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悪魔の息子である俺が神様と契約した件  作者: 猫熊メイクライ
第1章:悪魔使い激闘編
19/21

1-19 生徒会の公約

波乱のHRが終わり、すでに疲れ切った状態で午前中の授業を終えた。

昼休みに入るとクラスの男子たちはガブリエルに女子たちはヘパイストスとヘラクレスの前に群がっていた。

いきなり美男美女たちがクラスの中に現れたのだから無理もない光景だろう。

出身は何処だとか前の学校では何の部活動をしてたとか好きな人はいるのか等々クラスの連中に質問攻めにあいながら、ガブリエルたちが若干困ったように視線をこちらに向けているのが分かる。

そんなわちゃわちゃとした状況の中、教室の前の扉を勢いよく開ける音が聞こえた。

「お~い勇飛!ヘパイストスたちここにいる?」

扉を開けた先にいた龍夜がこちらに向かって叫ぶ。

ヘパイストスという言葉を耳にしたクラスのみんなは頭に「?」マークが浮かんでいるかのような表情で龍夜の方に視線を向けている。

「お~龍夜…わりぃちょっとよく聞こえなかったんだけど、転校生の火燕ならここにいるぞ」

龍夜が素で呼び名を間違えやがったのを誤魔化すようにフォローを入れる。

「あ、火燕だったな…わりぃわりぃ。今から生徒会選挙のことで作戦会議やるから勇飛と流華ちゃんと一緒に火燕たちも俺について来てくれ」

「おぉ、分かった。すぐに参る」

龍夜の呼びかけに反応したヘパイストスは、自分の席を立ちあがる。

周りにいた女の子たちが「えぇ~もう行っちゃうの?」「もう少し話そうよ」とか言っている姿はまるでホストにでもいるのかと思わせるような感じだったが、女の子たちを気遣うようにヘパイストスも上手く宥めている。

その瞬間、謎の殺気を帯びた視線を背後に感じた。

恐る恐る振り向くとその先にはガブリエルの姿があった。

周りに男子たちが取り囲んでいるため一見穏やかな表情を取り繕っているが、その瞳の中には恐ろしいくらい禍々しいものを潜めているのが分かる。

まさか…嫉妬しているのですかガブリエルさん。

だからと言ってその嫉妬心を俺に向けないで下さいと今にも刺されそうな気迫と恐怖心に俺の体が震えあがっているのが分かる。

「な…何か龍夜のやつが呼んでるみたいだから、光と闘馬も一緒に行こうか。あと水希も一緒にな」

とりあえずこれ以上ガブリエルの嫉妬心を買わないようにヘラクレスにも声を掛けながら、ヘパイストスの後を追うように教室を後にした。


龍夜に呼ばれた俺たちはいつもの場所である学園の屋上に集まった。

「さて、みんな集まったことだし作戦会議を始めようと思うんだけど、何で相棒(ヘパイストス)はそんなボロボロなんだ?」

龍夜が相棒の方に視線を向けると、両頬にビンタされたであろう掌の跡や頭に大きなこぶが出来ていたりと散々な姿になっていた。

「…どうやらマイハニーの逆鱗に触れたらしい」

1人正座させられているヘパイストスの横にいるガブリエルの只ならぬ表情を見て察した龍夜は「あぁ…そういうことか」と一人納得するように引きつった表情を見せた。

女の嫉妬は尽く恐ろしいものなんだなとヘパイストスの姿を見て思う今日この頃だった。

「まぁ気を取り直して本題に戻るけど、今朝の風条院を見て分かるように支持者の数では現状俺たちが不利な様に見えた感じってわけだが…」

龍夜が話を切り出しながら、学園から支給されている手元の端末機器(タブレット)を操作する。

その端末の画面に映し出されたのは生徒会選挙速報と大々的に掲げられたページだった。

そのページ上には生徒会長候補者である風条院と龍夜の顔写真が掲載されており、顔写真の横には現在の支持率を示すグラフのようなものが表示されていた。

現在の支持率は、風条院50%、龍夜30%、その他20%といった状況だった。

「見ての通り過半数は風条院の支持率だが、俺たちも支持率の3割を得られているってところだ」

「なるほどな。つまりこの支持率の内、亜理紗たちの支持者を10%以上こっちの支持者に付けることが出来れば逆転は可能な状況ってことか。というか生徒会選挙の情報がこんなリアルタイムで見れるサイトがあったんだな。知らなかったよ」

「広報部の方たちが毎日支持率を集計して、この学園専用サイトに更新しているんですよ。支持率をリアルタイムで確認しながら今後の作戦を考えるのも私たちの役割ってことですよね」

「問題はどうやって龍夜の方に皆の支持を集めるかってところだな。水希は何か良いアイデアはありそうか?」

「そうですね。やはり生徒会と言えばスローガン…所謂公約があった方がみんなの注目を集められるんじゃないでしょうか」

「公約か…龍夜がまともな公約を考えるとは思えないが、一応龍夜の意見も聞かせてもらおうか。お前が生徒会長になった暁には皆にどのような公約を掲げてくれるんだ?」

「ふっふっふ、甘いぞ勇飛、俺が生徒会長になるにあたって公約の1つも考えていないと思っていたか?」

あまり期待せずに龍夜に問いてみたが、まるでその問いかけを待っていたかのように龍夜は自身に溢れた表情を見せている。

「随分と自信ありげだな。期待していいのか?」

「あぁ、俺の考えた公約を聞いて驚け!」

そう高らかに宣言した龍夜は、内ポケットから丸めた用紙を取り出すと、その内側に記載している公約を広げるようにして見せつけてきた。


『1つ、女子のスカートは膝上15cm未満とする!』

『2つ、月に1度のカップルデー(男子は生徒会長権限で気になる女子と一緒に放課後デート可能)を設立する!』

『3つ、夏休みの宿題は任意の提出とする。皆、思う存分青春を謳歌すべし!』

『4つ…』

「って、全部お前の私利私欲の塊じゃねぇか!!」

龍夜が提示した公約を見て、思わずその用紙を丸め付け龍夜に投げる。

「あぁ!俺が一晩かけて考えた自信作を…」

丸められた用紙を拾い上げながら嘆き声をあげる龍夜。

「一部の生徒には受けそうな公約かもしれませんが、流石に私欲が過ぎる公約な感じがしますね…」

「水希の言うとおりだな。それに俺らが良くても先生たちが却下するだろうな」

「ぐぬぬ…ありきたりな公約よりは、みんなの受けもいいと思ったんだけどな」

自信ありげに提案した公約だったが、即刻却下されたことに対してガックリと肩を落とす龍夜。

「ふふふ、そんながっかりしないでください龍夜様。こんな時は私がお力を貸してあげましょう」

龍夜の落ち込む姿を見たガブリエルが、まるで私の出番が来たようですねと言わんばかりに得意げな笑みを浮かべながら言い放つ。

「…何となく察しはつきそうだが、一応意見を聞かせてもらおうかガブリエル」

既に嫌な予感しかしないが、助け舟を出してくれたガブリエルに問いかける。

「私が提案するのはズバリ交流!人と神の文化を超えたコミュニケーションの発展に寄与すr…」

「却下だ!」

「どうしてですか!?」

「人間の文化を知りたいっていうコミュニケーションを大事にしたいってのは悪いことじゃないが、結局それもお前の私利私欲が入ってるし、第一、他の生徒たちに神様の存在がバレるのは今後の学園生活の上で色々と都合が悪いだろ」

「むむむ…私の完璧な発想が、こうもあっさりと否定されるなんて…」

龍夜に続きガックリと肩を落として落ち込むガブリエル。

「ヘラクレスやヘパイストスはどう思う?何かいいアイデアはありそうか?」

「うむ…先ほどクラスの女子たちから聞いた話だが、この学園には部活動というものがあって、その活動の中に裁縫部というのがあるらしいではないか。俺はその裁縫部というのやらに入部およびその部活動の反映を希望するぞ」

先ほど制服の素材に興味を持っていたヘパイストスが、クラスの女子との会話の中で裁縫部の存在を知り、制服のような人間界の製造技術とも相まって興味を持ったようだ。

「いや、それも公約と何も関係ないし、単なるお前の要望じゃねぇか。あと裁縫部は女子しかいねぇから、俺はあまりお勧めしないぞ。ってか、入部しない方が身のためだと思うな」

クラスの女の子という言葉に反応したのか、背後からまたしても恐ろしい殺気(嫉妬心)を感じたため、これ以上の発言には気を付けるようにヘパイストスに釘を刺しておく。

「俺はこの学園を最強の学園にするいうのを公約として提案するぞ」

続いてヘラクレスが闘志に満ちた声で言い放つ。

「いや、どこの不良漫画だよ。物騒すぎて即却下だろ…ったく聞く相手を間違えたな。水希は何かアイデアあるか?」

最後の望みを賭けて、この中では一番まじめなアイデアを出してくれそうな水希に期待する。

「そうですね…皆さんが言うように、何か個性的な公約っていうのも注目は浴びそうですよね…例えばですが、龍夜君が最初に言ったこの月に1度のカップルデーという発想から思いついたのですが、月に1度、私服での登校を可能とするカジュアルデーというのはどうでしょうか」

龍夜の発想をモチーフに水希が新たな公約の案を提案する。

「なるほど…スクールカジュアルみたいなものか」

「はい、私たち学生は制服が義務づけられているみたいなところがありますが、私たちの年代を考えるとファッションに興味を持つ子たちも多いと思いますし、私服で学校に来るというのも新鮮な感じがしますよね。それにこれなら龍夜君らしい個性も表れていて良いんじゃないでしょうか」

「おぉ!さすが流華ちゃん。俺のイメージも踏まえていいアイデアを出してくれるぜ」

「皆様の私服姿…これはこれで話のネタになりますし、新たな交流が広がりそうですね」

「うむ、制服以外のファッションやその素材を見れるのは良きアイデアだな」

「俺はこの堅苦しい制服から解放されるだけで有難いな」

龍夜を含め、他の三神たちも水希の意見に同意している様子だ。

「確かにこれなら先生たちも簡単にダメとは言わないだろうな。それに目新しさもあっていいんじゃないか」

水希の提案してくれたスクールカジュアルというテーマが意外にも俺たちの考えにマッチしており、龍夜の掲げる生徒会公約として決まる形となりそうだ。

「よっしゃそうと決まれば早速、この公約で先生たちの許可を貰いに行くか」

公約が決まったことで意気揚々とする龍夜と共に俺たちの生徒会公約を提出するために職員室へと向かった。


場所は移り職員室にて。

「…良き公約とは思いますが、残念ながらこの公約は受け入れ難いかもしれませんね」

生徒会選挙を取り締まっている鏡原(かがみはら)先生(女性教師)が首を傾げながら言う。

ピシっとした黒スーツを着こなし、眼鏡をかけた真面目なその風貌から、生徒の間では鉄仮面のあだ名で呼ばれている。

因みに29歳、三十路手前の独身とのことである。

「俺たちの公約の何がダメなんすか鉄かm…んぐっ!」

「ん!?いま私のことを何と呼びましたか?」

「いや、何でもないですよ鏡原先生。ははは、ちょっとこの馬鹿(りゅうや)の口が悪いみたいなんで、失礼のないようにと」

感情のままに素で鉄仮面と呼ぼうとする龍夜の口を押えながら、その場を何とか誤魔化す。

「鏡原先生、私たちの公約、何がいけないのでしょうか?」

自らが考案したカジュアルデーについて、先生が否定する要因を水希が問いかける。

「そうですね、個性的で良い部分がある反面、学業を生業とするあなたたち生徒の観点から相応しくないと思われます。生徒会とは学生の鏡すなわち手本となる存在です。他の生徒の見本となるだけでなく、生徒の保護者や学外の地域の方々にも恥ずかしくない尊厳を保つ必要があるのです」

ものすごく真面目で堅苦しい話に対し、さすがの俺も表情が引きつりそうだった。

「うへぇ~なんだよその真面目ちゃんな考え…堅苦しすぎですよ先生~」

龍夜が思わず嫌々とした表情で言い返す。

「あなたは普段からそのふざけた態度を改めるべきだと思います火炉瀬君。そんなあなたが生徒会長に立候補したと聞いた時には流石の私も一瞬目を疑いましたが…今のそのおふざけな態度のままでは、風条院さんには勝てないと思いますよ」

そういうと鏡原先生は1枚の紙を龍夜の前に差し出してきた。

「ん、これは何すか先生?」

差し出された紙を受け取りながら龍夜が問い返す。

「これは先ほど風条院さんが私のところに提出にきた公約です。あなたも彼女の公約を見習うことですね」

なぜか物凄く煽られているような感じがしたが、龍夜が手に持つ紙を水希と横から覗き込むようにして、書いてある公約に目を通す。


「1つ、精霊学園の生徒たるもの文武両道、常に自己研鑽に努められる環境を整備・提供することをここに誓約する」

「2つ、精霊学園の生徒たるもの学外地域への貢献に励むべき。挨拶運動の促進および月に一度の地域清掃活動をここに誓約する」

「3つ、精霊学園の生徒たるもの助けられたり助けたり、お互いの団結を強化すべく、いじめゼロの学園にすることをここに誓約する」


と龍夜の個性的な公約とは正反対の超真面目で堅苦しい公約がつらつらと書かれていた。

「流石は風条院家の令嬢です。これほどまでに生徒たちの見本となる公約を掲げ、実践する意思を示すその姿に感極まりないことです」

風条院の掲げた公約をかなりお気に召している鏡原先生が珍しく賛同の意思を表した顔を見せている。

超真面目な鉄仮面の心を掴むことに対して、これほど有効な公約はないというわけか。

「勇飛~俺こんな堅苦しい学園は嫌だ…こんなの青春の欠片も感じね~」

風条院の公約を目にした龍夜が半ベソをかきながらこっちを見ている。

「あぁ、今回ばかりは俺もお前の意見に同意かもしれない」

「私もここまで堅苦しいのはちょっと苦手かもしれないです…」

水希も珍しく表情を引きつらせながら俺たちの意見に賛同する。

「俺たちの意見も一致したことだし…決まりだな」

俺は一呼吸おいてから鏡原先生に対して言い放つ。

「悪いが先生、俺たちは俺たちの公約を貫き通させてもらうぜ!」

「あなたたち本気で言っているのですか?そんなふざけた公約を選挙管理委員を顧問するこの私が許すとでも…」

俺たちの宣戦布告に対して、メガネの下から鋭い目つきで睨む鏡原先生。

「おい、先生、黙って聞いてりゃ言いたいように言いやがって!流華ちゃんが考えてくれた公約をふざけた公約だって?それはあんまりじゃねぇのか?」

先生の一言に龍夜が感情のままに声を上げて反論する。

職員室が一瞬にして一触即発の場と化す。

「おいおい、一体何の騒ぎだ?」

今にもバチバチの言い争いになりそうなタイミングで聞き覚えのある声が鏡原先生の背後から聞こえてきた。

「か、か、か、梶田先生!?」

声のする方を振り向いた鏡原先生が動揺を隠せない様子で驚く。

その声の先に現れたのは、我らが鬼教師こと鉄也だった。

普段鉄仮面と呼ばれている先生の顔が気のせいか少し赤らめているようだった。

「何か騒がしいと思って来てみれば、勇飛…またお前たちか」

そんな動揺する鏡原先生には目もくれず、こちらに視線を向けた鉄也は呆れたようにため息をつく。

「仕方ねぇだろ。鏡原先生が俺たちの考えた公約にケチつけるんだからさ」

「別にケチなんかつけていません!梶田先生もこの子たちの考えた公約を見たら分かるはずです」

そういうと鏡原先生は俺たちが提出した公約の書かれた紙を鉄也に渡した。

「ふむ…なるほどな。確かに鏡原先生の言う通り、学生が掲げる公約としては不適な内容かもしれないが…俺は別に構わないと思うぞ」

鉄也の意外な反応にその場にいる全員が驚いた様子を見せる。

「鉄也が俺たちの意見に賛同してくれただと!?明日雪でも降るんじゃねぇか…」

「勇飛君、それはちょっと失礼ですよ…梶田先生が味方してくれるなんて心強いじゃないですか。梶田先生、ありがとうございます!」

「おぉぉぉ鉄也ぁぁぁ…俺、今日だけはあんたの言うことなんでも聞いてやる!!」

鉄也が賛同してくれたことに思わず感銘の声を上げる龍夜。

「し、し、しかし梶田先生…彼らの素行をご存じの上で賛同されるというのですか?」

鉄也の意外な反応も相まって、先ほどまでの冷静な態度とは打って変わって呂律が回らないほど鏡原先生は動揺している。

「まぁ、模範解答的な公約が全て正しいというわけでもあるまいしな。ただし、お前たちがこの公約を掲げる以上、それを勝ち取るのもお前たちの実力次第ってことだ。やるからには全力でこの生徒会選挙を戦い抜け!俺からは以上だ」

そういうと鉄也は、俺たちの提出した公約の紙を持ちながら、「これは俺が預かってやる」と言い残し、その場を後にしていった。

「か、梶田先生が許可するのでしたら今回ばかりは私も特別に認めましょう…まぁ、あなたたちが生徒会に当選するかどうかはまだ分からない話ですし、現状風条院さんの方が優勢である以上、あなたたちの公約が実現する可能性は低いと思いますがね」

相変わらず俺たちに悪態をついてくる鏡原先生だったが、とりあえず俺たちの掲げた公約について、先生たちの許可が下りたことで、正式に認められたようだ。

一時はどうなるかとも思ったが、次の段階へと準備を進めるべく、俺たちは職員室を後にした。


昼休みの騒動から時が経ち放課後。

「出来ました!こんな感じでどうでしょうか?」

水希が描いた生徒会選挙の宣材ポスターを机の上に広げる。

「おっ、いい感じだな。さすが水希」

ポスターのど真ん中にこれでもかと決めポーズを取る龍夜の宣材写真はさておき、俺たちの掲げる公約も上手く配置されて、なかなかにいい感じのデザインに仕上がっていた。

因みに龍夜は生徒会選挙委員に呼ばれて席を外しており、ガブリエルやヘラクレス、ヘパイストスたちはというと、他の生徒たちと放課後の部活動見学に引き連れられていた。

今は水希と放課後の教室で二人きりという状態だった。

「結局俺たち二人で龍夜のフォローする羽目になってるな。まぁいつものことかもしれないけど」

「そうですね。でも私も楽しいですから、全然気にしてないですよ」

何気ない雑談をしながらも、二人で着々と選挙活動に必要な準備を進めていく。

「しかし今回の生徒会選挙、龍夜もそうだけど、水希も龍夜(あいつ)に劣らないくらいやる気だよな」

何気なく発した一言だったが、その言葉に一瞬反応するように水希が手を止める。

一瞬教室内に沈黙が走ったが、水希が口を開いた。

「二人にはこれまでたくさん助けてもらいましたから…だから今回は私が少しでも二人の力になれたらって…二人にとってはおこがましいことかもしれませんが、私なりの恩返しが出来ればと思って」

目線を下に逸らしつつ、若干恥ずかしそうな声で今の思いを話してくれた。

「そうだったのか…それはありがとうな。でもそんな俺たちなんかに気を使わなくても全然大丈夫だよ。俺たちも好き勝手にやりたいことやってるだけだからさ。でも、まぁなんていうか…そう思ってくれていた気持ちは素直に嬉しいし、ありがたく受け止めておくよ」

水希の感謝に対してそれとなく返したつもりだったが、水希の方を見ると何故かまた視線を逸らされてしまった。

視線を逸らした水希は、照れているのか顔をほんのり赤らめた様子で俯いたまましばらく顔を上げなかった。

「…勇飛君のそういうところ…ずるいです…」

俯いたまま小声でボソッと呟く水希。

「え?いま何か言ったか?」

水希が何か言ったように聞こえたが、下を向いているせいか、はっきりと聞き取れなかった。

その後少しして水希が顔を上げる。

「なんでもありませんよ。さぁ、龍夜君が戻ってくるまでに残りの準備も片づけてしまいましょう」

水希も何事もなかったことのように取り繕うと、再び机の上に広がる書類に手を付け始めた。

「そうだな、あいつが戻ってくる前にさっさと終わらせよう」

そう言うと俺も何事もなかったかのように再び選挙活動の準備に取り掛かったのだった。

なんかもう、気が向いたタイミングで執筆&更新ですいません…


生徒会選挙って一度はあこがれる学園物の定番イベントって感じですよね。

日常的なシーンばかりになりますが、これはこれで書いてみて面白いなと思うこの頃。


そして水希の気持ちに気づかない鈍感な勇飛…

この二人の展開も今後どうなるのやら(笑)

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