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短編ホラー集

五人目の客

作者: 結城 楓

‪夏休みが始まって一週間が経った頃、西岡さんは仲の良い友人達と四人で墓地へ肝試しに行く事になった。‬

友人宅に集まって酒を飲み進めるうち、誰が言い出したのか「夏だし、肝試しでもしようぜ」という言葉に酒の勢いとその場の空気から止める人もおらず――という話だった。


肝試し当日の夜。墓地へとやってきた西岡さんと友人達は、近くのコンビニで買った缶チューハイを飲みながら墓地を歩き回ったりしたが、何も起きる気配は無く、次第に飽きてきた一行は一通り歩き終えたところでファミレスに行く事にした。


店内へ入ると若い女性の店員が「五名様で宜しいでしょうか?」と言ったそうだ。

自身の聞き間違いか店員の数え間違いだろうと思ったが、友人が「いや、四人です」と訂正したので彼一人の聞き間違いでは無かったようだ。

「失礼しました。お席にご案内します」と言われ、西岡さん達は窓際の席に案内された。

席に着くと友人の一人がこう言った。

「なぁ、あの店員さっき五人って言ってたけど、近くに他の客なんていたか?」

学生の夏休み期間とはいえ世間は平日で、夜の九時を過ぎた郊外のそのファミレスにいた客はさほど多くなく、何より入口のそばにあるレジで彼らの入店と同じタイミングで会計を済ませていた客どころか、出入りした客もいなかったそうだ。

不思議に思ったが、きっと単なる店員の勘違いだろうと思う事にして、四人はその後普通に食事を楽しんだ。

西岡さん曰く、“人数分より多い水が運ばれてくる”とか、そういう事は無かったそうだ。


食事を終えてレジへ向かおうと席を立ち、忘れ物が無いかと席を確認した時、西岡さんがふと窓の方を見ると、向かいの窓際に座っていた友人〈菊池〉に覆い被さるように、小さい男の子の影が映っていたのだ。

男の子は無表情で、ただじっとこちらを見つめていた。


咄嗟に菊池に視線を戻し、ゴクリと唾を飲み込んでから、意を決して声を掛けた。

「なぁお前、背中のそれ……」

「あぁ、これ?新しいリュック買ったんだよ、色が気に入ってね」

菊池は上機嫌になりながらリュックサックを背負ったまま軽く体を捻って見せてくれた。薄茶色のリュックサックは確かにお洒落だったが、今はそれどころではない。

しかし彼は男の子の存在には気が付いていないようだった。

西岡さんはもう一度窓の方を見たが、そこにはリュックサックを背負った菊池が映っているだけだったそうだ。


あの男の子が墓地から憑いてきたのか、それともあのファミレスにずっといたのかは分からないが、西岡さんはあの男の子が絶対に見間違いなんかじゃないと確信している。

あの時友人達は誰一人気が付かなかったが、菊池がリュックサックを見せてくれた時、彼の新品のリュックサックに、子どもが泥のついた手で触ったような手形がうっすらと付いていたという。


西岡さん曰く、あの時肝試しした四人全員、今も変わらず元気でいるそうだ。

しかし西岡さんはあの一件以来、遊び半分で墓地へ近付く事は絶対にやめようと心に誓った。

夏と言えば怪談!夏と言えばホラー!夏と言えば怖い話!よし!怖い話書くぞ!って意気込んだ八月の暑い時期から早一ヶ月……なかなか執筆が進められず、気が付いたら涼しくなりなり始めてしまいました。(笑)


本当は肝試し翌日に語り手が西岡さんと会った時に「お前背中にいる女は何だよ!」みたいなオチにしたかったけど、短編小説にしてもあまりにざっくりし過ぎかな?と思ってるうちにこうなりました。


ほんのりひんやり感じで頂ければ幸いです。

最後までお読み頂きありがとうございました!



Twitterやってます。

@Poetry_weave40

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