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悪魔の息子である俺が神様と契約した件  作者: 猫熊メイクライ
第1章:悪魔使い激闘編
1/21

1-1 俺には神が見える

5月10日午前7時00分。

カーテンの隙間から日差しが差し込む時間帯。

「勇飛様、朝ですよ。起きてください」

枕もとで囁かれる美しい女性の声。

その声で余計夢心地の世界から抜け出せなくなる。

が、その数秒後…

「コラァ勇飛!!朝になったぞ、遅刻するぞ!!」

今度は朝から無駄に五月蠅い男の声が耳元に突き刺さる。

その五月蠅い声に嫌気がさし、しぶしぶベッドから起き上がる。

洗面所で顔を洗い、歯を磨き、身支度を整える。

学校の制服に着替えるとリビングの机の上には丁度いいタイミングで朝飯が準備されていた。

「今日は、和食をメインに朝食を準備致しました」

机の上には白米、みそ汁、焼き魚、香の物とご機嫌な朝食のラインナップだった。

準備されていた朝食を食し、7時30分頃に家を出て学校に向かう。

この一連の朝のルーティン…高校男子の模範的姿と言えるだろう。

しかし、この朝のルーティンには不可解な点がある。

まず1つめ、俺は高校に入学してから高校近くのアパートで独り暮らしをしている。

実家から学校までは片道2時間近くということもあり、親の承認の上で一人暮らしをしている。

そして2つめ、俺は生まれてこのかた彼女が出来たことが無い。

彼女がいた場合、一人暮らしの俺は勝ち組の部類になるのだろうが残念ながらそうではない。

と、この2つの状況下から今朝の一連のルーティンに違和感があることに気づくだろう。

言っておくが男友達や女友達を家に泊めてやるなんてお人好しをすることもない。

まぁ、あれこれ前置きするのもめんどくさいから結論だけ言ってしまおう。


『俺には神が見える!!』


今しがた自分でも信じられないが、そもそもどうしてこんなことになってしまったのか。

まずはその成り行きから説明しようと思う。


遡ること1ヵ月前。

春休みが明け、普段通りの通学路を歩いていて学校へ向かう。

と、その前に自己紹介を入れていなかったので入れておく。

桐城勇飛(きりしろゆうひ)、私立精霊学園に通う2年生だ。

学校の校門をくぐり、下駄箱に向かう最中だった。

「よおっす勇飛!!」

いきなり背後から勢いよく肩を組まれる。

「あぁ~なんだよ龍夜、朝っぱらからテンションが高いな」

朝からハイテンションで話しかけてきたこの男の名は火炉瀬龍夜(ひろせりゅうや)

赤髪のショートレイヤーと赤い瞳を持ち、シャツの第1ボタンどころか第2ボタンまで開けて、首から下げたシルバーアクセサリーが見える容姿は高校生にしては派手すぎるが、この学校に髪型や身なりについて厳しい規制は特に定められていない。

ぱっと見お調子者のホストのような見た目だが、持ち前のコミュ力の高さから周りからの人気は高い。

そんな学校の人気者が気安く俺に話しかけているが、言わば小学校からの腐れ縁というやつだ。

「なぁ勇飛聞いたかよ、B組の高山がC組の風条院に告白したらしいぜ」

「へぇ~あのサッカー部エースの高山がねぇ」

「おいおい、あんまり興味ない感じだな」

「別に、結果は見えてるだろうし…」

「そう、お前の予想通り秒殺だったらしいぜ。それどころか地面に跪かせた挙句、ギャラリーの前で奴の頭を踏みにじったとか。やはり世界に名を轟かせる風条院財閥の令嬢はハードルが高いですなぁ。いや、踏みつけられることはむしろうらやましい限りだ」

「お前の趣味も中々の物だよ。で、そんな話はいいとして本題は?」

「おや、土産話はもういいのか」

「土産話じゃなくて与太話だろ…で、その話を元手に俺に何を求めてるのかさっさと話せ」

「察しが良いね、流石幼馴染!」

「腐れ縁の間違いだろ」

このような場合の龍夜の行動は大体予想がつく。

おおよそ宿題を見せてくれとかそんなところだろう。

「古典のノート見せてくれ」

両手を前に合わせながら龍夜がお願いしている。

「はぁ…1限目の授業が終わったらすぐ返せよ」

渋々カバンから古典のノートを取り出して龍夜に渡した。

「サンキュー、愛してるぜ勇飛」

肩に組んでいた龍夜の手が俺の頭をワシャワシャと撫でまわす。

「はいはい、分かった分かった」

そのワシャワシャしてくる手を軽く振りほどくと龍夜は一足先に教室へと戻って行った。

朝から龍夜の奇襲に疲れを感じながらも教室に向かう。

教室に入ると丁度ホームルーム開始のチャイムが鳴り響いた。


ホームルームが終わり、すぐに1限目の授業が始まった。

1限目の授業は世界史だった。

世界史の授業だが、テーマは何故かギリシャ神話についてだった。

高校の授業でギリシャ神話を学ぶとは…この学校にも物好きがいるものだ。

授業が後半に差し掛かり、前回の授業に関する復習テストが配られた。

世界史の授業では前回の授業内容を復習する機会が設けられている。

一応、前回の授業もギリシャ神話に関する内容だ。

最初は難なくペンが進んでいたが、後半に進むにつれて難易度が上がっているのが分かる。

そして次の問題でペンが止まった。


Q:ギリシャ神話で火と鍛冶を扱う神の名を答えよ。


こんな問題、全国の世界史の授業を総集しても絶対に無いだろう…。

授業のノートは毎回取っているが、この内容はノートで見たことがなかった。

「梶田め…授業中にしれっと言ったであろうマイナーな内容を出してきやがって…」

梶田とは世界史の授業を担当する教師の名前である。

しばし考えてみたものの流石に思い出せず、この問題はスルーして次の問題を進めようとした時だった。

『こいつぁヘパイストスのことじゃねか。』

ヘパイストス?あぁ、そうだ。確かそんな名前だったな。

解答用紙にその名を書こうとしてペンが止まる。

ん?いま喋ったのは誰だ?

テスト中に私語を発する不届物がいたら真っ先に梶田が排除に向かうはず…。

だがその梶田は教壇の上で微動だにせずだった。

となると今のは一体なんだ…幻聴か?

まぁ、もしかしたら今朝の龍夜とのやり取りで疲れているだけかもしれない。

そう思い込もうとした。しかし…

『あら、人間界でも私たちの事を学ぶことがあるのね。』

今度は別の声が後ろから聞こえてきた。

俺の後ろに誰かいる?

いや、俺の席は教室の窓側の一番最後尾。

他の生徒の席が後ろにあるなんてことはまずありえない。

この不可解な現象を確かめるすべは一つしかない。

意を決してテスト中であるのも関わらず後ろを振り返った。

そして俺の目の前に飛び込んできたものは二人の男性と女性だった。

一人は金髪白人の美少女で、その見た目から20歳を超えているだろう麗しい成人女性のようだった。

しかし普通の女性と違うところが1つだけあった。

それは背中から伸びている…いや正確には生えているのだろう白き大きな翼だった。

もう一人は同じく20歳くらいの銀髪褐色の男子で、現代ではコスプレとも言わんばかりの全身武装を施した姿をしている。見た目からも分かるように筋肉質でかなり絞られた体型をしている。

いや、彼らの姿なんてどうでもよかった。

目の前に突き付けられた非現実的な現象に思わず声を上げてしまった。

テスト中だということも忘れて…

「だ、誰だお前らぁぁぁぁぁ!?」

その声に驚いた生徒たちが一斉に俺の方に視線を向ける。

クラス皆からの痛い視線を背後に感じたと同時に頭上にも鈍い痛烈な一撃が下された。

「勇飛、貴様テスト中に何を騒いでいる!」

「痛ってぇ!!」

俺に鉄拳制裁を下した男。

ここで改めて自己紹介をしておこう。

梶田鉄也(かじたてつや)26歳、世界史担当の鬼教師。

教師歴は4年とまだまだ若い部類に入るはずなのに妙に高い貫録を持っている。

それ故に他の生徒からは鬼鉄の梶田(きてつのかじた)の異名で呼ばれている。

「聞いてくれ鉄也、俺の後ろの席に…って痛ってえな!!」

鉄也こと梶田の鉄拳がもう一撃振り落とされた。

「鉄也と呼び捨てにするな、このアホぉ」

思わずいつもの癖で鉄也と名指しで呼んでしまった。

俺が梶田のことを鉄也と呼び捨てにしている理由はまたの機会に説明する。

今はこの状況を何とか鉄也に説明しなければならない。

普通に考えたら今見えている2人はどう見ても不審者でしかないからだ。

「悪かったって、でも見てくれよ俺の後ろの席。何か知らない金髪美少女と銀髪筋肉男が見えないのか?」

そう言いながら後ろを指さす。

「あぁ?何を訳の分からんことを言っているんだお前は、誰もいないぞ」

しかし、鉄也は何も見えていない反応を見せる。

だが、俺の目には今でもその異質な2人が見えている。

一体どうなっているんだ…。

「そもそもそんな不審者がいたら真っ先に俺が気付いてこの教室から叩き出してるはずだ」

そう言うと鉄也は何故か無防備な俺を担ぎ上げる。

「ちょ、何するんだよ鉄也!」

咄嗟のことで反応が遅れたが、すぐに抵抗する。

しかし鉄也の強靭な腕力がそれを許さなかった。

「今は授業中だからな。その授業の輪を乱した不審者は排除する」

「おいおい、俺がちょっと頭おかしい発言したくらいでそれは無いだろ!?それでも教師か、この鬼畜鉄也がぁ!!」

「ギャーギャーわめくな!みんなの邪魔になる。廊下で反省していろ」

抵抗も虚しく廊下へと叩き出されてしまった。

「鉄也の野郎…何も廊下に追いやることはねぇだろ」

授業が終わるまではまだ時間が有り余っている。

さてどうしたものか。

「仕方ない、あの場所で時間つぶすか」

次の授業までの時間を潰すため、校内でお気に入りの場所である屋上に向かうことにした。

南校舎4階の階段から屋上に繋がっている扉まで行くことが出来る。

扉の前まで行くと扉には一般の生徒が侵入出来ないように鍵が掛けられている。

が、ここは問題ない。

以前、龍夜の誘いで忍び込んだ時に作った合鍵があるからだ。

その時は鉄也にバレて反省文を書かされたが、その見返りとして手に入れた合鍵(しろもの)だ。

その後は何か気持ちを落ち着かせたい時によく利用するようになった。

屋上に侵入すると、扉の左手にあるベンチに腰を掛けながら一息つく。

「はぁ…さてと、ここなら誰もいないし、俺を変な目で見るやつはいないだろう」

自分の気持ちを整理し、今もなお目の前に見えているコスプレ男女に問いかけることにする。

「お前たちは一体何者だ?」

「やはり、貴方様には私たちの姿が見えるのですね」

白人の女性と目が合う。

「生憎、見えてしまったが故にこのありざまだ」

「それは誠に申し訳ありませんでした」

「いや、謝る必要はないさ。それよりもあんたは何者なんだ?」

「私は天界より参りました、聖天六神(せいてんろくしん)序列3位、守護のガブリエルと申します」

ガブリエルと名乗る女性は、礼儀正しくその場で一礼する。

聖天六神とは天界に住む神々の中で、最高神に遣える神に与えられる称号を言う。

「おいおい、俺を除け者にするんじゃねぇよ」

ガブリエルの横にいた男が割込んできた。

「貴方はもう少し礼儀を弁えなさい」

その言動をガブリエルが注意する。

「へいへい、すいませんでした」

ガブリエルから注意を受けた男は不貞腐れながらそっぽを向いた。

「全く…私の同僚が無礼を働き申し訳ありません。私の隣にいるこちらはヘラクレスと申します」

「聖天六神序列6位、闘神のヘラクレスだ。よろしく頼むぜ」

ヘラクレスと名乗る男が陽気な声で答える。

「ガブリエルにヘラクレス…神話に出てくる神様なのか?」

「人間界の方々にはそのような存在で認知されていますね」

「そうだな、俺たちはお前たち人間から見たら神様って存在だ」

「そんな神様が平凡な人間の俺に何の用だ?」

そもそも人間の俺に何故神が見えるようになってしまったのかも不思議でならないが、ここは話の中で探りを入れていくことにした。

「おっとその前に、俺たちも名乗ったんだ。お前さんの名前も聞かせてもらおうか」

「ヘラクレス!これから主となる方にまたしても無礼なことを…」

「大事な事だろ、これから主になる方の名前を知ることは。ほら、早く名乗れよ」

「あぁ、俺の名は桐城勇飛だ」

「勇飛か、いい名前だな」

「それはどうも」

とりあえず適当に相槌を打っておく。

「突然のことで困惑されていると思いますが、私たちが勇飛様に見えること、そして勇飛様の前に参じた理由についてお話致します」

この一連の出来事についてガブリエルが説明を始めた。



数日前のこと…天界に存在する神殿オリンピア。

その王座には神の頂点に立つ最高神ゼウスがいた。

「お~い、ミカエルちゅわ~ん。おじさん暇すぎて死にそうだよ~。そろそろお仕事切り上げて今夜二人で飲みにでも行かない?」

神の王と呼ばれるものが、見た目にそぐわない言動で右隣に立つ女神にデレデレし始める。

「ゼウス様…貴方様にはもう少し神の王としての威厳を持って頂きたいのですが」

ミカエルと呼ばれる女神が呆れたようにため息をつく。

「だって、僕が神様になってからこの天界も平和に統治されているわけだし、ぶっちゃけ仕事という名目で毎日オリンピアに足を運ぶのも疲れちゃったんだよね」

「これも先代から引き継がれた王たる責務でございます。あぁ、それと私、おじさまには興味がありませんのでごめんなさい」

さらっと最高神に対して痛い一言を浴びせるミカエル。

「え~っ酷いなミカエルちゃん、じゃあ代わりにレトちゃん、今夜一緒にどう?何でも好きなところに連れて行ってあげるよ~」

ミカエルに振られたゼウスが今度は左隣にいた黒い女神にアプローチを仕掛ける。

「黙れ変態おやじ!その気持ち悪い面を今すぐ除けろ」

ムフフと今にも襲い掛かりそうな素振りを見せるゼウスを容赦なく突っ張り返すレト。

ミカエル以上にひどい扱いだ。

「うぐっ、相変わらずツンツンしているねレトちゃんは…だがそれが良い!!」

最高神としての威厳が保たれていない。

しかしそんな状況でも折れない謎のメンタルを持つ最高神のおじさん。

そんなふざけたやり取りが出来るほど、ここ数年ゼウスによる天界の統治は完璧だった。

だが、そんな平凡な日常が続くだろう思っていた矢先のことだった。

「ゼウス様!!」

声を張り上げながらゼウスの部屋に武装した男の神が慌てて入ってきた。

「どうしたどうした、そんなに慌てて何かいいことでもあったのかいペルセウス。もしかして週刊女神マガジンに可愛い女神のグラビア写真が出ていたとか?」

ゼウスのおふざけに付き合う様子もなく、ペルセウスと呼ばれた男の神は呼吸を落ち着かせて言う。

「魔界の悪魔どもが人間界で妙な動きをしていると偵察隊から報告が上がっております」

「…ほぉ、悪魔どもが」

ペルセウスの報告を聞き、さっきまでふざけていたゼウスが真剣な表情を見せる。

空気が一変し、ミカエルとレトも固唾を飲み込みながらペルセウスの報告に耳を傾ける。

「報告によれば人間界に現れた悪魔が負の感情を持った人間と契約を交わしているとのことです」

神滅(しんめつ)を持った人間に取り憑いた訳か」

「神滅!?人間が神滅を持つことなど有り得るのでしょうか?」

驚いた表情のミカエルがゼウスに問う。

神滅とは人間の中に流れる負の感情が魔界に漂う魔瘴気と混じり合うことで生まれるエネルギーを言う。

この神滅を持った人間と悪魔は契約を結ぶことが出来る。

しかし、魔界で生まれる魔瘴気が人間界に紛れ込むといった前例が今までになかった。

「恐らく奴の仕業…ルシフェルが人間界に魔瘴気を持ち込んでいるのだろう」

ルシフェルと呼ばれる悪魔、ゼウスと対を成す悪魔の王である。

「ゼウス様、事は一刻を争います。ルシフェルは人間界を支配した後、間違いなくこの天界に侵攻を始めることでしょう」

ペルセウスの報告を聞き、ミカエルが真っ先に動き始めた。

「事が大きくなる前にここは私たちが。レト、すぐに人間界へ向かうわよ」

「貴女に言われることじゃないわ、とっくに準備できてるわよ」

「待て、お前たち!!」

先走ろうとするミカエルとレトに向かって一喝するゼウス。

その姿はさっきまでのおふざけおじさんからは想像もつかなかった。

「ペルセウス、人間界の悪魔がどれ程のレベルか分かるか?」

「報告では下級悪魔程度かと…」

下級悪魔程度というレベルを聞き、険しかったゼウスの表情が少し緩んだ。

「ふむ、ならばお前たちが出向くまでも無いね。聖天六神を招集せよ」

「ゼウス様、相手が下級悪魔だからこそ私たちが速攻で片を付けるべきでは?」

「ミカエルに同感ね。こんな時だというのに…頭おかしいのかしら?」

「ふむふむ、ミカエルちゃんとレトちゃんの意見も分かるよ。でもね、可愛い君たちにはもっと別の役割があると思っているんだ」

いつの間にかおふざけモードの口調に戻っているゼウスだが、下級悪魔に総力を挙げる必要も無いという彼なりの判断とミカエルとレトに対する気遣いの現れなのだろう。

「まずは悪魔に操られた人間を解放してあげる必要があるね。下級悪魔程度ならそれもたかが知れているでしょう。それに聖天六神だって君たちが認めた後輩たちでしょ?後輩を信用してあげるのも先輩の役目だよ」

さっきまでの緊迫感はどこへ行ったのか。完全に下級悪魔を舐めているゼウスだった。

「ゼウス様の判断ということでしたら…」

「ふん、後で後悔しても知らないわよ」

ゼウスの意図を悟り留まることを決意するミカエルとレト。

「と言うことでペルセっち、今回の件は聖天六神たちに任せるから後の説明はよろしく頼むね」

「承知しましたゼウス様。聖天六神たちには私からお伝え致しましょう」

ゼウスの前で膝をついていたペルセウスが立ち上がり一礼すると部屋を後にする。

「さて、ミカエルちゃんとレトちゃんには他にやってもらうことが出来たから手伝ってもらうよ」

そう言うとゼウスは座っていた玉座から立ち上がる。

「二人ともついて来なさい」

二人の方を見たゼウスの表情はまた真剣な顔つきに戻っていた。

ミカエルとレトを連れて、ゼウスは王の間を後にした。



時は戻り精霊学園の屋上にて。

「つまり悪魔に操られた人間たちを助けるために天界から人間界にやってきたわけか」

「左様でございます勇飛様」

「なるほど、お前たちの目的は分かった。だが、今の話と俺にお前たちが見えている理由は繋がっていないが、それはどういうことなんだ?」

「それは勇飛様、貴方様に神魔(しんま)と呼ばれる力が宿っているからです」

「神魔だと?」

「はい、神魔とは私たち神々が住む天界の大気中に流れるエネルギーです。神魔は神滅に対抗する唯一無二の力であり、その力を所有する人間は、私たち神の存在を目にすることが出来るのです」

「でも、天界に流れるエネルギーが何故人間界にも存在するんだ?」

「私たちも詳しくは存じ上げないのですが、遥か昔に天界を統べる神々の王が人間界と共存すべく、我々神々の力を人間界にも分け与えたことにより、人間界にも神魔が生まれるようになったそうです。人間界の大気中に漂う神魔は、人間の善の心に共鳴します。その力が大きければ大きいほど、私たち神々の存在を認知することが出来るのです」

「因みに俺たち聖天六神レベルの神々を目視出来る人間はそういないぜ。普通の人間には俺たちのような神々は見えないからな」

ヘラクレスによると聖天六神程の神々を認識するには、それ相応の神魔を体内に宿す必要があるらしい。

「今までの話を整理する辺り…俺には神様が見える程の特殊な力があるわけか」

まだ全ての状況の整理は出来ていないが、何となく俺の前に現れた奴らのことや現状については理解できた。

「さて勇飛様。事の説明は終わりましたので早速本題へと移らせて頂きます」

そう言うとガブリエルは青色に輝く宝石が埋め込まれた指輪を差し出してきた。

「なんだこの指輪は?」

「これは契約の魔具です。これから勇飛様には私と契約を交わし人間を操る悪魔たちを討伐するためのお力添えをお願いします」

「つまり悪魔に憑依された人間を助けるために俺が神様と契約するってことか…」

今までの話を簡単に整理すると、悪魔が人間を操っていると同様に神様側も人間と協力して悪魔退治をしようってわけだ。

どう考えても非現実的だが、目の前に起きている現状を目の当たりにする限り、もう後戻りは出来そうにない。まぁ、どう思考を巡らせても逃避できそうにないのが現実だ。

こんな非現実的な出来事…こうなってしまった事にも何か運命的なものを感じた。

「分かったよ。よく分からねぇけどあんた達の話に乗ってやるよ」

仕方なくガブリエルの話を承諾することにした。

「ありがとうございます。勇飛様」

ガブリエルは嬉しそうにほほ笑むと契約の魔具を渡すため手を差し伸べてきた。

しかしその瞬間だった。

「ちょっとまてぇ!!」

ヘラクレスが間に割り込みそれを阻止してきた。

「ちょ、何するんだよヘラクレス」

「話の流れでさっさと契約を結ぼうとしていたが、ガブリエルよ抜け駆けはいけないぜ」

「え?どういうことだよそれ?」

「さっきも話したが俺たち聖天六神レベルの神々を認識するには相当の神魔を持つ人間じゃないといけない。つまりだ、俺たちと契約するには俺たちに見合った神魔を持つ人間じゃねぇとダメだってことだ」

「ってことは…お前たち二人の内どちらかしか契約出来ないってことか?」

「そう言う事。そこの女神様の上手い話に乗せられてまんまと抜け駆けされるところだったぜ」

「…ヘラクレスにしては察しが良いですね」

ガブリエルの方に視線をやると、声のト音は変わらないがその表情は明らかに不機嫌そうな顔をしていた。

「ここは公平にお互いの魔具を勇飛に渡して、共鳴した方が契約するってことにしようぜ」

「仕方ないですね…恨みっこなしですよ。さぁ勇飛様、私たちの魔具を手に」

改めてガブリエルが青い宝石の指輪を差し出し、それと同時にヘラクレスが赤い宝石の埋め込まれたネックレス差し出してきた。

二人の差し出してきた魔具を同時に手に取った瞬間だった。

二つの魔具に埋め込まれた宝石が同時に発光した。

「こ、こいつは…」

「し、信じられません。こんなことって…」

ガブリエルとヘラクレスがまるで豆鉄砲を食らったように驚いている。

「えっと…これってつまり、お前たち二人と契約出来ちゃったってこと?」

二人の反応を見る限りその通りなのだろう。

「やはり勇飛様には他の人間とは違う何かがあるのでしょうか」

「こいつはすげぇぜ。今までに見たことも聞いたこともねぇ」

どうやら神々の中でも異例の事らしい。

「まぁとりあえず、お前たちが仲間割れしなくて済んだから結果オーライってことで良いんじゃないか」

「そうですね。この件については一度ゼウス様にも報告しますが、まずは無事にパートナーを見つけることが出来て良かったです。これからよろしくお願いしますね、勇飛様」

「よろしく頼むぜ勇飛!」

ガブリエルとヘラクレスが同時に手を差し伸べてきた。

「あぁ、こっちこそこれからよろしく頼むよ」

差し出してきた手を握り握手を交わした。

こうして俺は神様と契約することになり、神様が見えるようになった。

そして今後、悪魔と契約した人間「悪魔使い(デビルマスター)」と戦いを繰り広げながら、神様と共存する不可思議な学園生活が幕を開けるのであった。


昔考えていた物語を今頃になってリメイクしながら初投稿です。

物語構成、文章力は初心者中の初心者ですが、どうぞよろしくお願いします。

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