犬神
「お前にはまだ早い!」
魔力を高める瞬に、戒が近寄る。
「邪魔をするな!」
瞬が暴れ出し、そこら中に魔力でできた犬たちが瞬の体から現れ、会場中を駆け巡る。
「そこまでだ!」
正気を失った犬神瞬のもとに戒がたどり着いた。
< 茶魔法 犬小屋 >
地面が隆起し、戒と瞬の兄弟二人だけが隔離された。
「なにもかもぶっ壊してやる!」
暴れまわる瞬を戒が思いっきりぶん殴った。
「もっと、自分のやるべきことを考えろ。義経の幻を乗り越えたのかと期待したのだが、期待外れだったな。」
そう言う戒の前で瞬はうずくまって動かない。
「おれは!おまえみたいになりたくないんだ!誰かの下でやるんじゃなくて、俺がみんなを従える!そんな存在になるんだ!」
瞬は、少し正気を取り戻したように、感情を戒へとぶつけた。
「おまえはまだ、出会えてないのかもしれないし、出会っているのに気づいてないのかもしれない。しかし、俺たちは引き連れるものじゃなくて、慕い、従う存在なんだ。」
「今もおまえに、俺は倒せない。」
戒はそういうと、手を瞬の方へとむけた。
「おれは!誰にも負けない!」
瞬は叫んだ。
その声は、戒の魔法を超え、会場にいたすべてのものの耳に届いた。
「負けないんだ・・・。」
最後の力で叫んだ瞬は、そう言い残し、魂が抜けたように意識を失った。
戒の魔法が解除された。
その中から、意識を失った瞬を抱えた戒が出てきた。
「これで終わりだな。審判、コールを。」
戒は、瞬をゆっくり下すと、勝利宣言をした。
「そこまで!勝者、レジェンズ!」
予想外の展開の中で、観客は動揺していた。
しかし、一人が拍手を始めた瞬間、観客たちの溢れんばかりの歓声がスタジアムをつつんだ。
そして、その目線の先には、倒れ込むセブンドッグスの3人と、歓声に答え手を振るレジェンズの3人の姿があった。
そのころ控室では・・・
「あれが、伝説の力・・・。」
春は、自分たちよりも強いかも知れないと思っていた犬神瞬たちが負けたのを見て、不安になった。
「僕らなんかにどうにかできるのかな・・・。」
康太も不安になって、弱音を吐いている。
そしてふたりは弘太に視線を向けた。
弘太は何を言うわけでもなく、真っすぐとした目でモニターを、もっと言うと、モニターの向こうの犬神瞬を見ていた。
2話投稿の1話目です!




