背後霊、死にかける。
サクラギの魔力が高まっている。いったい何にをするつもりなのか。
麻痺して動かないサクラギだったが、今までで一番最大の魔力を集中していた。
「お前ら二人だけでも道連れにしてやるよ!」
< 赤魔法 大粉塵爆発 >
サクラギの高まった魔力がサクラギを包み、赤く収束していく。
<これはまずい、水魔法を使え!>
(はい!)
< 水魔法 水膜球 >
持てるだけの魔力で自分と斎藤の周りに水の結界を発生させ、攻撃に備えた。
次の瞬間、すさまじい爆発音とともに、周りは焼け野原となり、サクラギも消え去っていた。
<どうやらあれは、自爆魔法のようだな。それにしてもすさまじい威力だった。危なかったな。>
その言葉を聞くこともなく、織田は倒れ込んだ。
<仕方ない、今だけは我が守ってやろう。>
織田も斎藤も、その言葉は聞こえていないはずなのに、安心しきった顔で寝ていた。
その様子を、空から見守る一人の男がいた。
「あれが、弘太の言っていた魔法か・・・。すごかったな。下手したら負けるかもしれないな。」
そうつぶやく、犬神瞬は、にっこりと笑ってその場を去った。
翌日、弘太は目を覚ますと、自宅のベッドの上にいた。
<目が覚めたか、弘太よ。魔力を使いすぎたようだな。丸一日近く眠っていたぞ。しかし、やっと現実でも魔法が使えたな。>
僕は、昨日のできごとを、自分が魔法を使ったことを思い出し、感動していた。
(本当に魔法を使ったんですね・・・。)
<あぁ、あのあと本当に大変だったんだぞ、警察がきて、事情を知りたいとか、先生らには勝手な行動をしてと怒られたしな。>
(え?どういうこと?)
<弘太の体を代わりに動かしていたのだ。>
(なにしてるんですか!変なことはしてないですよね?)
ルシが自分の体に入った姿を想像し、動揺を隠しきれない。
<あぁ、警察などからは、きついから後日にしてくれと逃げたぞ。あと、あまり人前で我の教えた魔法を使わないほうがいいかもしれん。>
魔王は神妙な面持ちで言った。
(なぜですか?)
<我の使う魔法は、今と違いすぎるからな、腕輪をした状態で魔法を使ったというだけで研究させてほしいと言ってくるものもいたが、その場で腕輪を壊して、故障したことにした。あまり、研究なんぞされてもいいことはないからな。>
(わ、わかりました。)
<今日の鍛錬はしないから、しっかり体を休めろ。魔力もまだ戻ってないからな。>
魔王は、弘太に優しい顔でそう語りかけた。
その言葉を聞き、弘太は再び深い眠りについた。
<本当に、よくやったな。弘太よ。>
魔王は、優しく弘太の顔を見た。




