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最強魔王の背後霊  作者: のぞぞ
宿主、学内対抗戦予選
20/63

宿主、翻弄される。



そこから広がる魔法陣はそのまま闘技場全体を包んだが、お互いのチームに目に見えた変化は起きていない。


「なにかわからないが、速攻で行くぞ!黄魔法 雷装!」


いつも通りに魔法を使おうとするが、発動しなかった。


「魔法が使えない!?」


「そうだぜ!うちの大将の魔法は全ての魔法を封じるのさ!そして、魔法が使えなくなったところをおいらがぼこぼこにするっていう作戦だ!」

そう言いながら、猿神がこちらに迫ってきた。


猿神の攻撃は、弘太に向かっていたが、それを康太が防いだ。


「君の相手は僕だ!絶対に負けない!」


そういう康太の顔を見て猿神は笑った。

「なかなか強そうだな!いいぜ!おいらとおまえで1対1の殴り合いだ!」


「二人は、この魔法をどうにかするんだ!!」



「あぁ、任せたぞ!」



ふたりが乱打戦を演じている間に、春と、弘太は風馬と関のもとへと向かった。


「ここは通しませんよ!ふうくんは私が守ります!」

関が僕ら二人を相手にしようと攻撃してきた。その速さは、猿神ほどではないが、今の魔法が使えない僕らを二人同時に相手するのには十分なものであった。


「なんて早さなの、同じ女なのに、全然反応できない・・・。」


「春!下がっていてくれ!僕が関を倒すから、それまで、風馬を倒す体力を温存してくれ!」

そういいながら、弘太は関の攻撃を躱し、反撃に出るが躱されてしまう。


(くそ、なんて早さなんだ。体が追い付かなくて、ルシ様の格闘術が使えない・・・。)










一方そのころ、康太は猿神の攻撃に必死に耐えるという状態が続いていた。猿神の技はその威力も技術も桁違いのものであった。


「なかなかやるじゃん!でもあくまで習い事の拳法だね。」

そういうと猿神は、康太にまた殴り掛かる。


そのまま、頬にクリーンヒットし、康太は倒れる。


「習い事なんかじゃない!僕は・・・。ぼくの拳法は・・・。」

猿神の攻撃を受けながらも康太は立ち上がる。



何度目だろうか、もう、数えきれないほど、吹っ飛ばされた。



何度目だろうか、もう負けないと思ったのは・・・。




「おいらには勝てないよ。懸けてきたものも、実力も全然違うんだからね!」



康太の脳裏には、ずっと好きだった、あこがれていた父親の姿が浮かんだ。


何度あったか、父親が負ける姿を見たのは・・・。


何度あったか、いくらやられても立ち上がる父を誇りに思ったことが、父みたいになりたいと思ったことが!



「僕は父さんみたいな!いや、父さんを超える拳法家になるんだ!」

康太は最後の力を振り絞って立ち上がる。その眼のはまだ、闘志の炎が燃え盛っている。


「それなら、見せてくれよ!その拳法ってやつを!」

そういいながら、また猿神が迫ってくる。


(う・・・。)

康太は、思わずよろけてしまう。



しかし、頭の中に、サクラギとの戦いのときの弘太の姿が過る。あの恐怖の中、立ち向かっていった姿が、自分が何もできずにナイフに切り裂かれた姿が・・・。





(そうだ、最後までやり切るんだ。すべてをかけるんだ。)





よろけたことにより、猿神の攻撃は外れ、その鳩尾が丁度いいところにあった。




(この一発だけ。最後に全力で打とう。)




康太は会心の一撃を猿神の鳩尾めがけて放った。



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