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最強魔王の背後霊  作者: のぞぞ
本戦編
60/63

伝説打破の秘密



(俺たちの負けだよ。)


頭の中に声が響く。


あたりを見渡すと、鼠神が手を振っていた。



(俺は喋れないから、こんな降参の仕方でごめんな。)


鼠神が頭を下げる。


(審判、コールを。)


審判も今の状況がいまいちわかっていないのか、動揺している。



「審判、コールしてください。」

改めて、弘太の方から審判に言う。


それに対して、審判も静かにうなずいた。




「2回戦、第2試合!勝者チーム凜とした猫!」


審判のコールに、会場は騒めいていた。


(僕の声は、審判と君たち二人にしか届いてないんだ。)


(決勝、勝ってくれよ。)

そういいながら、手を差し出してきた。



弘太はその手を取り、握手した。


観客たちも6人の熱い試合を称える大歓声に包まれていた。



(聞こえるか、この大歓声が。俺たちやり切って負けたんだな。白、牛神・・・。)


鼠神は気絶して届かない二人に声を届けた。


3人の目からは涙がこぼれていた。







「康太!やったじゃない!」

春が康太に駆け寄った。


「まだまだだったよ。本当に牛神先輩は強かった。次戦ったら絶対に負けてしまうくらいに。」


康太はとても疲れた顔でそう言った。



「そうとは限らないさ。僕たちはこれからまだまだ強くなるだろう?」


ネガティブな康太の言葉に弘太が返した。


その言葉を聞いて、康太は満面の笑みで頷き、春はそんな二人の様子を微笑ましく見ていた。



3人は、治療のため、医務室へ向かった。


3人が医務室に入ると、そこには、伝説打破の3人の姿もあった。白と牛神の二人も意識を取り戻し、3人で話し込んでいた。



「丁度いいところに来たな。おまえらのところに行こうかと話してたところだったんだ。」


白が親しげに3人に話しかけてきた。


「今日は、ありがとうございました。で、何か用でもあったんですか?」

弘太が白に質問をする。


「そんな改まらなくていいよ。今は、おれたちおまえらのファンなんだぜ?」


いきなりの言葉に、弘太たち3人はきょとんとした。


「特に牛神はどうやったら康太を倒せるかずっと考えてるみたいで、気絶してたときもずっとうなされてたんだから。」


3人が牛神の方を見ると嬉しそうに笑っていた。


「いやー、俺の油断もあったが、まさか自分よりも若い奴に負けるなんて初めてだったんでな。今すぐ戦いたいぐらいだ!」


牛神の言葉に弘太は少しおびえてしまったが、康太はしっかりと牛神の目を見ていた。


「また、戦いましょう。次やるときの僕は今よりも強くなってます!」


「もちろんだ!俺も強くなるわ!」


そういうと、二人は握手をした。



「あの、一つだけ聞いていいですか?」

弘太が鼠神の方を見ながら言った。


それに対し、鼠神は頷く。


「一回戦の時、夢先輩に資格を共有する魔法かけていませんでしたか?」


弘太の問いに対して、鼠神は頷く。



「そのことなら俺から話そう。」


白が鼠神の代わりに話し始めた。


「まず、俺は目が見えない。この学校に入りたての頃に事故で失明したんだ。そのかわりに聴力が発達しているんだがそのおかげで、人に話しかけられるのが苦手で、人付き合いが苦手だったんだ。そんなとき、耳からじゃなくて頭に話しかける鼠神と出会って、喋れないことを知った。お互いに不憫な中で生きてきた俺らはすぐに仲良くなったんだ。」


白の言葉に鼠神が頷く。


「そして、戦いの訓練の時などは俺の目の役割をずっとしているんだ。一回戦も、二回戦の最初もな。」


「その目が見えないことなんだが、去年、義経先輩の魔法が効かなかったのはそのせいだと思う。おそらく、対象を選んで、その視覚を操るんだと思う。」


「まぁ、弘太たちがどうすれば防げるのかは分からないがな。」



「いえ、魔法の情報がもらえただけでありがたいです。」


弘太は頭を下げる。


「まぁ、いいって。それじゃあ、俺らは治療も終わったから帰るわ。」


「はい!ありがとうございました!」


帰って行く三人の姿を弘太たちは見送った。





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