魔王と猫
(凜猫、ルシ様、すこしいいですか?)
弘太は家に帰り、部屋に戻ると、凜猫と魔王に話しかけた。
(どうしたにゃ?)
凜猫が待ってましたと言わんばかりに返事をした。
「僕はどうすればいい。もっと強くなりたい。今のままじゃ足りないんだ。」
(我を頼るのか。)
魔王が弘太を威圧するように言い放った。
(お願いします!どうしても力が必要なんです!)
弘太は魔王に訴えを続ける。
それに対し魔王は不満そうな表情をしていた。
(力と言うのは、そんな簡単なものじゃないとまだ分かっていないのか・・・。いや、分かっていたのに見失っているといったところか。)
(今の弘太に力を与えても毒にしかなるまい。力におぼれることほど愚かなことはないからな。)
魔王の言葉に、弘太は絶望していた。
(それなら、わしからお主に課題を出してやろうかにゃ。戦いたい相手と当たるのは明後日なのだろう?)
凜猫の言葉を聞き、弘太は顔を引き締めた。
(課題とは何だ?)
(次の相手、試合を見ていた感じからして、一つの魔法を使っていた。その魔法が何なのか明日の試合の中で見つけてみるんだにゃ。)
弘太は、白と響の戦いを思い出した。
白が3人に迫った時か、それとも、牛神が地面をたたいた時か、どちらも確信を持つことはできなかった。
(とりあえず、もう寝るんだにゃ。明日負けたら意味もにゃいんだろう?)
凜猫のその言葉に、張り詰めていたものが少し緩んだように、弘太は眠りについた。
(凜猫よ。おまえは優しいな。)
(何を言ってるんですか。与えてはいけないときには与えない。その優しさこそが、ルシフェルド様のいいところですよ。)
(弘太を見ていると昔の仲間たちを思い出すのだ。我のもとに才能にあふれたものは来なかった。みな、才能がないことに嘆き、我と出会い、自ら成長していく。しかし、その中で、力におぼれるものも少なくなかったからな。)
(そうですね。あの頃は色々ありましたからね。それでも、部下は全員ルシフェルド様のことが大好きでしたよ。これだけは自信を持って言えます。)
(あぁ、そうか。それならよかった。)
そういう魔王の目元には涙がつたっていた。
(信じましょう。主を。もし踏み外してもルシ様なら大丈夫ですよ。)
(あぁ、そうだな。)
そして、準決勝の朝を迎えた。




