異世界転移少女と元皇后
薄い百合…にも満ちません
「私を元いた世界に帰して!!」
公務を終え一息着こうとしたところ扉を勢いよく開け入ってくるは皇后。元は異世界は来た少女であったが、皇帝が彼女に一目惚れをし皇后へとなった。
「何故私に言うのです?それにその言動は何ですか?貴女様は皇后なのですよ、お忘れなく」
冷たく対応するは側室、元皇后の第1候補であった令嬢。才色兼備であり、民は彼女を称えていたが今では悪女などと後ろ指さされている。
「聞いたの!貴女は魔法が使えてしかも、異世界に繋げる門の召喚が使えるって…だから、私を元いた世界に、日本に返して欲しいの!」
側室の腕を掴み、強く懇願する。しかし彼女は顔色一つ変えることなく氷のような表情であった。
「その魔術は我が代々伝わる禁術であり、この世界に最大の危機となる敵が現れた際に別の世界へと飛ばす為の最終手段です。貴女のような自分勝手な理由に使うものではございません。」
「そんな…」
「それに、理解ができません。貴女は異世界から舞い降り、そのまま皇帝に愛され皇后となれた、他の令嬢達が血反吐を吐きながら努力をして手に入れなかった立場を貴女はいとも簡単に手に入れたのですのよ?皇帝や民に愛され、このような幸せな立場に立てる中何故帰りたいなどと言うのか。」
側室は言葉の剣で皇后の心へと刺さる言葉を放つ。
皇后にその言葉がズシリとのしかかる。それもそのはず、懇願している相手は本来であれば皇后と約束された女であったのだから。
側室は掴む手を振り払い、皇后に背を向ける、そして二度とそのようなことで私の前に現れないでいただきたいと言い放つ。
皇后は涙を堪え部屋を去るのであった。
「ごめんなさいね…。」
ポツリと側室は呟く。
皇后を元の世界へと帰したくないのには本当の理由があった。
それは帝国の希望という鎖に雁字搦めにされている皇帝には癒しとなる貴女が絶対であること。
そして…異性を恋することを矯正づけられた自分にも貴女が必要であること。
初めて異世界から舞い降りた彼女を見たとき私の中の封印してきた恋を解放してくれたこと。
でもこの恋は表に出すことは許されない…せめて貴女を近くで見守らせて欲しい、周りから悪女などと後ろ指刺されても構わない。
貴女の笑顔を遠くで…見守りたい。そして貴女の影として共に生きていたい。
掴まれた箇所を撫で、側室は涙を静かに流すのであった。
どうでもいい補足
皇后→日本の女子高生。通学中にトラックに轢かれそうなところ異世界に飛ばされる。
側室→元皇后候補の令嬢。才色兼備。家が代々魔術の家系でもある。
生まれながら同性愛が強く、今までそれを隠していた。
皇帝→若くして皇帝になる。完璧な立ち振る舞いだが、早くして亡くなった前皇帝に認めてもらったことがなく心は不安定であった。そんな時転生した少女に惚れ、結婚する。