勇者の伝説
800年前、ひとりの青年がいた。青年の家庭は母と二人貧しくも幸せな生活を送っていた。
そんなある日、母親が病に倒れた。
貧しかった青年は薬を買うこともできず、母の死をみとるしかなかった。
青年は激しく自分を責めた。
自分にお金を稼ぐ能力があればと・・・。
そのまま、青年は島から姿を消した。
数年後、島では異常気象が起きて、島中で食料を取ることも、外部と接触することもできなくなってしまった。
そのせいで、病気になる子供、立ち向かって大けがをした大人たち、多くの人々が傷ついた。
そんな日々の中で、青年が島に帰ってきた。青年は不思議な魔法を使いけが人を癒し、病人を治していった。
そして、島の人々を苦しめていた異常気象までも追い払い、島を救ってみんなから英雄と言われるようになった。
青年は言った。
「僕は一度、絶望の中で死んだ。生きる気力もなかった。しかし、その時、勇者が目の前に現れたんだ。」
「彼は、僕のすべてを受け入れた。母が死んだという自暴自棄から、母のような人を減らしたい。人を救いたいと思わせてくれて、あらゆる力を授けてくれたんだ。この島を守ったのも、今僕が生きているのも勇者のおかげなんだ。」
島中の人たちは勇者に感謝した。
あるものは石像を作った。
あるものは今回の出来事を書物にまとめた。
そして青年は、勇者からの教えを島のみんなに説き、また、子供たちには魔法を教えた。
しかし、青年が教えたのは簡単な魔法だけで、奇跡と呼べるようなものは誰にも教えはしなかった。
やがて青年は家からでなくなった。病気や怪我をした者だけが青年に治してもらいに行けるだけで、誰もその顔を見ることは許されなくなった。
そのまま月日はながれ、1年が経とうとした時、青年は家から出てきた。
しかし、青年はガリガリになっており、今にも死にそうになっていた。青年が使っていた魔法にはそれだけ負担がかかっていたらしい。青年は、自分の死を悟り、家から出てきたのだ。
そのまま青年は、自分の母の墓へ行きその生涯に幕を閉じた。
そして、青年の家には1通の遺書が残されていた。
これが読まれているころには私はこの世にはいないかもしれません。私が使っていた魔法は特別なもので命と引き換えに人々を救うというものでした。最初は母をよみがえらすためにこの魔法を使おうときめていたのですが、私の中の勇者様が「もうすでにない1つの命を求めるか、これから、失われる多くの命を救うか、今のおまえにはどちらもできる。」
と、私に言いました。
それから、私は人を救うことを選び、島の人々のためにと行動をしてきました。結果として、多くの命を救うことはでき、救われた人たちや、その家族の笑顔は私にとって今でも大切な宝です。そして、島の子供たちに教えた魔法は特別なものです。島を守るときにかならずみんなを救います。
私は最後にやり残したことをして、生涯に幕を閉じます。私が死んでも、勇者様のことは忘れないでください。彼は私の大切な友であり、家族です。
この島が平和であり続けることを祈ります。




