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悪魔の息子である俺が神様と契約した件  作者: 猫熊メイクライ
第1章:悪魔使い激闘編
12/21

1-12 異空間の死闘

秋山の呼び出した悪魔が放った謎の紋様の光に飲み込まれた龍夜は、気が付くと辺り一面が薄暗い緑色の霧に覆われた空間に辿り着いていた。

「ったく、いきなり目の前が紫色の光に包まれたと思ったら変なところに飛ばされちまったな」

一人座るには丁度いい形の朽ちた切り株に腰を下ろしながら辺りを見回すと、所々にも枯れ木や十字架を象った墓標が散見された。

「こりゃまた悪趣味な光景ですなぁ…俺の相手は実は中二病か何かか?」

あの真面目そうな風貌とは裏腹に、こんな中二病描写全開の光景を見せられては流石の龍夜も珍しく引いている。

「これに鴉が鳴こうものならシチュエーションとしてはまさに完璧なんだろうが、正直この空間にいるのが辛くなるな…てか、そう言えばヘパイストスの奴はどこ行ったんだ?」

同じく謎の紋様の光に飲み込まれたはずだったが、その姿がどこにも見当たらなかった。

とりあえず契約の魔具に呼び掛けてみたが無反応だった。

「おっかしいな…主を置いてどこかに行くなんて、あいつそんな薄情な奴だっけ?」

頭を掻きながら仕方なく呼びかけを断念する龍夜。

「とりあえずこの変な場所から早く抜け出すためにも、出口を探すとしようかねぇ」

そう言うと龍夜は、老人が重い腰を起こすように立ち上がると渋々前へと歩み始めた。


出口を探すため歩き出した龍夜だったが、歩けども歩けども同じ景色が続くばかりで、出口など一向に見つからなかった。

「う~んなるほど…この手の展開、俺は知っているぞ。つまりあれだ…どういう事なんだ?」

この状況下に陥っても持ち前の馬鹿さを発揮する辺り不安や緊張感といった要素は無いのだろう。

「でも、さっきまで反応しなかった魔具が少しずつ反応してるんだよな…多分この先にあいつもいるんだろうな」

先へ進むにつれて少しずつ呼応している契約の魔具を頼りに前へ進む龍夜。

暫く歩を進めると前方に漂う霧の奥から二つの人影が見えてきた。

その人影は激しく動き回っており、時々金属が擦り合うような音と同時に火花を散らしているのが霧越しからでも確認できた。

誰が戦っているのかなんてこの状況からすれば幾らバカの申し子と言えど直ぐに理解できた。

「やっと見つけたぜヘパイストス。てか、俺を差し置いて先に(バト)ってんじゃねよ」

目の前の霧を払い除けながら人影に向かって駆け出した龍夜だったが、その場に辿り着いた龍夜が目にした光景に驚愕した。

「ぐっ…龍夜か?」

龍夜の前に現れた光景は、体に傷を負いながら黒山洋の悪魔と対峙するヘパイストスの姿だった。

龍夜の姿を認識したヘパイストスはかなりのダメージを受けていたのか、脱力するようにその場に跪いた。

その隙を狙って黒山洋の悪魔が黒い大斧を振りかざしながら襲い掛かる。

「させるかよ!」

ヘパイストスに襲い掛かる悪魔の動きに瞬時に反応した龍夜が、神器召喚で呼び出した剣で敵の大斧を受け止める。

「な~にやってんだよヘパイストス、さっきの戦いで疲れてんのか?」

敵の攻撃を受けつつヘパイストスの方を見ながら揶揄う龍夜。

攻撃を受け止められた悪魔が龍夜の存在を認識し、鍔迫り合いの状態から後ろに身を引き間合いを取る。

「来たか、人間風情が」

英雄(ヒーロー)は遅れてやって来るって言うだろ?それより俺の相棒を痛めつけてくれたお前にお礼をしてやらねぇとな」

「ほぉ、生意気な口を叩きおって。人間如きがこのバフォメット様に勝てると思っておるのか?」

「龍夜、いくらお前でも相手は悪魔だ。お前ひとりでは…。」

「おいおい、お前こそ無理すんなって。怪我人は休んでそこで見てんしゃい!」

ヘパイストスの忠告を無視してバフォメットに攻撃を仕掛ける龍夜。

「おりゃあ!炎龍剣(えんりゅうけん)!」

龍夜の持つ剣が龍の形をした炎を纏い、バフォメットに斬りかかる。

「人間にしては中々の小細工だな。だが!」

バフォメットは斧を盾のようにして龍の炎を纏った剣を容易く受け止める。

「ほぉ、臆せず向かう姿勢は誉めてやろう。だが、所詮は人間の力だな」

バフォメットは大斧を横に振り、受け止めた剣を振り払う。

「なっ…」

振り払われた勢いで龍夜の体が宙を舞う。

「喰らうがいい」

バフォメットは右手に収束させた黒い瘴気の塊を龍夜に向けて放つ。

放たれた黒い瘴気の塊が分散し、複数の黒い瘴気が龍夜に襲い掛かる。

「ちょっ、あっぶねぇな!!」

宙を舞う龍夜は一回転しながら体勢を立て直し、迫る黒い瘴気を避けていく。

持ち前の運動神経で隙をリカバリーしながら地面に着地する。

「でけぇ武器だけじゃなく飛び道具まで使うのかよ。てか、お前そんなでけぇ武器を振り回せるほどの図体してたっけ?」

対峙した時はあまり気にしていなかったが、戦い始めてからバフォメットの姿に違和感を感じる龍夜。

確かこの空間に連れて来られる前に一瞬見た姿は、やせ細った老人のように飄々とした姿だったような気がした。

「言ったであろう。貴様らの死に相応しい舞台を用意したと。ここでは我が体内に宿る魔瘴気が最大限活かされるようになっているのだ」

「なるほどね~自分に有利な盤面という訳ですか。悪魔らしいせこい戦い方だな」

「闇雲に何も考えない貴様みたいな奴ほど戦術を活かした戦い方が有効なものよ」

「戦術ねぇ…そいえばお前の主はどこ行ったんだ?さっきから全然見当たらねぇけど」

「我が主は安全なところで貴様の死に様を見ていることだろう」

「安全な場所っていうか、悪魔頼りのチキン野郎だろ」

「ふん、負け惜しみなど幾らでも言うがいい」

バフォメットが斧を振りかざす。

その振りかざした勢いで斧を地面に叩きつける。

黒い瘴気を漂わせた衝撃波が地面を抉りながら龍夜に襲い掛かる。

「やっべ、神器変換(リーサルチェンジ)焔の盾(ほむらのたて)

避けるすべが無いと判断した龍夜は持っていた剣を盾の形に変換し衝撃に備える。

「ぐっ…ぐあぁぁぁぁぁ!!」

しかし想像以上の力に防ぎきることが出来ず、衝撃で吹き飛ばされる龍夜。

「龍夜!!」

吹き飛ばされ地面に倒れる龍夜を目の当たりにし声をあげるヘパイストス。

「痛ってぇ…こんなの直撃してたらマジでやばかったぞ」

焔の盾による防御で何とか致命傷を免れながら起き上がった龍夜だったが、それでも体の至る所に傷を負っていた。

「くそ…おい悪魔よ、お前の相手はこの俺だ。これ以上龍夜に手を出すな」

ヘパイストスが傷を労わりながら何とか立ち上がり、炎の双剣を構える。

「その身体で何が出来るというのだ。失せろ!」

バフォメットが罵りながら黒い瘴気の塊をヘパイストスに向けて放つ。

「ぐあっ」

立っているだけで一杯のヘパイストスに当然回避する力は無く瘴気の塊が直撃し吹き飛ばされる。

「ヘパイストス!」

吹き飛ばされ地面に倒れたヘパイストスの下に駆け寄る龍夜。

「ったく、一体どうしたんだよ?そんなにさっきの戦いで消耗しちまったのかよ」

ヘパイストスを起こすために腕を掴もうとする龍夜。

「やめろ!」

しかしヘパイストスは、まるで余計なお世話だと言わんばかりに差し伸べる手を払い除ける。

「自分で立てる。それにこいつは俺の戦いだ。お前のような人間が出しゃばることじゃない」

「なっ、人がせっかく心配してやってんのにそんな言い方はねぇだろ」

何やら険悪な雰囲気に陥ってしまった龍夜とヘパイストス。

「ククク、仲間割れとは…惨めなものだな」

二人の姿を見てバフォメットが嘲笑う。

「元より人間の力に頼らずとも俺は聖天六神ヘパイストスだ。悪魔如きが、調子に乗るな」

バフォメットの挑発に乗せられ、冷静さを失いながら猛進していくヘパイストス。

「そうか…なるほどな」

普段と様子のおかしいヘパイストスの姿を見て何かを悟る龍夜。

そんな龍夜の視線すら気づかず、バフォメットに斬りかかるヘパイストス。

「愚かなり。そんな体で何が出来る」

「がはっ!!」

バフォメットが振った斧から放たれた衝撃波がヘパイストスを襲う。

近づくことさえままならず、衝撃波によって吹き飛ばされたヘパイストスが地に倒れる。

「聖天六神とは名だけか。大した事ないな」

バフォメットが勝利を確信しているかのようにヘパイストスを見下しながら言う。

「さて残るは人間、貴様のみだ。貴様の契約した神様がここまで非力とは…残念だったな」

バフォメットが嘲笑いながら龍夜の方を向く。

対する龍夜は何も言わず、顔を下に向けて俯いたまま立ち尽くしている。

「どうした?相方の非力さに絶望して怖気着いたか」

何も言い返せない龍夜を煽るバフォメット。

少し間が経った後、バフォメットの煽りに対して龍夜がゆっくりと口を開く。

「あぁ、確かにな…これがお前の言うように本物(・・)のヘパイストスだったら、絶望どころじゃ済まなかったかな」

俯いた顔を前に向けバフォメットの方を見る龍夜の顔は笑っていた。

「な…まさか貴様…」

龍夜を見たバフォメットの表情が一変する。

「敵を騙すにはまずは味方から…って言葉はよく言ったもんだぜ」

そう言うと龍夜は地面に蹲う(つくば)ヘパイストスの方を見る。

「悪く思うなよ、ヘパイストス…いや、汚い悪魔やろう!」

「くっ、おのれぇ!!」

バフォメットが龍夜を止めようと斧を振りかざしながら向かってくる。

しかしバフォメットの攻撃が届くよりも先に龍夜の剣がヘパイストスの体を突き刺した。


龍夜の剣がヘパイストスを貫いた瞬間、周りの薄気味悪い緑の霧に包まれた空間が、ガラスが割れて砕け散るかの如く消滅し、元の廃校に戻っていた。

戻った場所は先ほどの大講義室ではなかった。

恐らくバフォメットの能力で別の校内(教室)に転移させられたのだろう。

龍夜の貫いたヘパイストスの姿は最初に目撃した老人のように飄々とした姿のバフォメットだった。

龍夜の背後には炎の双剣を振りかざし、今にも龍夜に斬りかかろうとしているヘパイストスの姿があった。

先程まで龍夜が見ていた瀕死のヘパイストスの姿とは違い健全な姿をしていた。

「がっ…馬鹿な、この私の術が見破られただと!?」

バフォメットが刺された剣を掴み、体から引き抜きながら言う。

剣を引き抜くと同時に龍夜を振る払うように腕を振りながら後ろへと距離を取る。

「これは一体どういうことだ?俺はさっきまで悪魔と戦っていたはずだが」

目の前の悪魔だった者の姿が急に龍夜に変わったことに驚くヘパイストス。

「俺たちはあの悪魔の術みたいなものにまんまと嵌まってたんだよ。ったく、もう少しでヘパイストスと殺し合うところだったぜ」

「そうだったのか。しかし龍夜よ、何故俺たちが悪魔の術に嵌まっていたことに気づけたんだ?」

「そんなの決まってんじゃん。直感だ!!」

龍夜が得意げに指を立てながら言う。

生まれながらにして持った天性の馬鹿さが直感力を養わせたのだろう。

「全く答えになっていないぞ…まぁしかしお前のその類まれなる馬鹿さは純粋ゆえに冴えることもあるのだろうな」

ヘパイストスが呆れた様子でため息を漏らしながら言う。

「ちょ、ヘパイストス?お前まで俺のこと馬鹿呼ばわりかよ」

「ハハハ、いい意味での誉め言葉だ。それよりも龍夜よ、そろそろ決めるか」

ヘパイストスがバフォメットの方を見ながら双剣を構える。

「そうだな。てか、あの悪魔の悪魔使いはどこ行ったんだ?」

龍夜が周りを見渡すと出口の方へコソコソと逃げようとしている秋山の姿を発見する。

「あ!!てめぇ逃げるつもりか」

「ひっ!!」

龍夜に気づかれた秋山が背を向けながら走り出す。

「おい秋山よ、我を置いて逃げるつもりか!?」

バフォメットが逃げようとする秋山に声をあげる。

「うるさい、お前の術が役に立たなかったからだろ。私は戦況を整えるために一時撤退する。それまでお前はここで奴らを足止めするのだ。」

「おい待て、貴様の神滅が無ければ我も力を発揮できぬぞ。それに人間ごときが我々悪魔に逆らうことが許されると思っておるのか?」

「あ~あ、何か内輪もめ始まってるじゃん。あんなに信頼関係の無い悪魔と悪魔使い俺はじめて見たわ」

「悪魔もその悪魔使いとなった人間も互いに利用し合う事しか考えてないんだろう。見るに堪えん光景だ」

「ま、何にせよあいつ等はここで俺たちが倒すしかねぇな」

龍夜が秋山の方へ向かって走り出す。

「逃がすかよ!!」

走った勢いのまま秋山の背後からドロップキックをお見舞いする。

「がはっ!!」

龍夜のドロップキックが直撃した秋山は数メートル吹き飛び、その勢いのまま壁に激突しそのまま気を失った。

「やるな龍夜!さて、こっちもそろそろ終わりにしようか」

「小癪な。そう易々と我を倒せると思うな」

バフォメットの周囲に不気味な紋様が描かれ、その紋様から黒い瘴気が放たれる。

しかしヘパイストスはそれを物ともせず、的確に回避しながらバフォメットとの間合いを詰める。

「終わりだぜ。炎龍連斬!!」

炎を纏いし双剣がバフォメットの体を斬り裂いた。

「ぐぉああああああ!!」

斬られたバフォメットが炎に焼かれながら断末魔をあげる。

物の数秒後、バフォメットの体は炎に焼き尽くされて消滅した。

バフォメットの体が消滅すると同時に既に気絶している秋山の右手に装着されていた契約の印も跡形もなく砕け散った。

「やったなヘパイストス」

龍夜がヘパイストスに向かって右手を挙げながらハイタッチを求める。

「あぁ」

ヘパイストスも右手を挙げて龍夜のハイタッチに応える。

「やっぱ俺たちの信頼には悪魔たちも敵わねってことだな。カッカッカ」

「龍夜、悪魔を倒したことはめでたいが今は浮かれている暇はないぞ」

「分かってるよ。変なところに飛ばされちまってるし、急いで勇飛たちの加勢に向かわねぇとな」

バフォメットとその悪魔使いの秋山を倒した龍夜とヘパイストスは勇飛の下へ加勢に向かうため、急いで駆け出しながら部屋を後にした。

馬鹿っていい意味で使える天性の才能だと思うのは私だけでしょうか。。。

主人公より主人公してる龍夜君を書くのは何だかんだ楽しいです(笑)

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