなんて、聖天六神として不覚にございます」
「いや、神様にもプライベートはあるだろうし、そこは攻めるところじゃないと思うぞ。それよりも何とかして悪魔に憑りつかれたその女子を見つけ出さないと」
「そうですね、このままでは勇飛様の大切なご学友たちに危害が及ぶかもしれません。急いで探し出しましょう」
そう言うとガブリエルは先程までの制服姿から一瞬で普段の天使姿へとフォームチェンジする。
水希と共に悪魔使いを探し出そうとその場を離れようとした時だった。
「おい、3人ともどこ行くんだよ~」
こちら側に気づいた龍夜に呼び止められるが、
「悪い龍夜、ちょっとの間片付け頼むわ」
そう言い残してその場を後にした。
水希と他の学生が集まっている場所に辿り着くと、気配を探りながらその場を歩き回る。
「ところで勇飛君、その悪魔使いがどんな子なのか手掛かりはあるのですか?」
「すれ違い様に振り返った時には集団の中に紛れ込んでいたからこれといった手掛かりは無しだ。とりあえず薪置き場で出会った女子たちを探し出すことが先決だな」
自分の記憶と僅かな気配を頼りに探し回ること数分。
ようやく薪置き場で出会った女子たちを見つけた。
女子たちの方に近づくにつれ、先程感じた禍々しい気配が強くなっていくのを感じた。
水希もそれに気づいているようで、俺の後ろに付きながら警戒している。
その女子の中の1人、さっき目が合って話しかけてきた茶髪のギャル系女子。
どうやらこの女で間違いないようだ。
「あ、桐城…ってあんたまさか」
向こうもこちらに気づいたようだ。
今回はガブリエルの姿が見えていることで気づくことが出来たのか、急に集団の中から抜け出すと一人山奥へと走り逃げていった。
「やはり向こうも気づいたか、あいつを追うぞ水希」
他の女子たちが不思議に思いながら逃げ出したギャルの女子の方を見たり、俺たちの方を見たりしているが、それに構うことなく水希と一緒に逃げ出したギャルの女子を追いかけた。
逃げ出したギャル系女子を追いかけ、かなり山奥深くまで入り込んでしまった。
体力の限界が来たのか逃げるのをあきらめたギャルの女がこちらを振り向いた。
「桐城、あんたまさか神使いだったとはね。それに転校生の水希さんも」
「貴女こそ悪魔使いだったなんて。どういうことか説明して頂けますか成瀬さん」
茶髪のギャルこと成瀬美嘉は、舌打ちをすると制服の袖を捲り上げ手首に巻かれた悪魔との契約の印を見せつけてきた。
「知らないなら教えてあげる。悪魔と契約した人間はその見返りとして何でも願いを1つ叶えてもらえるのよ」
悪魔が人間と契約する理由は神滅を活力にするためだけだと思っていたが、これは初耳だった。
悪魔側も人間を取り入れるための策を用意しているわけか。
「なるほどな、自分の私欲のために悪魔に魂を売ったのか」
「貴方には関係ないことよ。でも、ここで出会った以上あんたには消えてもらうわ」
成瀬の目が赤く光ると同時に契約の印が紫色の光を放つ。
「来なさい、エキドナ」
成瀬が呼び出した悪魔は全身緑色をした植物人間のような女性の悪魔だった。
「ククク、我を呼び出したということは今回の贄は目の前の坊やと言うことで良いのか?」
エキドナがこちらを見下ろしながら成瀬に問いかける。
「そうよ。あいつは貴方たちが嫌っている神を操る人間なのよ」
「ほぉ、この坊やが神使い。それじゃあたっぷりと可愛がってあげないとね」
「悪いがおばさんに相手してもらう趣味はないんでね」
「誰がおばさんだ、このクソガキがぁぁぁぁぁ」
煽りを受けたエキドナが両手に巻かれた蔓を鞭のようにして襲い掛かってきた。
エキドナが攻撃を仕掛けてきた瞬間、指にはめた契約の魔具が発光しガブリエルが姿を現す。
ガブリエルが瞬時に光の壁を展開してその攻撃を防ぐ。
「お前たちに相手してもらうくらいなら、こっちの金髪美女の方が100倍マシだぜ」
「あら、勇飛様にしては珍しく気の利いた一言ですね。そんなに先程の私の姿が良かったのですか?」
自分で言っておいて若干照れが出てしまったのか、ガブリエルに茶化される始末である。
「やっぱ柄にもないことは言うもんじゃねぇな。ってかヘラクレスのやつはどうした?」
「ヘラクレスは完全にオフ状態ですね。申し訳ございません」
「まじかよ、ってことはここはガブリエルだけってことか」
「いいえ、恐らく勇飛様が悪魔と戦闘を開始したことでヘラクレスにも彼の持つ魔具からその情報は伝わっていると思います。彼が到着するまでは私が引き止めます」
そう言うとガブリエルは光の剣を周りに展開し、そのうちの1本を手に取って構える。
「へぇ~それってそういう使い方も出来るのかよ」
「使える本数に限りはありますけどね。それも勇飛様の神魔の力次第といったところです」
ガブリエルが光の剣を片手にエキドナに攻撃を仕掛ける。
「あなたは私が倒します」
ガブリエルの一閃がエキドナの蔓を切り裂く。
切られた蔓が宙を舞いながら地面へと落ちる。
「おのれ」
しかしエキドナは切られた箇所の蔓をすぐに再生させた。
「残念だったわね。その程度では私の腕を根絶やすことは出来ないわよ」
エキドナは再生させた蔓ですぐに次の攻撃を仕掛けようとしてきた。
だが、それを読んでいたガブリエルは周りに展開させていた光の剣を再生した蔓に打ち放つと、光の剣が地面に蔓を固定するように突き刺さる。
実質動きを封じられたエキドナが体制を崩す。
「今です」
その瞬間を見逃さず、ガブリエルはエキドナの胴体にもう一閃を入れ込んだ。
「よしっ、これで決まりだ」
ガブリエルの一閃がエキドナの胴体を切り裂いたかのように見えた。しかし…。
「ククク、その程度かしら」
エキドナの胴体を切り裂いたはずの剣は、エキドナの胴体に挟まるようにして固定されていた。
ガブリエルはすぐに剣を手放しエキドナとの間合いを取る。
「そんな軟な剣じゃ、この私を切り刻むことなんて不可能よ」
エキドナ本体と取り巻く樹木の束は思っていたよりも強固なものだったようだ。
「ガブリエルの腕力じゃ難しそうだな」
本来ガブリエルはサポートを得意とする。
女性神ということも考慮すると単純な力比べではヘラクレス等の男性神には劣ってしまう。
「私としたことが不覚です」
「大丈夫だ、接近戦は避けてヘラクレスが来るまでの時間稼ぎに徹しよう」
ヘラクレスがいつ到着するか分からないが、とにかく今はあいつが来るまでの時間稼ぎをするしかないようだ。
「私のエキドナをよくもいたぶってくれたわね。今度はこっちの番よ」
そういうと成瀬の契約の印が禍々しい光を放つ。
「魔植の狂宴!」
エキドナが自身の腕を地面に突き刺す。
そしてその数秒後、地響きと共に数本の巨大な植物が地面から姿を現した。
その姿は食虫植物にあるモウセンゴケのような見た目だった。
「まさか食虫植物ならぬ食人植物ってことか?」
「あら、ご名答。あんたはこの食人植物の栄養素になるのよ。やりなさいエキドナ!!」
成瀬が指示するとその食人植物が一斉に俺と水希に襲い掛かってきた。
「ガブリエル、水希を守れ」
「でも、それでは勇飛様が」
「いいから、早くしろ」
自分よりも水希の守護を指示すると、ガブリエルは水希の前に守護の盾を展開した。
守護の盾が水希に襲い掛かる食人植物を防いだが、残りの植物がガブリエルと俺に襲い掛かる。
流石に数で分が悪くガブリエルと俺に食人植物の一撃が直撃した。
「うっ、申し訳ありません勇飛様…」
「ぐはっ」
自分への直接的なダメージとガブリエルがダメージを受けたことによるフィードバックで2倍のダメージを受けてしまった。
思ったよりもきつい一撃だった。
「勇飛君!!」
心配する水希が声を上げる。
「だ、大丈夫だ。それよりも水希はそこから動くんじゃねぇぞ」
辛うじてまだ守護の盾が水希を守っているため、水希にはその場から動かないように伝える。
しかし敵の攻撃はこれだけではなかった。
モウセンゴケの名の由来の通り、先端にある粘着質を持った毛氈が俺とガブリエルを捕縛する。
その捕縛から逃れようと抵抗するが、粘着物資と毛氈の繊維が絡まり合い上手く抜け出すことが出来ない。
「ククク、これであなた達も終わりね。さぁ、ゆっくりじっくり痛ぶってあげるわ」
かなりやばい状況に追い込まれてしまった。
ヘラクレスが来る前にここまで追い込まれるとは。
これまでかと半ばあきらめかけた時だった。
「勇飛!!」
聞き覚えのある声がした。
声がした方を振り向くとそこにいたのは龍夜だった。
「龍夜!?お前、なんでここに」
「いや、何も言わずにお前らがどこか行っちゃうから後を追いかけてきたんだけど。ってかこの状況どういうこと?なんか目の前に化け物いるし、勇飛とリエルさんは何でその化け物に捕まってんの?てか二人ともめっちゃケガしてんじゃん」
この状況が見えているだと?
まさか龍夜にも悪魔と神が見えているのか…いや今はそんなことどうでもいい。
「詳しい説明は後だ。とにかく危ねぇからお前も下がってろ」
龍夜まで巻き込むわけにはいかないと思い大声で龍夜に呼び掛ける。
しかし相変わらずの馬鹿は俺の言葉に聞く耳を持たず、
「おい、そこの化け物。今すぐ勇飛とリエルさんを放せ」
その辺りに落ちていた木の棒を片手に無謀にも悪魔に立ち向かっていった。
「ふん、人間のガキが」
向かってくる龍夜をエキドナは容赦なく迎え撃つ。
食人植物の一撃が龍夜に襲い掛かる。
咄嗟の判断で木の棒を盾に受け身の構えを取るも、その程度の耐久度では防ぐことも出来ず攻撃を受けた龍夜が吹き飛ばされる。
「ぐあっ…痛てぇなこの野郎」
吹き飛ばされた龍夜だったが、何とか自力で立ち上がる。
「やめろ龍夜。こいつらは人間じゃ敵わねぇ。早く水希を連れて逃げろ」
立ち上がった龍夜に何としてでも水希だけは守るように伝える。
「バッカヤロウ!!ダチがピンチの時に見捨てて逃げるやつがどこにいるんだ。何が起きてんのか良く分かんねぇけど、俺は絶対にお前を見捨てるようなことはしねぇ!!」
珍しく龍夜が声を荒げた。
そして落ちている木の棒を再び拾い上げると
「いいかよく聞け、化け物。俺は俺のダチを傷つけるやつだけは何があっても許さねぇからな」
エキドナに突き向けるようにして言い放った。
「ククク、愚かな人間ね。ならばお前から食らってくれるわ。死ぬがいい」
食人植物が龍夜に向かって襲い掛かる。
「龍夜!!」
龍夜に向かって声を上げたその時だった。
空からいきなり炎の塊が降り落ちてきた。
その炎の塊は龍夜の目の前で火の柱となり、龍夜を食人植物から守るように空に向かって立ち昇っている。
「な、なんだこの炎は?」
目の前に現れた炎に食人植物が焼かれる寸前でエキドナは攻撃の手を止めた。
龍夜の目の前に現れた炎の柱の中に何やら人影のような姿が見えた。
「お前のその勇気とダチを思う心意気、気に入った」
炎の柱の中から声が聞こえてきた。
炎の柱が徐々に消えてゆく。
その中から現れたのは赤髪の男性神だった。
前回から2週間ぶりの投稿です。
前の話がどんなだったか若干忘れつつありますw
繁忙期が無ければもう少しペースを上げられるのに…と思う今日この頃。