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悪魔の息子である俺が神様と契約した件  作者: 猫熊メイクライ
第1章:悪魔使い激闘編
17/21

1-17 豊穣のフレイヤ

龍夜に嵌められ、生徒会選挙への参加を余儀なくされることになってから一晩が経った。

「まさか龍夜様に勇飛様を出し抜く才覚があったとは…驚きました」

「勇飛にしては一本取られたな、はっはっは!」

昨晩のうちに天界から戻ってきたガブリエルとヘラクレスにも昨日の出来事を話しながら学園への通学路を歩く。

「一本取られたも何もあいつが勝手に決めて進めたことだし、止めようにも時すでに遅しってやつでな。全く、また面倒ごとに巻き込まれそうだ」

思わず朝から盛大なため息をつく。

「まぁこれもこれで楽しい学園生活の一環になりそうじゃないですか。私もたまには龍夜様のためにサポートしてあげましょうか」

「ガブリエルが龍夜に協力的とは珍しいな。林間学校の時もそうだったけど、お前案外こういうイベントもの好きなタイプか?」

「べ、別に遊び目的ではありませんよ。まぁ…これも人間界の文化を知るための一種のコミュニケーションみたいなものです」

図星のつもりだろうが、顔がにやけているせいで隠せてないことは黙っておこう。

まぁ、前みたいに人化して学生に紛れ込むつもりなんだろうが…

しかしヘパイストスには制服姿を見せたがらなかったし、今回はどうなることやら…

「まぁ、二人も龍夜のこと応援してやってくれよな。それと面倒ごとだけはくれぐれも起こさないでくれよ」

念のため二人にも釘を刺しつつ、学園へと向かった。


学園の正門前に着くと、何やら人だかりで溢れている様子だった。

その人だかりの中心に立ち、悠々とした姿で場外演説を行う者がいた。

当然、朝早くから龍夜がそんなことをするわけもなく、視界に入ってきたのは凛とした顔つきにしっかりと着こなした制服と肩まで伸び掛かった清楚な黒髪を兼ね備えた容姿には似つかわしくない、どことなく高飛車な態度を彷彿とさせる女子生徒の姿だった。

まぁこの女子生徒がどんなやつかってことは前々から知っているわけで、今回に限っては非常に厄介な相手ということを個人的に痛感している。

触らぬ神に祟りなしってわけじゃないが、出来るだけ関わりたくないので人だかりを無視して校舎に向かおうとしたが…

「ちょっと、そこのアンタ!」

なんてことだ…背後から声を掛けられる。

それでも気づいていないふりをして再び校舎に向かって歩みを進めようとしたその時だった。

「この私が声を掛けているのに無視するんじゃないですわ!!」

突如人だかりの中心からこちらに向かって駆け出したかと思うと、その勢いのまま背中に強烈なドロップキックをかまされる。

「ぐあっ!」

あまりにも唐突なことで受け身が取れず、情けない声と共にそのまま蹴られた勢いで前に倒れ込む。

「いってぇな、いきなり何しやがる亜理紗!」

「アンタが私を無視するからでしょ馬鹿勇飛!」

背後から盛大な蹴りをかましてくれたこの女こそ、以前B組の高山の告白を振り、下僕のように盛大な扱いをしてくれた「風条院亜理紗(ふうじょういんありさ)」だった。

その見た目の清楚さや財閥の令嬢という肩書とは程遠いほど野蛮な性格の持ち主だ。

他の男子生徒諸君が彼女を女王様の如く崇め奉る中、俺が亜理紗からこのような雑な扱いを受ける事には当然訳アリで…それはそれでまたの機会で話すとしよう。

「それよりアンタたちも生徒会選挙に参戦するらしいわね」

「俺じゃなくて龍夜がメインだけどな。こっちこそまさか龍夜の相手がお前とは驚いたぞ」

地面に倒れた拍子についた砂埃を叩き、立ち上がりながら亜理紗に問いかける。

「ふん、結果はもう既に見えていますわ。それよりもあんな馬鹿の相手をするなんてアンタも大変そうで哀れなことですわ」

亜理紗が制服の内側から取りだした扇子を広げ、パタパタと煽りながら嘲笑う。

「生憎こういう面倒事には巻き込まれやすいタイプでね、今に始まったことじゃないさ。それよりも随分と勝ちを確信しているようだが、前生徒会長に賄賂でも渡したか?」

「確かにそれもいい考えね。でもアンタたち如きに私の家の力を使うまでもないのよ。下僕ども集まりなさい」

亜理紗が両手を合わせて叩くと、どこから現れたのか一瞬にして男子生徒諸々が亜理紗の後ろに整列した。その数おおよそ数百は超えるだろう。

その男子生徒諸君らは祭りで着る法被のようなものを羽織り、その背中には「亜理紗様親衛隊」などと何やら恐ろしい刺繍が彫られていた。

傍から見たらアイドルに群がるドルオタのようである。

「おいおい、凄い光景だなぁ…男子のほとんどが買収されてんじゃんよ。どうするよ勇飛?」

「な、何ですかこの凄い恰好の人たちは…」

背後から聞こえてきた声に反応し振り向くと、正門からノコノコと歩いてくる龍夜とその横を一緒に歩く水希の姿が目に入った。

水希に関してはこの親衛隊集団に軽く引いている様子だった。

「はっはっは!我ら亜理紗様親衛隊にかかれば、この生徒会選挙も貰ったも当然。悪く思うなよお前ら」

親衛隊の中心でリーダー格のような素振りを見せる一人の男子生徒。

「あ、高山お前、そっち側につくのかよ!昨日まで俺の味方してくれるって言ってたじゃんか。この裏切り者!」

龍夜が指さすその男子生徒こそ、前に亜理紗に盛大に振られ、皆の前で恥じらいを晒されたB組の「高山」だった。

「お前とも一緒に戦いたかったさ。だがな、亜理紗様が生徒会に参加されるとなった以上、俺は亜理紗様に生徒会長という勝利を捧げるため友を裏切る。悪く思うな…龍夜」

まるで自分が悲劇の主人公のような表情で感情に浸りながら言い放つ高山。

お前そんなキャラか?ってツッコミは置いておこう。

「ちくしょ~高山が取られちまった…この戦い、厳しい展開になりそうだぜ勇飛!」

「いや、高山の存在感、お前の中でどうなってんだよ!」

と思わずこっちにツッコミを入れてしまった。

しかし龍夜の言う通り高山が取られてしまったとなると、あいつの人脈…主に同学年の男子には期待薄となったわけか。

さて、どのように敵の戦略を討つべきか…と思考を巡らせているのも束の間。

「諦めるのはまだ早いですよ、勇飛様!龍夜様!」

突如背後から聞こえてくる聞き覚えのある声…

まさかと思い振り返ってみるとそこには人化したガブリエルが威風堂々とした姿で立っていた。

しかもその隣には、ヘラクレスとヘパイストスまで俺たちと同じ制服姿で並んでいるではないか…。

いまさっき面倒ごとは起こすなと釘を刺した傍からこのありさまである。

「馬鹿勇飛、あんたまさか…」

亜理紗をはじめその場に居合わせた全員が突如現れたガブリエルたちに視線を向ける。

一瞬にして注目の的である。

「ははっ、最近変な奴らに絡まれるようになってな…あぁ!俺こいつらに話さないといけないことがあったんだっけ。わりぃけど今日はこれで失礼するわ。ほら、龍夜、水希、お前らも行くぞ!!」

流石にこの状況は不味いと判断し、龍夜と水希そして突如現れた馬鹿女神たちを引き連れ、亜理紗たちの前を颯爽と後にした。


人目の付かない体育館裏へ皆を連れていく。

「さて、どういうことか説明してもらおうかガブリエルさん?」

前にもこんな展開あったなと思いだしたのはさて置き、返答次第では覚悟は出来てんだろうなと言わんばかりに腕を組みながら仁王立ちで威圧する。

「さっきも言ったじゃありませんか。たまには龍夜様の手助けをしましょうって」

「だからってまた白昼堂々と学園に姿現してんじゃねぇよ」

「許可なら水希様に取りました」

思わず水希の方を見る。

当の本人は右手拳をコツンと頭に軽く叩き、テヘペロみたいな表情をしてやがる…

「お前らはまた勝手なことを…てかガブリエルお前制服姿をヘパイストスに見られるの嫌がってなかったか?」

「あの林間学校の後…あろうことか龍夜様がヘパイストスにその時に携帯で撮った写真を見せたのですよ」

あ、結局羞恥な姿をお披露目することになったのか…それは同情すると思いながら、加害者(龍夜)に軽蔑の視線を向ける。

「いやぁ~ヘパイストスがあまりにも聞いてくるからついノリで見せちゃって」

「マイハニーのレアな姿をお前らだけ独占するのはずるいからな。まぁ…あのあと俺たちは守護の交鎖で1日ほど磔の刑に処されたがな…」

「しかもパンイチ(パンツ一丁)で外に磔だぜ…なかなかエグイプレイだったわ」

「俺の知らないところで楽しそうなことしてんなお前ら」

一瞬ガブリエルに同情したが今の話を聞き、不覚にも龍夜たちに同情してしまった。

「その結果もありましてか、この姿でいることに何の迷いもありませんがね」

どうやらガブリエルも吹っ切れた様子らしい。

「まぁ、ガブリエルは見慣れているとして、お前ら二人もまさかの制服コスプレとは驚いたぞ」

俺達と同じ男子生徒の制服を卒なく着こなしているヘラクレスとヘパイストスを見ながら言う。

「ガブリエルに誘われてな。しかしこの服は動きにくいな…これでは素振りもまともにできそうにないな」

腕を上下に動かしながら、ヘラクレスが若干窮屈そうに不満を漏らす。

「そうか?俺はこの制服とやらは気に入っているぞ。それにこの服の素材は何で出来てるんだ?しっかりとした形式をしていながら素材自体は軽くしなやかさを保っている。人間界にこのような生産技術があることに俺は興味深さを感じている」

流石は物づくりの神様と言われるだけのことはあるのか、ヘラクレスとは対照的にヘパイストスは制服のもつ素材の良さに関心を示している。

「あぁ~そういえばヘパイストスは武器職人だもんな。こういう物作りの技術にはお目が高いってわけか」

龍夜がヘパイストスの着る制服の袖を引っ張りながら言う。

「ったく、先が思いやられるな。ってか名前はどうするんだよ。ガブリエルは前にリエルって命名してたけど、流石にお前ら二人の名前から文字るのは難しくないか?」

「それなら心配いりません。私がちゃんと考えていますから」

待ってましたかと言わんばかりに水希が前に乗り出してきた。

「水希が命名したのか…まともな名前であることを祈るぞ」

「そうですね…まともかどうかは皆さんの感性におまかせしますが、とりあえずこのような名前でどうでしょうか」

水希が命名した3人の偽名(ネーム)は以下の通りだった。

ガブリエル=(ヒカリ)(光の神様ということで、光のイメージをそのまま文字った模様)

ヘラクレス=闘馬(トウマ)(闘いの神様ということで、闘いをイメージする「闘」の文字が由来)

ヘパイストス=火燕(ヒエン)(火と鍛冶の神様ということで、火のイメージが由来)

「なんか思っていたよりもしっかりしているな」

想像以上に名前の由来もしっかり考えられているところが水希らしい。

「私たちが人間らしい名前を手にするなんて、ちょっと新鮮ですね」

「あぁ、二つ名みたいで俺はありだぞ」

「ヒエンか…悪くないな。良き名だな水希」

「さすがは流華ちゃん、良いセンスしてるぜ」

「いやいや、それほどでもないです」

龍夜たちに褒められた水希が珍しく照れている。

「あ、苗字の方はどうしましょうか…」

「苗字なんて必要なのか?」

「はい、生徒会選挙で投票する時には全員フルネームでの記載が必須になりますから」

「だったら、全員桐城でいいんじゃね?」

「あぁ、なんだって龍夜?冗談はやめろよ」

さらっととんでもないことを口走る龍夜に思わず反論する。

「へ?なんで?いいじゃん別に」

「いや良くねぇだろ!ただでさえ桐城なんて珍しい苗字が4人もいたら怪しすぎるだろ」

「そこは全員勇飛の従弟ってことにしとこう」

「いや、従弟でも無理あるだろ…」

「まぁこの生徒会選挙の期間だけですから…私からもお願いします」

水希までこの流れに便乗してきやがった。

「はぁ…もうそれでいいよ。こんなことであまり時間を費やしてもしかたないしな」

とうとう諦め、その場で盛大に肩を落としながらため息をつく。

「あ、こんなところにいましたのね!探しましたわよ!」

声のする方を見ると、亜理紗が息を上げながらこちらを指さしている。

どうやら俺たちを追いかけて探し回っていたようだ。

「なんだよ亜理紗、こいつらのことなら…」

「聖天六神でしょ?私を侮らないことね」

亜理紗のこの一言にその場にいた全員が驚いたように目を丸くする。

「な、なんでお前がそれを知って…」

亜理紗に問いかけようとしたその時だった。

「やっほ~みんな久しぶり~!やっと見つけたよ~」

亜理紗の後ろからひょこっと顔を出してこちらに手を振る女子生徒が現れた。

その見た目は桃色のポニーテールにピンクの瞳を持ち、複数のネイルやピアスなどのアクセサリーを付けた派手派手なギャルのような姿をしている。

その明るい表情とノリで話しかけてくる女の子は明らかにガブリエルたちに向かって手を振っているのが分かる。

「フレイヤ?あなたこそどうしてこんなところに?」

ガブリエルがフレイヤと呼ぶこの女の子(女神)こそ、聖天六神序列5位豊穣のフレイヤだった。

新たな聖天六神とその契約者が出ましたね。

そしてまさかあの男(高山)の参戦…w

暫くは学園ものとして執筆していけたらと思います。

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