勇者の島の猫
「お主がルシフェルド様の宿主か?」
弘太は聞きなれない声で目を覚ました。
「んっ・・・。」
「ぼさっとしてないで早く起きろ!」
弘太が目を開けると、目の前にはぽっちゃりとした黒猫がいた。
「お主、ルシフェルド様を知っているな?」
弘太はその質問に動揺を隠しきれない。魔王という存在どころか、その名前までも目の前の猫は当てて見せたのだ。
「あぁ、そうだけど・・・。おまえだいったい何者なんだ?」
「わしは、凜猫。ルシフェルド様が魔王だったころの仲間だよ。」
その意外な言葉に、弘太は言葉を失った。
「意外そうな顔じゃな。わしは輪廻の中を生きる凜猫。死んでは生き返り、この世の移り変わりを見てきた。わしは元々、ルシフェルド様により創造されたが、勇者に殺される間際に魔力を全て使い、輪廻の中に逃げ込んだのじゃ。そしてずっと、ルシフェルド様に会えるのを望みながら過ごしていたら、ルシフェルド様の気配を感じ、ここに召喚されたのじゃ。分かったか?」
凜猫と名乗る黒猫の話は、なんとなく自然に頭に入ってきて、理解することができた。
「そうなんだね。ルシ様は僕に力を貸してくれてるよ。」
「そうか、それならお主がルシフェルド様にふさわしいか、図らせてもらおうかの。」
そう言うと、太った黒猫だった凜猫は、真っ黒なオーラに包まれた。
そのオーラの中からは、先ほどまでの凜猫とは似ても似つかないブラックパンサーがいた。
「それでは、行かせてもらうぞ。」
その言葉とともに、猛スピードで凜猫はこちらに襲い掛かってきた。
< 黄魔法 雷装 >
弘太は、ギリギリのところで攻撃を躱す。
「まだまだ行くぞ。」
< 闇魔法 影移動 >
その魔法と共に、弘太の視界から凜猫は消えた。
そして気が付くと、目の前に迫ってきており、必死に避けようとするが左肩を裂かれてしまう。
「おそいのう。鈍すぎる。」
そしてふたたび、凜猫は姿を消した。
(考えろ、考えるんだ。)
弘太が考えていると、目の前の影から姿を現し、襲い掛かってくる。
次は、左の頭部を裂かれて左目に血が垂れてきた。
(なんなんだ、この速さ!どうなっている!)
「焦っておるな。少しくらい冷静に物事を考えて見せよ。」
凜猫の言葉に、もう一度状況を確認する。
(さっきの攻撃、いきなり目の前に現れた。見えないほどのスピードなら、攻撃された後に気付くはず。ってことは、どこからか現れたのか・・・。それはどこだ?)
「いい加減、止めと行くぞ?」
凜猫がまた、影の中へと姿を隠す。
(影の中に消えた?)
「そういうことか!」
< 黄魔法 来光 >
その瞬間、あたり一面が照らされ、影が無くなったため、凜猫が姿を現した。
「よくわかったな!それではここからはタイマンじゃ!かかってこい!」
凜猫は嬉しそうに構える。
が、弘太は血を流しすぎたのか、その場に倒れてしまった。




